ヒーローとかヴィランとか知らんが、仕事なんでね 作:みみっちい小悪党
・小説のあらすじを変更しました(誤字修正)
・小説分類を短編から連載に変更しました
・各話タイトルをつけました
・あとがきにオマケを追加しました
『ワタリ。新しい依頼があるんだ』
「待った先生、その話長くなる? このパスタ食ってからでいい?」
黒霧の作るミートソースパスタうめぇんだ、と頬張りながら続けると先生はテレビ越しに苦笑しながら頷いてくれた。
「……ていうか何でここに居るんだ、お前」
「ひひゃほあ、ひゃひひんひひゃひはへっへふふぁはふぁ」
「食ってから喋れ汚ぇ」
「――ごくん。じゃあ食ってる時に喋りかけんなジャリボーイ」
「おいコイツ殺していいか先生」
『ハハハ、ダメだよ弔。彼女にはまだ利用価値がある』
サラッと怖い話してんな、と思いながらお手手を合わせてご馳走様。美味しかったぜ黒霧。
「はい、お粗末さまでした」
「んで先生、依頼ってのは?」
『ああ、それなんだけどね。君には弔と一緒に、もう一度雄英高校に行って欲しいんだ』
「ん、おっけー。いつも通り報酬は前払いね」
んぐんぐ、いやこのドリンクうっま。なんかやばいもん入れてない? ない? あ、そう。
「……何も聞かずに頷くんだな、お前」
と、カウンターに肘をつきながら死柄木が俺に胡乱げな視線を寄越した。
ので、とりあえずお前も飲めや、とドリンクをスライドさせてみる。
ドリンクはそのままスーッとスライドして死柄木の前を通り過ぎ、その先で開いたワープゲートを経由して俺の目の前に戻ってきた。
「いや取れよ今のは」
「知るか」
「危ないのでこういうのは程々にしてくださいね、ワタリ」
へーい。
「んで、何? 俺が即決した理由聞きたい訳?」
そんなの簡単だ、とスマホを取り出して、空白だらけのスケジュー帳を見せる。
「今仕事がないからだよ」
「は?」
「今仕事がないからだって。暇なんだよ」
繰り返し答えてやると、死柄木は少しフリーズした後、肩を震わせて静かに笑い始めた。
え、何その笑い方キモ。いやキモ。
「クッ、クククククッ……! ワタリ、お前良いな。良いイカレ方してやがる」
「お? なんぞケンカ売っとんか? 買うぞ?」
『ハハハ、仲が良さそうで何よりだよ』
先生も何わろとんねん。
『それじゃあ、ワタリ。計画の詳細を教えるよ。黒霧』
「はい。ワタリ、こちらを」
ほい、と差し出されたタブレットを受け取る。
ざっと目を通した感じ、この前取ってきたカリキュラムで目的の教師が居る授業中に襲撃を仕掛けるらしい。
「……ん? 襲撃?」
いやいやいやいやいやいやいやいや。
「先生、俺戦闘タイプの個性じゃないんだけど?」
『もちろん分かっているさ。だから君には、戦闘じゃない別の役割を用意してある』
「別ぅ……?」
ニコニコ笑顔(顔潰れてるから雰囲気だけど)の先生を横目にさらに資料に目を通す。
「あー、なるほど。人集めと指示出しね」
『そういうことさ』
んー、まあツテを使えばそこそこ使えそうなのは何人か居るけど。指示出しもするならそういう個性か、トランシーバーとか欲しいなあ。
あ、そういや知り合いにブローカーいたや。ちょっとそっちも頼ってみるかね。
「んあ? 先生、この『脳無』ってのは?」
『ああ、それはね――』
『ワシの研究成果第1号じゃ!!!!!』
「「うるさっ」」
馬鹿でかいドクターの音割れ声に死柄木と揃って耳を塞ぐ。耳があるはずの黒霧は涼しい顔だ。コイツ、デキるな。
『“超再生”に“衝撃吸収”、そして素でオールマイト並の肉体スペック! 知能が低いのが難点じゃが、上手く扱えばオールマイト程度封殺できるスペックを――』
『ドクター、落ち着いてくれ。弔達が耳を抑えているよ』
『――おお、すまんすまん。つい興奮してしまったわい』
なんで年寄りの大声って体の芯に響くんだろうな。年の功ってやつかな。やだなそんな特殊効果。歳はとりたくないもんだ。
「まあだいたい分かったよ、ドクター。その研究とやらにこの前の薬は役に立ったか?」
『ああ、アレはダメダメじゃったわい。個性のブーストと銘打ちながら、実際の効果はアドレナリンの増加と微々たる身体能力の増強程度よ』
「あー、つまり?」
『興奮作用で自分が強くなったと勘違いする程度じゃ』
