オラリオに神の子が来るのは間違っているだろうか? R 作:ケツアゴ
ダンジョンの奥深く、人類未到の地にてその存在は地上に憧れていた。
モンスターに敗れダンジョンに取り込まれ変質しせし堕ちた精霊、もはや本来の自我は殆ど失われ、残った記憶から狂気的に同族の精霊と地上への進出を追い求める怪物。
それが今、新たな衝動に支配されていた。
『狡イ狡イ狡イ! ジャンヌダケ! ジャンヌダケ地上ニ出タ! フレイ様、ジャンヌダケ連レ出シタ!』
それは怒りではなく嫉妬と羨望、例え堕ちても精霊、純粋な心は狂気的に捻じ曲げられても消えはしていない。
だから精霊に戻り地上へと出たジャンヌに対して羨ましいと思っても憎いとは思ってはいなかった。
『ソウダ。フレイ様ヲ御迎エシマショウ! キット、ジャンヌミタイ二……』
彼女の周囲の地面が盛り上がり無数の根や蔦が床を埋め尽くし、やがて壁を這って天井を貫くと遥か上に。
途中、広がって行く蔦や根はモンスターに絡み付き先端を突き刺して締め上げる。
暫しの間だけモンスターは抵抗を見せるも時に動かなくなり、灰だけになったモンスターを離した蔦や根は再び天井へと向かう。
少しでも地上に近付く為かの如く、己が求める存在の為に上へと向かって行った。
ダンジョンが脈動する、まるで助けを求めて悲鳴をあげるかの様に。
犠牲になったモンスター達と同じく力を吸い取られながら……。
「……悪い。少し話を整理させて欲しい」
ホームの敷地に入れず困っていたフェルズさんとの会談は庭に用意した椅子と机で行われ、僕はジャンヌを解放するまでの経緯を一部だけ省いて報告する。
便利だよね、ステイタスを秘匿する権利って。
不正の疑惑から開示を求められてギルドと揉めたイシュタル•ファミリアには少しだけ感謝してあげるよ。
向こうが及び腰になった理由を思い浮かべつつも僕は警戒は解かないでいた。
確かに父さんから信用出来る人物だとは聞かされていたけれど、人は変わるし、守るものの為ならば信念だって曲げられる。
故にホームにも入れずに今の状況を作り出しているんだけれど、どうも信じ切れないって感じだね。
「堕ちた精霊が地上に出る事を目論んで切り離した一部を上の階層に送り込んで、僕がそれを解放した。確かに荒唐無稽な話だけれど、それなら其方側の神に確かめて貰って構わないよ」
ガネーシャ様然りウラノス様然り、相手側に人間の嘘を見抜ける神がいて、僕の嘘は今の所は見抜ける。
それが何時までなのかは不明だけれど、妹に危険が及ぶ可能性に繋がる父さんとの血縁に関する事は話さないけれど、それ以外なら話そうじゃないか。
「……この話は一旦持ち帰らせて貰う」
「どうぞ。ああ、信じたなら報酬はしっかり頼むよ。貧しくはないけれど、それなりに出費が激しい身なんだ」
本当に武器が直ぐに壊れちゃうから困るんだよね。
明日には死んでいても珍しくないのが冒険者だ、多額のローンなんて信用が余程でもないと組ませて貰えないのは世知辛い。
少し逡巡しながらも一旦は納得って事らしくフェルズさんが去るのを見送れば少し眠気が襲って来た。
「……眠い。さっさと寝るか。一人は寂しいけれどね」
「じゃあお姉ちゃんが添い寝を」
「だから君の添い寝は不要だって、ジャンヌ」
あーあ、こんなのが僕の眷属だなんて苦労するよ。
真面目で堅物かと思ったら自称姉の不審者に豹変する彼女に僕はため息が出そうになるけれど、精霊と人じゃ精神構造が違うのなら仕方が無いとも納得出来るし、神が人から見れば理解不能な時がある程に別物の思考回路をしているみたいに神から見た人も自分達とは別物の精神構造をしているのなら苦労もありそうだ。
ぶっちゃけ父さんとか絶対苦労しているよね、あの人も十分変わり者だけれどさ。
「私もそろそろダンジョンに行ってみたいですね。どうも復活してから感覚が妙で、魔法が上手く使えないのです。軽く精霊としての力を使えても、詠唱が必要な魔法まで行くと……」
「精霊はエルフ以上の魔法種族だし、取り込まれた時に力を削ぎ落とされたのなら経験値を稼いで恩恵を更新すれば……あっ!」
恩恵を与えた以上は更新をしなくてはならないという事実に僕は気が付いて思わずジャンヌの方を見たけれど、向こうも気が付いたのか顔が真っ赤だ。
「そ、そうですね。最初に私が一人で脱いで寝転がっているというのはどうでしょうか? 背中なら素肌を見られてもそれ程恥ずかしくない……と思いますし」
「うん? ああ、確かに更新の時は背中を見せて貰わないといけなかったね。じゃあ、それでいこうか
何故照れているのか一瞬理解出来なかったけれど、ステンノ様以外の素肌を見るという事に全く興味が無いから思い浮かばないだけで普通は異性に肌を見られるのって恥ずかしいってのを僕は思い出す。
ならエルフ、特に同族以外との接触を禁じているみたいな人達は大変だろうと感じるよ。
女性の場合は女神のファミリアに入るのかと思いつつ、根本的な問題を口にするのが情け無いから気分が落ち込んで来たんだ。
「そもそも僕って恩恵を与えるのは何となくで分かったけれど、更新とか鍵を掛けて他人に見えなくする方法が知らないんだ。…… フレイヤ様に教わるしかないのか」
無知を恥じて必要な事を知ろうと動かないのは損でしかないんだけれど、幾ら実の叔母のフレイヤ様相手でも恥ずかしい事は恥ずかしい。
チラリとジャンヌの方を見れば問題は解決したとニコニコしていて僕の悩みなんて気が付いてもくれやしないしさ。
でも、仲間であるジャンヌの為にも聞くしかないんだよな。
「はあ……。今日は人肌恋しい夜なのに落ち込む事だらけだよ」
溜め息と共に肩を落とした僕はトボトボと歩きながら自室へと戻っていった。
普段はステンノ様を抱き締めて寝ても余裕があるベッドに今日は一人だけ。
寂しさや虚しさがあるけれど、目を閉じて眠って、次に目覚めればステンノ様との一日がやって来るし、朝風呂で背中をお流しする役目だって……。
希望があれば人は歩み続けられる。
目を閉じれば直ぐに睡魔が襲って来て、僕の意識は深い眠りに沈んで行った。
「遅かったですね、兄さん! 私なんてご飯を食べてお風呂に入った後はお母さんに絵本を読んで貰っている最中に寝ましたよ」
目を開ければ青い空と花畑の中、偉そうに平らな胸を張っているか妹の姿。
なお、アホ毛は嬉しそうに左右に揺れ動いていた。
「お前かぁ……」
取り敢えず抱っこして頭でも撫でてやるか、久々に:
精霊 誰? 活動報告でも
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自称姉
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