【完結】青の炎妃はご機嫌ナナめ   作:蒸しぷりん

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それは生命の胎動たらん

 

 

 

 白い光は風のように舞い、その速さでもって赤龍の眼球を貫く。たとえ目を閉じていたとしても、その鋭さに龍の眼瞼は耐えられなかっただろう。

 

 赤龍の口から吐き続けられていた炎が、急激に途切れる。そして耳を劈くような絶叫が、空間にこだました。

 生物としてフィックスしているのでは、と囁かれた赤龍にも、痛覚神経は存在することはこれまでの攻撃によって判明している。痛みは、危険から身を守る原初の感覚だ。それが、仇となった。

 

「なに? 何が起きたの?」

「分からない。……俺たち、生きてるんだよな?」

 自身の最期を覚悟していたハンターらは、いつまでも訪れない灼熱に、困惑を隠せずにいた。瞼を開けるのも、おそるおそるといったところ。

 その一方で、あっと声を上げた者達がいた。彼らは、せめて自身の命を奪う原因を見届けてやろうと、ずっと赤龍を見据えていたのだ。その視線の先には、白い光──否、虫がいた。

「あれ、誰かの猟虫じゃないのかい?」

 青い星の言葉に、エイデンは双眼鏡を覗き込む。全ての武器種を扱える彼だからこそ、瞬時に理解できた。

「シナトモドキだ! ってことは──」

 

 その主人が谷底へと降り立つ前に、再び周囲が青い炎に包まれる。だがそれは、赤龍のものではない。

「ら、乱入! ナナ・テスカトリです!」

「なんだと!?」

 双剣使いのハンターの報告に、調査班リーダーは目を剥いた。古龍との争いの中で別の龍が乱入してくること自体は、新大陸においてはさほど珍しくない。縄張りへの侵入者を滅せんとする龍や、はたまた、おこぼれ狙いの捕食者など、その理由は様々だ。

 だが、他の生物の気配が殆ど確認されない谷底に別の龍が現れる事態は、あまりにも想定外だった。炎を纏った炎妃龍は、ホバリングをしながら甲高い咆哮を上げる。

 

「クシャルダオラも来ます! みんな、注意して!」

「クシャルダオラだって!?」

 炎妃龍に気を取られていたハンターらは、上から降ってきた人の声に、首を巡らせる。

 翼竜の鞍に括られたロープに掴まっていたのは、一人の青年。ジェナはその姿に、目を見開いた。

「リュカ……!」

 胸が高鳴り、唇がわななく。けれど、乾き切った身体からは涙は出なかった。もう生きて出られないかもしれない、と極限まで追い詰められた心が、少しだけ緩むのを感じる。

 だがそれは同時に、リュカの命も危険に曝されることも意味していた。盾が無ければ、一瞬で全滅してしまうリスクは変わらず存在する。今すぐに引き返してほしいけれど、行かないでほしい。そんなジレンマが、胸の中で激しく渦巻いた。

 

 遠くからでは、風で煽られたフードに隠れた彼の表情は分からない。けれどジェナは、リュカが傍に居てくれることが、ただただ心強く、震えるほどに嬉しかった。

 

***

 

 時は遡ること、四半刻ほど前。

 

 炎妃龍が風翔龍と共に一目散に向かったのは、何やらおどろおどろしげな光の漏れる谷の底。嫌な予感がして、リュカは、ハンターではないユウラをこれ以上連れて行くことはできないと判断した。

 だがここで引き返しては、龍たちの行方を見失ってしまう。新大陸に五期団が来てから着々と調査や研究を重ね、ようやく古龍の足取りを少しずつ辿ることができるようになった。それでも、龍の翼にヒトが追い付くことは容易いことではない。

 どうしたものかと頭を悩ませていた時に見つけたのが、谷の中腹に設けられたベースキャンプだった。こんなところにもキャンプはあっただろうかと、リュカは首を傾げる。そこには、まるで小規模の拠点のように人が集まっていた。調査にしては人数が多いし、活気があるというよりも、ピリピリとしているように見える。そこまで考えて、リュカは眉を跳ね上げた。

