もしも冨岡義勇が嫌われる理由を知っていたら。   作:聖獅

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 柱合会議が終わり、それぞれの面々は思い思いに去っていき、その帰りの道中で。

 

「冨岡さん、冨岡さん」

 

 胡蝶しのぶが冨岡義勇に近づき、イタズラにつつく。

 

「げつ…胡蝶…」

 

 義勇はいつもの抑揚の無い声で悪態をつく。

 

「まぁ!?げつ?とは何ですか?酷ゐですよ、冨岡さん?」

 

「……………」

 

「なんとか云つたらだうなんですか?そんなんだから皆んなから嫌われるんですよ?」

 

「…‥さうだらうな」

 

……大正辺りの仮名遣い、文書に書く場合の文体はそうですが実際の話言葉は現代に近いものと思われます。

ここから現代仮名遣いに戻します。

 

 

「おや?自覚がおありだったんですね?でしたら、改めて下さい!」

 

「…………」

 

「まずは先程の失礼な物言いからです!私は怒っています」

 

「そうか……」

 

「そうか……じゃありません!嫌われている理由がお分かりなら、直して下さい!」

 

「断る」

 

「まぁ…!もう冨岡さんの事なんか知りません!」

 

「………待て、胡蝶」

 

「何ですか?嫌われ者の冨岡さんとは3日間、口を聞いてあげません!笑顔も見せてあげません!」

 

 

「自分の身を犠牲にするな…」

 

「…………なんの事ですか?」

 

「俺達鬼殺隊はいつ鬼との戦いで死ぬか分からん。だが、死ぬつもりで生きようとするな」

 

「何を言っているのですか…本当に?」

 

「……………知らないとでも思っているのか?これ以上体を蝕ませるな、もう止めろ。腕も鈍っているぞ…お前の姉の仇の事は………。気持ちは分かるが復讐に心を囚われるな」

 

「……………」

 

「後、怒ると小皺が増えるぞ」

 

「!?もう本当に知りません!」

 

 しのぶは怒りが振り撒きながら、義勇を置いて去っていった。

 

 その後ろ姿を義勇はしばらくの間、見つめた。

 

 しのぶは心の中で呟く。

…………秘密にしていたのに…困った人ですね……そんなんだから、嫌われるんですよ……

 

 

 

 

 

 決戦に向けて柱同士の稽古にも取り組み、冨岡は不死川と対決…もとい稽古をしている所に、炭治郎が決闘と勘違いし仲裁に入る。だが、炭治郎は得意の嗅覚で不死川の好物を当てた事により、怒り心頭の照れ隠し(?)で彼に殴り飛ばされて、しばらく後に目を覚ます。

 

 目を覚ました炭治郎に冨岡は念押しで確認する。

 

「なに?不死川はおはぎが好きなのか?」

 

「はい、不死川さんが稽古戻ってくる度におはぎの良い匂いがしました!」

 

 

「そうか………くくく………」

 

「冨岡さん?」

 

「よし、おはぎはつぶあんとこしあん…やはり、こしあんに限るな!不死川も恐らく、こしあんだな。そうに違いない」

 

「え?…そ…そうですね」

 

 炭治郎は不死川はつぶあん派な気がしたが、何故かやる気を出している冨岡に水を指さないように敢えて黙った。

 

 後日。

 

 不死川の住まいに訪問する冨岡と炭治郎。

 

「不死川!」

 

「なんだぁ冨岡、ああ?」

 

「おはぎだ、受け取れ。勿論お前もこしあんだな?」

 

「俺も一緒に作りました!」

 

「……………………」

 

「炭治郎から、不死川はおはぎが好きだと聞いてな」

 

「ええ、不死川さん。いつもおはぎの良い匂いがしたので、間違い無いですよね?」

 

「そういう事だ、不死川。自分に素直になる事は大事だぞ…………ぶふっ…」

 

「冨岡さん?今笑いました?」

 

「………………ああ………テメェ、冨岡……鬼を狩る前にテメェとここで決着を付けてやるぜ…」

 

「ええ!?な、なんで!?怒るんですか!?と、冨岡さんも危ないですから、逃げて………、ええ?もう居ないぃぃいいい!!」

 

「待てこらっぁあああああ!ぶっ殺してやらああああ!!」

 

「ふ、二人とも速いいいいい!!」

 

 

 慌てる炭治郎を置き去りに、2人は走り出す。

冨岡は懐に忍ばせたおはぎを食べながら、不死川からの猛追を凌いでいる。

 

「もぐもごごごごもごごっご!」

 

「何喋ってるか分かるかぁあ!!あと食べながら走るんじゃねええ、冨岡ああああ!!」

 

 不死川の住居を抜け出し、他の柱達の行動範囲内にまで及ぶ。

 

 所用で胡蝶しのぶは悲鳴嶼行冥と道端で雑談していると、目の前を彼らが走り去っていく。

 

「ん?………冨岡さん?それに不死川さんも?」

 

 しのぶも速さに自信はあったが、その2人の速さには目を見張った……それよりも殺気立った不死川に驚き、十中八九また冨岡が怒らせたのだろうと察すると頭痛を覚えた。

 

「はぁ……悲鳴嶼さん、2人を止めないと!」

 

 悲鳴嶼は両手に下げた数珠を合わせて鳴らし、

 

「……案ずるな、しのぶ。あの不死川の殺気は本気では無い。童達が互いに駆けっこしているのと同じだ……」

 

「……そうですか?悲鳴嶼さんがそう仰るなら……」

 

「………ただ、不死川のあれは8割程本気だ」

 

 胡蝶は再び溜息した。

 

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