オラリオに神の子が来るのは間違っているだろうか? R 作:ケツアゴ
あと、イシュタリンにするかどうかも
「……成る程、お祭りとは悪いものではありませんね。これなら他の町のお祭りにも顔を出した方が良かったかも知れません」
ステンノ様をショーの会場まで送り、人嫌いのアナに少しでも人慣れをして貰おうと連れ出したけれど、少しは効果があったみたいだね。
左手で大量の食べ物を抱え、今はクリームで口の周りを汚しながらクレープを食べているけれど、此奴は基本的に甘い物を食べに行くか本を買いに行く以外ではダンジョン位にしか出掛けない。
だから今回みたいに屋台巡りがメインであっても街中をブラブラ歩くのは悪い経験じゃ無いはずだ。
「おや、串焼きの肉ですか。ティオ、お願いします」
「はいはい。買ってくるけれど、ちゃんと今右手に持っている物を食べてからにしろよ」
例え全部僕持ちだろうと仕方が無い、ちょっと予想以上の出費に財布が痛いんだけれど、てか、普段は大食いキャラじゃないよな、アルの奴じゃ有るまいし。
僕が串焼き肉の屋台で買い物をしている間にクレープを食べ終わり、今度はイカ焼きを食べ始める姿に妹を連想する。
普段から夢で会っているから寂しいとかは全然無いし、偶に会わない方が良いと思う時も有るけれど家族ってそんな物だろうさ。
「やれやれ……本当にどうなってるんだ?」
元々が人間を越えたモンスターの能力に恩恵での底上げ、大量のエネルギーが必要になるのは分かるけれど、母さんと違って小柄なアナやアルの体に良くもまああれだけ入る……うん?
屋台の店主も通行人も、アナも熱に浮かされた風に固まり、僕の鼻には香油の匂いが届く。
アナは直ぐに我に返ったけれど、その視線の先を追えば理由が分かった、アマゾネスを引き連れた露出度の異様に高い女神、恐らくは美神だろうけれど、ステンノ様が可憐さ中心の庇護欲を誘う美しさでフレイヤ様が美と色気のやや美寄りなら、近付いて来るのは色気に偏った気の強そうなタイプ。
それが息が掛かる距離まで来ている。
「……お前が
「同じ”美しい物”でも人によって景色や芸術品とか好みが分かれるし、芸術品でも多岐に渡る。僕の心は既にステンノ様が支配し完全に魅了しているので、神イシュタル」
出会って早々に此方を睨み付ける女神に不愉快に思いながら当たり障りの無い言葉で返す。”ちょっと品の無い色気アピールは引く”とか思っても口には出さない、女神の誇りを貶すとか厄ネタでしかないからね。
「生意気な餓鬼だ。だが……ふぅん」
これで立ち去ってくれるのが一番だったけれど、そんな風には行きはしない。
不愉快そうにしながらもイシュタル様は僕の顔を無遠慮にジロジロと眺め始めた……これ、僕がアナを連れて立ち去れば良いのか!
「成る程ね。
「……うん?」
今、カチンと来た。
僕達兄妹を守る為に父さんの子供なのは秘密だと母さんから何度も言われているし、あの人はそれで受ける言葉を覚悟の上で子供を守ろうとしてくれている。
でもさ、両親を侮辱され、ステンノ様への愛を鞍替えできる程度の物だと侮辱されて、それで黙っているのは違うだろう。
「何だ? 文句でも……」
「黙れ、性格ブス。性根の醜さが表に出てるからフレイヤ様に勝てないんだろう」
「……は?」
言葉の意味が一瞬理解出来なかったのだろう、呆けた顔で固まり、眷属らしいアマゾネスも唖然とした様子だったのが、イシュタル様……いや、イシュタルの顔が憤怒に変わる。
「……ろせ、殺せぇええええええええっ! その仲間の小娘も一緒に殺してしまえぇええええええっ!」
「動くな、焼くぞ」
イシュタルに手を伸ばし顔面を掴み片手で持ち上げ、空いた手に炎を出しながらアマゾネス達を威圧する。
腕を掴まれ足をバタバタ動かしても逃がさない、このまま顔面焼いてやりたいけれど、向こうは殺せと指示したから今の状態になったけれど……どうしよう?
