ヒーローとかヴィランとか知らんが、仕事なんでね 作:みみっちい小悪党
始まりは中学の頃。心無い同級生の言葉からだった。
「▫️▫️の個性って『
そん時はぁ……なんて返したかあんまり覚えてない。
いや、怒りのあまりーとか、絶望に沈んでーとか、そんな感じではなく。
せっかく『
実際、個性を使った職業はある。
ヒーローなんかがその最たる例だ――っていうか個性を大手を振って使うには『プロヒーロー免許』を取るしかないから、必然的に個性を使う仕事をしてる人は全員ヒーロー免許を持っていることになる。
とはいえ俺はヒーローなんかになる気はなかった。
誰が好き好んで『誰かのために自分を犠牲にする』なんてなんのメリットもないことをするかって話だ。
俺は楽して人生の勝ち組になりたいのであって、苦労して誰かの為に生きたいわけじゃないのだ。
さて、まあそんな訳でヒーローになるのを拒否した俺だが、かといってヴィランになる気もサラサラなかった。
なんでかって言うと、まあ普通に人殺すとか嫌だったからだ。
他人がどうなろうが知ったこっちゃないし、殺してやろうかコイツと思うこともあるが実行に移すことは無い。人から恨み買うのめんどいし。
ヒーローみたく面倒くさくなくて、ヴィランみたいに血生臭くない、俺の『
そう考えている時に思いついたのが、今絶賛営業中のこのお仕事。
最初は運び屋的な事をやってたはずなんだが、気がついたら何でも屋みたいになっちまってた。
盗み、運び、店番。殺し以外なら何でもござれ。絶対に失敗しない“何でも屋”ワタリ様とは俺の事だ。
「どーもー、ワタリでーす。よろしくお願いしマース」
へらぁ、と適当な笑顔に適当な挨拶を乗せてお届け。
「おい黒霧、マジでコイツ連れてくのか?」
「先生からの紹介ですから、腕は確か……のはずです」
どうやら今回の依頼主は随分真面目なヤツらしい。適当な挨拶は気に入らなかったようだ。
「で、今回の依頼に関してなんですけど」
「チェンジだ」
「あん?」
ドカッ、と机の上に乱暴に足が乗せられた。
「チェンジだって言ったんだよ。俺はお前みたいなのは嫌いなんだ」
「奇遇だな。俺もお前みたいな偉そうなのは好きじゃない」
「それなら――」
「が、もう仕事は受けたし前金も受け取った。ってかそもそもチェンジ受け付けてないから無理だ」
あ、何か飲み物ちょうだい、とモヤモヤの人に声をかける。
「知ったことかよ。金はやるからとっとと出てけ」
「まあそう言うなって、これでもそこそこ名は売れてんだぜ。聞いたことない? 何でも屋ワタリ」
「ないな」
「ほーん、さてはお前モグリだな」
「お待たせしました。生憎アイスティーしか無かったのですが、よろしかったですか?」
「あざーす」
「おい黒霧」
「落ち着いてください、死柄木弔。先生がなんの理由もなく人を寄越すと思いますか?」
モヤモヤの人の言葉に思うことがあったのか、男はフンと鼻を鳴らした。
……いや、てかこのバーに案内された時も思ったけどコイツすげぇかっこしてんな。何だその手の模型、ヤバいやつじゃん。
「まあとりあえず話進めるけどさ」
「おい、勝手に――」
「死柄木弔」
「……チッ」
わーお、忌々しげな舌打ちぃ。
「流れとしては、そっちが騒動を起こす。その間に俺がカリキュラムを盗んでくる。OK?」
「ああ、合ってる。けど本当に取ってこれるのか? お前が? 一人で?」
「そりゃもちろん余裕っすわ」
「「…………」」
「うっわ凄い疑いの目」
それじゃ証拠見せちゃる、と俺は死柄木に手のひらを差し出した。
「あん?」
「それ一つくれ」
と、指さしたのは死柄木の腕に取り付けられた腕の模型。
「……ほらよ」
「し、死柄木?」
ほい、と投げて寄越された手型を受け取ってしげしげと眺めてみる。
見れば見るほどまー気味の悪い模型だ。
「――ッ!? お前ッ!」
数秒して、死柄木が凄い勢いで手型を取り返してきた。
空になった手をにぎにぎしながら不敵な笑みを浮かべてやる。
「ど? 分かった?」
「お前が嫌な奴だってことはよくわかった」
「じゃ、当日はよろしく。黒霧さん、ご馳走様〜」
最後の最後まで忌々しげな視線を受けながら、俺はバーを後にした。
そんな訳でお仕事当日。
「はー、雄英バリアねぇ」
コンコン、とめちゃくちゃ硬い壁を叩きながら呆れてしまう。
なんでもマスゴミガードらしいが、それにしたってやりすぎじゃないかなとは思う。
「金かけすぎだよなマジ。流石国立」
金庫とかあんのかな、と馬鹿高い塀越しに中の様子を伺ってみる。うわ、マジックミラーなんかな。全く中見えねえや。
「ワタリ。準備は出来ていますか?」
「んあ? あー、おっけーおっけー」
背後の黒霧に両手でオッケーサインを作って答える。
その隣では、心底嫌そうにため息を吐く死柄木の姿もあった。
「なんだよなんだよ死柄木弔まだ文句言ってんのかいヘイヨー」
「五月蝿い。怠い。絡むな」
「ヘイヨー」
つんつんと二の腕をつついてやると、顔面に向かって右手が振り抜かれた。余裕綽々で避けてやると心底嫌そうな舌打ちが聞こえる。
「チッ。計画は分かってんだろうな」
「そりゃもちろん。プロですから」
「……ならいい。やるぞ、黒霧」
「はい、死柄木弔」
ずぞぞ、と黒霧から広がったモヤモヤに死柄木が手を突っ込む。その直後、甲高い警戒音が鳴り響いてすぐ近くの門がボロボロと崩れ去っていった。
「ヒュ〜♪」
「……何してる。早く行け」
「ヘイヨー」
「そのウザったらしいキャラは辞めろ」
スタコラサッサ〜。
あ、取材お疲れ様でーす。ちょっと通していただけますー?
「なんだ君――あ、どうぞ」
「えっちょっと――あ、そこ避けてあげて」
いや〜人間ってちょれぇわ〜。
「誰だお前、マスコミじゃな――」
「あ、清掃業者のものでーす。はいこれ委託書」
首に包帯ぐるぐる巻きにした目ヂカラやべーオッサンと、金髪で髪型やべーオッサンに道を塞がれたので、いつも通り白紙の手帳を掲げて見せる。
すると先程までの剣呑な雰囲気が霧散し、むしろ迎え入れるように道を譲ってくれた。
「そうでしたか……。すいません、お引き留めして」
「いえいえ、それでは失礼しまーす」
ほい、第一関門クリアー。やっぱ人間ってちょれぇわ〜。
Q.2
好きな食べ物は何ですか?
A.2
コンビニでよく売ってる栄養バー。最近出た新味が美味いんだこれが。