もしも冨岡義勇が嫌われる理由を知っていたら。   作:聖獅

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 滝に打たれていた炭次郎もしばらくしてから、異変に気付く。

 褌姿の義勇は木陰に隠しておいた日輪刀を取り出し、悲鳴嶼行冥と対峙する。

 周りの隊士達も何が起ころうとしているのか、気付いた者達は修行の手を止め、

 二人の間の緊迫感に目をみはる。

 

 パンッ!!悲鳴嶼は両掌を合わせると、周囲に振動を響き渡らせる。

 それは、彼の戦闘態勢に入る意思表示だった。

 

「そういう事か、良いだろう・・・冨岡。玄弥、私の得物を持ってきてくれ」

 

 近くで見守っていた不死川実弥の弟の玄弥は、水柱こと冨岡は一体何を考えているんだ?変な人だなと思いつつも、悲鳴嶼に言われた通り彼の得物、鎖で繋がれた両端に棘付き鋼球と手斧。

 それを持ち運んだ。

 当然凄まじい重さであり、日輪刀の比ではない。

 その刀でさえ扱いが悪ければ重いものでしかないのに。

 玄弥も並以上の膂力の持ち主でそれを持つことは出来るが、使いこなすことは出来ない。

 渡された悲鳴嶼は鋼球を軽々と振り回し、その轟音、威圧感だけでも周りの隊士達を震え上がらせる。

 

「あ・・・あれが悲鳴嶼さんの武器、す、すごい・・・」

「ち、近くにいるだけで震えが止まらねぇぜ・・・やっぱ鬼殺隊最強はジャリジャリ親父だ」

「あばばばばば、どいつもこいつも化け物ばっかり!もうやだ、こんな生活!」

 

「冨岡、加減はするが怪我をするかもしれんぞ・・・他の者達も少し離れているように・・・南無」

 

 次の瞬間、鋼球が義勇の顔面に向かっていく。 

 右手に日輪刀、それを半身で避けながら左手で鎖を掴む。

 それを引き寄せるように地面に向かって落とし、ほんの刹那僅かに悲鳴嶼の態勢が崩れる。

 

 !?

 

 その一瞬でも間合いを詰め、義勇は悲鳴嶼の懐に斬りかかるが後ろから手斧が飛んできたのをすんで下にかわす。

 悲鳴嶼も飛び上がって宙帰りをすることで義勇の斬りもかわし、態勢も整えた。

 

「は、半々羽織もやるじゃねぇか!」

「伊之助、お前何言ってんだよ!どっちともまだ全然本気じゃないだろ!もうやだ、炭次郎、なんとかしてくれよ~」

「ああ・・・ははは、それが分かるなんて善逸も十分凄いと思うぞ?」

 

 悲鳴嶼は少しだけ微笑むと、

 

「冨岡、腕を上げたな・・・」

「・・・・・・・」

 

 壱ノ型 蛇紋岩 双極!

 

 手斧と鉄球の両方が錐揉み回転しつつ同時に義勇を襲う。

 先程の小手調べの比ではない、掠っただけで怪我にもなる鋭い攻撃。

 

 参ノ型 流流舞い・・・ 

 

 義勇は二つの武器をかわしながらも、距離を詰めていく。 

 悲鳴嶼は先程より更に早く鎖を引く事で後ろからも追尾攻撃を加えるが、相手は地面すれすれに姿勢を低くしつつ更に間合いに入ってくる。

 

「ぬん!!」

 

 すんで入りそうな一刀を悲鳴嶼は掌底で軌道を逸らせ、

 刀ごと地面に叩きつけられそうな所を義勇はこらえ、

 一瞬だけ僅かに笑みを浮かべる。 

 そして、直ぐにその場を離脱し、鞘をその辺に置いた後に刀の柄を咥えて修行場である滝を一気に登り始めた。

 

「うぉ!親父すげぇ!素手で羽織の刀いなしやがった!」

「伊之助、それじゃあ悲鳴嶼さんがお前のお父さんみたいだぞ!まぁ良いか。けど義勇さん一体何をするつもりで・・・」

「あわわ、これは夢だ、夢をみてるんだ、俺は。凄い速さで滝上っていくなんて、こええよ・・・嫌な予感しかねぇ」

 

 冨岡・・・何をするつもりだ・・・。

 流石に悲鳴嶼の得物でも間合い外の為、様子見をするしかない。

 

 滝の上に登り切った義勇は、 

 水の呼吸 捌ノ型 滝壺  

 ズドン!!!

