オラリオに神の子が来るのは間違っているだろうか? R   作:ケツアゴ

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痛手

「あらら、こりゃ派手にやったわね。何処のファミリアの冒険者の仕業かしら」

 

 ティオナとティオネ、ロキ・ファミリアに所属する第一級冒険者のヒリュテ姉妹は深層への遠征を一週間程前に控えて最後の追い込みに掛かっていた途中、二十四階層にてオラリオでは高価で売れる白樹の葉(ホワイト・リーフ)の生る白大樹(ホワイト・ツリー)……の切り株を発見した。

 

「うわっ! 見事に断面だけ真っ黒焦げ、どんな魔法を使ったのかな?」

 

 ティオナがベタベタと触る切り株は断面だけが完全に炭化して焦げ臭いが側面は綺麗な白のまま、そして切り株は完全に平らな表面を真上に向けている。

 

「熱が一点に集中した鋭利な刃でスパッとって感じかしら? ほら、そんな事よりもさっさと行くわよ。こんな浅い階層じゃ経験値もお金も稼げないんだから! ……ちょっと、ティオナ?」

 

 確かに葉だけを採らずに木を切り倒して何処かに持って行ったらしいのは、切り株の上部分が見当たらない周囲の様子からして明らかだが、そんな目立つ真似をした者が全く噂にもなっていなければ来る途中に目撃していないのも妙な話。

 だが、気になりはするが調べる時間が惜しいし、精々戻った時に話の種にでもすれば良いだけ。

 大手ファミリアの幹部で第一級冒険者、借金も無いわけだから拘る必要は無いのだが、先を急ぎたいティオネに対し、ティオナは何処か遠くを眺めている。

 怒鳴って連れて行こうと近付いた時、ティオネの目にもその光景が映った。

 

 

 

 

『ギャァオオオオオオオンッ!!」

 

 離れていたからか意識するまでは聞こえなかった竜の咆哮、稀少で高価な文字通りの金の生る木ならぬ宝石の生る木、宝石樹の守護者である木竜《グリーン・ドラゴン》だ。

 別に金に困っていなくても回収したい程の価値ある宝を前にし、二人が動かなかったのはダンジョンでの暗黙の了解である獲物の横取り禁止による物。

 遠くからで顔はよく分からないものの、エルフの少年が槍を手に一人で立ち向かっていたのだ。

 

 

「……ねぇ、ティオネ。あの子の槍の使い方ってフィンのに似てない?」

 

「気のせいでしょ。団長のは小人(パルゥム)の体型に合わせた物だし、完全に一緒じゃないわよ。……まあ、基本的な部分は確かに似てはいるわね」

 

 遠くから見る少年の戦う姿が自分達の団長に確かに重なって見える事にティオナは素直に驚き、ティオネは少し気に食わない様子で眺めているが、好意を寄せる団長と同じ戦い方をする相手は男であっても気に入らない、そんな所だろう。

 

 

「でもさ、あんな子って居たっけ? 木竜はLv.4だし、圧倒しているんだからLv.5位だけれど……」

 

 巨大から繰り出される攻撃を少年は最低限の動きで回避しつつ肉薄を続け、避けられない物は槍で軌道を逸らし、そのまま攻撃に転じる。

 巨体を持つ竜に見合った耐久性の肉体は並の金属を凌駕する高度を持っているにも関わらず簡単に弾け飛んだ。

 右前足が深く切り裂かれ前のめりになる木竜が選んだのは自重を武器にしたのしかかり、目の前の敵を圧死させようと飛びかかり、相手が動けない事に勝利を確信する。

 

 

 

「……良し。もう慣らしは十分か。それじゃあ……吹っ飛べ」

 

 否、動けないのではなく、動かない。

 真上から押し寄せる巨体に対し、本来は魔法を得意とするエルフの彼が取ったのは真正面からの迎撃、見上げる程に巨大な竜の肉体を彼は左手一本で受け止めた。

 

「うわっ! 怪力だね」

 

 遠くからその様子を見ていたティオネも驚きの声を漏らす。

 勿論彼女にも同じ事が可能なのだろうが、接近戦を得意とするアマゾネスであり、彼は魔法種族であるエルフだ、力の上がり方だって違う筈。

 

 だが、驚きは次の瞬間に更に大きくなる。

 一旦離れようともがく木竜だが少年の指が腹部に食い込んで離れず、右腕ががら空きのその場所に叩き込まれた瞬間、爆炎によって巨体が数倍の高さにまで吹き飛ばされた。

 

 

「ねぇ、ティオネ。あっちも似てないかな?」

 

 その光景に呟くティオナが見詰めるのは腕が炎に包まれているにも関わらず一切熱がる様子を見せず、魔石が剥き出しになりながらも辛うじて生き残った木竜を睨む彼の姿。

 次の瞬間、槍を投擲する彼の肘から途轍もない勢いで炎が吹き出し、そして放たれた。

 

 

「ドゥリンダナ!」

 

 叫びと共に木竜目掛けて突き進む槍が炎に包まれ、着弾の瞬間に木竜を炎が飲み込んで吹き飛ばす。

 

 

「ティオナ、今、詠唱してる様子は無かったわよね?」

 

「……うん」

 

 二人の頭にはフィンではない仲間の、目の前の少年が炎を纏うのと同じで風を纏う少女の姿が浮かんでいた。

 

 

 

 

 

 

「なんか見られているけれど……まあ、別に良いや」

 

 ステンノ様からの依頼『ドレス代を稼いで欲しい』の報酬はデート、ならば僕が可能な限界額を稼がなくては駄目だ。

 担当アドバイザーになったミイシャさん(要望はあるかと聞かれたので、特に無いが同族は少し苦手と言ったら彼女になった)も僕がLv.4だからかダンジョンに入る前の注意事項も最低限の説明で済んだし、三十階層では異常な数のモンスターと遭遇出来て……運が良かった。

 

「さてと、一旦帰ろうか」

 

 魔石も素材もドロップアイテムも沢山手に入って、目の前には宝の山……木竜に力を出し過ぎて魔石まで吹き飛ばしたし、ドロップアイテムが出たのに森の向こうじゃ探すのも一苦労なのは正直言って失敗だ。

 さっきから見ている人達の方だし、拾われて終わりだな、諦めよう。

 ステンノ様のご要望だ、時間もお金も足りやしない。

 

 でも、結構な量って事は換金にも手間取るだろうし、今日の家事も残っている。

 家事は僕の仕事だ、ステンノ様に水仕事なんかさせられるか!

 てな訳で今日は帰るとして、今回の事がバレたらどうなるのかと不安になった。

 

「お祖父ちゃんは笑うだろうし、ケイローン先生はやんわりと叱ってスカサハ先生は厳しく罵倒、その後で二人から基礎をミッチリと……」

 

 あの二人、優しいのと厳しいって違いは態度だけで、修行はどっちも……うん。

 

 しかし、”必殺技は声に出せば威力が上がる……らしいよ”、父さんが昼間から酔っ払いながら教えてくれた(その後、母さんに昼の飲酒をしこたま怒られていた)のを久々にやってみたけれど、確かに上がった……のかな?

 

「また槍が壊れたのは(財布に)痛いな……」

 

 宝石樹を倉庫から取り出した斧で切りつけ、倒れ込まないように掴んで宝石が付いたまま仕舞い込む。

 発現した時は派手な名前の割には中身が空っぽの倉庫なんてダサいと思ったけれど、こうやると本当に便利に思えてくる。

 

 

 

 

「おーい! 君ー!」

 

 地上を目指そうと踵を返した時、さっきから眺めていた人が手を振りながら駆け寄って来た。

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