いま古代樹の森周辺には、二つの太陽があった。
一つは長い年月に渡り世界を照らす。一つは牙を持ち、炎国を治める。
それらによって温められた空気は、上昇気流をつくり出す。
朝方までは晴れていたのに、いつしか空模様は怪しくなってきていた。
それはさておき。
「うっそでしょおおぉぉおお!!!!」
「ジェナーーーーッ!!!!」
そんな悲鳴が上がったのは古代樹の森の空高く。ちょうどアステラが見えてくる辺りでのことだった。
何かが真っ逆さまに落ちていく。
それは人の形をしていた。否、紛れもない生身の人間だ。
(ツイてない。本当にツイてない……!!)
ジェナは自分の運の無さを呪った。耳元では轟々と風が唸っている。
まさか、飛竜と同じ高さから落ちることになるなんて。翼を授ける飲み物があるなら今すぐ欲しい。
日頃の行いだろうか?
ここ最近で心当たりは……無くはないが、こんな仕打ちを受けるほどのことをした覚えはない。一体自分が何をしたと言うのか。
ジェナは風に煽られながら、遠くなっていく相方と翼竜たちへ絶望の眼差しを向けていた。
何故こうなったのか。その理由は至極簡単だ。
所謂"八つ当たり"である。
哀れな通行人ジェナは、ものの見事に古龍からのとばっちりを食らうことになったのだった。
ジェナとリュカは四半刻ほど前に、森の中で天災が局所で起きたかのような痕跡を発見した。
それが明らかにとある龍の荒れを示していたものだから、二人はアステラへ報告する為に帰路についた。
調査団は基本的に、人に慣らした翼竜で移動を行う。空路のほうが圧倒的に早く目的地に着くためだ。
だが、そのことが仇となった。
突然、髪を揺らす風の方向が変わった。それに違和感を覚え、ふと振り返った直後のこと。
突風──否、そんな柔なものではない。目も開けていられないような剛風が、翼竜もろとも吹き飛ばした。
上空から太陽を覆い隠した大きな黒い影こそ、ジェナがこんなことになった元凶だった。
風翔龍クシャルダオラ。
風を操るその龍は、その青く涼やかな瞳に隠しきれない苛立ちを滲ませていた。
常であれば、縄張りに人が居たくらいで気にするような龍ではない。
龍の起こした風圧で翼竜の脚にぶら下げたロープは大きくたわんだ。
さらに怯えた翼竜が滅茶苦茶に飛び回ったことが拍車をかけ、ジェナは振り落とされてしまったのだった。
そしてあろうことか、同時にリュカも遠くまで飛ばされてしまった。
(なんて災難なの……! まだ死にたくない!)
腸が浮くような感覚が気持ち悪い。
ジェナは辺りを見回し、まずスリンガーのロープを巻き戻した。何かに捕まるなら、再び伸ばした方が良い。
だがロープを伸ばそうにも、まだ引っ掛けられる木のある高さまで至らない。
ジェナはひたすらに浅く息をしていた。ここで気絶でもしたら終わりだ。
そもそも、あんな奥地でクシャルダオラの痕跡が見つかること自体おかしいと気づくべきだった。
危機に敏感なアプトノスどころか、普段うろついているジャグラスも警戒して姿を見せなかったのだから。
古代樹に居る時のかの龍は、非戦闘時はエリア五で寛ぐ姿と頂上で休む姿しか確認されていない。
(もしかして、あのクシャルダオラは偵察をしていた……? だとすれば、暴風雨が起こっていないのも頷けるわ)
縄張り、もしくはその付近まで近づいたテスカトを迎撃するには、一見自分に都合の良い天候に変えてしまった方が良いように思える。
しかし、もし追い出すだけでなく攻撃を仕掛けることそのものを目的としているならばどうか。一点に集中した方が無駄な体力を使わずに済むため、より苛烈な攻撃を当てられる。
もしそこまで考えてかの龍が行動しているのだとしたら、余程強い恨みがあるのかもしれない。
古龍の感情は人間には測りきれないが、時には似た思いを持つこともあるのだろう。
そんなことを考えているうちに、随分と高度が下がった。
ジェナは身体を捻り、スリンガーを射出する。
すると、何かに引っ掛かった感触。これで上手くいけば良いが。
「っ……!」
肌が剥き出しになっている背中や腕を、枝や木の葉が引っ掻いていく。
咄嗟にスリンガーを伸ばしたは良いが、あまりにも身体が落ちる勢いが強すぎた。その刃は枝を捉えていたものの、その枝自体が下に引っ張られて外れてしまう。
最初に捉えた枝のほか、いくつかの木に引っ掛かったが、どれもジェナをぶら下げるまでには至らなかった。
しばらく落ちた先で、ようやく太い幹に刃が食い込み、止まれると思った。
だが。
「いッ、ああっ……!」
身体が勢い良く引かれた反動で、左肩から脇にかけて痛みが走り、ジェナは呻き声をあげた。
(いけない、左腕に負担をかけちゃう……!)
