返信は基本しませんが皆様の感想は私の力になります。
この場を借りてお礼申し上げます。
今回の話は書き直しを重ねて作りました。
宮永照はわからない
宮永照はわからない。
妹と同じ部員である須賀京太郎と妹の関係が。
目の前の男と初めて会ったのはたしか咲がインターハイ後に改めて話し合いたいと言ってきてそれを受け入れた時のはずだ。
私は付き添いに菫と淡を連れて行き、咲は原村和と件の男を連れてきた。
その際に、咲が男を紹介して初めてその男の名前がわかった。
そのとき咲が気安く紹介していたから印象に残っている。
その場はそれだけで終わった。
その後も咲と連絡を取るたびによくその男の話題が出てきたので、恋愛に疎い私でも咲と彼が好き合っているのだなと思った。
しかし、咲にそのことを指摘すると「中学2年生からの付き合いなだけだって。」と返ってきた、浅い付き合いなら彼の家に作りすぎた物を持っては行かないと思うが…。
少し話は変わるが私と咲が和解したことによりお父さんとお母さんの関係も多少良くなった。
それでも離れていた時間は長いのでギクシャクはしている。
そのため、私は橋渡しもかねて長野の家に通うようした。
プロの契約と自由登校により時間と金銭に余裕ができたからできる芸当だ。
それでも、淡は私から離れたくないと言っていたが、来年から私がいなくても白糸台を引っ張って行けるように心を鬼にしてなだめた。
まあ、卒業するまでの間なるべく顔を出すようにするが。
話が長くなってしまったが、そんなこんなで私は長野に帰ってきた。
私は家の前に来て玄関のチャイムに手を添えて動きを止めた。
頭では押そうとしているが体は動かなかった。
わかってはいたがここまで露骨に出る物かと心の中でため息を吐いた。
そして深呼吸をしてから意を決してチャイムを押した。
バタバタとした音の後、咲が慌てながら玄関を開けてきた。
そしてその勢いのまま私に抱きついてきた。
こうやって見ると咲はまだまだ子供なんだな、そう思いながら咲の気の済むまで抱きつかれていた。
落ち着いたのか咲は私から体を離して、私の目を見ながら「お帰り、お姉ちゃん。」と言ってきた。
私も「ただいま、咲。」と言って、昔のように微笑んだ。
そのまま家に入りお父さんにも挨拶をして、私の部屋に荷物を置き咲に導かれるままに咲の部屋に入った。
咲は改めて話し合いがしたかったそうだ、私も電話では話しきれなかったこともあるので咲の提案に乗った。
時間が経つのを忘れて話し込んでいたが、咲は時計を確認して晩ご飯の準備の時間だと話をいったん切り上げて、台所に向かった。
私も何もやることがないので咲について行った。
そのまま咲を見ていると慣れた手つきで3人で食べるには多い料理がどんどんできていく。
私よりも手際がいいことに姉としてのプライドに傷が付いた気がしたが顔に出さずにそのまま見ていた。
そして、晩ご飯の時間になりお父さんともぎこちなかったが話しながら食事をした。
咲は多めに作っていたご飯を持って出かける準備をしていた。
彼に持って行くのだろう、私も興味があったのでついて行くことにした。
彼の家は思っていたよりも近かった、作りすぎた物を持って行こうとするなら当然か。
それよりも想像よりも彼の家が大きいのが意外だった、庭には小さいながらもプールらしき物も見える。
私が家を観察している間に、咲は慣れた手つきでチャイムを鳴らしていた。
あまり待たずに扉が開き、彼が出てきて対応していた。
彼は私に気づいたようで挨拶をしてきたので、私も挨拶を返した。
しかし、彼と接している咲はやはり気安い気配を感じる。
やはり、中学2年生からの付き合いに見えない、某高校生孫探偵漫画の主人公とヒロインの関係に見える、確かあれは幼なじみの関係だったはず。
しかし、それを咲に指摘してもいつぞやのように否定するだろう。
今度彼と話してみようか、咲と彼のやりとりを見ながらぼんやりと思った。
宮永照はやはりわからない。
目の前の男と妹の関係が。
しばらく経ってから彼と話す機会があったので咲との関係を聞いてみた。
彼は「一応、中学2年生からの付き合いです。」と返してきた。
私は彼の態度に疑問を思った、彼自身どこか腑に落ちない部分があるのだろうか?
