オラリオに神の子が来るのは間違っているだろうか? R 作:ケツアゴ
「話し合いに参加する以上、向こうが何を警戒しているのかは知っておきたい所だよね。ジャンヌ、剣姫は精霊の血を分け与えられた人間かい?」
剣姫と精霊であるアリアとの関係、クロッゾの様に血を分け与えられたのかとも思ったけれど同じ精霊であるジャンヌは静かに首を左右に動かした。
今の彼女は外出用と違って出会った時の姿、雰囲気だって自称姉のとち狂った物とは別物だ。
「いえ、あの気配も容姿もアリアに酷似していました。それに遠くから感じたあの風、血からを少し分け与えられた程度ではあの風は使えないでしょう」
ロキ・ファミリアとの極秘の会談を行うのならば事前にステンノ様に報告するのが筋だと思い、一旦お茶をしながら
その上で今回の会談に至った二人の関係性について考えてはみるものの答えは出ない。
まさかアリアが人間の振りをしている? リヴェリアさんなら僕同様に魔術で偽装可能だから有り得るだろう。
いや、それだと不可解な要素が……。
そもそも精霊を人間だと偽装して団員にする理由も分からない。
あれだけ有名なんだ、ファミリアの名を上げる為の偽装だとして、目立たさせるにも程があるからな。
「いや、普通にアリアと人間の間に生まれたんじゃないですか?」
悩む僕に対してお茶請けのクッキーをムシャムシャ食べていたアナがそんな意見を言って来たんだけれど、アリアって精霊だよ?
「精霊と人間の間の子供? 流石に有り得ないと思うけれど」
幾らなんでも突飛過ぎて鼻で笑える話だと呆れそうになるけれど、何故だろう?
少し頭に引っ掛かる物があると言うべきか、重大な事を見落としていると言うべきか……。
「どうしましょうか、姉様。神と人間の間に生まれた癖にそれを忘れている馬鹿がいますよ。自己の存在否定です。私がモンスターが喋る筈がないって言うみたいなものですよ。馬鹿ですね、本当に」
あっ、そうだった。
僕も妹も本来は子供の生まれない筈の神が父親だったよ。
それはそうと指差すな。
「そうね。ティオ、もう少し柔軟に考えなさい。神と人間の間の子供が貴方達兄妹でしょう。なら、人間に見える姿のモンスターであるアナや精霊であるアリアだって子供を残せる可能性は捨てきれないわ」
……うっ。
そうだ、僕にとって神である父さんが父親なのは当然の事だけれど、本来なら神は子供を残せない、僕が否定した精霊と人間の様に。
有り得ない存在が自分自身なんだ、アナの予想も十分有り得るし、それならばロキ様達の反応も納得が行く。
人と精霊の間の子供だなんて話、暇をもて余した神に玩具を与えるみたいな物だからね。
「そんなの周囲に知られたら僕達同様にどんな事になるやら。僕だってアルトリアに変な連中が纏わり付く事を考えれば過剰に反応するだろうからね。可愛げを失くそうと可愛い妹には変わりが……何だよ、その目は?」
「いえ、気にせずに。それよりもクッキーのお代わりは何処でしょうか?」
「戸棚にあるだろ?」
色々と納得が行った僕は自分にも当てはめてみたけれど、神とハイエルフのハーフだなんて妙な連中に知られればアルトリアの将来に大きく関わる。
僕? 僕は敵なら全部叩き潰す、それだけの簡単な話だ。
その為に今まで強くなる為に死に物狂いで時々半分死につつも強くなって来たし、アルトリアだってお祖父ちゃんから魔術や魔力のコントロールの訓練を受けているから並大抵の奴には負けやしない。
いや、そもそもお祖父ちゃんや母さんだけでも過剰戦力なのに、師匠とか師範といった世界最高峰の化物が常に誰かが一緒に行動しているからね。
あの馬鹿がふらふらと勝手に出歩こうとして何かの間違いで誰もが見失わない限りは大丈夫だけれど……あの子は僕よりも父さんの血が濃いからか色々と見え過ぎる。
