須賀京太郎断片集   作:星の風

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星の風です。
なんとか週一投稿に間に合いました。
今回はこの前投稿した”宮永咲は突き進む”の照視点の番外編です。
いかにして宮永照がインハイ決勝でああなったかを作ってみました。
”宮永咲は突き進む”も是非読んでみてください。
来週中に下も出せるようにしたいです。
あと揺杏さんの下も鋭意制作中です、決して忘れてません。

そしてこの場を借りてお礼を申し上げます。
お気に入り登録や評価、感想ありがとうございます。
皆様の評価や感想が活動の励みになっています。
改めてお礼申し上げます。


番外:宮永照と妹? 上

 私の名前は宮永照、麻雀は好きじゃないけど得意で親が別居していて妹と冷戦している以外はどこにでもいるお菓子好きの白糸台高校の3年生。

 

 

 私は今、新入部員達の対局を見守っている。もちろんただ見守っているわけじゃない。少しだけ圧を掛けながら見守っている。これには色々と理由がある。

まず一つが全国のエースや魔物に対する耐性を付けること。

彼女らは大なり小なり自分なりの打ち筋や感覚を持っている。それは時に理に合わない打ち方をしても結果が着いてくるのだ。事前に知識として備えても実際に対面した時には映像や牌符からは感じ取れない熱に当てられ冷静さを失うかもしれない。それを防ぐためにこうしている。

 次に少しだけ最初に被るが有望な新人の見極めだ。

私は自慢ではないが打っている本人よりも正確にその人の潜在能力を含めた実力を見定められる。もちろん、皆の実績や私のネームバリューで全国から腕に自信がある人たちが集まってきている。その選りすぐりの中から金の卵、もしかすると第二の私になり得る人がいるかどうかを見ている。

 最後は・・・・・・まあファンサービスだ。私の立場は全国一万人の頂点に立っているチャンプだ。入部してくる人たちはほぼ全ての人が大なり小なり私に対して憧れを持っている・・・らしい。ピンときていないけど菫が言っているなら本当なんだろう。そんな私が目の前に現れてさらに対局を見守るとなればそれは値千金なんだろう。・・・私は憧れよりも美味しいお菓子を取るけど。

 

 

 そんなこんなで新入部員達の対局が終わり、彼女らは一旦別の部屋に通され麻雀部の説明を受けることになった。

 私はガランとなった対局室の椅子に座り持ち込んだお菓子を食べていた。そんな一人しかいない空間にガラッと扉を開ける音が響き渡る。ちょうど扉の方を見ていた私は訪問者に対して労を労うように声を掛けた。

 

「お疲れ、菫」

「お前ほどじゃないさ、・・・それでお前から見てどうだった?」

 

 入ってきた訪問者・・・麻雀部部長である弘世菫は片手にバインダーを持ちながら私の近くの椅子に座り、先程の新入部員の対局を見た結果を聞いてきた。

 

「そうだね・・・今年も有望な人たちは沢山いたよ。特に長い金髪の子・・・彼女は頭一つ抜けていたね」

「長い金髪・・・・・・。大星淡か」

「あの子を虎姫に勧誘すればインハイ優勝も格段に近づくと思うよ」

「そんなにか?」

「そんなに」

 

 虎姫とは私や今話している菫が所属しているチームの名前だ。白糸台麻雀部は所属している部員で複数のチームを結成し、そのチームで対校試合を行って最後まで勝利したたった一つのチームがインハイのレギュラーメンバーになるのだ。

 そのチームの編成には絶対に1年・2年・3年を含めなければいけない。去年の私たちのチームは3年が一人、2年が二人、1年が二人だった。そのため今年は卒業した先輩の代わりに1年生を一人勧誘する必要があった。

 

「お前がそこまで断言するなら実力は疑いようがないだろうな。しかし性格はどうだ?例えば和を乱すようなヤツなら勧誘しても足を引っ張るだけになるだろう?」

「それは・・・話してみないと解らないけど、きっと大丈夫だと思う」

「その心は?」

 

 そう聞かれて、一瞬咲のことが頭によぎる。大星さんの対局を見ていたらなんとなく咲と対局していた記憶が呼び起こされたからだ。楽しく対局していた頃の記憶が・・・。

 

