オラリオに神の子が来るのは間違っているだろうか? R 作:ケツアゴ
食人花に襲われた日の夜、ティオの落とし物を拾ったレフィーヤは不思議な夢を見ていた。
「此処は……夢の中?」
色とりどりの花が咲き乱れ、中央には塔が建つ花畑の中、花の香りや頬を撫でる風の感触、太陽の暖かさをハッキリと感じられる事に夢なのかどうか迷う中、不意に背後から声が聞こえて来た。
「おやおや、迷い込む子が居るだなんて驚いた。縁があったのか、それとも相性の問題なのか。ふむふむ、興味深いな」
「えっと、貴方は?」
夢の中だと思っている彼女ではあるが、突然現れた柔らかな笑みの胡散臭いエルフに見覚えがある気はしても思い出せない。
「私かい? そうだな、今は花のお兄さんとでも名乗っておこう。いやいや、どうも私の夢と君の夢が繋がってしまったらしくてね、あの子達の授業はお休みの日だから誰が来たのかと思いきや成る程成る程」
見た目だけでなく言葉も胡散臭い彼にレフィーヤが戸惑う間も相手は一方的に何かを納得したらしく、顎に手を当てて数度頷くと手に持った杖を振るう。
途端、レフィーヤの前に椅子と黒板が現れた。
「じゃあ、授業を始めようか。なぁに、気にしなくても良い。共に学ぶ仲間が居た方がアルトリアの成長の役にも立つだろうしね」
「え? ええっ!?」
「ささっ、座った座った。そうだね、並行詠唱は勿論だけれど、詠唱の際の魔力を練る速度の高速化を頑張るとしよう。後者の方はリヴェリアに教え忘れていた物だし、君から授業内容を教えてくれたまえよ」
こうして一方的に始まった胡散臭い彼の授業だが、翌日この夢の事を何気なく話した際、聞かされたリヴェリアは頭痛を堪える事になる。
「ほら、目を閉じない」
「がっ!」
ステンノ・ファミリアのホームの中庭に金属音に混じってベルが蹴り飛ばされる音が響き渡る。
蹴り飛ばしたのはアナ、”他人に教える事で基礎の学習になる”と渋る彼奴を丸め込み、大鎌の次に得意な短剣でベルの相手をさせていた。
小柄な見た目からは想像出来ない膂力で蹴り飛ばされたベルは意識を飛ばされるけれど、あの様子じゃ骨にヒビが入った程度だろう、なら大丈夫だな。
気を完全に失う直前、ベルの体内から溢れる白い光が傷を癒し意識を無理矢理つなぎ止める。
「おっと、じゃあ次のを唱える準備をしないとな」
僕の魔法”ソング・オブ・グレイル”には使用時に回復させるのに加えて一定以上のダメージに対して再び回復が発動するって効果が有るから特訓には手加減が殆ど要らない、肉体の欠損さえしていなければ大丈夫なのは僕自身の体で理解しているからな。
「ほら、正面だけ見ない。それと行動は次へと繋げる動作を意識して下さい」
冒険者として生きる事を選んだのなら、それで考えられる危険は想定すべき、友人であろうとそれは同じ、それでも普通以上の危険が待っている友人に何もしないのは不義理だろう。
「ったく、情けない奴だぜ。あんなのを鍛えて意味があんのかよ?」
「半分は僕の自己満足、もう半分はアナに社交性を身に付ける練習をして欲しいから。まあ、独学よりはマシで、少なくとも耐久は上昇するだろうし」
今はシルとして料理を習いに来ているフレイヤ様の護衛って言うのは隠し、主神同士が仲が良いからお弁当を作った後に軽く組み手をする、そんな建て前でやって来ている味見と残り物の処理役のアレンさんは僕と一緒にキッチンの窓から二人の様子を眺めている。
「にしても……ベルの動きからしてステイタスが二桁後半は一日で伸びているみたいだな。……僕みたいに成長促進系のスキルとか?」
「あら、それなら面白そうね。あの子、魂が日を追うごとに綺麗になっていっているもの」
「はい、塩はちゃんと匙を使う、目分量は未だ早い。卵も一個一個ボウルに割り入れて別のボウルに移して混ぜよう。じゃないと殻を取るのが面倒だから」
ベルの特訓が始まって数日、アナの教えも良かったのかベルは技術は微妙に、動きからしてステイタスは順調に伸びている。
フレイヤ様の料理は……一朝一夕では伸びそうにないし、失敗作の味はある意味で神業的、持ち帰り分はアレンさんと幹部で処理するらしいから材料の無駄は気にせず沢山作る事にしているよ。
その中から少々ながらもマシな物を選び、フレイヤ様がシルとしてベルに渡すお弁当箱に詰めて行く。
「さて、じゃあそろそろ」
「……おう」
僕が使うのは練習用の槍で魔力放出は庭への被害を考え使用禁止、アレンさんも同じく練習用の槍で魔法は禁止だ。
「おい、チビとウサギ、テメェ等もついでに掛かって来い。……死なねぇ程度に加減はしてやるよ」
最後の言葉は優しそうに聞こえるけれど、ベルが竦み上がる威圧をしながらだ。
これでも機嫌が良いのはベルに見えない角度でフレイヤ様に”あ~ん”をして貰えたから。
結果だけ言うとベルは耐久が大幅に上がった。
まあ、アナが立ち向かうのを見て怯えながらも前に出られただけ良いんじゃないかな?
「じゃあ、今日もお世話になりました!」
「私もお店に急がないと怒られる時間なので一緒に行きましょう」
来る時は別々に来たベルとフレイヤ様だけれど、僕の所に来るのは同じなのを幸いにとフレイヤ様はベルと一緒に街の方へと向かって行く、アレンさんもベルから見えなくなった辺りで屋根に飛び上がると護衛の為に後を追って去って行き、僕達三人が残された。
「さてと……」
ついでに言うならキッチンが凄い惨状のまま残されている。
「朝ご飯は一緒に作ったから良いとして、ダンジョンに行くのは片付けをしてからか。あっ、洗濯もしないと。アナ、手伝い頼んだ」
「分かりました、皿洗いは任せて下さい。……洗濯物を干すのは苦手なのでお願いしますね」
この際だから苦手を克服して貰おうと思ったんだけれど、それを言う前にアナは料理の配膳を初めてしまう。
やれやれ、次の機会は何時になるやら。
そして洗濯物を干している最中、この前助けた子を連れて緑の髪のエルフが訪ねて来た。
確かこの人が……
「突然すまない。うちの団員が助けて貰った礼を言いに来たのだが。ゴタゴタがあって遅くなって申し訳無い。私は……」
「リヴェリア……オバ様、かな?」
母方の親戚、確か大叔父さんの”オベロン”の身内だっけ?
誰か分かったし、相手は王族として生きていた人だから様付けしたけれど固まってしまった。
……何でだ?
ちょっとベル君に無茶をさせたいので強化をちょびっと 怪我を癒せるだけ容赦無い内容になった授業です
花のお兄さんが夢で会えた理由は次回
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