オラリオに神の子が来るのは間違っているだろうか? R 作:ケツアゴ
ティオの前にヘルメスが現れた日の事、遠く離れた地にもう一人の半神である少女の姿があった。
名をアルトリア•アヴァロン、ティオの幼い妹である。
元々美形が多いエルフの王族の血統、それに神の血が加わった事に依り、今はあどけなさが勝つものの、将来は絶世の美女に育つであろう片鱗を見せている。
尚、兄からの評価は 可愛げが無くなった 芋臭い お転婆 と散々なのだが……。
「お母さん! ミートパイお代わり!」
「今焼いていますから待っていなさい。……幻覚で隠したサラダを食べながらですわよ」
「うっ!」
黒龍を追っての旅先で立ち寄った街にある拠点の一つ、久しぶりにゆっくり休める屋根の下でお母さんの料理を沢山食べているんだけれど、お祖父ちゃんに教わった魔術が見破られるなんて。
お母さんは背中を向けたけれど野菜だけ消しても絶対にバレるよね?
二つ名に犬って入ってるから嗅覚が鋭いのかも。
「何で分かったの?」
「サラダの皿まで消えていますし、そもそも少し目を離した間に食べ終わる程度に苦手でないのなら隠さないでしょう。ほら、ハムを追加してあげますからちゃんと食べなさい」
サラダを食べなかったらデザート無しかも知れないし、差し出されたハムは黒胡椒たっぷりの私が好きな奴!
こうなったら食べるしか無いよね!
好きなトマト以外は全く手を付けていないサラダを出せば分厚く切ったハムが上に乗せられるし、これで野菜を巻けば良いかな?
「そうだぞ、アルちゃん。好き嫌いしていると大きくなれないからな。……所でミニトマト食べてくれない? 後でお菓子を買って……」
「聞こえていますわよ、フレイ様」
お父さんはコソコソ話しながら嫌いなトマトを差し出したけどお母さんの厳しい声が響く。
お父さんは主神でお祖父ちゃんは団長なのにお母さんが一番力を持ってるんだよね、腕力もだけれど発言権みたいな方も。
「私、大人になったらお母さんみたいになる!」
特に胸! 足は逞しいから嫌だなあ。
お母さんは大好きだけれど、あの足は似たくないもんね。
まあ、私って大叔母さんに顔が似ているらしいけどさ。
なれるかなあ、お母さんみたいな胸の持ち主に。
あと身長! もっと身長が欲しい!
「あらあら、嬉しい事を言ってくれますわね。じゃあ、言葉遣いや礼儀作法のお勉強も頑張りませんとね」
「んげっ!」
そっちじゃない! そっちじゃないよ!?
「ちょっと今のアルには難しいかしら……」
えっと、お姫様っぽい方向じゃなくて。
ほら、お母さんはエルフの王族として育ったけれど、私はファミリアの一員だし、お祖父ちゃんやお母さん、お兄ちゃんだって王族としての立場は捨てているって言ってるんだから……。
「アルちゃんはのびのび育てば良いさ。ちょっとお転婆さんは直さないとだけどね」
多分目が泳いでたんだろうな、お父さんに考えている事を見抜かれたし、お母さんも肩を竦めている。
「え〜。私、お転婆じゃないって。お兄……兄さんみたいな事を言わないでよ」
お兄ちゃんったら私にお転婆だお転婆だって言うんだもの、元気一杯なだけなのにね。
お父さん達もそれを真似て渡すをお転婆扱いするし、しないのはお祖父ちゃん位だよ。
「やあ! 揃っているみたいだね。親子団欒で結構結構。じゃあ、私も加えて家族団欒と行こうじゃないか。ガウェイン、私にもミートパイを頼むよ」
「帰るなら帰るで先に連絡をなさって下さい、お父様。アルトリアの分を焼いている所ですし、少し待っていて下さい」
「おや、これはうっかりだ」
そのお祖父ちゃんは三日前から出掛けていたんだけれど、今帰って来た。
残念だけれどお土産は無しかぁ。
「お祖父ちゃん、私のを半分あげようか?」
「いや、良いさ。先に食べなさい。私は適当に摘みながら待つとするよ」
「昼間からお酒は駄目ですわよ」
「これは厳しい。我が娘ながら真面目だねぇ」
世界を巡る旅ばかりの生活は大変だけれど、各地の名物とかを見て回れるのは楽しいんだよね、
だからお祖父ちゃんが珍しい物でも持って帰ると思ったんだけれど。
「どうもオラリオから少し離れた地、女神アルテミスのファミリアが活動している周辺の遺跡で異変が起きそうでね。一応結界は張っておいたけれど、誰か送って何か起きるまで在中させた方が良さそうだよ」
あーあ、私もお父さんに恩恵を貰ってオラリオの行ってみたいなあ!
世界の中心だし、美味しい物だって沢山有るだろから。
それに……。
「お兄ちゃんとちゃんと会いたいなぁ」
「あら、やはり寂しいのですわね。なら、もう少し素直になれば良いのに」
「だって何時もステンノ様の相手ばっかりであんまり遊んでくれなくなったんだもん」
思わず頬を膨らませて答えるけれど、本当にお兄ちゃんは私の相手をあまりしてくれなくなったんだよね。
もっと前は修行の合間に私と遊んでくれたし、率先して世話を焼いてくれたのに、私が少し大きくなってお祖父ちゃんから魔術を習い始めた頃からステンノ様との時間を優先させるんだもん。
だから絶対に兄さんとしか呼んであげないし、甘えるのもちょっとにしてやるんだもんね!
もうこの話はおしまいにするんだって顔を背けたらお父さんが指先で膨らんだ頬を突っついて来た。
抵抗するんだけれど変な顔までするんだから思わず笑っちゃって、そうしたら抱っこされて膝の上に乗せられたんだ。
「アルちゃんはもう少しお兄ちゃんに我が儘になったら良いと思うぞ、お父さんは。今夜はマーリンの授業を夢の中で受ける日だし、もっと遊んで欲しいとお願いし続けたら良いよ」
「そうですわよ。あの子、少し鈍い所がありますものちゃんと寂しいなら寂しいと伝えなさい」
……本当にそれで遊んでくれるのかなぁ?
「おやおや、心配と不安って顔だね。よぉし! 此処は私が秘策を授けようじゃないか!」
私のお祖父ちゃん、マーリン・アヴァロン(なお、アヴァロンってのは森からお父さん達と出て行く時に王家の血を棄てる意味でつけたらしい)は凄く凄い人。
お兄ちゃんより魔法の適正が高いらしい私だから良く分かるんだけれど、恩恵に頼らない魔法っていう魔法種族であるエルフだからこその研究を続けて、詠唱すら要らない物まである”魔術”っていう別の呼び方がされるまでにしたんだもの。
私より魔法の才能は下のお兄ちゃんはお祖父ちゃんを好きだけれど胡散臭い尊敬の対象にしてるけれど、私はお兄ちゃんよりも魔法詠唱者向けの才能があるからもっと尊敬しているんだ。
「お祖父ちゃんの案かぁ」
でも、胡散臭いのは同意!
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