幸い、関節が外れてはいない。
だが、このままでは左腕がぱんぱんに腫れ上がってしまうのではないか。そんなことが脳裏をかすめ、ジェナはひゅっと息を呑んだ。
ジェナの左胸は、乳房とその周辺のリンパ節の一部がない。そのため健常であった頃よりも動きや生活が制限される。
感染に弱くなるだけでなく、左腕にダメージが加われば専門的な治療を要するほどの浮腫みが発生するなど、様々な後遺症への不安があった。
切除から寛解まで日数は経っているものの、アステラの医師からは十年以上経っても酷い浮腫みが起きることがあると説明されていた。
ハンターである以上、どうしても怪我をしたり身体を酷使したりする機会はある。実際、マム・タロト戦の後はかなり苦しい思いをした。
それでもこまめにケアをして、できるだけ後遺症が発症しないよう気を遣いながら生活していた。
今着ている防具も、左腕が露出しないように配慮されている。
冷や汗をかきながらも、ジェナは何とかもう片方の手でワイヤーを掴もうとする。
だがうまく身体を持ち上げられず、足を振って勢いをつけることにした。
実は、ジェナはあまり高所が得意ではない。敢えて下は見ないようにしていた。
一度スリンガーを掴んだらなかなか離さない楔虫と違い、ただの幹は深く刺さらないとすぐに刃物は抜けてしまう。
ふいに手応えがなくなり、ジェナは目を見開いた。身体はすぐに落下していく。
(あ……これマジでまずいかも)
ついに掴む枝が無くなった。
短い髪が風に靡くのが、ゆっくりとして見えた。
かなり下の方まで降りてきたとはいえ、下手に着地すれば脊髄を損傷しかねない。
そうなればハンターとして暮らすどころか、これまで通りの生活まで難しくなる。
だが、もう受け身をとるしか方法がない。
ジェナは観念して頭を抱え、ぎゅっと身体を丸めた。どうせ頑丈な身体だ、死にはしないだろうという期待を込めて。
直後、ジェナの身体は硬い地面──ではなく、ビロウドのような温かい何かに受け止められた。
それは衝撃を吸収し、ジェナは何度か跳ねた後に身体の前面から地面へと落ちた。
「いったたた……助かった、のかしら」
ジェナはヒリヒリとする手を叩いて土を落とす。
「……あら? でも今……」
自分は一体何の上に落ちたのだろう。あの感触は明らかに葉っぱではなかった。おそらくベースキャンプのテントとも違う。
それらを除外した柔らかい何かとは。
後ろから視線を感じる。
ジェナは嫌な予感がして、おそるおそる振り返った。
まず目に映ったのは、赤く立派なふさふさしたもの。
視線を上げると、天に向かって生える厳めしい牙と、こちらを見下ろす蒼い瞳がそこにあった。
目が、合った。
「あ……ッ!」
モフッ。
この場に似合わない気の抜けるような感触が、叫びそうになったジェナの口をすぐさま覆った。
というより、口だけでなく顔全体が覆われている。
視界いっぱいに緋色が広がっており、周りが何も見えない。おまけに口に少し毛が入った。
「……!?」
それは温度は高いが火傷するほど熱くはなく、まるで悴んだ指を温める懐炉のようだった。
息を吸うと、まず鼻腔を擽るのは薄い硫黄の匂い。それから鼻の奥で灰と焦げたアイルーを混ぜたような匂いがする。
何だこれは。いや察しはついているが、念のためジェナは恐る恐る手で探った。
するとゴツゴツとしたものと、その先から生えているらしいもふもふに触れる。
もふもふの正体。
