もしも冨岡義勇が嫌われる理由を知っていたら。   作:聖獅

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「何?不死川はカブト虫が好きなのか?」

 

 先日のいざこざで、

 幾ばくかの罪悪感を感じている炭次郎は悲鳴嶼の訓練を終えた後、

 義勇に稽古を付けて貰おうとするがてらに、有益な情報を伝えようと彼の屋敷へと訪れた。

 

「はい、思い出したんですが稽古に戻ってきた不死川さんからカブト虫とスイカの匂いがしたので、間違いありません!」

「よし!さすがに少々戯れ過ぎたからな、少しは親しくなるとするか・・・」

「あ、やっぱりちょっとふざけてたんですね」

 

 ちょっとどころではないが、ともかく義勇は彼と親しくなるために、カブト虫を探す。

 季節は次第に秋へと移り変わっていた為、成虫はおらず幼虫を探すことにした。

 

「懐かしいな~たまに花子や茂達とカブト虫捕りにいったっけ・・・」

「・・・そうか」

「あ、いえ・・・」

「炭次郎、カブト虫はどこにいる?」

「そうですね~。確か堆肥や残飯置き場の近くに山盛りの土がありましたら、そこで見つけた事ありました。」

「そうか・・・あれはなんだ?」

 

 土の上を丸い物体が歩いている。

 

「あ、とりあえず捕まえてみましょう!」

 

「・・・これはカブト虫の子供なのか?」

「俺も久しぶりなんで・・・でも、間違いないですよ」

 

 義勇の手の中で動いている、目玉らしきものに肆と書いているその周りに数本の細い足が生えている。

 

「よし!これを大量に捕まえて、不死川に渡そう」

「はい、今度こそきっと喜んでくれますよ!」

 

 そして、義勇と炭次郎は次々にカブトムシの幼虫らしき者を大量に捕まえていった・・・。

 捕まえたそれらは優に100匹以上を超え、逃げられないように頑丈な木箱に入れ、その上から腐葉土を被せた・・・。

 

「炭次郎、どうにも俺達の周辺に多い気がするな・・・?」

「隠の人達で野菜作ったり自給自足もしてますからきっと、良い土なんですね」

 

 当日・不死川屋敷。

 

「ああ~~~・・・冨岡テメェ・・・今度は何しにきやがったァ・・・悲鳴嶼さんから怒られたのが未だに心にきてんだァ・・・テメェの面なんぞ見たくねぇんだよォ」

 

 いつでも臨戦態勢の彼の気迫を気にせず、炭次郎は喋りだす。

 

「まぁそう言わないでください、不死川さん。不死川さんの為に、たくさんカブト虫の子供を捕まえてきたんですよ」

 

「なに・・・?」

 

 不死川から一瞬、童心の喜びのような匂いを炭次郎は感じた。

 

「むふふ、不死川これだ。」

 

 義勇がその大き目の木箱を渡して、蓋を開けるとそこには大量の目玉のようなものが不死川をいっせいに凝視した。

 

「・・・な、な、な、な、なんじゃぁこりゃああああああ!!」

 

 空高く勢いよく飛ばした木箱から溢れたそれを義勇は一匹も逃さずに捕まえて、再び元に戻した。

 

「なにをする不死川!!」

「何をするぅ、じゃねぇ!!なんだあの気持ち悪い奴らわ!」

「いや、あれ不死川さん、カブト虫の子供でしょう?」

「んなカブト虫のこっこ見た事ねぇよ!とっとと、森に返してきやがれェエ!」

 

 そういわれて、追い出されてしまう。

 

「・・・残念でしたね」

「炭次郎、これはカブト虫では無かったのか?」

「すみません・・・俺の勘違いだったんでしょうか・・・」

「・・・炭次郎、もしかしたら新種かもしれないぞ」

「あ!?もしかしたらそうかもしれませんね!」

「ああ、確か新種かどうか判断して貰えるのは、そういう機関に持ってく必要があるそうだ、よし行ってみるか!」

「はい、頑張ってください!」

 

 善は急げ、早速義勇は経験豊富な鱗滝に事情を話し、ここなら・・・という場所を聞き出し、遠方となる為列車で行こうとそのホールで木箱を置いて一休みをしていた。

 少し他用を思い出し、数分だけ席を外した。

 

 そこに、置き引きを企む輩が目を光らせた。

 へっへっへ、何やら大事そうに抱えてたな。間抜けな奴だ。

 その男は、素早くその木箱を抱きかかえ、列車に乗り込んだ。

 

 戻ってきた義勇は既に時遅し、慌てて駅員に聞いたが分からず仕舞いで意気消沈しながら屋敷へと帰った。

 

「やったぜ、どんなものが入っているんだろうな・・・高価な野菜か?へっへっへ」

 

 そして、開けるとその男を大量の目玉が睨み付けてきた。

 

「ぎゃああああああ、なんじゃぁこりゃああああああ!!」

 

 驚きの余り、近くの肥溜めに放り込んだ。その木箱はその目玉達と一緒に沈んでいく。

 

「ぎゃああああああ、なんじゃぁこりゃああああああ!!」

 

 上弦の肆こと鳴女が放った、索敵用の目玉達がその中の情景を彼女に映す・・・。

 鬼であっても、思わず吐き気をもよおす。

 

「う・・・ぐふ・・・無惨様がおられず、良かった・・・このような失態・・・見せるわけには・・・。おのれ・・・水柱・・・冨岡義勇・・・この恨み、晴らさで・・・おくべきか・・・」

 

「どうしたのだ、鳴女?」

「ひぃ、む、無惨様!」

 

 彼女の後ろに突如、鬼舞辻無惨は現れる。

 

「どうした、鳴女」

「い・・・いえ、鬼狩り共の居所を突き止めるに躍起になるあまり・・・取り乱してしまい、申し訳ございませね」

「ふむ、お前は私が思った以上の成長を見せている、期待しているぞ・・・所で、その鬼狩り共をどれぐらい把握した?」

「そ、それは・・・6割程となります・・・」

「ふむ・・・」

 

 頑張るのよ、鳴女!私は出来る、私は出来る、心は無。無惨様の無。

 

「励むのだぞ・・・」

 

 そういって、無惨はその空間から姿を消した。

 かつて、無惨に心を覗かれた鬼で彼を欺けた者はほとんどいない。

 鳴女は安堵と共に大きく息を吐いた。

 

家路についた義勇は炭次郎に弱音を吐いていた。

 

「俺は水柱として不甲斐ない・・・」

「義勇さん、そんな落ち込まないでください。諦めなければ道は開けますよ!」

 

 

 





 私のせいじゃない・・・私のせいじゃないもん・・・悪いのは全て、鬼狩りの水柱・・・・・・。
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