「そりゃ僕だって過剰になるし、それを悪用しようとするのが居れば敵だ。可愛い妹を守る為にも母さん達任せにしないで……徹底的に焼き潰す! ……だから、その目は何なんだ、さっきから」
想像しただけで少し怒りを覚えたけれど、ふと目を移せば先程同様に呆れ顔を向けるアナがクッキーを取り出しながら僕を見ている。
「何だよ、妹を守るのは兄の役目だろ。動くには早い方が良いし、何か間違っている?」
「いえ、可愛いと思っているならちゃんと伝えれば良いのにと思っただけですが? そもそもちゃんと伝えない理由が分かりません」
フッと短い溜め息の後で首を左右に振った姿が腹立たしい。
何だよ、洗濯もちゃんと出来なくて僕任せな癖にさ。
「可愛げが無いとか生意気だとは言っても可愛い妹なのを否定した覚えはないけれど?」
次に洗濯物を取り込む時には下着を生乾きで取り込んでやろうかと企んで、これ以上はアナなんて見るのも嫌だった僕はステンノ様に目を移す。
ああ、ステンノ様なら呆れている姿さえも美しいのに、妹に似ているらしいアナはどうして此処まで違うのやら。
やっぱり気品とか性格とかその辺が……ん?
「はあ……。本当に仕方のない子ね」
「フレイ様は女性の扱いは上手でしたのに、所帯を持って変わられたのでしょうか? いえ、それが良いのか悪いのかは精霊の私には分かりませんが」
あれ? 何でジャンヌやステンノ様までアナと一緒に溜め息なんて……。
「ティオ、命令よ。夢の中で会ったらちゃんと可愛い妹だと思っているのを伝えてあげなさい。……兄妹揃って拗らせちゃってるんだから呆れるわね」
ステンノ様が言うならちゃんと伝えるけれど、元から伝わってるよね?
それはそうとジト目のステンノ様もお美しいので目に焼き付けておこうっと。
そんな風に時間を使っていたんだけれど、時計に目を向ければ約束の時間が迫っている。
今でなくても間に合うんだけれど、ギリギリはちょっと嫌だな。
ロキ様や剣姫は多少待たせても良いだろう、それも交渉術の一つだし。
「あら、もう行くのね」
「ええ、兄弟子のフィンさんや親戚のリヴェリアさんまで待たせるのはちょっと抵抗があるので」
「行くのでしたら帰りに豊穣の女主人でバターケーキの持ち帰りをお願いします」
「今晩は食べに行く予定だからその時に頼んだら? 面倒だから却下で」
本当ならステンノ様とのお茶の時間を続けたいけれど身内への礼儀は大切だと習って育ったからね。
アナ? 向こうも結構無礼だしお邪魔虫だし礼儀とか要らないんじゃないのかな?
「うふふふふ。じゃあ、少し屈みなさい」
「はい!」
ステンノ様のお言葉を耳にした瞬間、僕は即座に屈んで跪く。
細い腕が僕の首に回され、ドキドキする暇もなく軽く触れあう唇と唇、僕が神ならこれだけで昇天して天界に帰ってしまっている所だよ。
「話し合いの成功を祈っての祝福です。有り難く受けとり、決して失敗などしないように励みなさい」
「はい! 勿論です!」
今の僕なら何だって可能だと思える程に気分が高揚する。
そう、今なら槍の試合で師匠に勝つ事さえも……。
『ほほう。良い自信だな。では、儂も本気で相手をしてやろう』
……うん、何か幻聴が聞こえたけれど調子に乗って失敗するなって本能の警告だな。
「行ってきます!」
さてと、どうなる事やら……。
「所でアナ、さっきは貴女も子供を宿せる可能性があるって言いはしたけれど……」
「無理でしょう。人間は好きではないので……」
「貴女とティオ、私とティオ、同時に子供を作ったとして、似た子供が出来るのかしらね?」
「さ、さあ。その辺はさっぱりで……それとティオは論外ですので」
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