「……いや、そうか。ここが!」

 このベースキャンプはおそらく、赤龍調査の簡易拠点だ。そして彼らの腕章を見れば、誰がどの職種なのか大まかに見分けはついた。

「ユウラさん、これ以上は危険です。あのベースキャンプにいてください!」

 それだけ言うと、リュカは指笛で翼竜にトップスピードを出すように指示をする。ユウラは初め戸惑いを見せたが、谷底を裂くかのような勢いで降りていくリュカの後ろ姿に、自身の為すべきことを認めた。

 そうしてリュカは現場で、ユウラは人伝の情報として。それぞれ調査団が置かれた状況を知ったのだった。

 

***

 

 赤龍は眼から血を流し、唸り声を上げる。新たな敵対者が一気に増え、戦いているようにも見えた。

 

 ブーメランのように戻ってきたジャックが羽を振るわせ、霧状にした赤龍の体液を撒き散らす。アドレナリンに類似した成分を含むそれを吸い込んだリュカは、鼓動が速くなっていくのを感じた。

 リュカはスリンガーのフックを外すやいなや、空中で即座に背の棍棒へと手を伸ばす。そして、鋒を赤龍へと向けた。

 操虫棍の刃が、赤龍の翼を貫く。それまでハンター達の弾撃や斬撃によってボロボロになっていた翼膜は、それらの傷が繋がり大穴が空いた。地脈にエネルギーが残っていた時には回復できたものの、最早その手段すら無い。

 赤龍が悲鳴を上げてよろめいた先に、氷混じりの巨大な竜巻が発生する。その竜巻が解けたかと思うと、角に冷気を宿した龍が姿を現した。

 三者は睨み合い、唸り声を上げる。赤龍も常であればすぐに侵入者の排除に取り掛かっただろうが、生憎今は衰弱していた。

 

「ちょ、ちょちょ! 展開が早過ぎて追いつかないんですけど!?」

「今回ばっかりはアタシも同意するよ……!」

 とぼけた弓使いが目を白黒させる中、姉御肌な剣斧使いも彼を安全なところに引き摺りながら頷く。弓使いは双眼鏡を覗き込み、目を丸くした。

「あれ、なんか見覚えあると思ったら。あいつ、アステラに殴り込みに来たヤツじゃね?」

 剣斧使いは眉を跳ね上げる。

「はぁ!? 王の雫で死にかけたと思ったら、今度はそっちか。つくづく運が無いねアタシら!」

「おい誰だよ悪運メシ食ってきた奴!」

 たまたま耳に拾った会話に、ジェナは外方を向いた。ちなみにそんな食事はアステラ・セリエナでは出ない。

 それはさておき、アステラ防衛戦以降、調査団は件の風翔龍に対して警戒態勢を敷いていた。古龍同士の争いに手を出し、あまつさえ彼の敵側に加勢をしてしまったのだから、恨みを買っているに違いない、と。

 だが風翔龍は調査団のハンターらには目もくれず、炎妃龍の傍らに寄り添うように飛んだ。個体は別とはいえ、激しく敵対していた筈の異種の龍同士が。一体どんな心境の変化があったのかと、皆が目を見張る。

 

 その時、赤龍の尾がしなり、岩にヒビが入り崩される。弱っているとはいえ、この威力だ。その岩陰に隠れていた者達は、弾かれたように駆け出した。

 他の岩陰は現在隠れている者をぎりぎり守り切れるくらいで、投げ出された者達が逃げ込める場所は無い。

 龍達の争いによって、天井の崩落が激しくなっていく。隠れる岩陰が増える代わりに、落ちてきた破片で怪我をする者も比例して増えた。怪我人を安全なところに逃がそうにも、絶対な安全地帯など存在しない。援護隊の支援物資も、底が尽きかけていた。

 