さらに追求しようとしたら、咲が帰ってきてうやむやになってしまった。
そこで彼のことを空いた時間に観察することにした、幸いにも機会は多く恵まれた。
来年こそ一緒に全国に行くと咲が張り切っているので部活時間外にも彼や部活仲間を家に呼んで彼に麻雀を教えようとしている。
我が家には自動卓があるのでちょうどいいのである。
観察するとある程度のことがわかってきた。
基本的には彼は咲のことを女友達として扱っている、さらに言えば彼が好意を抱いているのは原村和だ。
彼はわかりやすかった、原村和のある一点によく目が滑っていたり妄想しているのを目にした。
咲は彼が原村和のある部分に関わると少し不機嫌になる、まあ私も思うところが無いといえば嘘にあるが。
原村和はどちらにも好意を抱いているがそれは友人に抱く好意だ。
さらにそこに片岡優希などの関係も挙げられるが、話の本筋から離れすぎてしまうので省略する。
たしかに彼は女友達として扱っているが、咲のじゃれつきを全面的に受け入れているのが疑問だ。
麻雀を教える際に体を密着させて教えてもそれが当然だと受け入れている。
ならばなぜ咲との関係に対して疑問を覚えているのだろうか?
さらに観察すると彼の咲に対する行動の理由の答えがわかった。
彼は咲のことを“手の掛かる”女友達かつ無意識に“小動物”として見ているのだ。
この“手の掛かる”、言い換えるとポンコツがミソなのだ。
彼の生来の性格がお節介焼きのお人好しなのだろう、咲がポンコツな行動すると彼がフォローしている。
咲が彼にじゃれついても彼には同年代の少女ではなく小動物がじゃれついているように感じているので何も疑問に思わない。
彼が拒絶しないので咲はそれが普通と誤解してさらに気安く接する。
この二つが噛み合って、たった数年で幼なじみのような関係になったのだろう。
そう結論づけながら、私はお菓子を食べながら彼の麻雀を見ていた。
宮永照は考えあぐねる。
目の前で調理している男と私の関係を。
彼が調理している理由は簡単だ、私の為にお菓子を作っているのだ。
なぜ彼が私のためにお菓子を作っているのか、それにはわけがある。
きっかけは彼が私に対して麻雀の指導のお礼がしたいと言ってきたことだ。
そう、彼を観察する過程で咲に頼まれて彼の指導の手伝いをすることになったのだ。
私は「初心者に教えること自体、基礎を見直す良い機会なのでそちらが気にすることでは無い。」と彼に伝えた。
しかし、彼は「さすがにそれは…」と思ったらしい。
そこで咲にどうすればいいかと相談して、教えてもらう際に差し入れを用意することにしたようだ。
だが、咲はその際に「手作りならさらに気持ちが伝わるよ」と吹き込まれたようで、ならばできたてを用意しようと斜め上に決意してしまった。
その結果が今の状況だ。
私は彼の料理の腕に大して期待しておらず、心の中で溜め息をしていた。
しばらく待っていると彼は調理を終わらせたようで私の前に皿を持ってきた。
その皿の上にはパンケーキが乗っており、それを見て私は懐かしさと驚きを感じた。
パンケーキは私にとって白糸台での大切な思い出を思い出させる物であり、彼が作った物は店売りのようにふんわりふっくらと膨らんでいて素人が作った物にはとても見えなかった。
私はフォークで一口大に切り分け口に運んだ。
その味はあのパンケーキに比べれば劣る気はしたが、店で出しても問題の無い味だった。
私はそのまま無心でモックモックと食べていき、あっという間に完食してしまった。
空になった皿に寂しさを感じていたら、いつの間にか台所にいた彼がお替わりを持って現れた。
私は「ありがとう。」とお礼を言い、お替わりもあっという間に平らげてしまった。
後で咲に聞いたのだが彼がここまで料理が上手なのは、片岡優希のタコスの為に練習していくうちに元々あった彼の食い意地がさらなる食の探求に突き進めさせていった結果だという。
咲はそれに危機感を感じて料理の腕をさらに上げたことも話していたがそれは余談だ。
彼は私に味の感想を聞いてきたので、「美味しかった、また作ってほしい。」と言った。
彼はそれを聞いて嬉しそうにしつつ、使用した道具の後片付けを始めた。
私はそれを見ながら、今後の楽しみが増えたことを嬉しく思った。
宮永照は考える。
どのようにすれば京ちゃんのお菓子をもっと食べられるか。
