【完結】青の炎妃はご機嫌ナナめ   作:蒸しぷりん

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ご無沙汰しております。
時間を置いての更新となりましたが、お楽しみいただけると幸いです。


紫炎飾るシャンデリア

 セリエナに下りる夜の帷は広い。

 皆が起き出す頃にはまだ太陽が昇りかけていた空は、昼前になってようやく明るくなってきたのだった。

 

 そんな中、うろうろと歩き回る巻き毛の若者が一人。

 若者──リュカはすれ違う面々を呼び止めては、眉を心配げに下げていた。

 欠伸をしながら階段を上がってくる、夜勤明けの先輩を見つけてリュカは駆け寄る。

 

「先輩すいません、ジェナ見ませんでした?」

「ジェナちゃん? 見てないなぁ。どうしたの?」

「朝から姿が見当たらなくて……」

 

 朝起きると、ジェナの荷物は綺麗に片付けられていた。ベッドに触れてみても体温は既に消えており、自分が起きるよりだいぶ前に宿を出たことが分かったのだ。

 そんな時、ジャックがドアにしがみついて盛んに翅を動かしているのが目に留まり、宿を飛び出して来たのだった。

 

 本来ならば司令官である調査班リーダーに聞くのが一番良いだろう。だが、今日に限って姿が見当たらない。

 流石にジェナの行き先までは分からなかったようで、ジャックの案内は掲示板までで止まっていた。

 掲示板には、クエストや調査に出かけた者の情報が貼り出される。

 だがそこにはジェナの名前はなく、結局行方が知れないままとなっていた。

 夜勤制があるとはいえ、人の目は限られているため、臨時の仕事までを把握するのは難しい。

 一部の人間が知っているとしても、不規則な仕事ではその時点で上に報告が行っているとは限らないため、情報を持っているのが誰かまでは分からない。

 

「でもこの時間だし、掲示板更新されてるんじゃない?」

 そこで調査団の報告・連絡・相談システムを支えるのが、情報を統括して貼り出す仕事である。

 出かける前に自分で貼っていく者もいるが、多くは受付嬢が受注した書類を定時でまとめて掲示する。特に緊急事態であれば、後者であることがほとんどであった。

 

 先輩の言葉に合点がいき、リュカは目を丸くする。同時に、胸が妙にドクドクと鳴り始めた。

 はじめは慣れない拠点に一人でいるのが不安だった、というのも勿論あった。だが先輩の言葉を聞き、どうにも嫌な予感がしたのだ。

 ジェナが自分に何も言わず、置き手紙も残さずに出かけるならば、それこそ緊急性の高い依頼に違いない。しかも本来彼女が受け持つ地域は、好戦的なモンスターの集う導きの地だと聞く。

 今までこんなことは一度もなかった。フィールド調査もモンスターの狩猟も、ジェナは必ず自分に伝えてくれていたし、着いてくるかと誘ってもくれていた。

 余程切迫した調査だったのか。一人で行こうとする気持ちも分からないでもないが、それでも何故起こしてくれなかったのか、と思う。

 同時に、自分の寝つきの良さは兄にもよく笑われていたことを思い出し、ばつが悪くなる。

 

(だとしても、ここまで一緒にやってきた仲じゃないか。何も言わずに置いていくなんてひどいや)

 リュカは眉間に皺を寄せてむくれた。

 もっと自分を頼ってくれれば良いのに。自分もそこまで柔ではないことは、アステラ防衛戦で証明したつもりだったのに。

 焦燥感と苛立ちに、思わず下唇を噛む。

 

「アドバイスありがとうございました。それじゃ」

 リュカは先輩に軽く頭を下げるやいなや、未だ泥のぬかるむの中央エリアへと駆け出した。

 そんなリュカの様子に、ジャックは落ち着かなそうに羽を擦り合わせていた。

 

 虫の知らせは、人々が思っている以上によく当たるのだ。

 

