戦車道…
それは伝統的な文化であり
世界中で女子の嗜みとして受け継がれて来ました。
礼節のある淑やかで慎ましく
そして、凛々しい婦女子を育成する事を目指す武芸でもあります。
戦車道を学ぶことは女子としての道を極める事にもなります。
鉄の様に熱く強く
無限軌道の様にカタカタと愛らしい
そして大砲の様に情熱的で必殺命中
戦車道を学べば必ずや良き妻良き母良き職業婦人になれる事でしょう。
健康的で優しく逞しいアナタは多くの男性から好意を持って受け入れられるはずです。
さぁ、皆さんもぜひ戦車道を学び
心身共に美しい女性になりましょう。
1ヶ月前~~~~~
「と言う訳でなぁ、我が校も戦車道を始める事にした。」
遠挺辺(エンテベ)女子高等部の理事長室に「柊与那」「八頭恭子」「中原花南」「六芒桜」の4人は集められ
戦車道連盟のプロモーションビデオを見せられた後、理事長の高らかな宣言を聞いていた。
「と言う訳で…ってなんだよ!?」
恭子はふてぶてしく食って掛かる。
「おいおい、お前の様なズベタに乙女の嗜みをやらしてやろうってんだぞ?」
理事長は大柄な体を贅沢な椅子にドカリと乗せ首を横に振りながら
葉巻の先を切った。
「なっ!」
恭子は睨むが引率の女教師は彼の暴言に対し注意すらしない。
理事長、安民政治
彼は裸一貫で起業し国民的存在にまで登り詰めた男である。
テレビにも数多く出演し独自の教育論から事実上の少年院…
県下最低と呼ばれる遠挺辺校を買い取り見事に立て直した。
有能な実業家であり教育者…
そんな彼の発言に反論出来る大人は居ないだろう。
「ふーん…」
安民は4人をジロジロと値踏みでもするかのように眺めた。
「なっ!なんだよ!?」
恭子が慌ててスカートを抑えた。
「柊…柊与那ってのは、どいつだ?」
「彼女です」
この時、始めて黙りを貫いていた女教師が口を開き
与那の肩を押した。
「ほう…」
安民は関心を持って彼女を眺める。
黒髪ショートの整った顔立ちにではない。
彼女の右額から頬に走る刃物傷と右目があっただろう場所を塞いだ眼帯と残された左目の眼光に安民は心を奪われた。
(カタワになってもコイツの闘争心は死んじゃいねぇ…か)
「隊長はお前だ」
安民は葉巻の煙を撒き散らしながら与那を指差した。
「頼むぞ、西住流」
「ええっ!?」
全員の注目が与那に集中する。
いかに戦車道がメジャーとは言え、それを学ぶには
それなりの資金力が求められる。
「あーコイツは、お前等とは育ちが違うからな」
安民はニヤニヤと笑いながら唖然とする恭子や花南に挑発的な言葉を投げ付けた。
「1ヶ月後に試合を組んだからな!明日から頑張れ!」
彼は1人1人の肩をバンバン叩くと
「さぁ、隊長以外は帰って良いぞ」
追い払うかの様にシッシッと手のひらを振った。
「戦車道経験者として一言あるんだが」
与那が始めて口を開いた。
「おぉ!何だ言ってみろ?」
前向きな発言と思い気を良くした安民は葉巻を灰皿に置くと
彼女の発言を許可した。
「理事長殿は戦車を動かすのに何人必要か知っておられますか?」
「うーん?3人か4人か?」
安民は戦車に関心は無かった。
「そこそこの車両なら5人必要です。」
「そうか?それがどうした?」
「現在、高等部に在学してるのは我々4人だけですが?」
彼は暫し黙ると女教師に尋ねる。
「それは…本当か?」
「はい…間違いありません…」
女教師はオドオドしながら答えた。
「250人も居て高等部は4人か…」
「来年からなら分かるが1ヶ月後とかは無理だな…」
与那は背を向けると出口に向かった。
「冗談じゃねぇ!1ヶ月後じゃなきゃ意味が無いんだよ!!」
安民は絶叫した。