オラリオに神の子が来るのは間違っているだろうか? R   作:ケツアゴ

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「『白き聖杯よ、謳え』」

 

 この日、僕はステンノ様とデートとしてドレスを買いに行き、ショッピングやら何やらを楽しむという夢のような一日を過ごす……筈だったのに、今現在、ダンジョンで大怪我して突っ伏している小人(パルゥム)のサポーターを魔法で助けていた。

 

 どうしてこうなったのかというと、ドレスを買い求めるのはどの店にするのかステンノ様は既に決めていたんだけれど、僕が生まれる前、オラリオに住んでいた頃に贔屓にしていたっていう一流店、一着が数百万ヴァリスは当たり前な所が今日は休みだったんだ。

 

「あら、残念ね。貴方が初めて稼いだお金で二人の記念日を作る予定なのは変わらないけれど、二日続けて探索を休むのも勿体無いから少しでも経験値を稼いでいらっしゃい」

 

 こんな風に送り出され、デートの一日が延びたのは残念だけれどもラッキーな事だって一つ、郵便受けに劇場の入場券が入れられていたんだ。

 詳しくは知らないけれど神と眷属の恋物語を描いた内容で、劇場近くにはお洒落なレストランも有るから予約しようと思ったら既にされていた。

 フレイヤ様だよね、絶対に……。

 

 何から何までお世話になっているし、何時かちゃんとした形でお礼をしないと、何時までも身内だからと甘えっぱなしは良くないしさ。

 

 

「ステンノ様、何か欲しい物は有る?」

 

「じゃあ、十八階層で果物を幾つかと、水晶なんて良いんじゃないかしら?」

 

「あ~、確かに水が出る水晶が有るし、大きな物でも丸ごと持ち帰れるから便利かも。じゃあ、愛するステンノ様のご要望とあらば絶対に持って帰るよ」

 

「そう、期待しているわ、大好きなティオ」

 

 まあ、こんな感じで今日もダンジョンに行く事にして、魔力を放出した勢いで普通に走るより速く進んでいた時の事だ、ずっと先にある横道の向こうから壁や天井から大量のモンスターが現れる音が響き、僕が前を通り過ぎた頃に大慌てで逃げて来る冒険者らしい連中の姿があった。

 

「……行くか」

 

 オラリオに冒険者になりに来たのならモンスターに殺されるのも質の悪い神に目を付けられるのも、敵対派閥に襲われるのも全部覚悟しなくてはいけない事、だから僕は彼等がボロボロだろうと気にも止めないし、何となく目を向けただけだ。

 それにしても目的の階層まで向かうのに一階層から走って行っても時間が掛かるし、ホームの掃除やら色々しなくちゃならない身としては大変だ。

 その辺りをどうにかする魔法かスキルが欲しいと考えながら突き進んだ時、その会話が僅かに耳に届いた。

 

 

 

「危ない危ない。あのサポーターが居て助かったな」

 

「役立たずなんだ、囮にはなって貰わないと。あの役立たずも俺達の役に立てて本望だろう」

 

 ……どうやらサポーターを囮に逃げたらしくゲラゲラ笑い、魔石を入れた袋だけは奪って来れたと仲間に自慢する声を聞いた僕はそのまま曲がり角の先へと進み、反転して件のサポーターが取り残されただろう場所へと急ぐ。

 途中、鬱陶しい笑い声を上げていた連中を蹴り飛ばしたけれど手加減はしたし、殺気を送ったらビビって逃げて行ったから大丈夫だろうさ。

 

 

 そうして進めばウォーシャドーに囲まれて気絶している女の子の姿、背中には爪痕が刻まれ、足を見れば靴痕が、多分さっきの連中が囮にする為に足を潰したのだろう。

 

「別に助ける義理は無いんだけれど……これは自己満足だ」

 

 目の前で困ってる連中全員を助ける趣味は無いし、わざわざ足を運んで顔も名前も知らない相手を救うのもちょっとやる気が出ないけれど、同時に死に掛けている人が手が届く範囲に居るのに見捨てた場合、僕は大切な人達の側で笑って居られるのかと自問自答してしまう。

 