「攻撃に巻き込まれるな! こうなったら、逃げることに専念しろ!」

 龍達の咆哮ののち、調査班リーダーは全員に聞こえるように声を張り上げた。いつまたあの恐ろしい雫が放たれるかも分からない。一旦退避をしようにも、十人を超える人数が一度に退こうとすれば、龍達の気を引いてしまうだろう。かといって、少しずつ退避できるほど細かく翼竜に指示をする余裕もない。

 緊迫した状況の中、誰もが自分にできる最善策へと頭を巡らせていた。一歩間違えば、自分だけでなく仲間の命まで焼き払われるだろう。

 

 そんな中ただ一人、リュカだけは戻ってきたジャックを労り、安堵に胸を撫で下ろしていた。そして、静かな眼差しをジェナへと向ける。

 やはり彼女はここに居た。悪い予感が当たってしまったけれど、少なくとも自分が傍で守ることはできるかもしれない。もう合わせる顔もないと思っていたのに、ジェナが生きていてくれたことが、どうしようもなく嬉しかった。

 ふと、目と目が合う。彼女が何を思っているかは分からない。けれど、これを最後にはしたくない、と。リュカは強く思った。

 

 

 

 炎妃龍は、もはや敵の多さに怯えることはなかった。小さな生き物達も、自分に敵意を向ける者ばかりでないことも知っている。そして今は、在りし日の番を師のように慕った龍も隣にいる。不思議な絆のような何かが、炎妃龍の心を鼓舞していた。

 炎妃龍は大きく息を吸い込む。その姿を見た瞬間に、目の前の赤い龍が自分よりも遥かに強大な力を持っていることは悟っていた。それでも、自身の大切なものを守る為ならば、いくらでも炎を身に纏おう。これ以上、自分から何も奪わせはしない。

 炎妃龍は風翔龍と一瞬目を合わせる。そして鬣を膨らませ、青白い炎を鎧にして赤龍へと飛びかかった。

 

 赤龍は翼を動かしたが、その翼膜からは奇妙な笛のような音がするばかり。もう飛べなくなっているのだと気づいた炎妃龍は、すかさず背後へと回り込み、その後ろ頭を尾で叩きつけようとする。

 だが、赤龍は巨躯に見合わず俊敏だった。炎妃龍の攻撃をいなしつつ、空中で自身を撹乱させようとしてくる風翔龍へとブレスを吐きかける。風翔龍に当たらなかった青白い光線は、天井の岩を崩した。

「頭上注意! 岩に当たるな!」

 調査班リーダーの指示に、下にいたハンターらは必死に逃れ、これ幸いとそれぞれ自分の近くの岩陰に身を潜める。こうなってはもう、自分達に手出しはできない。これまでの調査団の活動の中でも、大型モンスター同士の争いに巻き込まれ、完治しない大怪我を負った者も少なくはなかった。機を見て逃げるか、それとも結末を見届けるか。どちらを選ぶにせよ、危険が伴うことには変わりはない。少なくとも、岩陰にいればあの雫は一度だけなら逃れられる。

 

 岩を避け切った炎妃龍は、赤龍に向かって炎を吐きかけた。身体の回復はまだ不十分とはいえ、身籠っていた頃よりはずっと素早く飛べる。長い首でもってこちらへ噛みつこうとしてきた赤龍の顔面を目掛け、粉塵の混ざった風圧を浴びせた。それらは赤龍の足元に貯留していたガスにも着火し、爆発を起こす。

 赤龍が怯んだ隙に、風翔龍は今まさに燃焼している地面へと向けてブレスを放った。すると、旋風が威力を増す最中で火種を孕み、赤く燃え上がる竜巻へと変貌する。

 

「熱ッ……!」

 近くの岩に隠れていたハンターらは、王の雫とはまた異なる熱波に顔を顰めた。今のうちにと、ポーチから取り出したクーラードリンクを逆さにする勢いで飲み干した者もいる。

「完全に二体一だね」

「ええ。これじゃもう、翼竜も呼べやしないわ」

 セルマの呟きに、ジェナも溜め息を吐いた。ようやく水分補給ができたからか、少し思考がすっきりとしたような気がする。

 だが、ここにいるハンター達のポーチには、中身の入った瓶はもうほとんど無くなっていた。先に脱水症状で倒れていくか、巻き込まれるか、あるいは。

 