「・・・勘かな」

 

 ぎこちない笑みを浮かべながら言葉を濁した私の様子を見て菫は一瞬言葉に詰まったがすぐに優しく微笑みながら“そうか・・・”と返した。

 気を遣わせたことに申し訳なく感じて食べていたお菓子を菫に差し出すと軽く礼を言って受け取り、そのまま食べ始めた。

 私もなんとなく口が寂しくなり新しいお菓子を開けて食べ始める。そんな私に対してお菓子を食べ終わった菫はおもむろに。

 

「なあ照?いつも思うんだがそんなに食べて腹回りとか大丈夫なのか?」

「大丈夫。対局とかで消費するから」

「そうだとしても色々と釣り合わないと思うんだが?」

「問題ない」

 

 そう問題ない。私の家系は体型が変わらないのだ。母も私と同じように特徴的な髪型、スラリとした体型だ。いくら食べても・・・とは言えないけどある程度までは大丈夫なのは把握している。食べた物はお腹周りに溜まらないのだ・・・ついでに胸にもね・・・

 ・・・頭によぎるのは辛い記憶。雑誌に載っていた豊胸運動を実践する私。牛乳を飲んで背や胸を伸ばそうとする私。家に転がっていた健康器具を実践する私。・・・そして母もそれに抗おうとして失敗したことを告げられ絶望する私。

背はそれなりに伸びたけど胸はストンとしたお、おせん・・・ゴニョゴニョみたいな体型。・・・ああ、私に夢を見させてよ。

 

「あ~・・・その、なんかすまん」

「気にしてない」

 

 そう気にしてない。頬に冷たい物が流れた気がするが気のせいだろう。・・・ああ、どこかに料理が上手で私みたいな面倒臭い人でもお世話してくれる背が高くて王子様みたいな人がいないかな。

 

 

 

 

 

**********

 

 

「宮永さん、少し良いかしら?」

「?」

「インハイチャンプで宮永照って名前なんだけどもしかしてあなたの親族? 例えば姪とか?」

「あっ!お姉ちゃんです!」 

「え!?お姉さん!?」

「はい!家庭の事情で東京にいますけどお姉ちゃんです!」

「そっそうなの・・・」

(恋ってこんなに変化を生むのね・・・。お姉さんはこの変化を知っているのかしら?)

 

 

**********

 

 

 虎姫専用の部室には今私しかいない。他の人は所用で外している。

 突然だけど強豪校になると色々と楽になることはいくつかある。

 例えば対校試合だ。インハイ連覇している高校というネームバリューだけで引き受けてくれやすくなる。もしも無名の高校ならここまですんなりいくことはないだろう。

 他には寄付金や合宿等も挙げられる。いま私が手に持っているタブレットもその一つだ。このタブレットの中には全国出場を決めた高校の選手や予選の牌符などのデータがまとめられている。

 それを私は流し見しながら確認していた。

 

「永水、新道寺、・・・、今回も顔ぶれは大体同じ」

 

 私が入学した白糸台みたいな例外はそうそう起きない。強豪が強豪と言われる所以はその積み重ねにある。情報を得るツテや設備、名声による選手層や指導層の厚さ・・・これらを乗り越えて代表を強豪校から奪うのは至難の業だ。

 

「千里山、姫松、・・・ん?」

 

 奈良の代表が晩成じゃなくて阿知賀女子?少し気に掛けた方が良いかも。

 

「・・・、え?」

 

 長野も龍門渕・・・じゃない?龍門渕も例外の一つだった。それまでは風越女子が代表だったのを龍門渕は質の暴力で奪い取った。特に龍門渕透華さんと天江衣さんは私から見ても全国有数の選手だ。残りの人も全国水準以上の強さだった。もし去年直接ぶつかっていたらどうなっていたかわからなかった。だからこそ今年も代表になると思ったんだけど・・・

 

「清澄・・・」

 