 荷車を引くコポポが、何やら落ち着かない様子で頻りに鳴く声と、それを宥める男性調査員の声が、泥混じりの雪の中へと吸い込まれていった。

 

 

***

 

 

 風で舞い散る砂粒の中には、蟻塚の脆くなった部分から剥がれたものも混じっている。

 それを即座に瞬膜で防ぐと、捕食者はフンと荒く鼻息を吐いた。

 

 炎の龍は、煮えたぎる溶岩の泉もしくは熱砂の湖に姿を現す。自身の経験に基づき、捕食者は溢れる涎が蒸発してゆくのも厭わず獲物を探し回った。

 

 このやや規模の小さな砂地は、最近捕食者が構えた縄張りの中にあった。捕食者はそこで、元々の主である金色の竜と青色の龍が争っているのを目にしたのだ。

 青色の龍の腹は大きく膨らみ、今にも赤ん坊が産まれようとしていた。

 龍の仔は良い。あれほどまでに小さくても、舌を満足させてくれる旨味と栄養に富んでいる。

 年を重ねた金色の雌は、腹の足しにはなるがかかる労力と報酬が釣り合わない。何故なら彼らには、捕食者が求めるたまらなく甘美な血が流れていないのだ。

 

 捕食者は、ちらりと黒く硬化した棘を見た。

 少し前までは、竜には劣らずとも龍の血を啜ることは叶わなかった。

 だが今は違う。筋肉は逞しく発達し、地を砕く力も手にしたのだから。未だ若くはあるが、弱い龍であれば抑え込めるだけの臂力を備えている。

 

 そして、今ようやく見つけた。あの、うまそうな子持ちの龍を。

 こんなに目立つ色をしているのに、珊瑚ならともかく乾いた岩陰に隠れられるとでも思ったのか。大方、隣の二本角(草を喰む竜)の入れ知恵だろう。

 異なる世界を見る瞳を持つことを、理解していないのだ。とはいえ、自分もこの知恵を授けてくれた龍が居たから識っているのだが。

 

 極力音を立てないように岩を盾に近づいていく。だが警戒心の強い母親なだけあって、気付かれるのが一瞬だったのは言うまでもない。

 母龍は己を見て逃げようとしたが、すかさず棘を飛ばしてやった。こんな馳走を逃すものか。

 すると二本角がけたたましい咆哮をあげ、こちらへと突っ込んできた。捕食者は翼を広げ、難なく横へとかわす。

 なんと身の程知らずなことだろうか。異種同士での庇い合いなど、片腹痛い。

 

 捕食者は涎をぼたぼたと垂れ流しながら、舐め回すように雌たちを見た。

 二本角は再び頭を下げ、こちらへ突っ込もうとしている。奴らは正面からの衝撃には強いが、横からの衝撃には対抗する術を持たない。

 ならば、厄介な金色の雌が来ないうちに片付けて、母龍も薙ぎ倒してしまえば良いのだ。

 

 捕食者は空へと飛び上がり、歓喜の吠え声を轟かせた。

 

 

***

 

 

 日頃より強者の集う導きの地は、今や血に飢えた龍の狩場となっていた。

 

 岩陰に隠れていても、油断していれば鋭い棘や凄まじい熱波が押し寄せる。

 幸いまだこちらには気付かれていないようだったが、時間の問題だろうとジェナは思っていた。

 

 "悉くを滅ぼす"と組織が呼んだ金剛の棘を持つ龍は、未だ姿を消したままだ。

 だが、かの種族にはそもそも尽くを滅ぼす龍の異名がある。それは即ち、生まれ持った力そのものの強さがあるということ。

 

 かの種族は、炎だの風だのといった不思議な力は持たない。そんなものは、必要がないのだ。

 ただ鍛え抜くべきは、己の肉体のみ。経験は生き抜くことさえできれば自ずと付いてくるもの。

 あの金獅子でさえ蒼角の獣(キリン)から得た力を操るというのに、それすらも厭う生き様を調査団は幾度となく見せ付けられていた。

 

 そしてそれは、いま目の前でも繰り広げられている。

 角竜の巨体が、宙に浮いていた。飛竜として空を飛んでいるのではなく、下から拳で突き上げられている。

 

(いくら繁殖期じゃないとはいえ、あのディアブロスを持ち上げちゃうなんて……!)