 その時、赤龍は地上にいるというのに青い炎を吐き始めた。炎妃龍や風翔龍に当てるでもなく。龍の口の先には、白く輝く繭があった。それを見て、ハンター達にどよめきが起こる。

「なんだ……?」

「まさか、この場で雫を撃とうってのか!?」

 命の危機に、気でも狂ってしまったのか。ハンターらは困惑を隠しきれない。

 そんな中でも、調査班リーダーは叫ぶ。

「エイモズもこちらへ来い! 皆、位置取りに注意しろ! 絶対に当たるなよ!」

 司令官の言葉に、リュカや呆気に取られていた者も赤龍と対角となるように岩陰に身を隠す。上空から吐き出された雫でさえ周囲のものが吹き飛ばされたのだから、こんな至近距離では何があるか分からない。次の瞬間には自分の命は無いかもしれない、と誰もが思った。

 

 だが、古龍は簡単には諦めなかった。それは自然から与えられた力への信頼か、生存本能が強く働きかけたのか。

 雫が形成され始める直前に、風翔龍は赤龍に向かって飛び掛かる。急な攻撃に赤龍はバランスを崩し、顎を地面に勢いよく打ちつけた。赤龍の目の前に火花が散る。

 脳が揺れ、激しい痛みと共に、一部の砕けた牙の欠片が口の中に転がった。最早、どこにも逃げられはしない。はっきりと定まらない視界の中で、信じられない光景を見た気がして、赤龍は首を振る。

 

 その視線の先には、我が子の眠る繭があった。白く輝いて時折胎動が認められていた繭は、今や青い炎に包まれている。それが自分の吐き出したものではないことに気づき、赤龍は絶叫した。

 岩ではない何かが焦げる臭いが漂い、傷つき効かなくなってきた鼻でもそれを嗅ぎ取ることができた。赤龍は繭の繊維が焼けていることを悟る。中もかなりの高温になっているだろう。これまで赤龍から純粋な龍脈エネルギーのみを与えられていた繭には、この炎や熱は毒以外の何物でもない。このままでは、繭の中で生まれようとしている生命が失われてしまう。

 

 赤龍はありったけの力で風翔龍を突き飛ばすと、我が子を害している龍の方へと四肢で駆け出した。炎妃龍は青炎を吐くのをやめ、空中へと舞い上がる。錯乱させようとする動きは、常の赤龍であれば次の手を読んで構えることができたかもしれない。だが、衰弱し余裕を無くしている今は、力づくで彼女を押さえることしか考えられなかった。

 赤龍は牙を剥く。自身の後ろで、体勢を立て直した風翔龍が何をしようとしているかも知らずに。

 

 

 

 辺りの空気が、急激に冷えていく。地面を這っていた炎は鎮まり、人間が踏めば消えるほどのものとなった。

 風翔龍の角の周囲には、白い冷気が漂っている。戦いで消耗していない風翔龍が力を溜めるのは、あっという間だった。

 青い炎に包まれていた繭は、龍の吐息により瞬時に水蒸気で包まれる。そしてそれらが冷え固まり、あっという間に霜で覆われた。

「なんだ、ありゃ……!」

 唖然としている同期をよそに、リュカは暗い顔で呟く。

「あんな急激な変化、繭の中にいる胎児がついていける筈がない。おそらくもう……」

 風翔龍が炎妃龍を連れて行った先に、こんなものがあるとは思わなかった。だが、考えてみれば合点が行く。いま各地で起きている異常の根源が、おそらくこの繭なのだ。風翔龍の動機は分からないけれど、炎妃龍はおそらく我が子を守るために、繭の中の赤子を燃やしたのだろう。

 この上なく正当な理由で、合理的だ。甘えた考えを持った方が、先に奪われるのだから。それでも、気持ちの整理がつくには時間を要するだろうとリュカは思った。

 

