オラリオに神の子が来るのは間違っているだろうか? R 作:ケツアゴ
「……ちっ! こんなモンじゃ足りやしねぇ」
Lv.7になってからの弊害か並のモンスターじゃ目障り程度の邪魔にしかなりやしねぇ、軽く手を振るうだけで吹っ飛ぶ雑魚にイライラした俺は槍先に付着した血を振るって飛ばす。
彼奴の戦車で一気に向かえば短時間で手応えのあるモンスターが出現する階層まで行けるんだが、だからって毎度頼るのも何か癪だし……胃に来る。
いや、本当にあんな秘密を抱える所とか、うちの女神の自由奔放な所とか思い出すだけで胃がキリキリ痛むんだ。
「フレイヤ様の側を離れすぎるのも問題だしな……」
神と人の間に生まれた存在、赤の他人なら何とも思わないが愛しい女神様の甥っ子なら話は別だし、ケイローンには世話になったんだ。
秘密を知っているのが俺だけだから女神様の護衛を任せて貰えるのは光栄な事、その名誉ある役職を他の野郎共に奪われるのも気に入らない。
オッタルだ、オッタルの野郎を完膚無きまでに叩きのめして俺がファミリア最強の座を不動の物にする。
そうすればあの馬鹿の秘密が広まったとしても俺が側に居られるからな。
「……あっ?」
耳に届いたその馬鹿の声、彼奴も三十階層は手応え無いだろうに何でこんな所に居やがるんだ?
「あの兎野郎を鍛えるには強いし、休憩か?」
一から連れて行けって頼むんなら癪だが、どうせ居るんならついでに同行させれば良いだろう。
この時、俺はそう思って声の方に向かう……向かってしまった。
「おい、どうせ下に行くんなら……」
「あっ、アレンさん」
戦車に乗せろと言おうとした所で金髪の女に気が付く。
新人か? いや、此奴の事だからどうせ困ってる奴を助けている所……。
……何だ? 本能が告げている、今すぐ逃げろって……。
「……えっと、お姉ちゃん?」
「はい。お姉ちゃんです。あっ、私はお姉ちゃんって呼んで欲しいですが、ちゃんってのが恥ずかしいのなら姉さんでも構いませんよ。弟の希望は叶えます、姉なので」
一瞬意味が分からず、僕が知らない符牒みたいな物かと思って聞き返したんだけれど、そのままの意味だったのかぁ。
ニッコニコの表情で僕を見つめるジャンヌの目には迷いも曇りも存在しない、してくれていない。
「それはジャンヌが……」
「お姉ちゃん、ですよ?」
「……」
多分父さんの分身みたいな存在だから、自分は神フレイの子供で、神フレイの息子の僕は弟って理論なんだろうけれど……。
フレイ・ファミリアの団員も割とトンチキな人が多いから慣れているつもりだったけど、これは流石に……。
「おい、どうせ下に行くんなら……」
どう扱って良い物かと悩んでいた時だ、背後からアレンさんが姿を見せたのは。
「あっ、アレンさん」
よし! 僕一人じゃどうにもならなさそうだから巻き込もう。
寧ろ巻き込まないと僕が限界だ。
「アレンさん、自称姉が出た!」
「人違いです人違いです人違いです人違いです人違いです人違いです人違いです人違いです人違いです人違いです」
即座に踵を返して都市最速の名に相応しい速度で逃げ出した。
何か凄い勢いで敬語まで使っちゃって、余程巻き込まれたくなかったんだなあ。
「今の彼はお友達ですか?」
「僕の父親について知っている人で、フレイヤさまの眷属、つまり子供。つまりは……」
「実質的に私の従兄弟みたいなものですし、彼も私の弟ですね!」
「そーだね」
悪いな、アレンさん。勝手に巻き込ませて貰ったよ!
