オラリオに神の子が来るのは間違っているだろうか? R 作:ケツアゴ
「『トロイアス・トラゴーイディア』!」
神会から数日後、僕は戦車を飛ばして三十七階層
出しているだけで消耗するから目的地まで到達すると消し、周囲の壁や床から出て来たモンスターに向かい合う。
オブディシアンソルジャーは肉体を構成する黒曜石が魔法に耐性があるから直接炎では攻撃せず、肘から噴射しての肉弾戦で相手をして、リザードマン・エリートやバーバリアンは炎や強化した武器、モンスターが使っていた天然武器を振り回し、”耐久”を上げる為にある程度は正面から受ける。
回復魔法って本当に便利だと思いつつ、周囲のモンスターを一掃した僕は壁に手を付いた。
わざと攻撃を喰らっては回復して、魔力を放出しまくっていれば消耗が凄い、九割は此処に来る迄に戦車に乗って来たからだけれどもさ。
モンスターの核は魔石であり、ダンジョンから生まれるって事は魔石の元となる物がダンジョンの内部に存在するって事で、こうして手で触れれば魔力を吸い取れる。
上層や中層じゃ吸収しても時間が掛かるから、壁を挟んでよりも魔石そのものから吸収した方が効率が良いんだけれど、売る為の物だからそうは行かない。
「まあ、こんな物かな?」
周囲の魔力を吸収したからか暫くはモンスターが出現しない、少し離れた所に移動しようと思っていたら突然の地響き、おっと、これが母さんが言っていた階層を移動するモンスターか。
床を突き破って飛び出して来たのは巨大な蛇のモンスター、名前は忘れたけれど通称はラムトン……だったっけ?
「デッカい」
本来は深層のモンスターらしいけれど、普通に遭遇したら脅威だろうね。
……脅威と言えば此処に来るまで何度か危ない目に遭いそうだった冒険者を助けた。
ミノタウロスの群れに囲まれたエルフの女の子達を助け、十八階層まで送り届けたり、大怪我してモンスターに食べられそうなドワーフを回復させたり、まあ、直ぐに死なれそうだったからひとまず安全になるようにしたけれど、手間だったよな。
……一時的に助けたとして、放置して直ぐに死なれたら助けた手間すら無駄になるから世話を焼いたけれど、ちゃんと”その内恩を返してくれれば良い”と伝えた通りにして貰えたら良いけれど。
「よっと」
他にも何度か見知らぬ冒険者を助けた事を思い出しつつ僕はラムトンの突進を避けて胴体に飛び乗り、柄頭から炎を噴射させた剣を突き刺し、剣を通して内部に炎を送り込む。
口から炎を吐き出して悶え苦しむラムトンは暴れ出し、僕は振り落とされないように剣にしがみつき……剣が折れた。
「ヤッバ……」
振り落とされた瞬間に巨体が目前に迫り、壁に挟み込まれる。
僕を壁との間に挟み込んだ巨体が動く事でガリガリと削るように岩盤に押し付けられて防具に激しいヒビが入り始める。
げっ! これが壊れたら余計な出費が増えるってのに……。
「この、いい加減に……あれ? わっぷっ!?」
力任せに押し返そうとラムトンの胴体に手を当てた瞬間、最初の炎で魔石が壊れる寸前だったらしく最後の足掻きが止めになった巨体が灰の山に変わり、僕は顔面から突っ込む形になってしまった。
あっ、防具が完全に壊れた。
防具は破壊され、魔石もドロップアイテムも手に入れられないって運の悪い展開だよね。
最近偶々目の前で危なかったから助け、放置したら別の理由で直ぐに死ぬから傷を癒すなり安全な場所まで連れて行ってやった連中は運が良かったのだろう、わざわざ危ない状況の奴を探し回りはしないのだから。
「……帰るか」
深い溜め息を吐き、ふと壁を眺める。
さっき僕を挟み込んだ時に壊れた壁からアダマンタイトの大きな塊が幾つか零れ落ちていた。
これで防具の代金はどうにかなると安心する一方、ちょっと激しく魔力放出をしただけでは壊れない武器を購入するにはどれだけ掛かる事やら……。
二つ名がちょっと悩ましい物だし思い出すだけで落ち込みそうになるんだけれど、だからこそ一刻も早く帰ろう。
ステンノ様の笑顔を見る、それだけで疲れなんて全部吹っ飛ぶんだからさ。
「流石は愛するステンノ様、好きだー!」
あの方への愛を叫び、戦車を召還するなり飛び乗った。
帰ったらステンノ様は出掛ける前と同様に素敵な笑顔を向けてくれるのだろう。
明日も明後日も、あの愛する女神様が素敵なのは絶対に変わらない。
「……お帰りなさい」
「あ、あの、ステンノ…様?」
帰った僕を玄関で出迎えて下さったステンノ様は矢張り素敵だったけれど、どうも変だ。
素敵な笑顔なのに不機嫌そうな冷たさもあって、これはこれで美しい。
「その表情も素敵で益々心を奪われたよ」
「あら、そう。当たり前でしょう。ほら、ボサッとしていないで運びなさい」
何時もは外でしか僕に運ばせないのに今日はリビングに行くのに運べと言う。
つまり室内でもステンノ様をお姫様抱っこしても構わないって事で、喜んで抱き上げれば普段より抱き付く力が強く感じた。
……不機嫌な顔も素敵だけれど、どうせなら機嫌が良い方が嬉しい。
僕、何をしたかな?