 

 

 炎妃龍に気を取られていた赤龍は、一拍遅れて空気があり得ないほどに冷たいことに気づく。潰れた目では見えず、もう片方の瞼も腫れ上がっている。その隙間から見えたのは、糸が強度を失い崩れていく繭だった。

 それらは落下した瞬間、砕け散る。その隙間から、胎児の柔らかい身体がずるりと転がり出た。もう外の環境に耐えられる程に育っていた筈だというのに、ぴくりとも動かない。青白い皮膚から幽膜が生えてくることも無い。

 赤龍は我を忘れてそちらへと駆け寄る。少しでも温めようと、青い炎を吐きかけるが、どの胎児も産声を上げなかった。むしろ、炎が当たっているところから皮膚が焦げていく。

 炎妃龍と風翔龍も、それ以上手を出しはしなかった。まるで自分達の用は済んだ、とでも言うかのように。

 

 リュカのいる場所とは別の岩陰でも、ハンターらは息を呑んでその光景を見つめていた。

「痛々しいね。見ていられない」

 セルマは顔を背けた。

「あのナナは……何が自分達に危険を及ぼすものなのか、ちゃんと理解していたのね」

 ジェナが呟くと、セルマはちらりとジェナの横顔を見た。感情豊かだった彼女が、淡々と考えを述べている。それはどこか、薄寒さを覚えた。

「捕食者・被食者というだけじゃない。きっと、もっと高度な思考の応酬が行われているんだわ。──そうでなければ、母親が他の種の幼体を殺そうとはしないと思うもの」

 それを聞いたセルマは、ジェナの考えは甘いと思った。だが彼女の思いを否定するのも違う、とも思った。

「さあ、どうだろうね。龍の思考なんて、わたしにはよく分かんないけど……。少なくとも、脅威の種が一つ消えたことは確か」

 こちらの大事な存在も奪われているのだから、完全に肩を持つことはできない。だが、項垂れる赤龍をこれ以上苦しめようとすることもできずにいた。

 

 その時、岩陰から一人の女人が歩き出す。

「お……おい、何する気だよアンタ!」

 エイデンが小声で呼び掛けたが、彼女は振り向かなかった。

 女人が近づいても、最早赤龍は反応を示さない。潰れた目では、存在を認知することすらできていないのかもしれないが。

 誰もが、固唾を飲んでその光景を見守っていた。女人は、歩きながら背に携えた大鎚を構える。

 赤龍の呼吸音が聞こえるほどに近づくと、女人は助走をつけて高く飛び上がり、得物を振り上げる。

 次の瞬間、鈍い音がしたかと思うと、赤龍の巨体が地に沈んだ。その首は、頭があるべきところから外れ、奇妙な形になっている。神経の伝達路を絶たれた赤龍は、まるで溺れているかのように喘ぎ出し、間も無くして吹子のような呼吸音が消えた。

 

 調査団のハンター達は、小さな命、大きな命それぞれの炎が消えゆく瞬間を、ただただ見守る。

 女人──青い星はやがて、目の焦点も合わなくなった龍の傍らに降り立つ。そして誰にも聞こえないほどの声で、苦々しげに呟く。

「……せめて、先にとどめを刺してやれば良いものを。我が子の最期なんか、親に見せるものじゃない」

 龍と人の違いは、一体何なのか。驚くほどに冷徹な判断を下すこともあれば、豊かで温かい情を見せることもある。想像もつかないほどに合理的で、圧倒的な力を持つ存在。生命の理ほど、人智の及ばないものは無い。

 深く薄暗い谷底で力尽きた命、生き延びた命。きっとそのどちらにも、違いは無かったのだろう。

 

 冷気と熱気が入り混じる空間で、その瞬間を見届けた者達は、しばらく何も言えずに押し黙っていた。

 




ムフェト編、ようやくひと段落着きました。
長い話でしたが、ここまでお付き合いいただき本当にありがとうございます。

もう少しだけ続きますので、お付き合いくださいね。
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