オラリオに神の子が来るのは間違っているだろうか? R   作:ケツアゴ

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真面目な人は損な役

「参ったな何で彼奴が居るのさ……」

 

 戦車の手綱を握りつつ視線を向けたリオードの町、その雑踏の中から此方を真っ直ぐに見詰める少女と目があった。

 私の方が先に見つけましたよ、そんな風に勝ち誇った表情が此処からでも見えるけれど、直ぐに戦車に乗っているのがステンノ様ではないと分かったのか不満そうな顔になる。

 

「あら、知り合いでも居たのかしら?」

 

「フレイ・ファミリアの団員でステンノ様のお気に入り……僕の次に気に入られているのが。でも、彼女だけで父さん達の近くを離れる筈がないから誰か幹部が同行しているのかな?」

 

「何だ、お使いも出来ない餓鬼なのかよ」

 

 高度と速度を徐々に下げる中、フレイヤ様の問い掛けに答えるけれど、内容が意味深だったからか振り向いた先では首を傾げるフレイヤ様と怪訝そうにするアレンさん、どう答えて良いのか僕は困った。

 神には嘘は通じないし、フレイヤ様の言葉をアレンさんが疑わないだろうから説明は簡単だろうけれど、フレイヤ様は父さんの妹、性格もよく似ていると聞いている。

 気に入った相手に甘く、同時に試練を与えるタイプの女神であり、気紛れだ。

 

「と、父さんに軽率に話すなって言われているから……うん」

 

「……へぇ。訳有りって事ね」

 

 何かを察しただろうけれど、今はこうとでも言っておかないと、女神の動きを制限とか無理だからさ。

 懐に入れた相手には甘いけれど、気に入らない物を排除する事とか一度決めた事は曲げないタイプだった父さん、僕が生まれてから随分と変わったし、結婚してから母さんの意見は聞くようになったらしいけれど、それまではお祖父ちゃんと一緒にスカサハ先生さえも振り回していたらしい。

 

 結論、取り敢えず父さんの名前を出して楽しみを後に取っておくのを願おう、僕にはそれだけしか出来ないからね。

 

 

 

 

 

「久し振り……と言う程に間は開いてませんね、ティオ。其方の女神様がフレイ様の妹君のフレイヤ様ですね? アナです、名字は持っていません」

 

「あら? あらあら、変わった魂の子ね。ええ、宜しく。こっちの子はアレン、私の眷属よ」

 

 町の入り口に辿り着いた時、流石に戦車が空を飛んで来た事で人が集まり、更にフレイヤ様のフードが風で外れたせいで周囲の人達が一斉に見惚れる中、アナが知らない女の子の手を引いて人混みを縫って出て来たんだけれど、その子にフレイヤ様が目を付けたっぽい。

 他の人達と同様に見取れていたのに直ぐに我に返って視線を逸らす、フードを深く被って目立つのを嫌がる素振りは訳有りって所か。

 それに恩恵も持っている様子も無いのに抗った……抗ってしまった。

 

 フレイヤ様もそんな事情を察してかこの場では目立つ事をせず……なんて事がないのが女神って存在で、彼女の前まで行くと顎をクイッと上げて正面から顔を見る。

 まっ、女神の興味を引いてしまったのが運の悪い所だね。

 

 

「貴女、名前は?」

 

「……アリィ」

 

「あの、フレイヤ様とアレンさん……ついでにティオ。私達とアリィはボフマンさんの持つ屋敷に滞在していますし、一旦其処に向かいませんか? アリィもついでですし、神からは逃げられませんので」

 

「その言い方からして矢っ張り誰かと一緒か。……ついでって言い方は酷くない? 僕、兄弟子だし、君だってステンノ様の所に改宗予定じゃないか。未だ弱いから先の話だけれど」

 

「ええ、組み手と言いつつも実際は貴方が最長でも三分程度しか持たなかったケイローン先生との旅ですよ、ステンノ様を置いて早々に他の女神様と出掛けているティオ。いえ、フレイヤ様は責めてはいません。どうせ彼が大きな借りを返す為とかで引き受けたのでしょうから」

 

「さ、三分持っただけでも凄いって分かっているだろう、このチビ!」

 

 ステンノ様はご本神が”砂漠とか嫌よ。私は適当に過ごすわ”って仰ったから一泊八千ヴァリスの宿に泊まって頂いている訳で……糞、言い返せない!