それは、他ならぬテオ・テスカトルの尻尾だった。感触を堪能している場合ではない。
ジェナはテオ・テスカトルの翼の上に落ち、助かったのだ。
牙を持つ太陽。灼炎の帝王。炎国の王。
いくつもの異名を持つこの龍こそ、いまアステラを騒がせている炎王龍テオ・テスカトルだった。
その身に纏う龍炎は万物を焼き尽くし、粉塵による爆発は形あるものを忽ち崩す。
とうとう騒ぎの源を見つけた。しかもこんな形で。
舌の奥が乾き、心臓が痛いくらいに鳴っている。
当然だ、古龍と触れるほど近くにいるのだから。圧倒的な生命は、ただそこに在るだけで畏怖の念を抱かせた。
気づかれないよう背に手を伸ばすと、武器の無機質な感触があった。
だが微かに唸り声が聞こえ、ジェナは即座に手を離す。この動作のみで判るということは、おそらく人間と交戦したことがある個体なのだろう。
ここで敵対されれば命は無い。
翼に落ちてきたのに、怒られなかっただけ有り難いと思うことにした。
ジェナはテオ・テスカトルの尻尾を少し押し除け、おそるおそる顔を上げた。
その龍は、木の葉の影になる場所で身体を伏せていた。
見覚えのある風景から推測するに、ここは飛雷竜トビカガチの巣の近くの窪みらしい。
うまい具合に木が広範囲を覆っており、龍が身を隠すのには申し分なさそうだ。
だが近くに水場があり湿っているため、炎を纏う龍にとっては決して居心地の良い場所では無いだろう。
その炎王龍は、よく見ると体毛の色はくすんで皮膚も乾燥しており、身体のあちこちに傷がある。
それらの特徴から、老齢の個体らしいことは察しがついた。
そして何より、荒々しくうねる角は片方のほとんどが欠けてしまっていた。それは古い傷であるらしく、欠損部は丸みを帯びている。
報告書にあった通りだった。
「貴方は……」
思わず呟くと、再び眼前に尻尾をかざされる。ジェナは大人しくそれに従った。
元は凶暴な古龍だ。
いくら老齢の個体は温厚だと言われていても、気に触れるようなことをすれば、躊躇なく鋭利な牙がジェナの首を裂くだろう。
ハンターたるもの、こういう時に臨機応変に対応するのは慣れている。恐怖はあれど、それを一旦飲み込んで冷静な自分を作ることも日常茶飯事だった。
その時チラチラと赤い何かが視界の端に映り込み、ジェナはそちらを見た。
危機が迫ると腹の色を変えるキッチョウヤンマが一匹、赤い光の尾が見えるほどに激しく飛び回っていた。
ふいに炎王龍の長い耳がぴくりと動いた。
一拍置いて、木の孔から強く風が吹き込み、草や枝が大きく揺れる。この風圧は、ただの飛竜によるものではない。
炎王龍はそちらを見遣り、木の陰へと身を寄せた。同時にジェナも引き寄せられる。
直後、黒い影が遠くの空を横切るのが見えた。
キッチョウヤンマの知らせは、ここに炎王龍が座していることだけを指しているわけではないようだ。
龍の怒りが迫っている。それは小さな生き物にとっては忌避すべきものだ。
炎王龍がジェナの口を塞ごうとしたのは、風翔龍から見つからないよう静かにしろということらしい。
ジェナは炎王龍の尻尾と腹の間に挟まれ、身を固くしていた。
(──それにしてもこのテオ、どうして隠れているのかしら)
炎王龍の身体を見る限り、戦闘経験は豊富なことは窺い知れる。
傷の多い個体、それも古龍にとって大事な器官である筈の角に修復不可の傷があるのだ。
これは炎を操る能力が半減したとしても、この個体が生きていけるだけの強さがあることを表している。