 

 ジェナは言葉を失っていた。

 

 勢いをつけて運動エネルギーを用いるならまだしも、この滅尽龍は少し前腕を引いただけで角竜の首根っこを持ち上げてみせた。

 角竜は苦しげにもがき、悲鳴を上げている。あれではさぞかし苦しいことだろう。

 ネルギガンテの前足は物を掴むのに適さないため絞められてはいないのだろうが、あの自重を首だけで支えさせられているのだから。

 現に、角竜の頑丈なフリルはみしみしと音を立てていた。

 

 滅尽龍はちらりと後ろを見やると、彼女を思い切りそちらへと投げる。

 その方向には、逃げ遅れた腹の大きな炎妃龍の姿があった。

 

「あっ!」

 

 炎妃龍は咄嗟に後ずさるも、足をもつれさせて滝壺へと落ちてしまう。

 炎の龍は水に濡れることを良しとしない。火種となる粉塵も牙も濡れてしまえば、炎の鎧は纏えないのだ。

 己の体温で灼熱の風を生み出すことはできるが、その温度もたちまち蒸発熱へと変わってしまう。炎妃龍の切り札は無くなったも同然だ。

 

 その場だけ陽炎ができていたエリアの気温が急激に下がり、嫌な風の流れが頬を舐めていく。

 アステラで戦意を丸出しにしていた風翔龍の生み出すものとはまるで違い、どこか嘲笑うようなその風。

 

 炎妃龍は未だ動けずにいる角竜を見たのち、腰を落として低く唸る。

 ずぶ濡れになりさらに動きの鈍くなった今、彼女はその場から動かないことに決めたようだった。

 

 滅尽龍はこれで狙いやすくなったと言わんばかりに吼えた。

 それに対し、炎妃龍も負けじと鋭い牙を剥き出しにして咆哮をあげる。たっぷりと水を吸い、雫の滴る鬣さえ美しい。

 隆々とした肉体を躍らせる暴君と、不利な立場でも誇りを失わない王妃。まるで、絵画の中の世界のようだった。

 そんな様子を、ジェナは固唾を飲んで見守る。

 今の自分にできるのは、責任をもってこの場の状況を記憶し記すことのみ。下手に手を出して命を落とせば、組織の駒がひとつ消えるのだから。

 自分は、新大陸古龍調査団。その名の通り、古龍らの生き様を識りたいと願い駆ける者だ。

 流石に編纂者ほどに情報を巧く綴ることに長けてはいないが、ありのままを伝えようと心に決めた。

 

 炎妃龍が息を吸うと、牙の間がコオォと輝く。直後、滅尽龍へと強烈な炎の柱が吐き付けられた。

 滅尽龍は地を蹴ってかわしたが、怒れる妃がそれを許す訳がない。すかさず着地点を計算し、そちらに高出力の火焔を放った。

 避け切れずにそれを鼻面に喰らった滅尽龍は大きくのけ反る。

 滅尽龍が目を瞑った一瞬の隙に、炎妃龍は長い尻尾を鞭のようにしならせ、巨大な角のある顔を張り倒した。

 水を吸って重くなっているうえに、その水分は既に炎妃龍の体温で熱湯と化している。堅い棘や甲殻で覆われた滅尽龍の顔面といえど、ひとたまりもない。

 

