オラリオに神の子が来るのは間違っているだろうか? R 作:ケツアゴ
モンスターの集団脱走、怪物祭で起きた事件を収集すべくティオネ・ティオナ姉妹と共に街に向かったレフィーヤの前に現れた未知のモンスター。
二人が足止めをしている間に魔法を放とうとした時、先程まで二人の相手をしていたモンスターが彼女の方を振り向き、地面から飛び出した根によって無防備な脇腹に食らって吹き飛ばされる。
そのまま地面に激突した後は身動きが出来ないであろう程のダメージを受け意識が飛びそうになった時、不意に飛び出して来た人影がその体を受け止めた。
「アイ…ズ…さん……」
レフィーヤの頭に浮かんだのは憧憬の少女の姿、だが、その目に映ったのは全く違う人物、ティオだ。
「いや、違うよ、期待はずれで悪いね。【白き聖杯よ、謳え】」
薄れそうになる意識の中、レフィーヤの体を包み込む柔らかな光、意識が飛びそうになる程の激痛が消える中、未知のモンスターは閉じた蕾を開いて花の姿を露わにする。
ティオの放つ魔法の魔力に反応し大きな口を開き食らいつこうとするがティオは其方を見ようともせず片手を向けるだけ。
「逃げっ……」
逃げて下さい、とレフィーヤが叫ぼうとする途中で手の平から迸る炎の矢、指一本程度の小さなそれは食人花の口の中に一直線に吸い込まれて行き、内部で膨れ上がって赤く照らす。
上顎の奥の魔石すら焼き尽くし、二人に向かって襲い掛かろうとしていた巨体は灰になってその場で散った。
「痛みは? 毒を打ち込まれた感覚は?」
「は、はい。多分……」
「そうか。でも、一応調べて貰った方が良い」
遠くに現れた花型のモンスターに襲われていたエルフを地面に降ろし、回復は十分か確認すれば戸惑った様子ながらも頷く。
うん、だったら放置して大丈夫かと思ってその場から立ち去ろうとした時だ、風を纏ったアイズ・ヴァレンシュタインとすれ違ったけれど、その魔力は普通の人間とは違って……。
「……精霊?」
「え……?」
思わず出た呟きに彼女は驚いた様な声を出したけれど、僕は気にせずその場から立ち去って行く。
うん、神と人の間に僕と妹が生まれたんだし、精霊の血を与えられた人間は事例があるんだから魔力に精霊の力が混ざっていても有り得ない話ではないか。
「お待たせ! って、アレンさんは?」
「用は済んだからと帰りましたよ。じゃあ、買い食いの続きに行きましょう。たべそびれたので肉が良いです、肉が」
魔力放出でバーッと加速して元の場所に戻ればアレンさんの姿は既に見えず、渡す予定の物があるって言ったのに困ったけれど、どうせ明日の朝にも料理を習いに来るんだからその時にでも渡せば良いと考える。
所で結構な騒ぎだし、屋台とかやっているのかなあ?
