オラリオに神の子が来るのは間違っているだろうか? R 作:ケツアゴ
風を全身に感じながら夜の路地裏を眺める。
「……臭い」
何と言うか路地裏って掃除が行き届いていないからゴミが散乱している上に酔っ払いが色々と……。
鼻息を必死に止めるけれど涙が出そうになる中、滲む視界でリリの姿を追う。
人目を忍ぶ姿が犯罪者との繋がりを感じさせますが……どうやら違うみたいですね。
「アーデ、今日の儲けはどうだぁ?」
成る程、弱い相手からお金を奪って楽をしようという部類の人間ですか。
本当に人間は度し難い程に醜悪な顔を見せて来る。
魔石の味を知って同族を襲う強化種こそいますが、言葉という高度なコミュニケーション能力を持っているにも関わらず一時的な快楽の為に……はあ。
「どうしましょうか……」
助けるメリットとデメリットを天秤に掛けていた時、彼女が蹴り飛ばされたのですが、サポーターは役立たずだから自分達冒険者に尽くせと……。
「あっ、駄目ですね。弱肉強食への解釈に差があって……侮辱されている気分です」
アレはいけない、アレは見過ごせない。
私を救い、私を育ててくれた人達の理念を侮辱された気がして耐え切れなかった私は建物の屋根から飛び降り、壁から壁へと跳躍を繰り返してリルルカから金を奪った冒険者達へと迫り、背後から三人纏めて蹴り飛ばした。
割とイラッとしたので最後の跳躍は両膝を曲げて勢いを付けて。
此方に気が付くよりも前に背中に蹴りを放てば三人纏めて吹っ飛んで壁に激突、私は宙返りで華麗に着地です。
「彼女は明日も私が雇う契約をしています。契約料のつもりで相場よりも多く渡していますし、怪我でもされれば……おや?」
警告を向けようとしても起き上がる様子が無く、よく見れば白目を剥いて仲良く気絶……えー。
あれだけ偉そうにしていたのだから少しは自信があるのかと思いきや、相手のレベルに合わせて手加減した蹴りで気絶してしまうとは。
「大口はせめてランクアップ目前まで言ってから叩いて欲しいものですね。まあ、私はLv.3なので一度ランクアップした所で格下ですが」
そもそも冒険者だと誇るのが許されるのはランクアップしてからでは?
いい歳ですが、アレンさんに訓練という名の嬲り殺しにされているベルさんの方が強いでしょう。
「ア、アナ様? どうして此処に……」
「正直に言うと何か企んでいる様子でしたし、フレイ・ファミリアに所属中も恨みを買った相手に手を出されましたからね」
どうせ此方には信頼など向けていない相手です、上辺を取り繕う必要も無いでしょうし、正直に答えながら男達が奪ったヴァリスを拾ってリリに投げると懐からハイポーションの瓶を取り出すと彼女の口に押し込んだ。
「ウチの馬鹿がイシュタル・ファミリアに喧嘩を売ってしまいましたし、有る程度の腕のサポーターでフリーの人だなんて簡単には見つからないでしょう。それならば何か魂胆がある貴女を雇った方が楽なので。……この薬の代金は支給品扱いで請求しませんので」
「……要するにリリを信用せずに雇い続けるという事ですね?」
「ええ、それ以外に何か?」
これだけ言うと私はその場から去って行く。
本当に信頼出来る相手でもないのなら関係は一切結ばないかこの程度で構わない。
人間は嫌いです、苦手です、怖いです。
リルルカから完全に離れ、豊穣の女主人の前を通り過ぎる時にいい匂いが鼻を擽り、空腹を覚えた私は小走りでホームに戻って行った。
ホームには姉様が居る、ティオも一応居る。
人間ばかりのこの場所でホームは唯一私が落ち着ける場所なのです……。
「つまりね。あの子が抑えきれずに私を襲うとするじゃない。そんな野性的な所も可愛いと思えそうだわ」
「でもティオなら落ち着いたら自己嫌悪で落ち込まないかしら? 想像しただけで可哀想」
「そうね、私の顔を真っ直ぐ見る事さえ出来ないでしょうけれど、ちゃんと慰めてあげれば良いわ。平気だって慰めて、お返しにって私が襲うの。ふふふ、楽しそう」
「「……」」
あっ、本日は酒場の方はお休みでしたか、フレイヤ様。
ホームに戻れば女神二人が麗しい笑みを浮かべながらティオを話題に盛り上がっていて、護衛のアレンさんが居心地悪そうにしているのに気が付いて視線で言葉を交わす。
大変ですね、と、互いにな。
胃が痛そうですがランクアップしても胃痛には強くなっていないのでしょうか?
「姉様、夕食はどうなさいますか? 必要なら買って来ますけれど」
「あら、お帰りなさい、アナ。そろそろフレイヤの所の子がお弁当を届けてくれるそうだから迎えに行ってあげて。それでフレイヤの所の子はそういうのは無理でしょう?」
「そうね。アレンなんかは私を鎖で繋ぎたいって言っていたらしいけれど、他の子は私に乱暴なんて出来ないわ。マンネリは面白くないし、今度注文してみようかしら?」
……アレンさんにそんな趣味が。
「では行って来ますが、何かあれば神威を解放してでも時間を稼いで下さい」
「おい、絶対誤解しているだろ!?」
「いえいえ、趣味嗜好に口出しなんてしませんので」
アレンさんと目を合わせずにホームから一旦出て路地裏を抜ければ、許可受けていないので入って来れなくて困り顔のエルフのお兄さんが立ち尽くしていました。
「確かフレイヤ・ファミリア幹部の……」
「ヘディンだ。……此方を持って来た。許可が無いとホームにはたどり着けないと聞いているが……」
「生憎ティオが許可関連を管理しているのですが今は不在でして。何やらクエストを受けたと手紙が届いていました」
「……そうか」
成る程、幹部がお弁当を持ってくるなんて不思議に思いましたが残念そうな顔になりましたし、王族であるティオの顔を見に来たのですね。
「あの、彼は王族扱いになれていませんし、余り畏まった扱いにはむず痒い物を感じるそうです」
「そうか。助言感謝する。アレンに女神に迷惑を掛けぬように伝えてくれ」
それだけ言うとヘディンさんはお弁当を渡して去って行きましたが、真面目そうなので苦労していそうですね。
所でガチ勢なので直接言いませんが、迷惑掛けているのは自由なフレイヤ様の方では?
いえ、拘束監禁趣味が本当なら迷惑を掛けるのでしょうが……。
バルタン星人も案が浮かんだよ
精霊 誰? 活動報告でも
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