 全く聞いたことのない高校だ。本格的に検討するのは皆が来てからにするからとりあえず予選の最終得点収支と名前だけ確認する。先鋒は・・・まあ当然の結果と言える。風越の福路さんも派手さはないが実力は全国有数だからこうなるのも当然だ。次鋒は・・・鶴賀しかプラスになってない。中堅は清澄と龍門渕がプラスか。副将は清澄と鶴賀がプラス・・・詳細を確認しないと判断できないけど今回長野は実力者が分散したのかな。大将・・・え。

 

「・・・咲」

 

 そう・・・。咲も全国に来るんだね。きっと私と会うために来るのだろう。私はどんな顔をすれば良いのだろうか。きっと会えばまた拒絶してしまうだろうか?咲の泣きそうな顔を思い出す。私は・・・私は・・・。

 頭では咲の顔を見れば自分はきっと耐えられないことは理解しているが、心は今の咲の顔が見たがっている。私は震える手で決勝戦の対局映像の再生ボタンに触れる。タブレットに流れる映像。

 

「ん?」

 

 画面に流れる映像には咲らしき人はどこにも映っていない。天江衣さん・・・この人は確か去年も県予選決勝にいた風越の人・・・菫と同じ雰囲気の人・・・私と同じ髪型をした人。何度見返しても咲の姿はどこにもいない。強いて言えば同じ髪型をした人が似ている位だ。私は自嘲気味に笑った。

 

「インハイチャンプだとか持ち上げられても・・・一皮剥けば私もただの姉・・・か」

 

 私に咲を心配する資格はないのに・・・。タブレットを机に置き、遠くを見つめる。

 

「・・・向き合わないと」

 

 きっと今年が分水嶺だろう。卒業すれば声を掛けられているプロのどこかに所属して自由に動けなくなってしまうだろう。いや有名になればなるほど私と咲の関係はマスコミが深掘りしようとするだろう。そうなってしまえば世間の好奇の目は私たちに向けられる。私はあまり大丈夫じゃないけど耐えられる。・・・けど咲は?頭によぎるのは昔の咲。お姉ちゃんお姉ちゃんって無邪気に呼びかける咲、山の上で会話した咲。・・・咲は繊細だから耐えられないだろう。

 

「“その花のように――強く”・・・か」

 

 咲に掛けた言葉が私に返ってくる。結局の所、私は逃げているだけ。なにもかも、なにもかも。そのツケを清算することになったのが今になった・・・ただそれだけ。

 

「インハイが終わったら会いに行こう」

 

 本当ならすぐにでも会いに行きたい。けど会ってしまえばきっと私は今までの“宮永照”には戻れないだろう。麻雀はメンタルとも密接に関係している。今の私には虎姫だけじゃない今回出られなかった麻雀部の皆の分の期待を背負っている。私はそれを投げ捨てることはできない。

 

「・・・頑張ろう」

 

 動画が再生されたままのタブレットに再び手を伸ばそうとして・・・

 

 

「テル―、ただいま!」

「淡!部屋の中を走るな!・・・照戻ってきたぞ」

「おかえり」

 

 ドアを勢いよく開けて私に飛び込んできた淡を抱き留めつつ菫に声を返す。

 

「尭深達ももうすぐ来るそうだ」

「わかった」

 

 抱きついてきた淡を撫でつつ、全員が集合してからの予定を思い返す。

 

 他の3人が冷や汗をかいている中、余裕の笑みを浮かべた同じ髪型の人が映っているタブレットを忘れるように・・・

 

 

 

 

 

**********

 

 

「嶺上開花ツモドラ2――・・・2000・4000です」ボッ

「! ・・・ふふっ」

(ぴぃ!)ゾワゾワ

(あ~、やっぱこうなっちゃうか~。県予選の後、須賀くんに頑張ったご褒美の名目でおねだりして一緒に出かけてからフワフワしてたから気を引き締めるためにこの対局を用意したんだけど・・・)

「~♪」

(杞憂だったわね。・・・というよりもこの様子だと絶対に対局中はブレないわね。完璧に横綱相撲だわこれ)

 

 

**********

 







恋愛とかの描写があまり入ってないので今回は番外編として作成しました。
壮大なフリの果て宮永照がどうなるのか・・・
気長にお待ちください。
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