 僕の背後に現れる黄金の波紋と中から切っ先を見せながら出て来るヘファイストス・ファミリアの新人鍛冶師の作品(売れ残って埃を被っていた安物)の数々、それが光にたじろいで動きを止めたウォーシャドー達に向かって飛んで行った。

 

「あっ、一本折れた」

 

 他の武器が横からぶつかったらしく見事に折れる槍、制作した人、ごめんなさい。

 

 武器ってのは新人の作品でも数千ヴァリスはする品物、募集中だったじゃが丸くんの屋台のバイトが噂によれば時給三十ヴァリス(何処かのバイトが大ミスをして損害出して減給との噂も)なのだから決して安くはないんだ、その中では安物の部類なだけで。

 

「さっさと良いのが買いたいけれど、どうせ強化しながら使う上に多少の違いじゃね……」

 

 昨日みたいに少し強めに魔力を纏わせれば粉々になるんじゃ意味が無いし、オリハルコン製には手か届かない。

 オラリオに向かう際に一から頑張るのだと没収された愛用の武器が恋しくなりつつも女の子の様子を見るけれど結構傷が深いし、起きる様子もない。

 

「まっ、傷を放置して破傷風になったら助けた意味が無いし……」

 

 そして冒頭の通りに詠唱をすれば僕の前に現れる綺麗な杯、そこから放たれる光が彼女の傷を完全に癒し、そのまま体に吸い込まれている間、僕は散らばった武器を回収していたよ……手作業で。

 

「み、見えている範囲なら回収可能になりたい。……これも刃こぼれだ」

 

 壁の中に鉱石があったらしく、刺さった剣を引き抜けば質の悪い鉱石が幾つか転がり、剣には刃こぼれが。これ、この鉱石を売っても修繕費用には足りなさそうだけれど……はあ。

 

「全速力で急がないとな。……移動速度補助の魔法かスキルが本当に欲しい、割と本気で」

 

 結構な数の冒険者が賛同してくれそうな事を呟きつつ、ちょっとだけ助けた事を後悔しながら僕は気絶継続中の彼女と荷物を担ぎ上げ、一旦地上を目指すのだった。

 

 弱肉強食、弱い者は強い者に従い、同時に強い者は弱い者を守る。

 片方だけでは駄目で、両方で成り立つこの考えは母さんから教えられ根付いている物だ。

 まあ、今回は相手が僕を認識していないんだろうけれど、誰も彼も助けはしなくても、この考え方は貫きたいんだ。

 

 

 

「此処で良いか。割と人目があるから追い剥ぎも無いだろうし……」

 

 人目があるから僕がこの子を助けた所は見られるけれど昨日だって遺品を集めたんだ、今更だ。

 後はこの子だけれども、危なくなったら誰かが助けてくれるのだと心の中で変な油断が生まれる心配までは責任取れないし、

 

「さて……全速力で行かないと」

 

 この子を助けて地上まで往復して時間を無駄にした、ステンノ様のお願いを聞かなくちゃいけないし、今日は夕飯に間に合うかな?

 

「ステンノ様に冷えたご飯ばかり食べさせられないしなあ……」

 

 空を見上げれば太陽が僅かにだけれど中央に向かって移動している、お金は昨日結構稼いだから一日分減った程度じゃ何ともないんだけれど……。

 

 

 ハウスキーパーを雇う、というのは微妙な案、だってステンノ様との暮らしに他人が入って来るのはちょっと嫌だ。

 まあ、他人じゃなければ良いけれど……。

 

 

 

「確か歓楽街にスッポンやニンニクを甘辛く煮て生地で包んで蒸したのが……いや、面倒だから此処で良いか」

 

「やあ! 君は見ない顔だけれどオラリオに来たばかりかい? 良ければ僕の眷属になってヘスティア・ファミリアの一員に……」

 

 昨日の分の査定が終わって換金したヴァリスを受け取り、ついでに防具も邪魔だからと脱いで収納したその帰り道、夕飯の下拵えはしているけれど仕上げに少し掛かるから何か小腹を満たせる物を、そんな風に思っていたら偶々近くにじゃが丸くんの屋台を発見、店員は女神だった。

 

