炎国の姫君
昔々あるところに、それはそれは可愛らしいお姫さまがいました。
彼女は青い鬣と黄金の瞳をもち、幼い頃から炎を操る能力に長けておりました。
お姫さまは両親にたいそう愛されて育ちましたので、少々わがま──コホン、失礼。勝気な娘さんになってゆきました。
お姫さまはお友達が欲しかったのですが、お父さまもお母さまも許してはくれませんでした。
何故なら、お姫さまの一族はとても強く、長く生きられる代わりに、生まれる赤ちゃんの数が少ないからです。
もしものことがあったらと、お父さまとお母さまは少々モンペ──コホン。お姫さまのことが心配でなりませんでした。
しかし、幼いお姫さまはそのことを寂しく思っていました。周りの生き物は、楽しそうにお友達と遊んでいるのに。
お友達と楽しい時間を過ごしてみたいというお姫さまの夢は、年を重ねても消えることはありませんでした。
そんなお姫さまもやがて独り立ちをし、巨大で美しい結晶のそびえる場所へと辿り着きました。
そこに棲む者たちは皆が戦い好きで、負けん気の強いお姫さまは勇んで相手をしました。
負け知らずのお姫さま。いつしか結晶のそびえる地の生き物たちは、お姫さまを敬い遠ざけるようになってゆきました。
お姫さまは、ある日はじめて家族以外の男性に出会いました。彼女は心躍り、あっという間に恋に落ちてしまったのです。
しかしその男性は、お姫さまのお父さまよりもずっと年上。もしかしたら、お祖父さまくらいの年齢かもしれません。
お姫さまには歳なんて関係ありませんでしたが、彼女の熱烈なアタック──コホン、好意を男性はずっと断っていました。
自分以外にもきっと良い相手が見つかる、こんな老骨などやめておきなさい、などと言って。
それでも、何度も思いを伝えるうちに男性は、お姫さまの純粋な気持ちを受け止めてくれるようになったのです。
そうしてお姫さまは、若いお妃さまになりました。
男性──いえ、王さまはお妃さまをとても大切にしてくれました。お腹に赤ちゃんも授かり、溢れんばかりの幸せを感じる日々。
ですが、幸せはそう長くは続きませんでした。
ある日、王さまは突然姿を消してしまったのです。
お妃さまはカンカンに怒りました。理由も話さずに、自分を置いてどこかに行ってしまうなんて絶対に許せません。
そうしてお妃さまは、王さまの残したわずかな痕跡を辿って、彼を探しにいくことにしました。
日ごとに大きくなっていくお腹を抱えて、たった独りで──……。