もしも冨岡義勇が嫌われる理由を知っていたら。   作:聖獅

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前回より大分間が空きました(苦笑)




「なぁ、炭次郎。まだ山奥なの?俺達1ヶ月以上歩いている気がしないか?」

「何言っているんだ善逸、数時間前だろ屋敷から出たのは?」

 

 炭次郎と善逸は柱の課す訓練、最終関門岩柱の稽古場へと林道を歩き向かっている。

 彼らは胡蝶しのぶのいる蝶屋敷で、負傷を治す為いつも世話になり・・・いつの間にかそこで寝泊まりするようにもなった。(善逸は看病する女の子が多い事もあってか仮病を使って、いりびたっている)

 その前の訓練、風柱こと不死川実弥の所では一悶着あり、彼らは冨岡義勇の行動も耳にしている。

 炭次郎はその事で罪悪感を感じ、嘆息した。

 

「どうした?」

「冨岡さんが不死川さんと争っているのは俺のせいなんだ・・・」

「え?なに?なにしたの?」

「俺が・・・不死川さんの好物を冨岡さんに話して、それで二人が仲良くなれば・・・と思ったのにそれなのに・・・俺のせいだ・・・」

「ああ・・・なに、噂って本当?あのおっさんが甘い物好きって」

 

 炭次郎は肯定し、彼の好物を告げると善逸は腹を抱えて大笑いしだした。

 

「あひゃひゃひゃ、ひーひっひっひ!あの傷だらけのあの地廻り(ヤクザ)みたいなあのおっさんが、ぎゃひゃはははは!」

 

 笑い止めない善逸を炭次郎は嗜めていると・・・。

 

「楽しそう・・・だなてめぇら・・・」

 

 二人に気付かれずに、不死川が背後に立っていた・・・

 

「いいいーーーやああああああああああああ」

 

 善逸が口から心臓を飛ばすバリに驚き、飛び上がりひっくり返った。

 炭次郎も度肝を抜かし、流石に戸惑っている。

 

「不死川さん、な、なにか用ですか?」

「ああ?てめぇにも言いてぇ事は山ほどあるが今は見逃してやる、冨岡の野郎は何処行った?隠しやがったらタダじゃおかねえぞ」

「と、冨岡さん、何をしたんですか?」

 

 不死川にうるせぇの意味で一睨みされ、押し黙った。

 善逸は炭次郎の背中に隠れ、震え上がっているともう一人の気配に気付く。

 

 おっさんがもう一人ふえてるーーー!冨岡さんも含めれば三匹のおっさん・・・

 いや、俺なにかんがえてんだー!怖すぎて気が動転してんだおれー!(善逸心の叫び。)

 

 背後に伊黒も気配を殺していた・・・見れば気付くが、音が無かった為、視認が遅くなる。

 

「おい・・・貴様ら・・・冨岡を見つけたら真っ先に俺に知らせろ・・・生かしておかん・・・」

 

 その阿修羅の気迫に炭次郎も震え上がり、善逸はただただ、高速で頷くばかりだった。

 二人は炭次郎達が何も知らない事を悟り、去っていくと。後に残された二人は精神的にどっと疲れが出た。

 

「あわわわ・・・俺、もう今日は蝶屋敷に帰ってしのぶさん達に癒されたいよ・・・」

「まぁ・・・うん、少し判るな。・・・ははは、けど冨岡さん一体何したんだろう?」

 

 帰りだがる善逸を慰めつつも炭次郎は、岩柱の稽古場に向かった、そこには・・・。

 

「あ、善逸。滝だ!人がいる・・」

 

 如我今者、称賛諸仏、不可思議功徳・・・

 伊之助含めた隊士達が手を合わせながら滝に打たれ、経文を唱えている。

 

 うわああああああああ!!!(炭次郎、善逸 心の叫び)

 

「うわーーお館様ーーーーー空から水柱がーーー!」

「お前!お館様は今ここにいないだろ!」

 

 居ない人に助けを求めたくなる位、周りの隊士達は気が動転している。

 

 ここでなにされてるんですかーーーーとみおかさーーーーん!!! (炭次郎 心の叫び)

 

 水柱こと冨岡義勇は褌姿でそのまま・・・滝に打たれて必死に水量の重さに耐える隊士達にお構いなく、その横に落下しその水飛沫で更に余計な事……負荷を与えてくる。

 

 「ぎゃーーーー改めて冷てえーーー」

 