それほどまでの強者が、何故。
あのクシャルダオラの目的は、おそらくこの炎王龍の居場所を炙り出すことだろう。
ジェナが覗き込むと、炎王龍はちらりとこちらを一瞥し、すぐに視線を戻した。その瞳には、どこか焦ったような色が滲んでいた。
調査団の者に対して敵意が無いというのは本当らしい。誰かを探しているかもしれないとも聞いている。
ジェナは少し緊張を解き、辺りを見回した。
相棒はどこだろう。自分と同じように落ちたのか、それとも無事にアステラへ着いたのか。
(とにかく今はリュカを探さなきゃ。でもこのテオ、あたしが動くのを許してくれるかしら……)
声を出すことは許してもらえなかった。
とことん目立つ行動を避けているとなると、ジェナがここから離れることすらできないかもしれない。
それに、今すぐに戻ろうとすれば、アステラの位置を教えることになりかねなかった。
防衛の準備を敷いているそもそもの理由は、万が一この龍が来訪した際に拠点を守るためなのだから。
どうしたものかと溜息をひとつ。
その時、炎王龍が唐突にびくりと身体を震わせた。
「熱っ……!」
急激に熱気が身体を包み、ジェナは思わず後ずさった。
臨戦態勢になったのかと、すぐさま背中の武器に手をかける。
だが当の炎王龍はジェナに見向きもせず、苦しげに肩で息をしていた。
彼が顔をしかめるたびに、鬣のあたりで炎がちらちらと揺らめく。
その様子を見て、ジェナは武器から手を離した。
きっと今の熱波は故意ではない。
この炎王龍は何らかの理由で、炎や熱を制御しきれなくなっているのだろう。
もしかしたら急激な気温の上昇も、この炎王龍の抑えられない力によるものかもしれない。
折れた角が原因か、それとも傷の痛みによるものか。
(それとも……)
ジェナは眉を下げた。
古龍が新大陸へと渡ってくる理由はいくつかあると考えられている。
新たな命を宿す繁殖のために来る者、ここで果てた命を糧にした膨大なエネルギーに惹かれて来る者。
そして、新大陸を死に場所として選び訪れる者。
この炎王龍には妻子がいるとのことだから、繁殖も一つの理由ではあるのだろう。
だが彼の年齢と今の挙動から、この先長くないことが感じ取れた。
(だったら尚更、この龍はどうして……)
妻子を置いて、本来ならば訪れることのない場所へと足を踏み入れているのか。
死期が近いならば、大事な相手と最期の時間を過ごすべきだろうに。死に顔を見せない為にわざとやっていることなのだろうか。
しばらくすると、炎王龍の容体は落ち着いたようだった。少しずつ浅かった呼吸が戻っていく。
やがてキッチョウヤンマの動きが落ち着き、腹の色は赤から黄へと変わった。
警戒を解いてはいないが、すぐに身に危険が及ぶことはないと判断したのだろう。
ジェナは躊躇っていたが、そっと炎王龍の後ろ足に触れる。
野生のモンスターであれば牙を剥きそうなものだが、彼は静かな眼差しを寄越すのみだった。
ひとつ息を吸い、じっと老王の蒼い瞳を見つめた。
「ねえ、貴方は誰を探しているの?」
言葉が届くとは思わない。
けれど、問い掛けずにはいられなかった。
「貴方には、貴方を追いかけてくれる相手が居るんでしょう。とても、とても大事な存在の筈よ。それなのに……どうしてこんなことをしているの?」
理解しているのかいないのか、炎王龍はひたすらにジェナの言葉に耳を傾けている。
ジェナは胸を抑えた。
「大事な相手に置き去りにされるのは、つらいものよ。思っていればいるほど、深く傷つく……」