「……残念です」
「まあ、今晩は奮発して……って、彼奴は」
向こうからやって来るのは酷く慌てた様子でじゃが丸くんの屋台の女神を抱いて走るウサギみたいな見た目の小柄な少年、昔立ち寄った村で仲良くなったベル・クラネルだ。
「ティオ!?」
「久し振りだな。っと、そんな場合じゃないか。ほら、僕の所のホームが近いから一緒に来い。回復魔法を使って休ませよう」
見る限りじゃ怪我や毒じゃなく疲労の類、だったら休ませるのが一番だろう。
実際は回復魔法の他にもベッドにお祖父ちゃんに習った無詠唱魔法を使っているから疲労回復にはもってこいだ、友達相手でも手の内はそんなに晒したくはないから秘密だけれど、上質なのを使っているから大丈夫、多分誤魔化せる
ちょうどうちのホームは直ぐ其処の曲がり角を進んだ先、勝手に部外者を入れるのはステンノ様に悪いとは思ったけれど、あの方も顔見知りだから謝って済む問題だろう。
「ご、ごめん。助かるよ」
ベルも一刻も早く休ませたいらしく僕に誘われるままにホームにまで入って来る。
……それにしても今回のフレイヤ様が起こした騒ぎの中で今の状態、名前は聞かなかったけれど情報からして狙いはベルだよなあ……。
女神に狙われるのも冒険者が背負う危険の一つとして関わらない予定だったけれど、僅かな付き合いだろうと友達は友達だ、フレイヤ様を止めはしないけれど、このまま見捨てるのはなあ……。
モヤモヤした物を感じながらベルが抱えた女神、ヘスティア様を一旦客用のベッドに寝かせ、僕はステンノ様への報告も兼ねて迎えに行った。
アナに残って貰う時に嫌そうな顔をしたけれど、困っているから受け入れた相手を邪険に扱う訳にも行かないのだろう。
それにしてもベルの奴、落ち着いたと思ったらアナを前にして随分と焦っていたな。
「バレ……てはないか。アルが居れば分かったんだけれど……」
いや、虚偽の場合は嫌な物を見せてしまうのか。
見えてしまう物は仕方ないとして、わざわざ嫌な物を見せるのは兄としてどうかしているしな。
「あら、本当に久し振りね。大きくは、あんまりなっていないけれど。それにしてもヘスティアの所にその子が居るなんて驚いたわ」
「むぅ。まさか君の所のお世話になるなんてさ。まあ、助かったよ」
僕がステンノ様を連れて帰った頃には既にヘスティア様は目を覚ましていて、何故かアナに敵対的、いや、嫉妬めいた物を向けていたんだけれど、今は主神同士での話し合い。
つまり眷属は眷属でだけれど、アナはヘスティア様の態度を理由に部屋に戻ってしまった。
どうやら例の恩知らずの恥知らずってベルで間違い無いみたいだけれど、アナにちゃんとお礼と謝罪の言葉を向けたけれど素っ気ない態度だ。
「……はぁ」
その結果、こうして落ち込んでいるベルが誕生してしまった。
「彼奴は基本的に誰にでもあんな感じだから。フレイ・ファミリアに居た時もステンノ様とスカサハ先生と母さん以外にはあんな感じだったし」
「そ、そうなの!? じゃあ嫌われた訳じゃ無いんだ。それにしてもティオってもうLv.4なんだね。僕と一歳しか違わないのに」
「そりゃあ経験が違うよ。伊達に幼い頃から厳しく鍛えられてはいないって。……所で君の所の主神が妙にアナに反応してたけれど、もしかして同性嫌いか? だとしたら厄介だぞ。神も変わるけれど、人間よりも変わるのが難しい。言葉じゃなく、」
「ええっ!? ヘスティア様に限ってそんな事は無いよ。……あっ、でもアドバイザーのエイナさんの話をしたら不機嫌になった事が……」
「まあ、初めての眷属に独占欲が出てるのか、女の子に現を抜かすなって思っているのかって可能性も有るけれどな」
……さて、こうして話をしながら魂を見れば昔のまま、フレイヤ様が気に入るだろうって感じのままだ。
なら、フレイヤ様の計画をちょっとだけ応援しつつ、アナに他人に慣れて貰うのに手を借りるか。
放置するのにちょっと罪悪感も覚えているし……。
「なあ、ベル。良ければ早朝の訓練に参加しないか?」
所でフレイヤ様といえば、渡す予定だった物を落としてしまったけれどどうしよう。
新月の晩に儀式を行って作るから来月まで作り直せ無いし、マジックアイテムだけれど見た目は只の紙だからなあ……。
「あれ? レフィーヤ、それ何?」
「え、えっと、ティオ・アヴァロン様が落とした物で、魔力が籠もっているみたいなのですが、お礼を言いに行くにも届けるにもホームの場所が分からなくて……」
何だかんだで妹は可愛い 生意気だと思っているしチビなのをからかうけれど
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