 

 滝下水面へと一気に飛び降り、振り下ろした刀が津波を思わせる程辺り一面に覆い隊士達を当惑させる。

 

「やっぱりーーー!」 

 

 叫ぶ善逸や他の隊士達も水に吞まれた者もいた。

 

 ・・・そうか、これが狙いか・・・私の聴覚を狂わすために・・・。

 悲鳴嶼はそれでも、義勇の音を探る。

 そこか!

 だが一瞬遅く、義勇の刀が悲鳴嶼の喉元に突き付けられた。

 

「・・・・・・・」

「・・・参った、今回は私の負けだ」

 

 義勇は刀を降ろすと、鞘に納める。 

 その直後、辺りの水飛沫は次第に引いていき、周囲の視界は開け後には虹が通る。

 

「ど、どっちが勝った!?」

「義勇さん、凄いことするなぁ・・・ずぶ濡れだよ、あはは」

「ああ・・・確かにこれやられると、何してるか分からなくなるな・・・やっぱつめてー!ふぃっくしょーん!」

 

・・・音が遮られると、確かに索敵しずらい・・・これは、音とは関係なく、心の目をより透き通るようにせねばならないな。

 

 

「テメェ、ここにいやがったかァ!?今度は悲鳴嶼さんに迷惑かけてんじゃねぇぞこらぁア!」

「貴様が上弦の鬼共と対峙する事は無い・・・何故なら今日が貴様の命日だからだ、覚悟しろ!」

 

 不死川と伊黒が正に鬼の形相で、義勇を追いかける。

 

「義勇さーん、せめて隊服は着てくださーい!」

「・・・炭次郎お前凄いな・・・」

 

 義勇は光の速さで、隊服と羽織を着ると、

 

「さらばだ!」

 

 二人にそう言って、さっさと逃げていく。

 

「「ふざけるなああアア!!」」

 

 二人の怒号に、周囲の隊士達は震え上がり、更に速度を上げて追撃しようとする。

 が、それは出来なかった。

 

「お前達・・・ここで何をしている・・・?」

 

悲鳴嶼が二人の襟首を掴んでその場に、座らせた。・・・河原の上の正座は中々痛い。

 

「冨岡を気にする前に、お前達はお前達の役割を果たせ・・・」

 

 その後、説教が始まり計2時間15分59秒に及んだ。

 その間、隊士達は何も見なかった事にする者苦笑する者それぞれの修行に戻る。

 

「プークスクス、風のおっさん怒られてやんの、ざまあみろ、だはは」

 

そして、鬼の殺気で不死川に睨まれる善逸。

 

~~後デ覚エテヤガレヨ~~ア・ガ・ツ・マ・・・~~

 

「ぎやーーーーーー!!」

「善逸・・・、こうなる事分かってやってないか?そんな事よりも俺達も修行に戻ろう」

「うぬぬぬ・・・やっぱつぇえぜあの二人、俺も負けてらんねぇぞ、鍛錬だ鍛錬―!」

 

 不死川と伊黒の二人は、

 隊士達に失態を見られた羞恥心と冨岡への怒りとで心拍数と体温が上昇し、体に痣が発現していたが、誰も気づいてはいなかった。

 

 




「仕方ないよね、兄弟と言っても僕はこの家の本当の子供じゃないから、いじめられても・・・」
「生まれがどうだろうが、てめぇを大事にする権利を他人に握らせるんじゃねぇ!!」
「・・・!?」

 ・・・わかるぜ。
 血縁者に虐げられる苦しみは。
 だが、今すべき事は被害を少なく抑えようなんざ後ろ向きな事じゃねぇ。


「惨めったらしい、作り笑いは止めやがれ。この世は所詮弱肉強食、弱者にはてめぇを大事に出来る力はねぇ、強者にねじ伏せられるのみだ」
「・・・・・・」
「てめぇを大事にしたきゃ強くなる事だな・・・この脇差はお前にくれてやる、ここの宿賃代わりだ」

 県境の茶店

「あ、志々雄さん!」
「ボウズ・・・奇遇だな、お前なんでこんな所にいるんだ?」
「この刀返そうと思って、さがしてたんです」
「・・・家の奴らはどうした?」
「何も言わずに出てきました」
「・・・・・・」
「ここにくるまで野犬にもおそわれましたけど、これのおかげで助かりました、ありがとうございます」
「ボウズ・・・いや、宗次郎。礼はいらねぇ、その代わりにここの飯代はお前が払え」
「ええ!?」

 宗次郎が家を出た後、その一家全員消息不明となり、家中の金品は無くなっていたという。

ーーーー冨岡義勇な志々雄真実ーーー
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