あれから京ちゃんは私が麻雀を指導するたびに差し入れとしてお菓子を用意してくれる。
私がリクエストするとよほど難しい物でない限り答えてくれるし、その難しい物もしばらく経ったら「どうですか?」と出してくれる。
もちろん、途中から私から材料代を出すようにはしている。
京ちゃんは私に合わせてお菓子の味を調整してくれるのでさらに食べたくなる。
私は淡たちの様子を見るために訪れた麻雀部にて京ちゃんが持たせてくれたクッキーを頬張りながら、京ちゃんのお菓子をさらに食べる方法を考えていた。
深く考え込んでいたようだ、淡が私の近くに寄って頬をつついてきた。
どうやら私を呼んでも反応が無かったので気になって近寄ったようだ。
私は淡に謝ってどうしたのか聞いた。
淡は人懐っこい笑みを浮かべながら、「テルー、そのクッキーどうしたの?」と聞いてきた。
私は淡に質問の意味を聞くと、「すんごい嬉しそうに食べていて気になったんだ。」と言ってきた。
そんなにわかりやすく食べていたのかと驚きながらも、京ちゃんがたくさん持たせてくれたのでクッキーを淡に「食べてみる?」と聞いてみた。
淡は目をキラキラさせながら「え、いいのテルー!」と言って、クッキーを頬張った。
淡は「美味しい~、これどこのクッキー?」と聞いてきて、私は長野のクッキーとなんとなく危機感を感じたのではぐらかしながら答えた。
淡は「え~、店の名前を教えてよ~」と言いながら私を揺すってきた。
なぜ危機感を感じたのだろうか、菫なら包み隠さずに話したのに。
私は淡のある一点がタプンタプンと淡の動きに合わせて揺れているのを見て合点がいった。
淡と京ちゃんを深く関わらせると全てを持って行かれると感じたのだ。
片岡優希の気安さ、原村和並かそれ以上の胸、そして咲までとはいかないポンコツを兼ね備えてしまっている淡は京ちゃんを籠絡してしまう確信があった。
いくら京ちゃんの好みが家庭的な女の子だとしても淡の持つポテンシャルはバカにできない、一気にかっさらわれてしまう未来をありありと目に浮かぶ。
もし、そうなれば京ちゃんがお菓子を作る頻度が下がってしまうかもしれない。
私は悩みながら淡をどうなだめようか悩んでいると、一緒に来ていた菫が助け船を出してくれた。
菫は淡をなだめながら「こら、淡。照が困っているだろう。」と言ってくれたので、淡も渋々追求の手を緩めた。
私はさらに淡にクッキーをあげつつ、“家で作ってくれたクッキー”と意図的に誤解する言い回しで淡に言った。
淡はクッキーを見つつ「え~!これサキが作ったんだ~」と勘違いしてくれた。
菫はどこか怪訝そうに私を見てきたが、この場で追求したら淡もさらに乗ってくることを考慮したのかそれだけで止めたようだった。
私は菫に感謝しつつ、もう一枚クッキーを頬張った。
宮永照は深く考える。
京ちゃんと私の今後を。
今、私は京ちゃんの最近の成績や牌譜などを確認していた。
京ちゃんは今なら全国でも有数の防御を手に入れた断言できる。
私と咲と一緒に打っても飛ばないでいられるのだから。
まあ、私と咲が一緒に打てば和解していても心の奥深くで燻っているものが現れるのか壮絶な削りあい(京ちゃんら曰く、大怪獣決戦)で残り二人はその余波を必死に耐える状況になるので、それに耐えるだけで否応なしに防御が鍛えられるのだが…
さらに鍛えればプロも夢じゃないだろう。
だけど、プロになれば京ちゃんも忙しくなってお菓子を作る頻度が下がるだろう。
大学を薦めたとしてもそれは問題の先延ばしにしかならない。
いずれは京ちゃんも就職するだろう。
私のわがままで京ちゃんの未来を決めるなんてことはしたくない。
しかし、京ちゃんのお菓子が食べられる頻度が下がる事実に耐えられない私がいるのも真実だ。
先日、京ちゃんに将来の夢をそれとなく聞いたがまだ考えていないという答えが返ってきた。
それはそうだ本当になりたい職業がある人以外はまだ遠い話だ、真剣に考えているのは今の時期では極一部だろう。
ならば、私がマネージャーとして雇うことも考えたが、結局それも京ちゃんの未来を私のエゴで潰そうとしていることに変わりないのだ。
私は悩みながら作業を中断して京ちゃんが作ってくれたパウンドケーキを食べていたら、京ちゃんがコーヒーを持ってきてくれた。
それを見ながら私はなんとなく新婚の夫婦みたいだなと思った。
…
新婚…?