隊士達の悲痛な叫びの数刻前、伊之助が義勇に

 

「ここで会ったが百年目だ、改めて勝負しろ半々羽織!」

 

 義勇は伊之助を一瞥すると、服を脱いでそのまま滝壺に飛び込む。今度は、激流に逆らい滝上まで登りつめてしまった。

 

「………なっ………お、面白ぇ!俺への挑戦だな、受けて立つぜ!」

 

 伊之助も挑戦するが全く滝を登れず、押し流され、後は黙ってここの修行を受け入れた。

 

 

 そして………

 義勇は、川から出ると周りを可燃性のもので燃やした所に、丸太三本に更に数個の大石をくくりつけ、それを肩に担いで中腰でいる・・・。体の冷えが一気に消えていく。

 

「あ、あの義勇さん?ここ、悲鳴嶼さん…の修業場所ですよね?」

 

 炭次郎の問いかけに、彼らの方を向いた後何も喋らずに視線を宙に戻す。

 

 何考えているか全然分からない…。

 この人、よくわからない音しかしないんですけど!

 だめだ、俺も匂いでも全然分からない。

  

 嗅覚に長けた炭次郎と聴覚に秀でる善逸を以てしても、義勇の内面は不可解だった。

 

 驚きつつも気を取り直した炭次郎は、きっと岩柱こと悲鳴嶼さんが他用で出かけ、冨岡さんに代わりを頼んだんだと解釈した。

 

「良いかお前達、最も重要なのは身体の中心・・・足腰・・・そして・・・」

「そして・・・」

「・・・・・・」

「そして・・・」

「冨岡さん?」

「とにかく、先ずは滝に打たれ、丸太三本担ぎ、あの岩を一町先まで押して運ぶ・・・それで終わりだ。下から火で炙るのは無しにするが、したいものは好きにしろ。俺がやっている事と同じ事をしたいかはお前達に任せる」

 

 冨岡さん、説明を忘れたんだな・・・ここは聞き流してあげよう・・・。

 炭次郎がそう気を使っていると、その間善逸はその苛酷さに驚愕し気絶してしまった。

 

「・・・と言う訳で、それで最終稽古と成る・・・判ったか、炭次郎、我妻・・・む!?・・・何とか言ったらどうだーーー!!」

 

 炭次郎が止める間もなく、冨岡は気絶している善逸の横っ面をひっぱたき、数メートル先の川へと吹っ飛ばす。

 

「ぎゃあああああああああああああああつべてえええええええええええ」

 

 善逸は、川の水の冷たさに目を覚まし、

 

「ばにこれ、あにこれ!(なにこれ、なにこれ!)つめたすぎてててでえででで。死ぬ死ぬ、冬の川よりつめたいんですけどーーー」

「我妻、そこの燃えている場へ行くか、その辺の岩にくっつくか、選べ」

 

とにかく、善逸は手近の岩場へ全身で張り付いた。

 

「・・・ががが・・・ううう・・・岩って、こんなに暖かったんだ・・・」

 

善逸は寒さで歯の根が合わないが、

とりあえず気を取り直し、炭治郎は義勇に尋ねる。

 

「お前達の意識があるか確認する為、滝に打たれている間念仏を唱え続けろ」

「俺余り覚えて無いんで…自信無いです…あはは…」

「……その時は鮭大根最高と唱えろ」

「え?好物で良いなら、俺…」

 

 普段何考えているか分からない目がこの時ばかりは力が入り炭治郎を脅す。

 

「ひいいい…わ、分かりましたー!」

 

 そんな中、流石に耐えかねて、離脱を申し出る隊士が出たが…

 

「そうか…。辞めたければ辞めるが良い。だがこの修行に耐えられなければ、無惨との闘いには参加するな、足手まといになる・・・無惨ら鬼に食われる位ならここの修行で死んだ方がマシだろう」

 

 それで発奮して、死に物狂いで修行を再開する隊士もいれば、やはり離脱する者もいる。義勇もそれ以上は何も言わなかった。

 

 ぎ、義勇さんがいつになく厳しい・・・でも言っている事も分からなくはないけど、もう少し言い方が・・・

 炭次郎は近くで聞いたやり取りに思い悩む。

 

 いや、それよりも俺も滝に打たれないと・・・ずああああ、つめたーこ、これは・・・きつい・・・ぎ、ぎぎぎぎぎぎううさん・・・よくこの滝をのぼっていったなぁ・・・。いいいいい伊之助頑張っているな・・・い、伊之助?いのすけえええええ!!

