『カルデアのマスター 300の事』 作:たんたんと
『クイズ カルデアのマスター300の事』
「で? なに? このふざけた状況」
サーヴァント──オベロン・ヴォーディガーンは、自分の名前が書かれた机の上に座り、呆れた顔で頭上の看板を見つめていた。
「さ、さぁ…………朝、BBとか言うサーヴァントに誘われて来ましたけど、私も何も聞いていません。オベロン、貴方も何も聞いていないんですね?」
そのオベロンの言葉に答えたのはアルトリア・キャスターだった。アルトリア・キャスターはオベロンと同じく状況が読めていないようだった。
「君、何も聞いてないのに付いてきて閉じ込められたの? お人好しだな。僕なんて廊下を歩いてたらいきなりソイツに、ここに飛ばされたのに……」
「あのサーヴァントは何が目的なんでしょう」
「さぁね。何も考えてないんじゃない?」
二人が状況が読めずに目の前の何も写らないモニター画面を見詰めていると、ボンっ!!! と2つ大きな音が響き、二人は視線を送る。
「な! いったい何が…………」
そこにいたのは二人にとって因縁深いサーヴァント────妖精国の女王モルガンと、、、
「お、お母様! 大丈夫!? 何なの、あの女!?」
その娘──妖精騎士トリスタン──いや、バーヴァン・シーだった。
モルガンは驚いた表情を浮かべて、バーヴァン・シーはモルガンを心配し怒っていた。
オベロンとアルトリアは二人もBBに連れ込まれたのだと察した。そしてアルトリアは目的が読めず首を傾げ、オベロンは黒い右手で頭をかいていた。
するとモルガンはバーヴァン・シーの方をチラリと見て、オベロンとアルトリアを睨み付けた。
「なんですこれは?」
「知るわけないだろ? 連れ込んだ女に聞いてくれよ。全く、妖精国の女王も間抜けだね」
「何よお前。お母様に向かって」
バーヴァン・シーはオベロンの冷たい態度が癪に触ったのかモルガンの後ろで睨み付ける。アルトリアは気まずげな顔を浮かべて、自分の名前が書かれた机の前に備えられた椅子に座った。
すると…………
『はぁ~~い。皆さんには私達のマスターさんの300の質問に答えて貰いまぁーす♥️』
机の前に備え付けられた大きなモニターにBBの声が響いた。
「はぁ? なんで私がそんな事しないといけないわけ? ここから早く出せよ! 出口がないんだけど!!」
「しかも無駄に多いしな」
バーヴァン・シーとオベロンはいかにも面倒そうな声を上げるが…………。
『皆さんには質問の正解数を競って貰いま~す』
「無視すんな! 聞こえてんだろ! くそ女!」
バーヴァン・シーは赤いスカートを握り締めてさらに怒鳴るが、BBは無視をして話を進めていく。
それに対してモルガンは頭の中で一人、呟いた。
『あの女────此方の話を聞く気がないな。欠片も…………』
『そして! 正解者の方には~~なんと!マスターと二人きりになれる権利が与えられまぁ~~す。はい! 嬉しい!』
「凄いな。これだけ怒鳴られてるのに無視だぜ。妖精眼でも画面越しじゃ何も見えないな。全く最高のショーだ」
オベロンは首を横に振って着席した。付き合わなければ出る事ができないと理解したのだ。何せ霊体化しようとしたらできなかった。
受肉はしていない。つまりBBが、何かしらの方法で霊体化できないようにしたのだろう。
オベロンは横を見て、未だに叫んでいるバーヴァン・シーの横にいるモルガンに視線を向けた。モルガンは画面を睨みながら首を傾げて、当然のように呟いた。
それはバーヴァン・シーの怒鳴り声が響く最中、オベロンの頭の中に良く反響した。
「二人きりになるも何も、夫なのです。常に一緒にいます。おはようからお休みまで常に覗いています」
オベロンはツッこまないと決めた。一緒にいるなら覗くなんて言葉は出てこない筈だし、そもそも夫じゃないだろう。
恐ろしいストーカーもいたものだ。ここには沢山、いるのかもしれないが…………。
「ふ、ふたりきりなんて!!!! ふ、ふしだらです!!!」
何をするつもりなんだ、アルトリア──オベロンは天を見上げた。
モルガンはキョトンとして、アルトリアは興奮して、バーヴァン・シーは机を手で叩いた。
「はぁ~~? なんで、こんなクイズやってまで二人きりにならないといけない訳? なりたかったらなりたいって言うし!」
そうだ。良く言った。オベロンは心の底から同意した。凄いな。俺、嘘言っていないぞ。二人きりになりたいだなんて思ってないし、男同士だぜ?
