オラリオに神の子が来るのは間違っているだろうか? R   作:ケツアゴ

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忠言

「全然理由が分からない。奴隷はこの一帯で普通に存在していて、一方的な開戦で不意を打たれたにしろ今よりはマシな状況じゃないの? 生き残りたいならこのまま逃げれば良いし、民を守りたいなら勝ち目の無い戦いをするよりは首を差し出して降伏してしまえば良い」

 

 アリィと分かれた僕は小腹を満たした後で夕食前の軽い運動をしながらケイローン先生と話をしていた。

 昼過ぎに大勢で散々殴り飛ばされた中庭で互いに弓を構えながら駆け回り、僕が射た矢を先生が射落とすのを繰り返し、続いて互いに相手の矢を素手で受け止め瞬時にそれを射る。

 

「背負う物を持って生まれたのならば、そうとしか生きられない物ですよ。彼女の場合は、自分はこのような立場に生まれたのだからかくあるべし、そんな風に自らを追い込んで居ますが、貴方にも守りたい存在が居るでしょう? なら、そのモヤモヤもどうすれば消えるか分かっている筈ですよ」

 

 先生は僕の射た弓を指先で受け止め、反対に僕は手元で大きく軌道を変えた矢を後ろに一度取り逃がし、追い掛けようと振り向いた所でUターンして来た矢をギリギリで受け止めた。

 

 成る程、変な感じがすると思ったら、僕はモヤモヤしていたのか。

 弱肉強食、強い者が己に奉仕する弱い者を助ける、母さんから受け継いだ僕の信念の元になっている考えで、今回の戦争はそれに引っ掛かっていた。

 侵略先で行われているらしい数々の蛮行は気に入らない。

 でも、戦争はちょっと誰かを殴り飛ばせば良いって物じゃなく、単純な損得以外にも国の面子が掛かっている。

 国の面子が潰れたままじゃ他国に侮られるだけで、戦争を終わらせるには勝利をして反抗の芽を完全に潰すか互いに続けられないってだけのデメリットが必要だ。

 

 数日前に助けたサポーターみたいに個人じゃなく国そのものを救わないと今回は意味が無いから介入は躊躇って居たけれど・・・・・・うん、よーく分かった。

 

「目の前の相手に何もせず見捨てる、それが僕の生き方に反していたからか。ありがとう、先生」

 

「いえいえ、生徒を導くのは教師の務めですから。では、行って来なさい」

 

 先生に手を振った僕は急いでアリィの所に向かう。

 戦争に協力する気は今の所無い、それは父さんの考えに反する行為だからだ。

 

 

「フレイヤ様なら何とか出来る? だが、あの女神様は・・・・・・」

 

 だから僕は教えるだけだ、敵国を退けて祖国を守り、他国を牽制しつつ復興に助力してくれる商人を呼び込む、そんな諸々の後ろ盾になれる存在が誰かって。

 それを聞いても迷い訝しむアリィだけれども気持ちは分かる父さん同様に自分の欲求に正直で自由な女神だ、警戒せずに即座に受け入れるような思考なら国は守れない。

 

「圧倒的な劣勢を覆し、敵国を押し返して民を守り、荒廃した国を死んだ他の王族に代わって立て直す。そんな無茶を自分達だけで可能だって言うのならご勝手に。でも、一度フレイヤ様がどんな神なのかを見極めて考えるのも悪くは無いと思うけれど?」

 

「・・・・・・」

 

 だんまりか、本人も自分の存在が残った将兵の士気向上に必要でも、劣勢を覆す程の何かを持っているわけではないと分かってはいるんだろうな。

 そもそもそれが不可能だからこその現状な訳だしさ。

 

 さて、僕がやれるのは助言程度、これ以上は深入りって物だよね。

 王族の責務を放棄した以上は王族としての扱いをして貰おうとは思っていない僕だけれど、国を巻き込んだ揉め事にまでそれが通じるとは思えないし、その手の件にはお祖父ちゃんと母さんは表だって関わろうとはしていなかった。

 後は彼女次第、面倒に関わってでも輝きを見ていたいと思わせられるかどうか。

 ・・・・・・あっ、そうだ。

 

「最後に忠告だけれど、何もかも捧げるとかそういったのは面白くないって思うだろうから止めた方が良い。助けてくれるとすれば、それは君の魂の輝きを気に入ったからだろうからね」

 

「助言感謝する・・・・・・」

 

「別に良いさ。放棄した奴が背負ってる奴の手助けをしたくなっただけさ。自分の都合だから気にしないで」

 

 背後から聞こえた礼の言葉に軽く手を振って別れる僕だけれど心配が一つ。

 これ、余計な事をしたってフレイヤ様に叱られないかな?

 父さんが拗ねた時って面倒だったし、妹なら同じ可能性があると心配した僕が向かったのは屋敷の最上階の部屋、父さんが逗留する時用に作られた一番豪華な部屋がフレイヤ様が泊まる部屋。

 

 

 取り敢えず怒られる前に謝っておこう。

 そんな理由で僕は気が進まない中、階段を昇って部屋の前までやって来た。

 

「あれ? アレンさん、随分と機嫌が良いね」

 

 ノックしようとしたら先に扉が開いてアレンさんが上機嫌で出て来る。

 僕が間近にいたせいで顔を見上げる形になった途端に不機嫌そうだけれど何か良い事でもあったとか?

 

「あっ、フレイヤ様に護衛のご褒美でも貰った?」

 

「・・・・・・違う。褒美は今晩貰えるがな。ランクアップだ。次の更新でオッタルの野郎に一歩追い付ける」

 

「うわっ、良いな」

 

 僕も最近したばっかりだし、今戦ってるモンスターじゃ大した経験値にはなってくれない。

 アナもオラリオに来るし、ちょっと長めにダンジョンに潜ろうか?

 

「・・・・・・ケイローン・・・さん、は中庭か? もう一度稽古を付けて貰おうと思うんだが」

 

「あっ、僕も参加したい!」

 

 フレイヤ様への報告は・・・・・・うん、別に良いか。

 怒られた時はその時って事で・・・・・・。

 

 

 

 

 

「え? デートに出掛けた?」

 

 翌朝、ケイローン先生に早朝から散々叩きのめされた僕はステンノ様へのお土産を市場で選び、香油やら屋台の料理やらを購入して屋敷まで戻るとフレイヤ様とアリィは出掛けたのだとボフマンさんから聞かされた。

 どうも目的地までの路銀を盾に同行を許可させたとか。

 

 アレンさん? 離れての護衛だってさ。

 

 

「・・・・・・所でボフマンさんの所でシャルザードを支援とかする予定は?」

 

「モンスターや盗賊退治ならともかく、国同士の争いには首を突っ込まない主義ですぞ。まあ、もしフレイヤ様の期待に応えて勝利を得た暁には支援をする予定ですが」

 

 僕達がやる事はもう無いし、ボフマンさんは商売や解放した奴隷達を今後どうするかの相談で、僕はケイローン先生とひたすら鍛錬をする、その予定だったんだけれど・・・・・・。

 

 

 

 

 

「おや、元気そうで何よりですね、オッタル」

 

「お久しぶりです、師よ」

 

 おや、お客様が来たみたいだ。

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