 

 割と本気で来るLv.8の達人の拳や蹴りを何とか躱し受け流し命中と同時に背後に飛んで衝撃を殺し腕や武器を挟み込んで直撃を避ける、それを続けるのが大変なのは同門だったら分かるだろうに。

 

 僕とアナは互いに相手を睨み、フレイヤ様はそれを楽しそうに見ている。

 

 

「あらあら、仲が良いのね。ボフマン……彼の屋敷というのが気になるけれど行きましょうか」

 

 一瞬だけ微妙そうな顔をしたフレイヤ様は直ぐに気を取り直し、アナの案内に従って中心地へと向かって行く。

 その途中、大勢の奴隷が集まった奴隷市場が目に入ったのかフレイヤ様は視線を向け、アリィなんて拳を震わせ歯を食いしばった表情だ。

 

 

 

 

 

「丁度アリィと遭遇した所で奴隷狩りが現れまして、ケイローン先生の言葉での説得に応じなかったので拳の説得に切り替えて納得して貰いました。そのまま放置しては奴隷になるか砂漠で死ぬかの二択でしたし、此処まではお連れした訳ですが・・・・・・別に町で別れても良かったですね」

 

 アリィと行動している経緯を話したアナだけれど、それ程彼女には興味が無いらしい。

 まあ、いかにも訳ありって様子だけれども何も話していない様子だし、首を突っ込んで一から十まで助ける必要も無いか。

 

 

「アナ、随分と多いみたいだけれど、市場の空気がひりついているのと奴隷狩りとは関係有る?」

 

「ええ、戦争ですよ、隣国のシャルザードにワルサという国が一方的に戦を始め、軍部の恩恵持ちではワルサに雇われた傭兵系ファミリアに手も足も出なかった、それだけです。フレイ様も戦争は人の世の常だと仰っていました。人間とはそういう物なのでしょう?」

 

 冷めた声でアナは言い捨て、興味の欠片も無いように進もうとする中、フレイヤ様は少し不愉快そうに市場を見詰めている。

 あっ、まさか……。

 

「フレイヤ様……」

 

 僕と同じ結論に至ったのかアレンさんも止めようとするけれど止まらない。

 

「大丈夫よ、自重はするわ」

 

 それでも流石は都市最大派閥の主神、可愛い眷属の言いたい事は分かっているのか一旦足を止めて笑いかけて安心させるような事は言うけれど、僕とアレンさんは全っっっく! 安心なんかしていないさ。

 フレイ・ファミリアの団員が第一に教わるのは”神とマーリンの自重するって言葉は信用するな”だ。

 神と人は価値観が違い過ぎるからね。

 ましてやフレイヤ様は父さんと同様に神の中でも自由奔放、ファミリアの主神となった途端に歯止め役が出来て自重を覚える神も存在するけれど、目の前の女神の周囲には心酔した人しかいないし、鉄拳制裁なんてもっての他。

 

「マジかよ・・・・・・」

 

 かくしてアレンさんが顔を手で覆う事態の出来上がり、フレイヤ様ったら奴隷がいる光景が気に食わないからって奴隷市の奴隷を全員お買い上げ、護衛兼お目付け役役の筈のアレンさんが仲が悪い他の幹部から何を言われるのやら。

 

「フレイヤ様、自重なされる筈では・・・・・・」

 

「したわよ? 奴隷の売買を金輪際止めろとは言っていないもの」

 

 歓声の上がる中、アレンさんの嘆きにしれっと答えるフレイヤ様、因みに代金はファミリアの証文を渡してのツケ払い、中堅ファミリアじゃこうはいかないだろう。

 

「何と言うか凄まじい神ですね、フレイヤ様は・・・・・・」

 

「神の中でも別格かな。それで数百人は居るけれど一体どうする気なんだか・・・・・・」

 

 僕がこの前助けたサポーターは傷を癒して地上まで連れて帰ったけれど、あの後で結局同じような目に遭うだろうってのが僕の予想だ、だからって似た境遇のを全員集めて纏めて世話焼きはしないけれど。

 ”目に入る全ての悲劇に首を突っ込んでいても疲れるし、助けた子からの依存と助けてない子からの逆恨みを買うだけだし、悲劇が起きているという噂ではなく実際に近くで起きていて、どうしても気に入らない事だけ色々織り込み済みで関わりなさい”とは父さんの言葉、だから砂漠の広がるこの一帯で普通に存在する奴隷をどうにかしようとは思わないし、神が帰還覚悟で奴隷の要らない豊かな土地にでもしないとなくならないだろう。

 

 それでなくなるかは微妙だし、攻め込まれて他国の奴隷にされるのがオチだろうけれど、目の前の人達みたいにさ。

 

「さてと、取り敢えず休める場所と食事が必要だろうけれど・・・・・・」

 

 流石にこれだけの人数の休める場所と食料はツケ払いじゃ難しい、ツテと人員が必要だ。

 だからフレイヤ様は一旦お金を出させる相手を探して周囲の人達を値踏みし始めて・・・・・・。

 

「何やら騒ぎがしいと思いましたら奴隷を全て解放とかお見それしましたぞ、ドゥフフフフ」

 

「あら、ちょうど良いタイミングで来てくれたわね」

 

「ドゥフ?」

 

 

 

 そしてタイミングが良いのか悪いのか姿を見せたボフマンさんに目を付けた。

 まあ、神に関わるってこういう事だし・・・・・・うん。

 

 

 後に聞いた話だけれど、筋肉が足りなければ危なかった、らしい。

 

 

 

 

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