 ああ、普通は森に住んでいるエルフの僕が武装していないから何処にも入っていないと思ったのか。

 

「小豆クリーム味三十個とチーズ味一個。それと僕は既にファミリアに入っているから無理です」

 

 後ろに並んでいた金髪の冒険者、多分第一級位強い女の子が僕の注文に何故か反応したけれど、今は気にしない。

 だって勧誘を断れば女神が見るからに落胆してしまったし、どうにか励ましたい。

 

「そ、そうかい」

 

 主神がバイトをしているって事は新米しか居ないのか、そもそも眷属を見つけられないのか。

 夢を馳せてオラリオに来てもくすぶる下級冒険者が多いのと同じで娯楽を求めてやって来ても先立つ物が無いから眷属探しも大変で、そのせいで生活が苦しい神も多いとは聞いているけれど……。

 

「……あー、多分僕の友達がオラリオに来ると思うから眷属に勧誘したら良いと思うよ? 白い髪に赤い目の小柄な少年で悪い奴じゃないから」

 

 フレイ・ファミリアの旅の途中、父さんの友神だってお爺さんに育てられていた子と少しの間だけ遊んだ事を思い出し、父さんが魂を誉めていたから勧める事にした。

 フレイヤ様なら気に入りそうだけれどモヤシだし戦いの心得も無いからファミリア探しは大変だろうから彼にとっても良いだろう。 

 だって大手でもなければ素人に一から戦いを教え、物になるまで生活の世話をするのは大変なんだからさ。

 

「うん、その子に出会ったら誘ってみるよ。感謝するぜ、エルフ君。所でなんて子だい? はい、お待たせ」

 

「ベル、ベル・クラネルさ」

 

 小腹を満たすには十分な量のじゃが丸くんを受け取り、少し行儀が悪いけれど食べ歩きをしながらホームへと進む。

 チーズ味はステンノ様に買っていくけれど、今日はチーズの気分だったら嬉しいな。

 

 うん、一口齧れば揚げ立ての芋と甘いクリームの味が合わさって帰るまでに三十個全部食べ終わりそうだ。

 

 

 

「あの、小豆クリーム味を一つ……」

 

「あっ、ごめん。今ので小豆クリーム味は売り切れちゃったよ」

 

「……そんな。今日は他の屋台でも……」

 

 

 

 

 

 

「それで手紙が来ないのは変だって思っていたら都市外から届くラブレターに混じっていたの。ヘルメスったら中途半端な仕事をするわ」

 

「あら、それはお仕置きが必要ね。所でちゃんと眷属には試練を与えている?

お気に入りの子にはちゃんと試練を与えて、乗り越えたらご褒美をあげるのが女神のあるべき姿よね」

 

「分かるわ、それ。アレン、今度何か課題を出すわね」

 

 ……ホームに戻ったらフレイヤ様とアレンさんの姿、女神が女神らしい会話をする中、僕は夕飯の支度を続けていた。

 今日は子ウサギのパイ包みに季節の野菜のシチュー、その他副菜を幾つかにデザートは十八階層の果物。

 

「仲の良い友神だとは聞いていたけれどよ……」

 

「父さんともあんな感じだったよ。お祖父ちゃんまで悪ふざけに加わって、ステンノ様だけは逃げおおせるけれど男二人揃って母さん達にとっちめられる迄がワンセットさ」

 

 僕の手伝いをしてくれているアレンさんは真面目なのだろう、溜め息を吐き、僕に同情の視線を送っている。

 

「飯時に邪魔して悪かったな……」

 

「まあ、大勢で食べた方が美味しいし……とんでもないお土産まで貰ったから」

 

 テーブルに置かれたのは土産の品である魔導書、末端価格でも億はする品だ。

 

 

 そして数日後、この魔導書で発現した魔法を知ったフレイヤ様の頼みで僕はちょっとしたゴタゴタに巻き込まれる事になる。

 

 

 ……アレンさんも一緒に。

 

 

 

 

 

 




最近じゃオリジナルも感想滅多に来ず、こっちも少ないので感想お願い!

サポーターはリリなのかは不明 モブかも

精霊  誰? 活動報告でも

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