そうだ、私が京ちゃんと結婚すれば、京ちゃんがどんな職業についても京ちゃんのお菓子を毎日食べることができるじゃないか。
これ以上ない良案に私はパウンドケーキを頬張りながら決意した。
宮永照は企てる
京ちゃんと結婚する方法を。
結婚とは人生において非常に重要な事柄で、大抵の人は慎重に考えるものだ。
だからこそ、京ちゃんもいきなり言われても首を縦に振るとは思えない。
原村和や咲ならそのままゴールインするかもしれないが、たった、1・2ヶ月の付き合いの私では無理だ。
…たった、それだけの期間でここまで惚れ込む私は咲並にヤバイやつなのでは…
考えないことにしよう、今は京ちゃんと結婚する方法だ。
時間を掛ければ結婚まで持って行く確信があるがその時間がないのだ。
プロになれば自由にできる時間が少なくなり、その間に咲や原村和、片岡優希などに先を越される可能性がある。
咲は恋愛感情はないが今の関係のままずっと添い遂げる気が、いや添い遂げるだろう。
私はどうすればいい。
いっそ、既成事実を…。
いや、だめだ。
それでは、私も京ちゃんも今後の生活にしこりを残してしまう。
ならば、どうするか。
経済面でも彼の家はそれなりに裕福だから効果が薄い。
ならば胃袋をつかむことは…不可能だ。
私はほぼ食べる専門だ、最低限の料理の腕しかない。
京ちゃんに体でアピールも絶望的だ、淡の一部を私に分けて欲しい。
八方塞がりだ、名案が浮かばない。
…
……
………
決めた、真正面から正攻法だ。
変に謀ろうとすれば逆に京ちゃんの印象は悪くなる。
まっすぐ行って突き抜けよう。
すぐに実行しよう、後回しにすれば今心の底から湧き出ている勇気が枯れてしまうかもしれない。
私は立ち上がり、私がリクエストしたアイスクリームを作っている京ちゃんがいる台所に向かった。
今、咲は原村和らと清澄の先輩の雀荘の手伝いに行っていて家にはいない。
そのため、私が一人で指導しているのだ。
私は台所に繋がる扉に手を掛けて、深呼吸をした。
そして、扉を開き京ちゃんの近くに行った。
京ちゃんはアイスクリームを冷凍庫にいれている所だった。
京ちゃんは私に声を掛けようとしたが、私の雰囲気がいつもと違うことに気が付き声を掛けられないようだった。
私はこれまでにない真剣な顔をして、告白した。
「京ちゃん、私と結婚を前提に付き合ってください。」
京ちゃんは困惑しているようだった。
そうだろう、知り合ってたった1・2ヶ月の知り合いに告白されたのだから当然の反応だ。
だから私は畳み掛けた。
「京ちゃんが好き。お菓子を作ってくれる姿も、麻雀を真剣に打つ姿も、京ちゃんの全てが好き。」
「だから結婚して欲しい。」
「けど、私たちは知り合ってから少しの時間しか経っていないから京ちゃんは困惑していると思う。」
「お互いのことをさらに理解するために付き合ったうえで判断して欲しい。」
京ちゃんは考え込んだ、それを私はじっと見つめる。
しばらくしてから、京ちゃんは口を開いた。
「…正直に言えば、照さんはお菓子が大好きな頼れる咲のお姉さんだと思っていて、付き合ったり結婚したりすることは想像していませんでした。」
「照さんがここまで俺に惚れ込んだのもきっとお菓子を作ったからだと思います。」
「もっと、照さんにふさわしい人が世の中にいると思います。」
さらに京ちゃんは言葉を重ねようとしたので私は背伸びをして京ちゃんの唇を私の唇で塞いだ。
