ライス「お兄……? いやお姉……? 」   作:おもちゃ箱

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僕の投稿が遅れたのは、全部コンマイってやつの仕業なんだ。
僕は悪かねえ。エルドリッチとドライトロンってやつが悪いんだ。


第五話 お米とバーガーの邂逅

 ライスシャワー、魂の叫び。

 驚愕の大声は食堂全体に響き、周囲の人間の注目を浴びた。

 

 「もーうライスちゃん驚きすぎよぉ……」

 「え、いやだって、そんな……急に模擬レースだなんて……」

 「まぁ、急な話で申し訳ないとは思っているけれど。

 それでもこう言った経験は絶対に必要でしょ? 」

 「それもそうですけど……」

 

 仮とはいえ、専属のトレーナーがついている本格的なトレーニングを始めたライスシャワー。

 いつかはこの話題が出てくるだろうと考えてはいたが、余りにも急すぎる話だった。

 

 未だ練習を始めて日も浅い。こんな私が二週間後に模擬レースを控えてしまって大丈夫なのか? そもそも相手は誰なのか?

 彼女の疑問は尽きない。

 

 「要らない不安を抱えているみたいだけどねライスちゃん。

 私のトレーナーとしての目を甘くみて貰っちゃあ困るわよ。アナタの潜在能力は凄まじいものよ。

 しっかりと練習を積んでレースに臨めば、間違いなく素晴らしい結果を残せるわ。自信を持って」

 「でも……」

 

 ライスが未だ自信を持てないでいるところ、彼らに新たな訪問者が現れる。

 

 「その通り。自信を持って貰わないと困りますわ」

 「ふぇ!? 」

 

 ライスの後ろから突如として現れた謎のウマ娘。

 美しい芦毛に、淑女然とした口調。小柄ながらも自信に満ち溢れた姿に、憧れを抱くウマ娘も後をたたない。

 彼女こそメジロの御令嬢。『メジロマックイーン』である。

 

 「私の模擬レースの相手ですもの。それ相応の実力と自信を持っていて貰わないといけませんわ」

 

 胸に手を当てて穏やかに話すマックイーンは、値踏みするような視線でライスを見やる。

 

 「と、ということは今回のレースの相手って……」

 「申し遅れましたわ、私の名前はメジロマックイーン。

 此度の模擬レース、よろしくお願い致します。ライスシャワーさん」

 

 足元から頭の先まで。軽く一瞥した後に自己紹介をする彼女。

 その時の表情がどうにも勝利を確信したように見えて。流石のライスもカチンと来ていた。

 

 「よ、よろしくね。マックイーンさん。

 …………ライス、負けないから」

 「……! ええ。お互い、全力を出し切りましょう」

 

 闘志を漲らせるライスシャワー。

 そんな様子を見て驚いたのか、満足したのか。マックイーンは満足げにライスの言葉に頷いたのだった。

 

 マックイーンがその場を離れ去っていく。

 その後、緊張が抜けてしまったのか。ライスは深呼吸をした後、崩れ落ちたかのように椅子に座るのだった。

 

 「ふえぇ……」

 「ライスちゃんカッコよかったー!! 」

 「えぇ!? ウララちゃん!? 」

 「ええ。見事な啖呵だったわね」

 「トレーナーさんまで!? 恥ずかしいよお……」

 

 褒めちぎるウララと窯口に照れてしまうライスシャワー。

 

 穏やかとはいかない昼下がりは、こうして過ぎ去っていくのだった。

 

 

 

 

 時と場所は変わって人通りの少ない学園内の廊下。

 図書館から調べ物を終えて戻る途中のマックイーンは、思わぬ人物と出会うこととなった。

 

 「こんにちは」

 「こんにちは。あら、貴方は……」

 「私は窯口 薫。ライスちゃんの仮トレーナーよ」

 「存じていますわ。それに、お昼にもあったでしょう? 」

 「それもそうね」

 

 その個性的な見た目は忘れようとしても忘れられない。という本音は隠して、マックイーンは窯口と会話する。

 

 「でも、どうして此方に? 」

 「ちょっとアナタにお礼を言わなくちゃと思ってね」

 「お礼? 」

 

 マックイーンは首を傾げるが、窯口はそんな彼女に情けないような恥ずかしいような曖昧な笑顔で応える。

 

 「お昼の時。ライスちゃんに発破をかけてくれたでしょう? 

 ……ありがとう。アタシはまだこう言った分野は素人だから、ライスちゃんにどうやってやる気を出して貰えるかわからなかったの」

 「ああ、そんなことですのね。

 ……発破もなにも、お昼に申した通り。私の相手が不甲斐ないことが許せないだけのことですわ」

 「優しいのね」

 「関係ありませんわ」

 

 顔を赤くして窯口から目を背けるマックイーン。

 照れ隠しだと分かりやすいその態度に、窯口は目を細めるのだった。

 

 そんな彼女に、窯口は右手から何かを投げ渡した。

 茶色い小袋のようなそれは、綺麗な弧を描き、マックイーンの手元にスッポリと収まった。

 

 「ちょ……窯口さん!? 」

 「それ、アタシのお気に入りのお紅茶。良かったら今度のお茶会にでも飲んで見て頂戴! 」

 「そんな急に……! 」

 「だからお礼よお礼! 受け取って! 」

 「ま、待って……! ……行ってしまいましたわ」

 

 オホホホホ! と笑いながら過ぎ去っていく大男。

 マックイーンはその様子を唖然として見送る事しか出来ないのであった。

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 さて、マックイーンとの邂逅を済ませ。ライスシャワーが闘志を燃やした日から約一週間と六日。

 模擬レースを明日に迎えたライスと窯口は、最後の追い込みを行なっていた。

 

 「この二週間。見違えるほど走りが良くなったわね、ライスちゃん」

 「本当ですか! 」

 

 ライスシャワーの声に満足げに頷く窯口。

 

 実際、この短い期間の中。ライスシャワーの成長ぶりは目を見張るものがあった。

 以前よりもトップスピードの速度が上がり、それを維持するスタミナも身についている。筋肉の付き方も最初に比べバランスの良いものとなり。身体の柔軟性も、最初のアレに比べれば遥かにマシになった。

 この状態でならば、もうデビュー戦に臨んでも問題は無いと考える程である。

 

 「──ライスちゃん。明日のレース、勝ちたい? 」

 「…………はい 」

 

 真面目な顔をした窯口に、ライスは背筋を伸ばす。

 

 「ライス、今まではただ走ってるだけで楽しかった。

 ……でも、明日のレースはね。違うんです。なんか、絶対に負けたくない、勝ちたい……! っていう思いがライスの中で渦巻いてて。

 …………こんな気持ち、初めてなんです! 」

 「それが正しいわ、ライスシャワー。

 ────その気持ち大事にとっておきなさい。これからの生活に絶対、必要になってくるわ」

 

 腕を組み、細く整えられた眉毛をキリリと上げ、窯口はライスへ語りかける。

 ライスにとって、初めての闘争心。これからの彼女の生活に於いて、絶対的に必要であり、失ってはいけないもの。

 彼女がそれを自覚できたのであれば、窯口にとって心配事はもうなにも無かった。

 

 「よおし! 明日は絶対勝つわよ!! 」

 「はい!! 」

 

 気合十分。拳を握り締め彼らはそれを腰だめに構える。

 

 「ファイトォ…………」

 

 瞬間、彼らはその拳を天高く突き上げた。

 

 「「オォーッ!! 」」

 

 景気良い大声が、ターフに響き渡る。

 

 ────物語の開幕は、もうすぐそこだ。

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