 炎王龍が炎ならば炎妃龍は粉塵、と記したのは誰であったか。その説を覆すように、この炎妃龍は巧みに炎を操った。

 炎妃龍が吐き出した炎はいつの間にか地面に引火しており、青い撒菱がフィールド中に広がっていた。

 靴を履いていても、たちまち溶けてしまうような高温。だが、件の滅尽龍は体液の煮えたぎるゾラ・マグダラオスの背も平気で歩き回っていた上、龍結晶の地のガジャブー達を追い出して居座っていた。

 炎くらいでは、あの一見柔らかそうに見える肉球は火傷すらしないのだろう。

 

 ジェナは隠れ身の装衣に塗した砂や草が極力落ちないようにしながら、じっとりとした額を手の甲で拭う。

 これまで痕跡は辿ってきたが、炎妃龍ナナ・テスカトリを直接目にしたのは初めてだったため、ここまでフィールドが暑くなるとは思わなかった。

 番の炎王龍がアステラに飛来した際は、海沿いだったことも関係しているかもしれないが、炎は青くなるほどに熱を増す。

 今すぐにクーラードリンクが飲みたい。しかしポーチを探っていては注意力が散漫になってしまう。

 唯一、リルン=グレイシアを背負った背中だけがひんやりとしているのが救いだろうか。暑くなるのを前提に低めの音程でチューニングしたが、おそらく焼け石に水だろう。

 

 炎妃龍は口端に火を燻らせ、ここぞとばかりに体勢を崩した滅尽龍に組みかかる。だが、その判断が間違いだった。

 滅尽龍は未だ目は開かないながらも、炎妃龍の胸を蹴り飛ばした。

 

「ああっ……」

 ジェナは思わず口を手で覆った。

 重い蹴りをもろに食らった炎妃龍は呻き、後ずさる。咄嗟に腹を庇う動きが痛々しかった。

 胸の甲殻は欠けていないが、あれでは骨折まではいかずとも胸骨や肋骨にかなりの衝撃があったことだろう。

 

 滅尽龍は即座に体勢を立て直す。だが炎妃龍も首を振ると翼を大きく広げた。

 いつの間にか水滴は乾き切っている。ならば、次に来るのは──。

 

 ジェナは彼らに気づかれるのも構わず、咄嗟に岩陰へと逃げ込んだ。

 直後、これまでとは比べ物にならないくらいの熱風が吹き荒ぶ。防具そのものは熱に強いが、露出した肌がチリチリと焼けるように熱かった。装衣など、見た目以外に役に立ちはしない。

 

 薄目で辺りを見ると、先ほどまでジェナが居たところに生えていた苔は一瞬にして乾き、一部は焼け焦げていた。もし避けていなければ、自分もああなっていたかと思うとぞっとする。爛輝龍を相手していた時に地獄を見たのだから、二度もあんな目に遭うのは御免だった。

 ヒトの身体は、火竜の炎すらもまともに喰らえば簡単に蛋白質がいかれて正常な働きをしなくなる。リュカから彼らの行動を聞いておいて良かったと、心底思った。

 蒼炎が落ち着くと、ジェナは再び装衣を目深に被り様子を窺う。

 

 辺りに立ち込める焦げた臭いは、周囲の草木や地面が燃焼しただけではないだろう。滅尽龍は、盾にしていた翼をちょうど広げるところだった。

 あの地獄の炎を浴びてもなお、膝を着きすらしないのは流石古龍というべきか。

 かの龍の棘は物理的な衝撃によって折れ、新しい棘に生え替わる性質を持つ。だが今喰らった凄まじい熱波では、むしろ黒い棘は熱を吸収するため身体にまでダメージが通っていたのではなかろうか。

 

 角竜はというと早々に地中へと退散していたようで、やがて地響きと共に姿を現した。ここで逃げてしまえば良いものを、炎妃龍の隣へと立ちはだかる。

 ディアブロス特有の地中からの強襲を行わないのは、誤って炎妃龍に当たるのを危惧してのことなのだろう。

 

