オラリオに神の子が来るのは間違っているだろうか? R   作:ケツアゴ

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企み

 偶には朝からダンジョンに行こう、そんな風に思い立った私は早速準備をして出る事にしました。

 こうして武器やら食料を用意しているとティオの魔法が羨ましくなる、特に私は沢山食べる方なので食料がかさばって困るけれど、だからといって持って行かないという選択肢は私には無い。

 

 

「それでは姉様、行って来ます」

 

「ええ、気を付けて行ってらっしゃい」

 

 姉様に出発を告げ、ホームを出て狭い道を走り抜け、何か見えない膜のような物を通り抜けた感覚を覚えながら大通りに出れば何人かエルフの姿を見掛けた。

 

 

「この辺に曲がり道がある筈なのに……」

 

「ティオ様は一体何処にいらっしゃるのだろう」

 

「……王族の血を引いてるのって大変ですね」

 

 フードを深く被ってエルフ達の横を通り抜けるけれど誰も私がティオと同じファミリアの一員だとは気が付かない、勿論この場所から丸見えなホームに続く道もだ。

 このエルフ達が注意散漫な訳ではない、私の被ったフードやホームへ続く道に掛かった認識阻害や人払いの魔法の効果によるもの。

 

「流石マーリン直伝、開発者の人格はアレですが……」

 

 世界最強の魔法使い、それが彼のもう一つの二つ名、確かに多くの魔法を恩恵による発現以外の手段で生み出した天才なのでしょうが……本当にアレな人なんですよね。

 

 幼い頃からマーリンの近くで居たスカサハ師匠から聞いた話では、実の弟と妹から”グランド糞野郎”の称号を与えられたとか。

 私が知っているのは娘が生まれて僅かにマシになり、孫が生まれて微妙にマシになった結構糞野郎で実の娘からも信頼はされていないマーリンでしかないのですが、本当にどの様な人だったのやら……。

 

「まあ、オベロンさんもモルガンさんの間も仲が悪いそうですし、話半分に聞いておきましょう」

 

 バベルに向かう途中、他の冒険者もちらほら現れますが、私が最近外からやって来たLv.3である事には気が付いていない様子。

 このフード無しに出掛けた時は勧誘やら質問やらで鬱陶しい人達が、今は見向きもしない事に安堵しつつ入り口前の広場で立ち止まって思案を始める。

 

 

「さて、どの階層の食糧庫に行くべきか……」

 

 モンスターの餌場である食糧庫には普通なら冒険者は近付かない、つまりベルさんを鍛えるのには最適の場所だという事。

 幾ら格上相手でも稽古だけでは実戦に不安が生まれる物。

 なら、死地同然の実戦に追いやって鍛えれば良い。

 

「さっさと解放されたいですし……」

 

 朝の稽古ですが、幾らフレイヤ様に目を付けられたのを知らん振りする代わりとはいえ、何時までもは続けない。

 ランクアップするまでと、私に稽古を頼んだティオは言っていました。

 

「ファミリアの仲間は家族、家族は助け合う物。……ですが、だからと言って何時までも他人の世話を焼く手伝いはごめんですよ、ティオ」

 

 何気なく空を見上げれば青く澄み切った青が続いている。

 私は空を時々眺めながらの読書が好きで、姉様とフレイ・ファミリアの人達は大切ですが……その他には大して興味が湧かない。

 お世話になった人達は兎も角、一切悪意を感じないベルさんであっても私は好意を一切抱いていなかった。

 

 引き受けたから責任を持って鍛える、それだけの関係なので早々に終わらせたい。

 さて、普段は上層で戦わないので何処にするか回ってみようかと思った時、不意に話し掛けて来たのは大荷物を背負った小人族(パルゥム)の少女だった。

 

 

 ……この匂いは知っている。

 

 

 彼女から僅かに漂う移り香、大元を嗅げば深く嗅ぐとクラクラしてしまいかねないその酒の匂いを私は覚えている。

 ダンジョンから連れ出され、傷を放置した状態で飢えに苦しんでいる状態で檻の向こうから漂っていた。

 

 

「……サポーターですか。ええ、お願いします。では、前金を支払いますが、相場は千ヴァリスで合っていますか?」

 

 彼女の名前はリリ、契約相手がいないフリーのサポーターらしく、新人らしき私に声を掛けたとか。

 

「あっ、はい。リリはそれで構いません。では、お願いしますね、冒険者様」

 

「ええ、お願いします、サポーターさん」

 

 目を見れば分かるのは”劣等感”と”嫌悪”、そして利用してやろうという目論見。

 ……成る程、夢破れたのか他に選択肢が無かったのか、私には無関係な事情が大体分かった。

 

 

 同情も馴れ合いも不要、彼女はどうやら下っ端の様子ですが、本命を誘い出す役には立って貰いましょうか。

 

 

 

 

 

「お、お強いですね……」

 

 ダンジョン十二階層、リリの足に合わせながらも途中のモンスターを適当に蹴散らしながら進んだ先でインファント・ドラゴンの首を一撃で切り落とした私にリリは称賛を送りますが、予定が崩れた、そんな考えが顔から伝わってくる。

 

 ああ、途中で装備を奪って逃げる予定だったのが予想外の強さに無理だと悟ったのでしょうが、予定が狂ったのは私も同じ。

 

 最低売却価格百万ヴァリスのジャック・バードのドロップアイテムを入手してしまった以上、換金後に分け前を渡さなければならない。

 百万あれば最高級の店で連日スイーツを堪能出来たのですが、姉様の眷属の名を背負っている以上は踏み倒しなど論外。

 

 

「はぁ……」

 

「ど、どうかしましたか、アナ様!?」

 

「いえ、此方の事なのでお気になさらずに」

 

 まあ、今のベルさんならギリギリ生き残れるであろう場所も分かりましたし良いでしょう。

 他は兎も角、私やアレンさんが叩きのめし続けた数日で、痛みに怯まない訓練と耐久の上昇は徹底的にしていますからね。

 骨が折れようと腹に穴が開こうと後遺症も四肢の欠損も無いのなら無傷同然、多少の痛みは対価だと私もティオも教わりましたので、教える際はそれで行きます。

 

 

 

「……暫く予定は空いていますか? 知り合いを鍛えるのですが、魔石やドロップアイテムを回収する手間も惜しんで鍛えるので、回収役が必要になります」

 

 あっ、フードのお陰で私が何処のアナなのか伝わっていませんが、ベルさんには口止めしておかないと、何かしていると知られるのは避けたいですし……。

 

 

 

 

「で、ですが……」

 

 おや、急に此処まで連れてこられたからか警戒していますね。

 ですが効率良く鍛えつつ手掛かりを得たいので逃がしません。

 

「手付け金の先払いと色を付けて今回の報酬の取り分を四割にしましょう」

 

「宜しくお願いします!」

 

 ……さて、こき使わせて貰いますよ、さっさと解放される為にも。

 でも、取り敢えず彼女が裏の仕事に関わっていないか帰りに尾行させて貰いましょうか。

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