オラリオに神の子が来るのは間違っているだろうか? R 作:ケツアゴ
僕達ステンノ・ファミリアの朝は早い、
「只今戻りました」
「ああ、朝ご飯もう直ぐ出来るから空いた鍋とか洗ってて」
僕は朝ご飯の支度があるし、アナはダンジョンに行く日は夕食後に軽く組み手で体を温めて、朝ご飯の少し前に帰って来る、勿論ダンジョン帰りだからって直ぐに休ませなんかはしないさ。
ステンノ様は……女神に水仕事とかさせられないから、父さんの場合は好きでやってるから除外して良いと思う。
でも、今日は何時もと違い、約束通りにフレイヤ様が料理を習いに来ていたんだ。
護衛としてアレンさんと一緒に来たけれど、シルの姿で来ているし、周囲にも縁があって僕に習う事にしたと店の人には言っているとか。
そんなフレイヤ様は今回目を付けているらしい冒険者(名前は知らないけれど、白髪で赤目の魂が綺麗な少年らしい)への差し入れのお弁当を作った後、今はステンノ様と優雅な朝のティータイム。
僕は僕でアレンさんに手伝って貰いながら僕達の朝ご飯を作っている途中だけれど、ちょっとした相談もあった。
「愛故に相手に優しくするのは間違って無いんだろうけれど、旅先では子が居てもおかしくない年齢の息子を甘やかす馬鹿貴族と会った事が有るんだ」
「……おう」
「フレイヤ様も作るからには美味しいと思って欲しいだろうし。ほら、自分が作った物を食べて貰えるなら相手の感想は興味が無い……って事は無いよね? いや、父さんは子持ちになってから変わったらしいからフレイヤ様がどうかは分からないけれど」
「練習するって事はそういう事だろ。ったく、だから働きに出るのは反対なんだ」
「……じゃあ、アレンさん、他の幹部の人達にお弁当の残りの差し入れをお願い。感想も付き合いが長い人達の方が良いと思うよ」
「其処は身内のテメェに任せる。……但し、言葉には気を付けろ」
その料理の腕は、まあ、こんな会話から察したのかアナは何も言わずにボウルや鍋を洗ってくれている。
……料理って理論立ててやれば大きな失敗はしないと思っていたけれど、全知零能の神であるフレイヤ様にとって机上の空論でしかなかったらしい。
美味しそうに作れたから食べて貰う、じゃなく、美味しく作れたから食べて貰う、僕としてはフレイヤ様には努力するなら報われて欲しい。
いや、目を付けられた彼には同情するけれど……。
尚、名前は聞かない事にしている。
オラリオに冒険者になりに来た以上、モンスターや敵対する冒険者や悪人の他に神に狙われるのも折り込み済みで有るべき、知らなかったってのは自己責任。
だけどまあ……名前を知ったら気になるだろうし、知らないままの方が良いだろうね。
まあ、そんな風に思いながらカレンダーを見ると明日は
「……」
僕と同じくカレンダーを見るアナだけれど、此奴はガネーシャ・ファミリアが行うショーには興味が無い。
僕達が旅先で保護し、森に逃がした異端児や売買に関わっている連中の話を聞きたいのかガネーシャ様は団員用の席を用意してくれたけれど……。
「アナ、明日は人混みに慣れる練習として街をぶらつこう。屋台巡りだ。ステンノ様と話し合って決めた事だから拒否権は無しで」
「……全部奢りで良いのなら」
ガネーシャ様は父さんとも友神だったらしいし、フレイヤ様からも変わってるが善神だと聞いている、ステンノ様はステンノ様で話したいらしいからショーを見学していて頂くとして……家族であるアナが他人に慣れるのも助けてやらないとね。
「……所でアレンさん、僕は怖い仮説を思いついた。僕とアル……妹は例外として、神ってのは本来親兄弟は存在しない。なのに父さんとフレイヤ様は双子だと互いに認識している。……二つで一つの存在であり、一部能力が完全に片方に持って行かれてるんじゃないのかな? ……因みに父さんは料理が得意な方」
「おい、馬鹿。恐ろしい事言うな。……比較的マシな奴じゃない残りは俺達が食うんだぞ」
「……ガンバっ!」
尚、僕は味見で少し食べはするけれど、ステンノ様の朝食を作るのは僕の役目だからと一口二口のみ、当然大量の残りはアレンさん達が食べる事になるんだけれど、敬愛する女神の手料理だから頑張って貰おうか。
そして翌日、僕は先にステンノ様を会場まで送り届けた。
まさか人混みの中を抱えて進むわけにも行かないから当然戦車で空をかっ飛んでだ。
「ご苦労様。じゃあ終わる頃に迎えに来なさい。ああ、その前に……」
手の動きで屈むように指示された僕はそれに従い、ステンノ様は僕の顔を両手で挟んで引き寄せると額に軽く唇を当てる。
唇じゃなかったけれど、それを残念とは思わない程の歓喜が僕を包み込んだ。
「……ふぅ。ティオ、貴方は私に対してもう少し貪欲になるべきね。敬意は結構、好意も愛も不足無く伝わっているわ。ええ、ええ、それは良いのです。ですが、私の愛を欲する勇士ならば……」
途中で言葉を区切るステンノ様、後は察しろって事だ。
「はい!」
当然、僕はそれに従う。
女神からの愛とは欲して懇願する物ではなく、授けられるべく己を磨いて待ちわびる物、それが僕の考えだが、ステンノ様の言い付けを破ってまで貫く物ではない。
全てに置いてステンノ様のご意志が優先、それは変えないけれど。
その場で跪き、ステンノ様が差し出した手の甲にそっとキスを行う。
思えば唇にはしたし、実はキスした翌日辺りから起床時と就寝時にはほっぺにキスを貰っている僕だけれど、ステンノ様の手の甲へのキスは未だだった!
ならばしたいよね、手の甲へのキスをさ!
「まあ、良いでしょう。じゃあ、アナをお願いね」
「当然。仲間は家族、家族は守るべき相手って母さんから叩き込まれているからね」
そんな返事をする僕に満足したらしいステンノ様はもう一度僕の顔を引き寄せ、今度は唇に軽くキスをした。
「ご褒美の先払いよ。じゃあ、本当にそろそろ行くわね」
ステンノ様の姿が曲がり角に消えるまで僕は見送る。
さて、アナを迎えに行こうか。
「は、はわわわわっ!? ご挨拶しようと思って見ていたら……」
「レフィーヤには刺激が強過ぎたみたいだねー」
「わ、私も団長と何時かあんな風に……」
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