オラリオに神の子が来るのは間違っているだろうか? R 作:ケツアゴ
偶々目に付いた所に居たから同行する事になった旅で神と人の間に生まれた子供という冗談みたいな存在を知ってしまったアレン、当然ながらフレイヤからは他言厳禁を言い渡され、その数年後にその子供であるティオと再会して早数日、他の団員にも秘密な為かティオの所に行く時は普段一緒に居るオッタルではなく自分を連れて行く事に喜びを感じていたアレンだが、だからと言って護衛中に気を緩める事など有り得ない
「ねぇ、アレン。私今日から伴侶を探しに行くからお供をお願いね? それと他の子達の説得も頼んだわ」
「……は? 今、何と?」
だが、この時は思わず女神の言葉を聞き返してしまったが、それだけの無茶振りである。
なにせこの男、自由にさせ過ぎだ、だの、閉じ込めておくべきだ、だの、フレイヤの奔放な行動に過激な意見を口にするのだから、そんな彼がお供になってオラリオの外に出向くなど、普段から険悪な者達にどう説明しろと言うのか、である。
「オラリオの外に出掛けたくなったのよ、昨日、あの子が兄さんの自慢だった戦車に乗ってステンノと夜景を見ている姿を見ちゃって。天界に居た頃、兄さんに乗せて欲しいと頼もうと思っていたら地上に降りる順番が来た嬉しさに忘れてて、どうせなら乗って旅がしたいなって」
「………それについて説明するのも俺ですよね?」
「ええ、あの子との関係を知っているのはアレンだけでしょう? 私からの試練だと思って頑張って、頼りにしているから」
フレイヤの側で行動出来る、そんな喜びは確かにあったが、同時に頭と胃が痛くなりそうなのが他の団員からティオに向かうヘイトであり、”お痛をしないように説得してね”とアレンに対応を丸投げされている。
あくまでも建て前は友神であるステンノへの贈り物としているが、他の派閥の団員を誘惑して引き入れて来たフレイヤだ、信用は薄い。
「問題はあのチビ共か……」
本人は実感が無いらしく困惑すら見せるがハイエルフ、この時点でエルフであるヘディンは積極的に動くのを躊躇う素振りを見せ、ダークエルフでライバルのヘグニを牽制すらしており、オッタルはフレイ・ファミリアの面々とは知り合いであり、どうやらティオが同門らしいと知って元々迂闊な行動をするタイプでもなかったので放置で良いだろうが、問題はガリバー四兄弟。
フレイヤの旅に自分達ではなくティオが同行する事にどんな反応を示すのか、それが今から心配なアレンであった。
「じゃあ、ティオを暫く借りるってステンノに伝えて来るのもお願いね」
「いや、旅に連れて行く相手の主神に了承取って無かったんですか?」
この分だと本人にも話をしていない、そんな風に思うアレン、正解である。
兎に角自由なフレイヤの言動に本格的な頭痛を覚え出すアレンであった。
「……幹部にだけでも話しませんか?」
「あら、アレンが頑張る姿が可愛いもの。どうせなら隠せるまで隠しておきましょう」
そして、現在に至る。
カイオス砂漠を渡る
「ドゥフフフ。これはこれは、我等が主神の妹君であり高名なフレイヤ様とお会いできるとは光栄ですぞ」
「そ、そう……」
その独特な笑い方と暑苦しさにフレイヤさえもドン引きしている、それこそフレイの眷属であるという事に反応出来ない程に。
「おい、あの連中って……」
「モンスター退治専門の傭兵兼商人をやってるボフマンさん。因みに動力の魔力を供給しているのも、と……フレイ様の眷属。ちょっと昔は太っていて奴隷とかも扱っていたんだけれど、今じゃすっかり筋肉信者に」
どうやらティオの両親については知らされていないとフレイヤとアレンが理解する中、昔の事を言われた事にボフマンは苦笑を始めた。
「ドゥフフフフ。昔の事は勘弁して欲しいですぞ、ティオ殿。我等ケイローン塾生一同、軽い気持ちで鍛えて貰おうとしていた…して…いた……愚かな頃の……」
「おい、なんかガタガタ震え出したぞ此奴等っ!?」
「完全にトラウマみたいだね。先生ってちょっと厳しいから。物腰は柔らかいのにさ」