 炎妃龍が粉塵を撒こうと腰を落とした瞬間、滅尽龍は四足で火の粉の舞う中を駆け、その逞ましい腕を振り上げる。

 やや反応の遅れた炎妃龍は慌てて飛び退こうとするも、滅尽龍の前脚が蒼い翼を掴んだ。

 そこへ角竜が砂を撒き散らしながら双角を振り上げるが、滅尽龍は炎妃龍を捕らえながら体当たりをかました。

 

 だが、いくら古龍のような属性を操る力を持たない種と言えども、砂漠の暴君の名も伊達ではない。巨体による衝撃に一瞬怯みはしたものの、重厚な甲殻はそう簡単に棘を通しはしなかった。

 角竜の骨格は、縄張り争いをするのに適応した進化の仕方をしている。つまり、正面からの衝撃にはすこぶる強い。

 滅尽龍の意識が炎妃龍に向いた瞬間、角竜は強く地面を踏み締めた。

 発達した筋肉を収縮させ、滅尽龍の無防備な腹側がこちらに見えた瞬間。溜めたエネルギーが、一気に解放される。

 

 鋭い角と角が、ぶつかり合った。火花でも散りそうな勢いの衝突に、空気が震える。

 飛竜や古龍といったカテゴリーは、ヒトが後から付けたものだ。名付けられた彼らにとって、生まれ持った能力に差異はあれど、そんな区別など知ったことでは無い。

 砂をも踏み締める蹄の下で土が割れ、ヒビが入っていく。角竜の発達した筋肉が蒸気を発しそうなほどに縮み、血管が浮き出ていく。

 これは角竜が押し負けるか。そう思った次の瞬間、地面に薙ぎ倒されていたのは滅尽龍だった。

 

(なんですって!?)

 ジェナは目を見開いた。まさか黒く染まる時期でも無いのに、古龍に力で勝ってしまうとは。

 滅尽龍は体制を立て直すと忌々しげに息を吸い、思い切り声として吐き出した。その荒々しい牙が不揃いに並ぶ口元からは、湯気すら出ているように錯覚する。

 ついに滅尽龍は、捕食対象としてだけではなく攻撃対象として彼女達を見定めたようだ。一対ニだというのに、まるで気後れする様子は無い。

 

(両者は大体互角といったところかしら。ただ、ナナがいざという時に弱点になるかもしれないわ)

 ジェナは唇を噛んだ。大方、滅尽龍の狙いは孕った炎妃龍だろう。多くの生物は赤ん坊や雛が生まれてから母親のいない隙を狙うが、苛烈な性質で知られる炎龍の雌がそんなことを許す筈が無い。ならば、万全な力を発揮できない今が狙い目というわけだ。

 

 吼え声に意識を引き戻され、ジェナは顔を上げた。滅尽龍の爪が、角竜の襟飾りを掴んでいる。必死にもがく角竜だったが、角の付け根を滅尽龍の上腕が押さえ込んでいるために叶わない。メリ、と嫌な音がして、その身体は羽ばたくことをせずに宙を舞う。ぐったりと力の抜けた角竜は、竜一頭分ほどの高さの崖の下へと投げられてしまった。

「熱っ……!」

 直後、凄まじい熱波が肌を焼き、ジェナは装衣の裾を握った。閉じた瞼の隙間からかろうじて見えたのは、青紫。気高き炎が、最高潮の怒りに染まった色だ。

 それはまるで、一瞬で森が灼熱の黄金郷へと変わってしまったかのよう。黄金で彩られた地中の世界をそう呼ぶならば、涼しげにすら見える色で彩られたそこは青の宮殿と呼ぶべきか。

 草木の焼け焦げた宮殿の中央には、揺らめく影が一つ──否、上下に二つ。風で炎のカーテンが翻ると、それらは露わになった。

 空には月の女王、大地には炎の皇妃。

 

 怒りで爛々と燃える眼差しが、滅尽龍へと向けられていた。

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