京ちゃんは目を見開いていた。
「私は京ちゃんがお菓子を作ってくれるから好きになったんじゃない。京ちゃんが私を見てお菓子を作ってくれたから好きになった。」
そうだ、お菓子でごまかしていたが私は私を見てくれる京ちゃんが好きなんだ。
きっと、お菓子を作ってくれなくても私は京ちゃんが好きになっただろう。
「だから、釣り合わないとかそんな言葉で誤魔化さないで京ちゃんの本心で答えてほしい。」
京ちゃんは私の言葉を聞いて少し考えてから口を開いた。
「…さきほど言ったように頼れるお姉さんなのは変わらないです。それに俺の好きなタイプは家庭的な女の子です。それでも俺と付き合いたいですか?」
「問題ない。それに付き合えば私のさらなる魅力に気がついて京ちゃんはメロメロになる。」
「…わかりました。付き合いましょう。」
一世一代の告白がなんとか成功した。
安心感とさっきまで背伸びをしていた影響が来たのかバランスを崩し倒れそうになった。
京ちゃんが慌てて私を抱きしめて支えてくれた。
京ちゃんの私とは違う異性の体が間近に感じられて、麻雀を教えるために後ろから密着したときとは違う感覚にドキドキする。
私は燃え上がる思いのまま京ちゃんに再びキスをした。
宮永照は噛みしめる。
京ちゃんと暮らしている幸せを。
あの告白から京ちゃんと私の関係は劇的に変わることは…なかった。
私は麻雀を教えて、京ちゃんはお菓子を作る。
そこに私が東京にいるときに電話で話すのが増えただけだ。
ただ、咲たちには3年のインターハイまでは私たちの関係を秘密にすることにした。
今、付き合うことを話しても咲達に悪影響があるからと説明したが、実際は私のわがままだ。
もし、付き合っていると話してしまえば咲達は京ちゃんをさらに意識してしまうだろう。
そうなれば、過ごした時間が短い私には咲達の持っているアドバンテージには勝てない。
それを恐れて私は関係を秘密にすることにした。
そのまま時が流れて私はプロになった。
会える時間が少なくなったが、それでも時間を見つけ指導の名目で会いに行った。
京ちゃんもメキメキと麻雀の腕を身に付け、2年生のインターハイで個人全国1位になった。
1位になった時に私もお祝いに参加して京ちゃんを祝って、後でこっそり2人だけでもお祝いした。
さらに時が流れて京ちゃんが3年のインターハイが来た、私は初めて解説に呼ばれた。
京ちゃんに教えた経験が生きたのかなんとか一般向けに解説はできた。
京ちゃんはまた個人1位になった。
その結果、京ちゃんに大学の推薦やプロのスカウトが多く来たようで、私に相談してきた。
私は「プロになるのも大学に行くのも京ちゃんの自由、私はどんな選択をしても京ちゃんと一緒にいる。」と言った。
また、咲達に私達の関係を発表したが返ってきたのは「知ってた。」という反応だった。
どうやら、私は思っている以上にわかりやすかったようだ。
それでも、思うことがあった咲達に麻雀で徹底的に“話し合い”をさせられた。
それから、京ちゃんはプロになることを選んだのでプロ入りと同時に結婚を発表した。
世間の反応も咲達と同じような反応だった。
隠していると思っていたのは私だけだったようだ。
結婚してからも、忙しいながらも京ちゃんは家に帰ってきて私にお菓子を作ってくれる。
私は作ってくれたお菓子を食べながら、これからの生活に思いを馳せた。