いや、戦いになるなら顔面焼いて包帯で覆ってやるけれど。
怒った勢いでやっちゃったけれど、これはどうやって収集しようか……ヤバッ。
アナも僕の考えが分かったのかアマゾネス達を警戒しながらも呆れ顔を僕に向けている、帰った後で何を言われるのか分からないな。
「……此処は私達が退こう。だからイシュタル様を放しな。……もう気を失ってる」
「あっ、そうだね」
考え事をしていたから気付かなかったけれど、イシュタルは顔面を掴まれる痛みでなのか気絶している。
うん、此処等が引き際か。
リーダーらしい姉御肌っぽいアマゾネスにイシュタルを投げれば慌てた様子で受け取り、そのまま去って行こうとした時だ、僕の中に妙案が浮かんだ。
「あっ、そうそう。僕ってフレイ様とは仲良くして貰っていて、あの方は”神の気配さえ消していたら子供を溺愛する父親にしか見えない”って言われていたんだ。家族仲も良いし、オラリオに居てもお祖父ちゃんとの連絡手段もある。報復とか敵対とか互いに面倒になるだけだよ」
子供の喧嘩に親が出るのも、喧嘩に親を巻き込むのも情けないけれど、喧嘩じゃ終わらなさそうだからね。
……アナから先生達に情報が行ったら何をされるか分からないけれど、これでアナに闇討ちとかされても困るし……。
「……了解だ。フレイ・ファミリアと事を構えるとか面倒が過ぎるからね。イシュタル様に伝えておくよ」
僕は敢えてイシュタルが気を失っている時に伝えたけれど、これで真偽が分からない以上は情報を多少与えても問題無い。
向こうもハッタリかどうかは半信半疑だろうと伝えるしか無いわけだ。
イシュタル達が去り、これで一安心とアナを見れば少し怒った顔だ。
「……本当に何をやっているんですか。精神修行のやり直しとかになれば私も巻き込まれるのですよ? ……串焼き肉も買いそびれましたし」
成る程、だから怒っているのか、後者が大半の理由で。
イシュタル達との争いに巻き込まれたくないのか屋台の店主も含めて逃げ出しているし、周辺には僕達二人……と物陰に隠れているアレンさんだ。
早く出て来てくれたら楽だったのに……。
「アレンさん、何か用? あっ、そうそう。フレイヤ様の頼みに関する物で渡す物があるんだ。どっちが居るのか分からないから渡して欲しいんだけれど」
「分かった。それより伝言だ。”ちょっと騒ぎを起こすけれど、街中にモンスターが出ても極力手を出さないで欲しい。特にシルバーバックには”だとよ」
「シルバーバックに?」
確か上層部の最後辺りに出現する猿のモンスター、それがオラリオ内に……ああ、そういう事か。
「本来なら”誰かに足止めされていたら手を出せないな”って口実で手合わせをお願いする所だけれど、食べ歩きの品が残っているから気が付かない事にして大人しくしているよ。……お目当ての彼が女神の試練を突破出来たら良いんだけれど……」
誰が何を何故起こすのか感づいた僕はショーの会場に目を向ける。
これで目論見は台無しだろうけれど、モンスターが恐怖と憎悪の対象であり、魔石製品が必需品で、人間なんて種族や国や立場の違いで憎み殺し合う生き物なのを考えれば個人レベルは別として、モンスターとの共存は元から無駄だって事で……。
見捨てる事に罪悪感を抱きつつ渡す予定の物を取り出そうとしたその時、僕達三人を囲うように巨大な花のモンスターが地面から現れた。
「これって港町で見たって奴? これも計画の手駒……じゃないよね?」
「ああ、此奴達は放してないつーか、ガネーシャ・ファミリアは捕まえてねぇ」
なら誰が街に放ったのだろう?
それに僕達の前に現れた理由は?
「……あっ。確か人間よりモンスター、モンスターより魔法に反応するんだっけ?」
僕、【ゲート・オブ・バビロン】に常に物を仕舞って発動し続けていて、アナはモンスターだ。
「取り敢えず……倒そう」
槍を二本出して片方をアナに渡せば魔法に反応したのか一斉に襲って来る花達、アナは接近して槍を突き出し、僕は喉の奥の魔石に向かって投擲し、アレンさんは素手で引き裂く。
「雑魚が。……にしても本当に誰の仕業だ?」
アレンさんが死骸から魔石を剥ぎ取った時、少し離れた場所にも一匹花のモンスターが現れた。
やれやれ、行くか、誰が襲われているのか分からないし……。
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