「自分で考えて下さい」
僕がダンジョンに居る間はホームで警護や料理の暖め直しをするアナだけれど、お小遣いと経験値稼ぎの為に三日に一度は夜中にダンジョンに向かう(尚、夜行性と言ったら怒る)。
その前に不機嫌の理由の心当たりを聞いたんだけれど、知っているのに教えないって感じの呆れ顔だ。
よし、明日のハンバーグにチーズも入れないしパイナップルも乗せてやらない。
付け合わせは人参多めだ。
「ティオ、私は不機嫌になっているわ。ええ、ええ、貴方からすれば理不尽な理由でしょう。ですが私は女神なの。人の理なんて通じないわ」
何時ものようにステンノ様の髪と背中を洗い、何時もと同じく一緒のベッドで寝るけれど、今日は何時もより少し距離が近い。
何時もよりもドキドキする中、ステンノ様が少し拗ねているのが分かった。
「貴方、此処最近はダンジョンで同業者を助けているそうね。それは別に構わないわ。積極的に助けて回る必要は無くても、目の前で死にそうな者が居るのならば動いてしまうのが貴方だもの。でも、アナとお出掛けしている時にお礼を言われたのだけれど、中には恋をしているって瞳の子も居ましたよ?」
「僕が好きで、結婚したくて、愛した女性はステンノ様だけだけれど?」
「当然でしょう。私に恋をしたのなら、それが冷める筈がないもの。私が怒っているのは付け入る隙が存在すると思わせている事よ。誰もが一瞬で諦める、その位の愛を示しなさい。だから罰として命じます」
何時もの笑顔に戻ったステンノ様はそのまま僕に抱き着いて密着、抱きしめたいけれど許可が下りないのなら出来る筈がない。
所で罰って一体・・・・・・。
「今夜一晩は反省の証として私を抱きしめながら褒めたたえ愛を囁きなさい。女神としての命令です」
その言葉を聞いた途端、僕はステンノ様を抱きしめる。
花のように蝶のように、その華奢な身体を傷付けないようにしながら、それでも決して擦り抜けさせない力を込めてだ。
一晩中愛を囁く? 一日だって楽勝だ。
「じゃあ先ずは・・・・・・貴女の気まぐれも残酷さも含めて愛しています、ステンノ様」
「私が好きかしら?」
「好きです! 大好きです!」
「・・・・・・そう、私も好きよ」
やがてステンノ様が眠ってしまっても僕は愛を語り続け、朝が来ても止められるまで喋るのを止めなかった。
・・・・・・その数日後、十八階層に甘い物を集めに行った筈のアナが早々に帰って来たけれど妙に不機嫌だった。
「助けた相手がお礼も言わずに逃げ出しました。不愉快なのでやけ食いをします。パンケーキの山を作って下さい」
次回何があったのか ベル君の恋の相手は誰なのか
原作開始です
妹、誰にしようか
-
ラン子
-
ガレス
-
キャストリア
-
ナーサリー