オラリオに神の子が来るのは間違っているだろうか? R 作:ケツアゴ
神とは完全なる存在、精神が変わる事はあっても肉体は成長せず、垢といった老廃物も出やしない。
完全な存在・・・・・・父さんが?
エロ本を子供の目の届く場所に放置して母さんに叱られていたあの人が完全な存在・・・・・・。
実の子目線だから僕や妹からすれば疑問を呈したくなるんだけれど、その事は恐らく事実だ。
だから本来ならステンノ様はシャワーの時に石鹸を使う必要なんて存在しない、埃やらはお湯で流せば良いだけで、良い香りのする物を使うにしても理想の偶像であるあの方の体臭が悪い訳も無い。
香水なんて使うよりも素の状態の方が良い程なのさ。
なら、僕が何故あの方の洗体を任されているかというと、女神とは時に不要な事役割を人間に課す存在だからであり、同時に体に触れる口実を与える事によって本来は安々と触れて良い物ではない肌に触れる名誉を与えて下さっている。
「あの方に敬愛と恋慕を向ける物としてはその役割に誇りを持っていて、だからこそそれを全うしたいんだ。決して肉欲から来る焦躁では無いと覚えておいて、ジャンヌ」
「なるほど・・・・・・」
金色の長髪を後ろで括って青い瞳を持つ精霊、名前をジャンヌというらしい彼女は矢張り父さんが地上に遣わした精霊の内の一体であり、ダンジョン奥地でモンスターに取り込まれた精霊……正確には取り込まれた仲間を救おうとして逆に取り込まれてしまったらしい。
ジャンヌ、その名前は小さい頃に父さんから聞いた覚えがある。
妹として存在しているフレイヤ様があんな性格な様に、当時の父さんは僕が知る姿よりも更にちゃらんぽらんな感じだったらしいけれど、それとは正反対に真面目で堅物な性格で、他の精霊のリーダー格の一体だったとか。
……それと同時に問題児な所もあったと父さんは言っていたけれど。
「むむむ、確かに男女で一緒にお風呂に入るだなんて破廉恥だと思いましたが、女神としての在り方がそうならば違って来るのでしょう……か? ステンノ様については殆ど知りませんでしたし、ティオ様が洗体を最優先で心配するからと短絡的に反応していましたね」
僕の父親がフレイである事を説明し、更に重要な事であるステンノ様の洗体について語れば、少し悩みながらも納得した様子だ。
顎に手を当てて悩む姿からは生真面目さは感じるんだけれど、問題児だって事は信じられない。
精霊はエルフを超えた魔法種族、神の分身とすらされる神秘の使い手だ。
問題児にはとても思えないよ。
「じゃあ、他の神様とは付き合いは無かったの?」
「ええ、フレイヤ様にはお会いしていましたし……その、フレイ様は恋愛に奔放な方でしたし、何人かの女神様を遠くから見掛けはしたのですが、その程度ですね」
「確かにね……」
三十階層からの脱出、ひとまず十八階層のリヴィアの街を目指そうとモンスターを蹴散らしながら雑談するけれど、彼女から聞かされる昔の話は中々面白いし、話だって上手だ。
地上の事は当時の神って天界から眺めているだけだったし、当然父さん自身の事を話すなら客観的な視点が加わった方が良いし。
父さん、話には聞いていたけれど本当に天界では女性関係がだらしなかったんだな……。
多分彼女に恩恵擬きを与えたせいか暫く魔法は使えそうにないし、ジャンヌも今の肉体、僕の血で何とか取り戻した精霊の肉体がどうも久々で力が振るえないらしく、今は僕が貸した槍を使っていた。
魔法でパッと行けたら楽だったんだけどね。
「それでティオ様……」
「はい、待った。ジャンヌ、その呼び方はどうにかならない? どうも様付けはちょっとさ……」
さっきから気になっていたんだけれど、ジャンヌから敬意を向けられるのはむず痒い。
