オラリオに神の子が来るのは間違っているだろうか? R 作:ケツアゴ
英雄、それは暗い未来が待ち受ける世界を救う者、追い詰められた民衆の希望。
俺が見定め中の英雄候補の名はベル・クラネル、ゼウスに育てられた少年。
今は貧弱で臆病な少年で平凡な新人冒険者だけれど、それがどう成長するのか見逃さず、時には試練を与えて行こうかな、神として。
「やあ。これから一緒にお茶でもどうだい? 俺が奢ろうじゃないか」
そのベル君だが、最近はフレイヤ・ファミリアのアレンと少し関わりが出来たと耳にしたと聞いた時は焦ったぜ。
少し接触して話を聞いた所、少しだけ朝の時間に稽古を付けて貰っているという話だったけれど、回復魔法を何度も使うの前提の稽古って聞いた時はドン引きだったな。
……それに関わっているのが元フレイ・ファミリアの彼だと聞いた時には納得しか無かったけれど。
ティオ・アヴァロン、ハイエルフの血統なだけじゃなく、スカサハやケイローンやマーリンといった者達から指導を受けた少年。
俺の中ではベル君と同様に英雄候補ではあるんだけれど、噂で聞くだけでも異常な環境で育った事による感覚のずれや才能や環境から来る出来る者の理論が少し気になる所だね。
あと、フレイヤ様が随分と気に入っているみたいだし、ベル君以上に関わりには気を付けないとな。
「いえ、ソーマを買いに行く途中ですので」
一応神には言葉遣いを変えてはいるんだけど、こりゃ俺への敬意が全く無いな。
フレイの奴、奥さんの息子だからって過保護じゃね?
そう、奥さんの息子だ、神であるフレイに子供が居る筈が無いから当然だけどさ。
「ソーマは安定して出回る訳じゃないし、闇雲に探しても時間を無駄にするだけだ。俺ならソーマがよく入荷する店を知っているし、案内してあげよう。じゃあ、出発だ」
それでも英雄の誕生の為だ、慎重に動きつつも俺の目で直接見定める。
少し強引に同行を申し出ながら一瞬視線を向けた先には誰の姿も見えないが、彼処には俺のファミリアの団長が自作のアイテムで姿を消して潜んでいる。
装備すれば姿を消せる破格の性能で、数々のアイテムを自作した彼女の切り札ともいえる物。
さてと、遠くからの観察は頼んだぜ、アスフィ。
「じゃあ、先に不審者を片付けておきますね。揉めたばかりのイシュタル・ファミリアの刺客の可能性も捨てきれないので」
神である俺にはその言葉が嘘ではないと分かったんだが、経験が建前や今からの行動に正統性を持たせる為の物だと告げる。
だが、それがどんな行動に繋がるのか思い浮かべるよりも前に空中に波紋が出現した
え? いや、あの波紋で囲んでいるのってアスフィが待機している場所じゃなかったっけ?
人一人が辛うじて収まる空間を囲むようにして展開された波紋から槍や剣の切っ先が姿を覗かせていて、あれじゃあ回避も無理だし強引に突破しようとしても後ろからブスッと刺されて終わりだ。
「え? もしかして見えてる? そんなスキルとか……」
「ステイタスの検索はご法度ですよ、ヘルメス様。そしてやはり気が付いてましたか。透明になった誰かが居るのが分かったのは経験による物ですね。師匠も師範も先生も攻撃する一瞬だけ気配を出すから森の中で一週間凌げって課題を平気で出すので。五歳児に平気で出すので」
「へ、へぇ……」
猛者も勇者もフレイの所の団員から受けた修行がトラウマだって聞いたけれど、頭おかしいだろ、フレイ・ファミリア!
神だってそんな試練を五歳児に与えたりしないぜ!?
「十秒待つよ、姿を見せて降伏をしてくれ。見せない場合……手足貫いて生涯何も作れない体にしてやるから」
「げげっ!? テ、ティオ君!? 待った! 待ってくれ! 俺の眷属だから!」
ヤバイヤバイっ! 本気で言っているぞ!
表情は普通なのに発言は物騒だ、これだからフレイ・ファミリアの関係者はっ!
俺が慌てて手を伸ばせばアスフィを囲んだ波紋が消えて、数秒遅れてアスフィが姿を見せたんだけれど冷や汗を流しながら俺の方を見ている。
「だから私は反対したんですよ、ヘルメス様」
うわぁ、完全に怒ってるよ。
「それで態々眷属に姿を消して見張らせながら接触して来た理由を説明して貰えますか?」
「返答によっては……」
こっちも少し怒っているし、ジャンヌちゃんだっけ? その旗って何処から出したのかなぁ。
「え、えっと、どうなるのかな?」
「イルカを撃ちます」
「意味が分からない!?」
イルカを撃つって何なのさ!?
「……成る程。ベルの様子がキなったと。確かヘルメス様ってゼウス様の部下でしたっけ?」
「そ、そうなんだよ。それに君にはバレているみたいだし正直に言うけれど、俺は彼が次世代の英雄候補の一人だと思っていてね」
「英雄ねぇ。まあ、フレイヤ様にちょっかいを出されているのを見過ごしている時点で僕に何も言う権利は無いと思うから言及はそこまでしませんけどね。身内の恋愛事情とか口を出したくないし」
「身内ね。それなら安心だな」
フレイの所の子がそんな認識だったなら最悪な事にはならないのか?
いや、それでも目を付けている女神が女神だしな。
「所で身内といえば君の父親ってどんな奴なんだい?」
「夫である神フレイや出身地であり神フレイが地上に降り立った頃から過ごしていたエルフの森の皆様から何一つ文句の出ない相手とだけ」
これ以上は家庭に関する事だからとティオ君は告げるし、本当の事なのは間違い無いんだけれど、気になるなあ。
不義の子とかだったら英雄にするには問題がある訳だったけれど、
これ以上の詮索は危険だと判断した俺は当初の約束通りにソーマが卸される事の多い店を幾つか案内する事にした……んだが。
「おーう。散々探したでぇ。自分、ちょっと話聞かせてくれるか?」
「そうですか。断れなさそうな状況ですし、ティオ君はソーマを買って先に帰っていて下さいね」
「いや、君だけ連れて行かせられないでしょう。そもそもが君の軽率な行動が原因って理解してるのかい?」
ソーマを探して幾つかの店を周り、漸く見付けて案内役の面目躍如と思った時、思わぬ闖入者。
現オラリオ最強の魔法詠唱者である九魔姫リヴェリアを連れたロキ、それが随分と不機嫌そうな様子で現れたんだ。
どうもロキの目的はジャンヌちゃんみたいだし、巻き込まれる前にトンズラを……。
「あらあら、こんな所で出会うなんて奇遇ね、ロキ」
悲報•更に現れたフレイヤ様は笑みを浮かべているけれど、俺の方を向いた時は目が笑っていなかった。
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