オラリオに神の子が来るのは間違っているだろうか? R   作:ケツアゴ

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蹂躙

「あらあら、そうなの? 折角のデートだったのに残念ね。それでアリィ、貴女はどうするの? 一応砦を見に行くかしら?」

 

 アレンさんに相談したけれど邪険に扱われたし、仕方が無いからフレイヤ様達が水浴びから上がって来るのを待った僕は言いにくいけれど報告する事にした。

 うわぁ、”無粋な事をするのね”って感じで笑顔の下で怒っているよ、父さんが怒る時によーく似ているから分かるんだ。

 反面、アリィの方は動揺した感じ、信じられないってよりは信じたくないって感じか。

 彼女にとって砦で待っていた筈の臣下は希望だった筈、それと同様に昔から周囲に居た相手の死を知らされて・・・・・・。

 

「・・・・・・一応見に行きたいって所かしら? ケイローンの尋問なら虚偽は通じないのだけれど、それじゃあ納得出来ないでしょうし、今から行きましょうか」

 

 ニコッと笑うフレイヤ様、これって拒否権は無いって奴で、今から戦車でバッと行けって事だ。

 

 

「あっ、私はアレンにランクアップのご褒美をあげなくちゃいけないし、貴方だけで送ってあげて」

 

 

 

 

 

「そんな・・・・・・」

 

 そんなやり取りがあったのは数十分前、砂漠じゃなく空の上を飛んで行くんだから当然速い、ボロボロに壊された砦と無惨な死体を前に呆然とするアリィ。

 見たくはなかったであろう、見なければならない物だ。

 

 既に僕達が無力化した相手への敵討ちに関してはフレイヤ様に止められた、魂の輝きに良くないらしい。

 

 

「君が信じるかどうかは別として、ケイローン先生やアレンさん達のような本当の強者なら君の敵もどうにかなるだろうね。その場合、フレイヤ様に交渉するのが不可欠だけれども、間違っても自分を差し出そうとかしない事だ。価値を示せ、成長しろ、”何時かきっと”そんな風に思っていた憧れに近付け」

 

「・・・・・・」

 

 アリィは何も答えない、フレイヤ様の所に戻る最中も、デートの続きだとリオードの街にフレイヤ様と戻る最中もそうだったらしい。

 

 らしい、というのはアレンさんから聞いた話、先に戻った僕は関わっていないから。

 これは国と国との問題、唯一の王族である彼女が悩み決断する問題で、王族である事を放棄した僕じゃ何も言えない内容だ。

 

 

 

 それから僕はアナと一緒にケイローン先生に何度も殴り飛ばされて、何時の間にか朝がやって来て、流石に少し眠って起きた時・・・・・・ワルサの兵とラシャプ・ファミリアを叩き潰す手伝いをする事になっていた。

 

「ふふふ、頑張ってね。期待しているわ」

 

 

 

 

 

 それから数日、アリィがアラムとして各地に散った兵士を集め、同時にワルサの兵を集める為に演説を行ったり、ボフマンさん達が情報集めにしている中、僕とアナはというと……。

 

 

 

 

「ちょっとちょっと~! 僕、神様だって分かってる~!?」

 

「五月蝿いですよ。ティオ、猿轡を」

 

 ワルサの幕営に侵入し、ワルサが圧勝した理由であるラシャプを誘拐していた。

 本当は其処で総大将の首を貰っても良いんだけれど、そうしたら民衆にアリィ達の勝利とは認めて貰えない。

 彼女は演説で伝説に残る英雄が助けに来てくれたとか言っていたし……。

 

 猿轡を噛ませ黙らせたけれど暴れて鬱陶しい、腹を軽く蹴って気絶させると担ぎ上げ、少し騒がしくなり始めたワルサの幕営から離れた。

 

 

「それにしても此奴を誘拐して大丈夫なのですか? 取り返そうと躍起になるのでは?」

 

「大丈夫大丈夫。ケイローン先生が情報を吐かせたら……天界にお帰り頂く予定だからさ。……それにしても此奴の近くに居た団長らしい半裸、僕と目を合わせて何か唱えた後で驚いていたけれど何がしたかったんだろう?」

 

「呪詛……とか? ティオはそういった類に強いでしょう? まあ、今はどうでも良いですが、帰ったらバターケーキを作って下さいね」

 

「了解、僕も食べたいしね」

 

 

 

 

 

 

 そしてアリィをフレイヤ様がベッドに連れ込んだり、アレンさんがファミリアに勧誘したりとかしたらしいけれど僕には無関係だ。

 だって僕はステンノ・ファミリアだし。

 

 これからどうするか、それは彼女が選択すべき彼女の人生の問題だ。

 