気軽な感じで肩を竦めるティオ、ボフマンと周囲の筋肉一同は完全にトラウマを再発させているのに大違いである。
「……矢っ張り血筋か」
このマイペースな所がフレイヤに似ていると思うアレンであった。
「つーか、オラリオに居た頃から結構なスパルタだったってのは聞いているが、どんな内容ならああなるんだよ……」
”長い間お邪魔するのも悪いから”、そんな風に船からの退出を急かして飛び立った空の上、消耗した魔力の補充の為に内部の魔力を吸われた魔剣が砕ける音を聞きながらアレンは呟く。
レベルは一度ランクアップした者が多く、ボフマンと極一部のみがLv.3、アレンからすれば雑魚の部類だが、それでもあれだけの肉体を作り上げ過酷な砂漠を中心に活動している者達の反応としては些か、と言うのが疑問の理由だ。
「うーん、僕はフレイ・ファミリアの人以外には鍛えられてはいないから比較相手が居なくて答えるのは難しいけれど、オラリオ行きが決まった半年前からケイローン先生に教わる午前中は毎日百本組み手だったよ」
オラリオに居た頃から貯めていた経験値に加え黒竜の追跡調査やファミリア幹部同士の戦いもあって先生はLv.8になっていて、薬とスキルと魔法で回復出来るからと割と本気で来た、軽い口調でそんな風に語るティオに対し、アレンは自分とオッタルの戦いを思い浮かべる。
Lv.7で現在のオラリオでは最強の彼は団長という立場もあってフレイヤの側に居る事が多い。
女神の愛を奪い合う関係上、アレン達は彼が気に入らず、フレイヤの命令でダンジョンでのみ一対一の戦いを挑むも全戦全敗。
「オッタルの野郎の師匠だけあって随分と無茶な奴だな」
ましてやオラリオに来てからランクアップでLv.4になったのだから、半年間は3以下で8と戦っていたという事を察し、越えるべき男が行ったであろう修行の凄まじさを感じ取った。
「それに僕がボフマンさん達と会ったのは筋肉に目覚めてからだから詳しい内容はちょっと知らないや。十年前位かな? 当時奴隷も扱っていたボフマンさんが父さんやお祖父ちゃん達に取り入ろうと近付いたらしくって、母さんと父さんの意見の違いで僕は会わせない事になったんだ」
「あら、会わせるのも反対だなんて、さっき本人が口にした恥じている過去に関係有るのかしら?」
「うん、奴隷とかの闇の部分を見せたくない母さんと、世界の一面だから知っておくべきだとする父さん、言い争っている間にケイローン先生におべっかを使った際、軽く指南するって流れになって……」
「それでああなったのね……うん、ケイローンったら相変わらずなんだから。それにしても兄さんったら随分と天界に居た時とは……いえ、オラリオに来て眷属を持ってからも変わらなかったのに」
「父さん曰く、当時の僕は物語の英雄に憧れていたし神の血も引いているからどんな風に育つか分からない。だから英雄は目の前の百人は救えても悲鳴の届かない場所の千人は救えない。英雄が沢山出た今でも人間同士で起こす悲劇すら無くならないのがその証明だ、ってさ」
「あら、兄さんったら小さい子供に厳しいわね。我が子なのに……いえ、我が子だからこそなのかしら? っと、見えて来たわ」
フレイヤが父親らしくなった兄に感心した頃、空を飛ぶ戦車は船を遙か彼方に置き去りにして目的地であるリオードの町にたどり着こうとしていた。
「所で午前がケイローンとの組み手の時間という事は午後は休みだったのかしら?」
「いや、普通にスカサハ先生も最後の仕上げだって感じで組み手を五十本」
「あら、午前中に百本やったから気遣ってくれていたのね。彼女も随分と優しくなって……」
「目と耳を塞いだ状態でだけれど」
「……ないわね、相変わらず」
その頃、町に接近する戦車から発せられていた緑の光に気が付いた少女が二人居た。
「な、何だあれは!?」
片方は砂漠の民と思しき少女、何処か気品がある。
「何かは分かりませんが……誰なのかは分かりましたので安心して下さい」
そして片方は柄の長い鎌を持った紫の髪と瞳の少女であった……。
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