 

 炭次郎は立ったまま仮死状態の伊之助を連れ出して、心臓に圧を何度もかけ蘇生させようとする。

 

「どけ、遅いぞ炭次郎」

「え?」

 

 義勇は伊之助の心臓を掴む程の勢いで振動を与える。

 

「げほ、ごほ、ここはどこだ!!」

「伊之助!!」

「おお、トン次郎もここまで来やがったか?ところで俺様なんでここに・・・?ああ、半々羽織!この修行が終わったら、勝負しろ!!」

「阿呆が、己の引き際を弁えないお前は勝負以前の問題だ。那谷蜘蛛山から何も成長していないな・・・」

「ああ!?うるせぇ、しょう・・・うお!?」

「南無・・・、冨岡、お前はここで何をしている?」

 

 岩柱こと悲鳴嶼行冥が帰ってきた・・・。 伊之助が途中で言葉を失ったのはその覇気に呑まれたからだ。

  

 そうか・・・冨岡、お前は私が居ない間に隊士達に代わりに稽古を付けていたのか・・・?

 悲鳴嶼は勝手に自分の修行場に乱入している冨岡に不信感を抱きつつも、何か考えがあるのだろうかと逡巡した。

 

ーーーーー柱稽古前の柱合会議ーーー

 

 当主・産屋敷耀哉が来るまでの間、先に集まっていた柱7人は激化する鬼達との戦いでいよいよ、当主の彼の身辺に危険が迫ると考え、不死川は提案した。

 

「最低でも柱2人をお館様の護衛につけるべきだぜぇ、何とかできねぇのかよ悲鳴嶼さんよぉ」

「・・・無理だな・・・私も19で柱となり、8年間言い続けているが聞き入れてはくださらぬ・・・柱という貴重な戦力は己1人の為に使うものではないとの一点張り・・・困ったものだ・・・」

「産屋敷家の歴代当主は皆誰一人として護衛をつけなかったそうですね」

 

 しのぶの言葉を聞いて、それを能面顔で義勇が口を開く。

 

「ご立派な事だ、代々のお館様達は・・・その受け継がれてきたご意思は尊重すべきだ」

「・・・冨岡ァお前お館様がどうなっても良いのかよ?」

「確かにお館様の意思ではあるが、貴様が言うとお館様を軽んじているようにも聞こえるが?」

 

 不死川の言葉に伊黒も付け加える。

 

「・・・皆はお館様の背中を見ているが・・・以前お館様は自分は鬼殺隊でそれほど重要ではないと言われていた。ご自身が亡くなられても、その想いは継がれていく・・・だから鬼殺隊は痛くも痒くも無いと笑っておられた。俺達柱も含め、お館様・・・産屋敷家に依存している。これだけの土地や衣食住を管理しているのは産屋敷家だ。・・・それに比べ俺達はただ鬼を斬っているだけだ。お館様が見ている方を見ている隊士がどれだけいるだろうか?」

 

 その言葉に・・・数瞬皆が沈黙する。

 

「・・・冨岡、貴様今日はやけに言葉が多いな?頭でも打ったか?」

「別に」

 

 その後近づてい来る足音に一堂姿勢を正し、その主を出迎える。

 産屋敷耀哉は既に起き上がれる状態で無くなり、妻のあまねが代役を務め、傍には子供達も控えている。

 先日の上弦の鬼・肆・伍との戦いで戦闘力を各段に向上させる痣の発現。それを甘露寺、時透にあまねは教えを乞いた。

 

「は、はい!あ、あの時はですね、確かにすごく体が軽かったです。えーと、えーと。・・・ぐあ~ってきました、ぐってぐあ~って。心臓とかがばくんばくんして、耳もキーンとなって、メキメキっていって・・・はっ!?」

 

 皆がその説明に目が点になり、彼女と親しい伊黒に思わず助け船を出してほしく視線を送ったが、彼ですら庇いきれず片手で額を抱えるのみだった。

 

「・・・恋柱は、体が軽くなり、力が漲る条件として心拍数が上がり、体温も上昇・・・耳鳴りがしたのは、その症状の一環によるもの・・・風邪のそれに近いものを感じるが、それが身体能力飛躍に繋がる痣とはそういうものと推察される・・・細かい事は霞柱から説明して貰おう・・・」

 