『俺の胃が確実に死んだ! この人でなし!!』
なんか幻聴が聞こえた気がしたけれど、実際に僕は半分人間じゃないし、ジャンヌは精霊だ。
狐に”この女狐!”って言っても罵倒にはならないのさ。
「ふぅ……。漸く十八階層にまでやって来ましたね。ティオ君もそうですが、どうも私の方も本調子じゃ無いというか……」
アレンさんの逃亡から少し経ち、漸く僕達姉弟は……はっ!?
訂正、僕とジャンヌは十八階層までたどり着いたんだけれど、其処までの道中は決して楽な物じゃなかったんだ。
ジャンヌによる”姉洗脳”により精神に負担が掛かったのもそうだけれど、普段は戦車でパパッと飛んで行っている弊害か地図は覚えていても道を間違いそうになるし、モンスターは楽に倒していても師匠連中に知られたらどんな目に遭う事やら。
肉体的には平気でも精神的には酷く疲れた、魔法も使用可能になるまで少し掛かりそうだから……。
「姉さ……ジャンヌ、野営してから地上に戻ろう。食料はもう(君が殆ど)食べちゃったから果物を集めないとね」
少しだけ責めてみるけれど効果は無い様子、この天然め!
遠目に見えるリヴィラの街まで行けばぼったくり価格だろうがベッドで休めるし、此処に来る迄に倒したモンスターの魔石は魔力を吸収したり砕いたりした物以外は回収しているから払えるんだろうけれど……。
「ジャンヌが居るから街までは行けないか……」
「確かにそうですね。私、冒険者として登録していませんし、何かあって精霊だと知られたら厄介ですから。じゃあ、お腹も空きましたし早速ご飯を集めましょうか」
「……そーだね」
張り切った様子のジャンヌは森の方に駆け出して行くんだけれど、パツンパツンのローブの下が素肌なせいで正直言ってはしたない。
アマゾネスなら文化的に何も思わないんだけれど、ジャンヌって一見するとヒューマンだからなぁ。
痴女かそういった商売の人かと間違われそうなのを連れて街中に行くのはちょっと……。
「魔法だけじゃなくって魔術まで使えないのがな……」
感覚的に少し休んだら使えそうな感じだし、オラリオ内では幻術を掛ければ全て解決だ。
「じゃあ、どちらが多く集められるか競争ですね。お姉ちゃんとして負けられません!」
「解決すべき課題が未だあった」
父さんは地上に来て母さんと結婚して、そんな色々な事で随分と変わったと話には聞いている。
ジャンヌから聞いた天界での父さんの話なんて全くの別神の話なんじゃないかって思う程だったけれど、姉を騙る不審者が父さんの分身なんて……。
「真面目だけど困った所が有るって……困った奴だけれど真面目な部分もある、の間違いじゃ……」
せめてモンスターに食われた仲間に取り込まれた影響とか、そんな風に願いながら僕も食料を探しに向かったんだけれど……。
「ティオ君、困りました。私、どれが食べられる物なのか全く分かりません!」
「……この考え無しで行動力が高いのは
だとすれば嫌だ、凄く嫌だ……。
この後? 結局僕が二人分の果物を探したよ。
「ティオ君、調子はどうですか?」
「未だ倉庫の扉を開けるのに手間取るし、戦車は無理みたいだ」
野営で体を休め、ジャンヌの服装を一見すれば普通の……彼女の希望で白いドレスや防具を組み合わせた風のに見せかけて十五階層を歩いていた。
黒犬達を先行させて面倒な雑魚を駆除して貰い、そろそろ階段が近くなって来た頃、先に進んで姿が見えない所まで向かった辺りから風が吹き抜ける。
「……この風は」
精霊の力を感じる風に吹き飛ばされた黒犬達が尻尾を巻いて僕の方に逃げ帰って来る中、何があったのかを察する。
ヘルハウンドに似ているからね、此奴達。
そして風の正体にも気が付いたんだけれど、ジャンヌの姿も消えていた。
「アリア! アリアじゃないですか! 精霊なのに人間の振りなんかしちゃってどうしたんですか?」
……あの猪、何やってるんだ。
ジャンヌは第一臨とでも
精霊 誰? 活動報告でも
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自称姉
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