『それでは第一問』
「きーけーよぉおぉおお!!!!」
バーヴァン・シーは怒鳴る。
「やめなさい、バーヴァン・シー。諦めるのです。私はやると決めました」
「お母様!? いつの間に座ったの!?」
速い。俺じゃなきゃ見逃しちゃうね。嘘。見逃した。変わり身が速すぎる。嬉しそうに机に転がっていたペンを握っていた。
「くっ。女王。やる気ですね。マスターの貞──マスターは私が助けます!!!」
アルトリアもペンを握っていた。本音が垣間見えてオベロンは溜め息を付いた。そしてペンを握る。バーヴァン・シーもモルガンがやるのを見て大人しく座りペンを握った。
そして第一問。
『マスターの本名は何でしょう?』
「は? 簡単すぎでしょ。舐めてんの?」
カキカキ。
「ふっ」
カキカキ。
「基本的な問題ですね」
カキカキ。
「はぁー」
カキカキ。
上からバーヴァン・シー、モルガン、アルトリア、オベロンは答えを書いた。すると机の下に答えが映し出された。
それは目の前のモニターの上に四つの画面として映し出された。
バーヴァン・シー『ふじまるりつか』
モルガン『リツカ・ル・フェイ』
アルトリア・キャスター『ふじ丸 立か』
オベロン『藤丸 立香』
「───あのさぁ。モルガン。お前、わざとやってんの? 誰だよ? リツカ・ル・フェイって!!」
オベロンは我慢できずに突っ込んだ。
いやわざとだろ? あとアルトリア、お前、なんだ藤って漢字書けなかったのか? 消した後が残ってる。バーヴァン・シーみたいに平仮名にしておけばいいだろう。
「黙りなさい。虫。私の夫の本名に決まってるでしょう?」
「────」
ダメだ。コイツ。
「おい。アルトリア・キャスターw あんたなにそれ? 漢字頑張ったの~~? あははははっ! 平仮名汚なぁ~~~いwww」
言わないでやれ。バーヴァン・シー。俺は言わなかったよ。
「わ、私は────その・・・イギリス人だから!!」
「貴方は妖精でしょう」
「ぐっ!!」
モルガンの鋭いツッコミと共に目の前の大きなモニターが変わり、マスターの私室が映った。
そして四人は驚嘆した。
「マスターが縛られて目隠しされています!」
「くそ女、横に座ってるんだけど」
「あのアバズレ!! 私の夫に!!」
誰かモルガンにツッコミをいれないんだろうか? バーヴァン・シー、お前、モルガンに甘くないか? 俺は何も言わないからな。
『マスターさん。貴方のお名前は?』
『え! なんなの? BB? これって…………』
「何が起きてるかアイツ、理解してないぞ」
「いきなり縛られたんでしょうね。理不尽な」
『──────…………』
『────ふ、藤丸 立香』
マスター──藤丸 立香は戸惑いながらも素直に答えた。恐らく、BBが沈黙して不安に思ったのだろう。
『バーヴァン・シー、アルトリア、オベロン、正解~~~~』
「何故ですか!!! 正解は私です!」
モルガンは非難をする。
『第二問』
「聞きなさい!!」
「お、お母様…………落ち着いて』
『藤丸 立香の誕生日は?』
「おのれ! 次こそは!!」
カキカキ。
「こんなの後、298回もやるの?」
カキカキ。
「誕生日ね…………」
カキカキ。
「────」
カキカキ。
四人は答えを書いた。そして。
モルガン『私が召喚された日』
バーヴァン・シー『6月10日』
オベロン『6/10』
アルトリア『知らない』
「情けない後輩ですね。こんなこともわからないとは、良くこれで『予言の子』を名乗れたものです」
「────」
「お母様──」
「おい。バーヴァン・シー。涙目になるなよ。後、アルトリア、お前はあれだけ一緒にいたのに知らないのかよ」
「オベロン!!!!!!!!」
アルトリアに怒鳴られ視線を反らすオベロン。凄い剣幕だった。
『マスターさん? 貴方の誕生日は?』
『ろ、ろぐがつとうか…………。な、なんなの? これ?』
『バーヴァン・シー、オベロン正解~~~!!』
「何故ですか!!! 妻の私が一問も正解しないなんて!!!」
「────正解する訳ないだろ(ボソッ」
「黙りなさい、虫。燃やしますよ?」
「ふふっ。ダメダメですね。妖精国の女王」
「はぁ? お母様の事笑ってるけど、キャスターなんて今の所、名前だっておぼついてないだろうが!」
「貴女のお母様は名前すら間違えています!!」
ヒートアップする二人を遮るように、モルガンは堂々と言った。
「本来ならば正解でした」
「「「え?」」」
「本来ならば正解でした。あの司会者はイカれています。夫は脅されているのでしょう」
バーヴァン・シーはホロリと一筋の涙を流した。
『ダメだ。このお母様』
モルガン 正解数0
バーヴァン・シー 正解数2
アルトリア・キャスター 正解数1
オベロン・ヴォーティガーン 正解数2