オラリオに神の子が来るのは間違っているだろうか? R   作:ケツアゴ

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失態

「ねぇ、君凄かったね! 何処のファミリアなの?」

 

「僕はステンノ様の眷属だけれど……」

 

 急に寄って来たアマゾネスのティオナさんだけれど、これがダンジョン内で起きるっていう敵対ファミリアによる襲撃なのかと思ったら、木竜のドロップアイテムが飛んで来たからわざわざ届けてくれただけだった。

 まあ、普通にお礼を言ってゲート・オブ・バビロン内部に収納したんだけれど、何かグイグイ来る。

 

「……ああ、ダンジョンに入る前にLv.4が外からやって来たとは噂になってたけれどアンタだったんだ」

 

 初対面でもフレンドリーなティオナに対して姉のティオネの方は警戒……というよりは何か僕に気に入らない部分があるみたいだ。

 うーん、これはさっさと話を切り上げて帰った方が良いな。

 この二人、フレイヤ様の所とは仲が良くはないロキ・ファミリアの幹部らしいしさ。

 

「それにしても君、エルフなのに近接武器で竜を相手にするとか妖精騎士トトロットみたいだね」

 

「トトロット? ああ、あの話か。お祖父ちゃんから物語の元になった話も含めて聞かされたっけな」

 

「元の話っ!? うわっ! 凄い! ちょっと聞かせてよ!」

 

 妖精騎士トトロット、それは小柄で細身なエルフの少女が騎士に憧れて、様々な苦難を乗り越えて英雄と呼ばれる迄に成長する物語だ。

 魔法と剣を武器に知恵を使い多くの怪物を倒していく物語自体は好きで、寝る前に聞かしてくれるのは嬉しかったな。

 母さんもお祖父ちゃんから聞かされて騎士に憧れたって言っていたよ、あの人は体格に恵まれているけれどさ。

 その後、夢の中で難易度を高めて体験させられるのは別として。

 ”どうやって乗り越えたのかヒントを貰っているんだから大丈夫大丈夫”って、割と大丈夫じゃなかったりしたんだけど……。

 

「えっと……」

 

「悪いわね。その子、そうなると中々止まらないわよ」

 

 そんな訳で思わず口から出てしまった事を聞いた途端、ティオナは目を輝かせて急接近して来た。

 顔が近いし困ったから姉に止めて貰おうとしたんだけれど無理みたいだし……。

 

 うん? ロキ・ファミリアって事は……。

 

 

「僕が話さなくてもロキ・ファミリアには詳しい人が居るはずだよ?」

 

「え? 誰?」

 

「……あー、ごめん。親戚のオバさんが所属しているのは覚えているんだけれど名前は忘れちゃったよ。……じゃあね」

 

 自分達の仲間に僕の親戚が居ると聞かされた瞬間、二人の意識は一瞬だけ僕から外れ、意識を戻した時、二人の目の前で僕は無数の花弁になって消え去った。

 

 

 

 

 

 

「わわっ!? 消えちゃったっ!? トトロットは珍しく女の子が主役の話だから詳しく聞きたかったのに残念だなあ」

 

 花弁を掴もうとしたティオナだが、触れた途端にまるで夢みたいに消えて行く。目の前に確かに舞っているのが存在するが、手で触れる事は出来なかった。

 物語が好きなティオナは残念そうに肩を落とすがティオネは先を急ぎたいのか面倒臭そうにしている。

 

「はいはい、次の機会が有れば聞けば良いし、団長なら親戚のオバさんってのが誰か分かるんじゃないの?」

 

「あっ! そうだったね。それで確か物語の最後ではトトロットは王子様と結婚するんだけれど……あれ? 王子様と結婚?」

 

「エルフで、王子様と結婚。その物語のモデルって事は……」

 

 二人の脳裏に浮かんだのはファミリア内では何かと母親みたいな役割を担うハイエルフの顔だ。

 ならば親戚である彼も……、と思った所で小さな包みが置かれているのに気が付いた。

 ボロボロのバックから中身が零れない様に紐でグルグルに縛ったそれを何となくティオナが拾い上げると表面や中に入っている短剣や小さい装飾品はどれもボロボロであり、中には血が付着している物まであるではないか。

 

「これなんだろう?」

 

「遺品だよ。三十階層まで行って戻る最中に見付けた奴さ」

 

 声のした方を振り向けば何とも居たたまれなさそうな表情の少年が立っていた。

 

 

 

 ダンジョンは夢を馳せて向かう楽園ではない、それは呑気で自由奔放なお祖父ちゃんでさえ僕に言い聞かせた事だ。

 実際、ダンジョンを進んでいると偶に、三十階層に向かった時はモンスターの大量発生があった為なのか冒険者の死体が見付かって、それは同情出来ないし、してはならないのだと思ったよ。

 

「ティオ、君がダンジョンで死んだならば私は嘆きもするし涙も流すだろう。でも、送り出した事を悔いはしないよ。それは覚えておきなさい」

 

 父さんもそんな事を言っていた、珍しく真剣な顔をしながらね。

 

 でも、本人は自己責任、例外はあるだろうけれど自分で望んで選んだ道だと切り捨てられるけれど、残された家族は違うだろう。

 だから小さい持ち物を遺品として持ち帰る事にして、僕の物でないと認識しているから魔法で収納は出来ないから一人が持っていたモンスターの爪痕が残るバックを遺品代わりにしてそれに詰め、溢れ出さないように紐でキツく縛る。