うわ、じゃああの時捕まってた小悪党って騙されてた訳? カワイソ。
『じゃがな、興味深いものも見つかったぞ』
「ほーん」
『……心底どうでも良さそうじゃな』
「いやだって俺は依頼されたもん取ってきただけだし」
『ワタリらしいね』
さて、と椅子から立ち上がり背中を軽くそらす。パキパキいい音が鳴った。
「んじゃ、俺ァテキトーに人集めるんで。いってきやーす」
「弱いのは連れてくるなよ」
「安心しな、お前より弱いのはそう居ないよ」
ダーツの矢が飛んできたので余裕で避けてやった。
「んじゃ、当日はよろしくねー」
「了解っす、姐さん!」
「姐さんはやめろ」
何度言っても言うことを聞かないチンピラを引っぱたき、溜まり場を後にする。
さて、これで目標人数の半分ってところか。……まだまだ時間がかかりそうだな。
「あれ、ワタリちゃん?」
「あん?」
聞き覚えのある声がしたので振り向くと、制服を血でベットベトにした女子高生が居た。
右手にはナイフ、左手には赤黒い塊を持っている。
「トガちゃんじゃん、奇遇だな」
「奇遇ですねえ。何してるんです?」
左手の塊をチウチウしながらニコニコ笑顔で話しかけてくるトガちゃん。相変わらず猟奇度高いな。
「依頼で頼まれて人集め。ちょっと襲撃イベントがあってね」
「襲撃! 面白そうですね! 何時ですか?」
「次の木曜日」
「……その日はダメですね」
途端に残念そうになるトガちゃん。こういう所は可愛げがある。
まあまあ、と慰めついでにチョコレートをあげた。
「次似たようなことあったら声掛けるから、まあ楽しみにしてて」
「はい! 絶対ですよ!」
「うんうん。絶対、絶対」
まあ次があるのかはしんないけど、と去っていくトガちゃんに手を振りながら内心で呟いた。
「天下の雄英高校様を襲撃、ねぇ」
「そ。面白そうなイベントだろ?」
そろそろ人脈も無くなってきたので、人脈の人脈を頼ることにしてブローカーの元を訪れた。
渡した資料を見て盛大に苦い顔されてるけどな。
「いや、まあこういうのに食いついてきそうなのは何人かいるがね」
「どいつもこいつも馬鹿なんでしょ? そういうので良いから、とりあえず紹介してくれ。選別はこっちでやるから」
「選別って、あんたなあ。……まあワタリの頼みだ、特別に半額でいいぜ」
「そこは無料って言うとこじゃないんかい」
「こっちも生活がかかってるんでね」
そう言うとタバコを取り出して吹かし始める。煙たい。
「……そんな嫌そうな顔すんなよ、吸ってみりゃ良さが分かる」
「いやいらん。匂いが好きじゃないし何より健康に悪い」
「ヴィランのお前さんが健康を気にするのか! ……ああいや、悪い。口が滑った」
膝を叩いて笑ったブローカーが、俺の顔を見て気まずそうに目を逸らす。
「前々から言ってるけど、俺はヴィランになったつもりは無いからな」
「ああ、ああ。悪かった」
「分かりゃいい」
んじゃ後はよろしく、とだけ伝えて密会場所のバーを後にする。とりあえずこれで人集めの以来は終わりだ。
さて、面倒なやつが来なけりゃ良いけど。
「……まったく。殺されるかと思ったぜ」
“何でも屋”ワタリ。依頼されたら殺し以外大体何でもやる、ヴィラン界ではひっそりと有名な存在だ。
やってることは盗みに密輸、その他もろもろ違法なことまみれだが、本人は自身をヴィランとは称さず、頑なに“何でも屋”を名乗っている。
確かに彼女はヴィランとして警察やヒーローの捜査線上に浮上したことは無く、精々が現場に居合わせたフリーター程度の扱いだ。
それには彼女の個性が深く関係している。
彼女の個性は特殊で、まず証拠が残ることは無い。まあそもそも犯罪を犯していることを認識させないのだから、証拠もクソもないが。
風の噂で聞いた話だが、この前なんかナンバーツーヒーロー、エンデヴァーに事故現場から保護されさらにサインまで貰って帰ってきたらしい。
どんなツラの皮の厚さだ、とあの時は呆れたものだ。
「……ま、俺としちゃその信条がいつまで続くか見物、って感じだがね」
空調に揺られるタバコの煙を見やり、ブローカー、ヴィラン名『義爛』はパソコンを開き、候補者のリストアップを始めた。
Q.4
エンデヴァーのサインはその後どうしましたか?
A.4
メル〇リで売った。