いや、血筋に敬意を向ける事には理解を示すけど、僕は父親が神だろうが母親が王族だろうが、旅から旅の暮らしの中じゃ様付けで暮らしていなんていなかったし、慣れないんだよな。
後ろ頭を掻きながら頼んでみればジャンヌは少し足を止めて考えて込む。
僕はその横顔を見詰めていたんだけれど、こうやってじっくりと見たら思ったよ、似てるって。
大叔母さんとか母さんの従姉妹のオルタさんとか、母さん側の親戚に何人か顔付きがちょっと似ているんだよな。
ジャンヌの方が柔らかい印象の表情だし、体型は母さんよりは慎ましい感じだけれどさっき思い浮かべた二人よりは一部の肉付きが多い。
……僕はステンノ様が慎ましいからそっちの方が好き……慎ましいのが好きだからステンノ様が好きなんじゃなく、ステンノ様が好きだからそっちの体型が好み、但しステンノ様以外の慎ましい体型の人には興味無いんだけれど。
間違い無くジャンヌは美人なんだろうし、なんなら精霊なせいか神秘的にさえ感じるんだろうけれど、僕は全く彼女には女性としての興味が持てない。
精々が猪みたいなお転婆娘の妹がまかり間違えばジャンヌみたいな感じになるのかなあ、程度。
いや、まあ、彼奴はお転婆娘って言葉が生温い奴だし、無理だとは思うんだけれど。
「分かりました。私と貴方の関係性や今後の事を考えても呼び方を変えた方が良いですね。では、ティオ君と呼ばせて貰います」
「関係性? いや、そうか……」
関係性とは何の事かと思ったけれど、今後の事かと納得出来た。
ジャンヌを地上にまで連れて行ったとして、その後はどうするのかっていうと、フレイ・ファミリアかフレイヤ・ファミリアに保護して貰うか、それかステンノ・ファミリアに入れるかどうか。
父さん達は黒龍を追跡しながら世界各地を旅しているから何処に居るのかは分からないし、フレイヤ様の所はちょーっと問題が有る。
今のジャンヌは特殊な精霊だし、野に放ったら神の玩具にされそうで……。
父さん直属の精霊だった以上は見捨てるという選択肢は無い、ステンノ様の説得は……頑張る。
だから多分その手の事を言っているんだろうなと先に進もうとしたんだけれど、ジャンヌは何故かその場から動かずにお腹を押さえて真剣な表情をこっちに向けて居て……。
「ティオ君、思わぬ問題が発生しています。この肉体、どうやら完全に元の私ではなくなっていました」
「それは一体……」
まさか完全にモンスターの部分を取り除けて……。
「お腹が減って動けそうにありません」
少し恥ずかしそうに目を背けるジャンヌから怪物のうなり声に匹敵する程に大きさの腹の音が響いていた。
「元の私なら食事は必要無かったのですが、まさか食事まで必要になるとは思いませんでした。あっ、お代わりをお願いします」
「別に良いけれど……一気に遠慮が無くなったなぁ」
不足の事態を視野に入れて持って来ていた食糧だけれど、そんなに多い訳じゃない。
なのにジャンヌは大食漢、既に七割位は食べているって食べ過ぎじゃ無いかな?
僕の為の物だって忘れていないか?
ナイフで切ったパンの間に挟むのはチーズに干し肉、もしくは干し魚。
それを黒犬で軽く炙って、渡した側から消えて行く。
あの細身にどれだけ入る……そもそも精霊の胃袋に限界なんて有るのかと不安さえ覚える。
「そうですね。確かに食べ過ぎました」
僕の言葉にジャンヌは流石に食べ過ぎたと反省したらしい。
まあ、久し振りの食事なんだ、夢中になっても仕方が無いだろうし、此処で止めてくれるのは助かる。
父さん、この人の何処が問題が有るって……。
「お姉ちゃんが弟の分まで食べては姉失格です」
……成る程、意味不明だ。
何故姉なのかは 次回
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