 義勇の発言に今度は皆が別の意味で目が丸くなった・・・。普段余り喋らず、言葉が足りない彼がなぜ今日は饒舌になるのか。

 甘露寺はおかげで恥ずかしい思いをせずにすみ、義勇への信頼が高まったが彼は特段平然としている。 

 それに反比例して信頼が下がった柱がいる。  

 

 貴様・・・、何故ここぞに限って・・・おのれ、甘露寺を誑かしおって・・・後で見ていろ・・・。

 

 な・・・なんですか?どうしてここで・・・今までそんなに喋った事ありますか?なぜみつりさんの話す事がそこまでわかるのですか?普段からももっと喋ってください・・・。そういえば以前の会議の時も、みつりさんが倒れた時に起こしてあげてましたね・・・。そうですか・・・、義勇さんも露出の多い女性に興味がわくんですね・・・見損ないました、もう怪我しても知りません。

 

 伊黒はいつにもまして義勇を睨み付け、しのぶはニコニコしながら青筋立てて彼を見ていた。 

 そんな彼らの視線を感じつつも、どこふく風の義勇は自分の行動で驚いて喋らない時透に話すよう改めて視線を送った。

 

「あ・・・はい。前回の戦いで僕は毒をくらい・・・」

 

 彼の話では、痣の発現には心拍数200以上と体温39度以上との事だった。

 

「チッ、そんな簡単な事で良いのかよォ」

「ああ、では早速不死川に実践してもらおう」

 

 義勇はいつもの何を考えている分からない能面の眼差しを不死川に向ける。 

 今度は彼が恥ずかしさの余り、顔を真っ赤にする番だった。

 

「ば、ばかやろう!この場で直ぐに出来る訳ねぇだろォ!!」

「なら、簡単だと軽々しく口にするな。男が廃るぞ」

 

 間違った事は言っていないが、相手の感情を逆撫でするよう挑発してきた義勇に不死川は怒りで睨み付け、心拍数と体温が上昇する・・・。

 その後、痣の発現が柱達の急務となったが、その反動により負の側面をあまねから聞く事となった。そして彼女たちが退室した後・・・

 

「成程、胡蝶が言っていた傷の治りが早かった諸々の能力向上の反動という事か・・・では、失礼する」

「おい、まてぇ失礼すんじゃねぇ。それぞれの今後の立ち回りも決めねぇとならねぇだろうが」

「六人で話し合うと良い。俺は俺のやりたいように動く」

 

 そこに伊黒も口をはさむ。

 

「好きに動くとはどういう事だ?貴様には柱としての自覚が足りぬ。それとも何か?自分だけ鍛錬を始めるつもりなのか、会議にも参加せず」

 

 義勇はそのまま退出しようと歩き出し、甘露寺は止めようとするが言葉が出ない。

 

「てめぇ待ちやがれェ!」

 

その時、義勇はいきなり膝をつき必死に胸を抑え、先程怒鳴った不死川も一瞬躊躇してしまう。

 

「な・・・なんだお前?けっ、なに弱ったフリしてやがる?」

「・・・冨岡さん?体調でも悪いんですか。」

 

 さすがにしのぶが気を遣うが、次の瞬間いつもの彼に戻った。

 

「・・・違う、今のはただの立ち眩みだ・・・気にするな・・・俺はお前達とは違う・・・、うっ・・・」

「おお、おお!そうだろうとも、お前は俺達とは違うんだろ?その見下した態度、お前の実力とやらをここで見せてもらおうじゃねぇか、ああ?」

「キャー、喧嘩は駄目よ。れ、冷静に」

 

 甘露寺が間に入って止めようとするが、不死川はそれを押しのけようとした時・・・

 

 その場の皆が表情には余り出さぬが・・・震え上がった。

 

「良いか・・・俺にかまうな・・・」

 

 彼は見せたことが無い凄まじい形相で、

 その顔をあまり見せたくないのか片手で覆っているが、

 その気迫は修羅場を潜ってきた彼らですら一瞬たじろがせるものだった。

 唯一そこで口を開いたのは悲鳴嶼だった。

 

「・・・行かせてやれ」

 

 少し経った後に、不死川が口を開いた。

 

「あの野郎・・・まさか、病気持ちの犬にでも噛まれたんじゃないだろうな?」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 冨岡・・・お前が何を抱えているか私の心の目を以てしても分からぬが・・我らいつ鬼との戦いで死ぬかは分からぬ身、

 明日をも知れぬのは皆同じ・・・ならば、限りあるうちに出来る限りの事を為すのは当然・・・。

 

 

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