 

 

 そして決戦当日、決戦地であるガズーブの荒原、其処にはシャルザードの兵総数二万程が集結し、その先のシンドの砂原をワルサの兵総数八万程が進む。

 

 

 

「な、何だっ!?」

 

「炎の……壁?」

 

 その周囲を突如高く分厚く熱い炎の壁が囲んだ。

 

 

 

 

 只でさえ暑い砂漠は炎の熱気で更に気温を上昇させ、ラシャプ・ファミリアという絶対の自信の元になっていたワルサの兵達に一気に混乱が走るけれど……。

 

「全ては自業自得って奴だ。只の戦争なら僕だってフレイヤ様の頼みだろうと聞かなかったけれど、君達は少しやり過ぎだ。父さんの方針とは違うけれど、身内の頼みなら仕方が無いって僕に納得させる程にね」

 

 炎の壁の外側で僕は呟く、戦争に参加するって言っても僕は兵士の相手はしない、一人残らず殲滅させる為の檻を保ち続けるのが仕事だから。

 

 

「さあ! ワルサの兵よ、前を見ろ。其処に君達の死神が立っているぞ! ……なんちゃって」

 

 何となく言いたくなった芝居掛かった台詞に少し恥ずかしくなりながら僕は炎の壁の向こうに視線を向ける。

 これ、お祖父ちゃんが語った武勇伝内での台詞をパクった物で、信用はしていないけれど尊敬はしているから真似をしてしまうんだ。

 

 中にはワルサの兵とラシャプを取り戻す為にか参加し、存在を確認するなり天に送還したから恩恵を失った眷属達……そしてLv.7二人とLv.8一人の過剰戦力が向かい合っている。

 

 炎の奥だから声は聞こえ辛いが何とか会話を聞き取れた。

 

 

 

「私は五万人を相手するので二人は一万五千ずつお願いしますね」

 

 先生の背後にはボフマンさんが必死に集めた数万本の矢、僕が此処まで収納してやって来た。

 

「師よ、流石に私達を侮り過ぎかと。……いえ、言葉ではなく結果で証明しましょう。行くぞ、アレン」

 

「偉そうに指示すんな、オッタル」

 

 さてと、ワルサの兵と+@は一体どれだけ持ちこたえるのやら……。

 

「そして僕は終わるまで展開を続けられるのか? 八万の兵を囲う炎の壁を放出し続けるのって本当に辛いんだけれど……」

 

 先生方ですが”やりなさい”って言った以上はやるしかないんだけれど……。

 

 

 

 

 

「私は行かなくて良かったのでしょうか……」

 

「あの三人で十分よ。それよりも私とお話をしましょう。貴女について色々と教えてちょうだい」

 

 アナは……フレイヤ様の相手を指名されたから置いて来た、だってフレイヤ様頼みは断れないからさ。

 

 

 

 

 

「ありがとう。君の助言が無ければフレイヤ様の助力を得られなかっただろう」

 

「いや、最終的に魂の輝きを示した君の手柄だ。僕は横からやいのやいの口出ししたに過ぎないさ」

 

 そして予想通りと言うべきか、シャルザードの兵が壁に集結する前に八万の兵は壊滅した。

 ラシャプ・ファミリアが持ち込んだらしいダンジョン産のモンスターも倒し、残ったのは戦後の処理、賠償金の交渉やら既に奴隷として売られた国民の捜索やら復興やら、ボフマンさん達が手伝うそうだけれど僕はアナを連れて一足先にオラリオに戻る事になった。

 

 フレイヤ・ファミリアの残った幹部が漸く合流したから皆で一緒に帰るってフレイヤ様が言い出したってのもあるし、僕もアナもステンノ様に早く会いたかったんだ。

 

 そんなこんなで帰る時、アリィが忙しいだろうに別れの挨拶をしに顔を見せた。

 尚、何となくだけれどフレイヤ様は彼女を眷属として連れ帰らない気がする、だってフレイヤ様が気に入ったのはアリィの王族としての輝きだからだ。

 

 ……僕じゃ目を凝らして漸く薄ボンヤリと見える程度だけれど、フレイヤ様が気に入るのが何となく分かる。

 

 

「それじゃあ僕はそろそろ戻るよ。何時までも愛しの女神様に留守番なんかさせられないだろうからね」

 

 軽く言葉を交わし、僕は手綱を握って戦車を空高く舞い上がらせる。

 こうして僕のちょっとした冒険は終わり、オラリオでの冒険の日々が再開しようとしていた。

 

 

 

 

 

「……このまま帰ったらアナの登録は二つ名の命名式の前日って所か。担当の人は大変そうだな」

 

 

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