 木竜と戦う時は巻き込んでしまわないようにと端の方に置いていて……。

 

 

 

「それを忘れちゃったんだね」

 

「……うん」

 

 何とまあ、正面から言われたら何を言って良いのか分からなくなる。

 お祖父ちゃんに教わった幻術を使って逃げたんだけれど、まさか忘れてしまうなんてさ。

 

 ティオナはケラケラ笑い、ティオネの方は呆れた様子だけれど、僕だって自分に呆れているさ。

 ステンノ様に知られたら叱られるだろうし、師匠一同に知られたら集中力が足りないのだと厳しい修行をさせられるのだろう。

 

「それでさっきのどうやったの? こう花弁がブワーッとなって姿が消えたじゃん! 凄いよね、さっきの。詠唱もしてなかっったでしょ」

 

「こら、ティオナ。他の冒険者のスキルとか魔法とかの詮索は御法度でしょ」

 

「えー! でもティオネも気にならない? フィンと槍の使い方が似てるって所とかさ」

 

「……まあ、そうね。偶然に決まっているけれど」

 

 フィン……ああ、ロキ・ファミリアの団長の”勇者(ブレイバー)”か。

 そっちの方は覚えているよ。

 

 

「あっ、それは偶然じゃない。会った事はないけれど兄弟子だしさ。……あー、スカサハ先生から伝言預かっているし、機会が有れば会いたいんだよね」

 

「兄弟子!? ……ちょっと待って、スカサハって……”影の女王”?」

 

「そうだけれど?」

 

 何故かショックを受けてた様子のティオネ、妹の方は興味深そうにしているだけ……今なら帰れるか。

 

 

「じゃあ、僕は此処で帰るから」

 

 遺品を抱え、脚を強化するなり一気に走り去り、飛び上がると同時に魔力を噴射して空を飛ぶ。

 さてと、今知られてしまった事程度なら大丈夫かな?

 僕が使ったのって母さんや師匠達から受け継いだ事ばかりだしさ。

 

 

 うん、だからペラペラ話ても問題無い……筈。

 

 

「……帰るわよ、ティオナ! 団長から師匠の事を色々聞き出さなくっちゃ!」

 

「え~!? もう帰るの? まあ、私もリヴェリアからトトロットのモデルについて聞きたいから帰ろっと!」

 

 二人の会話を遠くから聞かせて貰ったけれど、今は問題が無い。

 あっ、そうか、親戚のオバさんの名前はリヴェリアか

 

 それにしても妖精騎士トトロット……曾曾お祖母ちゃんか。

 お祖父ちゃんの話と物語じゃ結構違うんだよね。

 

 

 物語じゃ忘れ癖のある小柄で頑張り屋、本人はお祖父ちゃんの同類。

 僕も物語は好きだっただけに同じく好きだったらしい彼女に真実は告げづらいけれど……リヴェリアオバさんに教えて貰うなら別に良いか。

 

 

 

 

「ふぅん、そんな失態を犯したのね。ええ、ええ、決して訪れぬ再会の時を待つ子達に待ち人の遺品を届けようと思ったのも、戦いに巻き込まないようにしたのも良いでしょう。でも、それを忘れそうになっただなんて反省なさい」

 

 ダンジョンから帰還後、大量の魔石やドロップアイテムは兎も角、宝石の類は専門家が時間を掛けて調べるからと査定が全て終わるのが明日との事、だから一旦ホームに戻って来たけれど、ステンノ様は僕の失態を怒っていた。

 

「……はい」

 

「次やったら本気で怒るわ。私の眷属である自覚を持つ事ね」

 

 冷たい眼差しは視線を向けなくとも伝わり、声は重く冷たくのしかかり頭を上げる事を許してはくれない

 

 

「はい」

 

 失態、確かにそうとしか言えないだろう。

 僕はその場に跪いて叱責を受け続けるしか出来ない。

 長い時間の間、ステンノ様は無言を続け神威だけを放ち続け、そっと僕の頭に手を伸ばす。

 

 

 

 

 

「反省したのなら次に生かしなさい。貴方なら出来ると信じているわ」

 

「はい!」

 

 頭を優しく撫でられ、顔を上げれば向けられていたのは優しく美しい笑顔、その姿に僕の中でステンノ様への愛がいっそう大きくなるのを感じた。

 

 

「それで幾ら位になりそうなの?」

 

「大体ですが相場からして全部で五百万ヴァリス、ドレスの仕立ての時間を考えても後何度か稼ぎに行く余裕はあるかと」

 

 豪邸が一千万程度で建てられるし、今回程高価な物は見つからなくたって、頑張れば第一級冒険者の装備に使うような素材を使用した最高級品が買えるかも。

 

 でも、僕のそんな考えを否定する様にステンノ様は静かに首を横に振った。

 

「いえ、ドレスはそのお金で買える物で十分。そのお金でドレスを買って、食事をして、他の買い物を楽しみましょう。貴方の記念すべき最初の稼ぎだもの、どんな大金よりも価値があるのよ、ティオ。ほら、そろそろお風呂の時間よ。神の肉体からは老廃物なんて出ないけれど、今日の頑張りのご褒美に髪と背中を洗わしてあげるわ」

 

「は、はい!」

 

「うふふ、さっきから”はい”って言ってばかりね」

 

 ステンノ様に手を引かれて僕は風呂場へと向かって行く。

 この後、本当に髪と背中を洗う名誉を貰い、その後はご飯を食べて一緒のベッドで抱き付かれながらゆっくりと眠った。

 

 

 

 

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