オラリオに神の子が来るのは間違っているだろうか? R 作:ケツアゴ
脳みそまで筋肉になっていそうな猪精霊ジャンヌが僕達のホームにやって来てから数日経った頃、彼女からこんな発言があった。
「少し耳にしたのですが、ソーマという美味しいお酒があるそうですね」
「ああ、たまにソーマ・ファミリアから流れて来る凄く高い奴だね。それで、それがどうかしたの?」
今日の夕御飯は塩コショウとニンニクで濃いめの味付けにした鶏肉のソテー。
皮をパリパリにしてキャベツと一緒にパンに挟んだら美味しそうだよね、噛んだら肉汁が染み出して来そうだし。
だからお酒に合うんだろうね、僕は飲めないんだから関係無いけれど。
「お姉ちゃん、ちょっと飲んでみたいな~って」
あっ、猪精霊に自称姉を追加で。
上目遣いで指先をモジモジさせながら僕を見て来るけれど、決定的な一言は先に高価って伝えているから大丈夫でしょ。
ファミリアの帳簿は僕の担当だからね、収入と支出がどの程度か把握していないのだからこれで良い。
高いお酒? うちにそんな余裕はあるけれど買いません。
「良いですね。お肉なら赤ワインでしょうが、他のお酒でも飲んでみたいので買って来て下さい、ティオ」
おい、普段は何か欲しいとか言わない癖に、こんな時に限って主張しちゃって。
そういう事をするんなら、普段から何にも興味有りませんって態度を取っていないでもう少しだけでも自己主張すれば良いのにさ。
チラッとステンノ様の方を見れば、美しい笑みを浮かべながら頷いていらっしゃる。
うん、これなら買わないって選択肢は無いな。
「常備薬やら他にも買っておきたい物もあるし、ついでに買って来るよ」
「今日は妙に太っ腹ですね。姉様のクッション役がそんなに嬉しかったのですか?」
「……」
正直に言えば最高だったけれど、名目は罰だからね。
じゃないと”あら、罰になっていないのなら今後は無しね”とか言いかねない。
いや、実質ご褒美だったんだし、ご褒美としてお願いしても良いのか?
でも、女神がお仕置きだと言ったのなら……。
「そうそう。買い物に行くのなら私も一緒に行きますよ。お姉ちゃんと買い物に行きましょう。街がどうなっているのかも見てみたいですしね」
「僕には可愛い年下の従姉妹達と可愛かった妹は居るけれど姉は居ないから」
そうだよ、この猪精霊に現代の常識を最低限学ばせたけれどオラリオの安内はしていなかったっけ。
クエストの報告も兼ねて連れて行くのは構わないけれど、不安だ。
「いえいえ、恥ずかしがらずにお姉ちゃんと呼んで良いんですよ」
「駄目だ、話が通じない」
今晩はお祖父ちゃんの授業の日だし、父さんにジャンヌについて相談したいから伝言を頼もうか。
もう迎えに来て貰おうかとさえ思ったけれど、一応僕が眷属にした訳だ、神が人間を眷属にした場合に向ける感情は理解出来ないけれど、父さんの姿を見ていれば責任は重いのは分かる。
普段はチャランポランな父さんが師匠とか先生とか師範とかお祖父ちゃんとか、もう小太郎さんと母さんとケイローン塾生の人達以外はアレ(言及は避けた表現)な人達の主神をやり遂げていたんだ。
今になって父さんを尊敬する点が増えて、その息子である僕も役割を投げ出す訳には行かないと思う。
例え自称姉の不審者で猪精霊で色々厄介事の種であっても!
「駄目だ、ちょっと挫けそう」
一瞬だけ元の主人である父さんに迎えに来て貰おうと思ったけれど、幼い妹であるキャストリアの顔が浮かんだ。
お転婆で芋臭くて生意気で短気で単純で猪で可愛げを数年前に失くしたけれど、そんな妹でも悪影響が有りそうだと思うと預けるのは駄目という結論になる。
「じゃあ行こうか」
まあ、取り敢えずフレイヤ様に相談しよう、そうしよう。
例え眷属にした当日の夜にホームにやって来て大笑いしていたとしても!
そう、あれはジャンヌを連れてホームに戻った僕がお仕置きとしてクッションとしてステンノ様の敷物になっていた時の事だった。
「ふふ、ふふふふ、あははははは! やっぱり兄さんの息子、いえ、この場合は神の子を宿したガウェインの息子といった所かしら? ふふふ、それにしても久し振りね、ジャンヌ」
夜中に急に来たから最初に悩んだのはフレイヤ様にどう説明するべきかだけれど、思えば兄に仕える精霊だったんだから顔見知りだったのは当然だろう。
そんな彼女に恩恵を与えたのが僕だという事を聞いて一瞬目を丸くしたけれど今は笑いながらジャンヌをベタベタと触っている。
「あっ、そうか。神の中には知り合いも居るんだ。他人の空似で押し通すのは……」
神と人では時間感覚が違うし、バベル建設前にダンジョンに取り込まれたのが遥か昔であっても神にとってはそこまで前の話じゃない。
天界に降りる前は女性関係がだらしなかったと聞いている父さんの事だし、今後の色々と有りそうな面倒の種に悩む僕の頭にフレイヤ様の手が置かれた。
「安心しなさい。兄さん、女神しか領地に呼ばなかったし、精霊達も女の子は連れ込んだ女神には会わせなかったもの」
「安心したけれど少し聞きたくなかった父親の所業が……」
「それに何かあったらウラノスに話を付けてから私が何とかしてあげる。親戚なんだもの、もう少し頼りなさい」
まあ、こんな感じでジャンヌの顔見せは済んだんだけれど、アレンさんもフレイヤ様の恩恵を受けている関係で弟扱いされていたよ。
「……愚かな妹は居るが姉は居ねえ」
普段は妹なんて居ないって言ってるのに、本当に嫌だったんだね。
l
尚、”姉ビーム”なるものを使おうとしたので意味不明だけれど止めておいたよ。
何だか危険な響きがしたからね。
「何だか目立っていませんか? どうも視線を感じますが」
そんな訳でジャンヌとの買い物に出掛けたんだけれど、擦れ違った人が振り返り、時に正面から来た人が固まり、一部の神が仲間を連れてこっちに走って来る。
そんな光景に少し戸惑い気味のジャンヌだけれど、町並みが見ていて楽しいのか何度も立ち止まって眺めていた。
服こそ僕が幻術で地味目な物にしているけれど、眼鏡にポニーテールってスタイルが随分と評価されていたんだよ。
「まあ、だろうね」
自称姉が暴走するので言わないけれど周囲の反応には理解は示すよ、美人だからね。
精霊って種族だからか人間よりも神に近い美貌にスタイルの良さ、僕はステンノ様一筋だから見惚れはしないけれど、他はそうは行かないだろうさ。
「その眼鏡は人前で外さない様にね。認識阻害が……うぇ」
思わず変な声が出る。母さんに聞かれたら注意は受けるマナーの悪さだけれど、前から手を振りながらやって来る相手が相手なんだ、仕方がないと思う。
「おーい。ティオ君じゃないか。久し振りだなー!」
お祖父ちゃんと同レベルで胡散臭い神、ヘルメス様が笑顔を浮かべて駆け寄って来た。
精霊 誰? 活動報告でも
-
自称姉
-
手が綺麗な騎士
-
その他 メッセージ下さい