リュカに話を聞いた時から、ずっと思っていた。この龍の番であるナナ・テスカトリは、どれほど傷ついたことだろうと。
表向きでは興味がないふりをしていたが、その実は炎妃龍に共感してしまっていたのだ。
ふらりと現れて村の危機を救ったあの人に、心を奪われた少女時代。
あの人がこちらへと振り返れば、世界が鮮やかに色づいたかのように思えた。
気まぐれに触れられれば、彼も自分を愛してくれているのだと。若さゆえの愚かな勘違いをした。
盲目な恋から目が覚めれば、残ったのは心に負った爛れの酷い火傷のみ。
月日は流れ、少女はひとりの女となった。
それでもまだ、あの日の熱情が胸を焦がす。
あの人がいつか自分のもとへ戻ってきてくれるのではないかと……そんな甘い幻想を抱いて、今も囚われたままでいる。
その灼けつくような気持ちを味わったからこそ、子を孕んだ身で番を追う炎妃龍が哀れでならなかった。
いまリュカがここに居たら、彼はなんと言うだろう。
ジェナはゆっくりと瞼を閉じ、心のままに言葉を伝えた。
「あたしには貴方の事情はわからない。口を出す権利もない。でも……そこまでして貴方が何をしたいのか、知りたいの」
木の孔の中には、鳥の囀りと鞴のような呼吸音のみが響いている。
炎王龍は何も答えない。
身動ぎもせず、先ほどジェナがしたようにこちらをじっと見ていた。
やがて、眼前の巨体がのそりと立ち上がる気配がする。
ジェナは顔を上げた。
炎王龍は柔らかな毛に覆われた翼を広げ、力強い四肢で地面を蹴った。ジェナよりもずっと大きな身体は、いとも簡単に空へと舞い上がる。
「着いてこい」と言われている様子でもない。やはり言葉は伝わらなかったのか。
もとより、モンスターと意思疎通ができるなどとは思っていなかったけれど。
炎王龍はあっという間に高度を上げ、空を泳ぐように飛んで行った。
その方向をぼんやりと眺めていたジェナは、ハッと身を見開いた。
あちらはアステラのある方角だ。
炎王龍はやはり調査団の拠点を見つけていたのか。そして好機を見計らい、向かうつもりでいた。
ジェナや他の調査員を襲わなかったからといって、拠点に何もしないとは限らない。
以前、普段は陽気な同期が、その時ばかりは神妙な顔をして語ってくれた。昔、故郷の村付近に渡りを控えた炎妃龍が足を踏み入れた際、森は燃え盛り大きな被害が出たのだと。
今回も炎王龍の目的が分からない以上、こちらは警戒するしかない。
慌てて立ち上がった時、聞き慣れた声がしてジェナはそちらへ振り返った。
「ジェナ、どこにいるのー! 返事してー!」
「リュカ! あたしはここよ!」
ジェナの声が届いたらしく、足音はこちらへと近づいてくる。
程なくして、ジェナがいた場所に通じている木のトンネルからリュカが上がってきた。
「ジェナ! よかった、怪我はない?」
「ええ。リュカ、
リュカは安堵した表情でジェナに駆け寄る。
再会を喜び合うのも程々に、ジェナはすぐさま相棒の腕を掴んで駆け出した。
「テオ・テスカトルが見つかったの。急いでアステラに戻らないと!」
「なんだって! それでテオはどこに?」
翼竜が見つけやすい位置まで木の幹を駆け上がったジェナは立ち止まる。
そして輪にした指を唇にあて、リュカを見た。
「──アステラよ」
ジェナ、そこ代わってほしい。
うらやまけしからん。
ちなみに副題は「テオ! あなたテオっていうのね!!」です。