本日は岩館揺杏さんの誕生日なので投稿します。
お待ちしている皆様、申し訳ありません。今日という日に間に合うように執筆していたのですが完成しませんでした…
生存報告も兼ねて出だしの部分を投稿します。
今月中には完全版を上げます。
そしてこの場を借りてお礼を申し上げます。
お気に入り登録や評価ありがとうございます。
失礼しました。
横に座った初対面の変な男にこれまでのことや昨日の試合のこと、そしてココロに生じている虚無感を個人情報などはぼかして話した。麻雀のことや昨日の試合のことを話した際に男の雰囲気が一瞬変わったことに内心首を傾げたが話せることは話していった。それを聞いた男は少し考える素振り見せてから口を開いた。
「……あなたは真面目なんですね」
「そうかぁ? どっちかというと自分のことは不真面目だと思ってんだけどなー」
よく爽と一緒にふざけていたりしているし、チカセンや成香、ユキの方が真面目だと思うけどな。
「麻雀を頑張りつつ、後輩のために衣装を何着も仕上げるなんて俺にはとても出来ません」
「インターハイまで時間があったんだからほどほどに裁縫が出来る人ならイケると思うんだけどな」
「そうですねきっと時間があれば心得のある人なら出来ると思います」
「なら……」
「ですがインターハイ準決勝まで行きつつ衣装を仕上げるなんてのは並大抵の努力では達成できません」
否定の言葉を言う前にかぶせるように男は断言してきた。こうまで持ち上げられるとむずがゆいモノがある。けれどそれと同時にココロのどこかがチクリと痛んだ気がした。
「俺もジャンルは違いますが物を作っています。その際にいつもこれでいいのかと自問自答しています。そうしてできた物も後から考えれば改善点が思い浮かびます」
男は一呼吸置いて私に向き合って口を開いた。
「物を作るという行為は想像の何倍もエネルギーを使います。それを行いつつ麻雀にも取り組めているのはあなたがひたむきに努力をした結果です。それに比べて俺は……」
「?」
男は目を背けて苦しそうに何かを言おうとしている。しかし、軽く首を振りつつ再びこちらを見る。
「すいません、話を戻します。それらをひっくるめて俺はあなたを真面目と評しました」
「あ、ああ」
先ほど男が話そうとしたことが気になるが、男の様子から今は絶対に話そうとしないことは容易に予想できるので頭の片隅に留めて置くだけにしよう。
「あなたは人一倍真面目にそしてひたむきに取り組んできた……」
そして、次の言葉を聞いて頭が真っ白になった。
「……そして準決勝、先鋒のほぼ初心者の同級生はエースが揃っている中トばずに後に繋ぎ、次鋒の部長も食らいついていた、そんな中自分は周囲に翻弄され大幅に削られ、副将の後輩に負担を掛けてしまい、大将の親友にプレッシャーをかけてしまった」
あの時のことがフラッシュバックする。
「思いがけず参加することになったインターハイ……準決勝まで来たならもしかしたらがあるかもしれないという淡い希望」
……ろ
「後輩さんがきっかけだったとしても皆と一緒に目標を決めてひたむきに走ることの楽しさ、そしてそれが必ず終わることへの寂寥感」
……めろ
「自分の得意な裁縫が皆の……特に後輩さんの助けになっている充実感とそれ以外はパッとしない自分への失望」
……やめろ
「同級生に……部長に……後輩に……親友に対するほんの少し抱いてしまった嫉妬とそれを抱いてしまった自分への怒り」
やめろ!
「皆は気にしてないと言っているが、それを信じ切れない自分の……」
「やめろ!!」
私が無意識に抱えていたモノを暴かれて私は思わず声をあげる。男は私の言葉に体を少し震わせた後、目を伏せ申し訳なさそうに頭を下げる。……さらに男の存在が薄くなったような気がした。
「すいません……もう少し気にするべきでした」
その姿を見て乱れていたココロが少し落ち着く。
「……いきなり大声を出してごめんな」
「いえ、こちらが全面的に悪いので気にしないでください」
私のココロに土足で踏み込まれた怒りはある。
「いや、相談している側が図星を言い当てられてキレるなんてみっともないだろ」
「それでも……」
「あ~……もし悪いと思うならさ~? 意見……聞かしてくんない?」
私のココロを言い当てることができた目の前にいる男に対する興味もある。
けれど、それ以上に……
「私はど~すればよかったと思う?」
私のココロの答えが欲しかった。
「もっと裁縫……いやもっとユキを目立たせることに力を注げば良かった?」
そうしていたらきっと
ココロが荒れ狂う。
「それか……麻雀に集中すれば、よ……良かった?」
そうしていてもきっと同じ結果に終わるだろう。
押さえられない感情が体に震えという形で現れる。
「そ、それとも……てっ適……どにてをぬ、ぬいて……」
そんなことしていたらきっと自分を責めるだろう。
目が熱い、頬に何かが滴る感覚がする。ああ、泣いているのか私は。
昨日の試合の後は少しで我慢できたのに、今は止められない。
「ユ、ユキだけでぇ、こじんせん……しゅ、しゅつじょっ、させるとか……」
それはユキにだけ重荷を背負わす最悪最低な手段だ。
けれど……そうしていたらきっと今私を蝕んでいる虚無感はなかっただろう。
「わ、わたしは……」
どうすれば良かったんだ?
そうして、どれくらい泣いていたんだろうか……。
横にいる男の様子を伺う。男は黙って私のココロの叫びを聞いていた。
「落ち着きましたか? 良ければ使ってください」
男は私が様子を伺っていることに気づきポケットティッシュを差し出してきた。
「……ありがと」
差し出されたティッシュをすべて使ってどうにか表面上は整えられた、が……。
……うぅ。恥ずかしくなってきた。初対面の男の横で子供みたいに泣くのはさすがに……。
「……ティッシュ使い切ってごめん」
なに言ってるんだ私。もう少し取り繕うことを言えよ私。
「何かあった時用にティッシュやハンカチはいくつも常備しているので気にしないでください」
……なんか意外だな。見た目の印象だとどっちかと言えば借りる方だと思ったけど。いや、さっきの会話から何か物を作っているんだからそういう気配りも心がけているのか?
相手の男の意外な一面に関心を持ちつつ、私は男の方を向く。
「そ~だとしてもさぁ、後でお返しをさせてくれよ。……それにしてもみっともない姿を見せちゃったな~」
「……みっともなくありませんよ。その涙はあなたの仲間への想いが溢れた結果です。それをからかうなんてできるわけがないじゃないですか」
「お、おう。そ、そう改まって言われると恥ずかしいな。……でさ、どう思う?」
「…………」
「実際、私はどうすれば良かったかな? なんとなく……今の状況が一番最良な状況だと思うんだよね~。けど、思わずにはいられないんだよ。もし、あの時あーしていたらってね」
無名の高校が強豪ひしめくインハイで上位に食い込む。傍目から見れば大健闘だろう。
けど……もしも……何かが違えば…………私たちが…………
「……もう答えは出ているじゃないですか」
「え?」
「あなた自身がこの状況を最善だと感じているなら……それが答えじゃないですか?」
「それは……そうだけど、さぁ。ほらもう少しあがいていれば結果は違ったかもしれないだろ」
「やってもやらなくても結果は変わらなかったと思います」
「んな!」
「ここまで来られたのはあなたが自分にできることを最大限こなしてきた結果です。はっきりと言えば“もしも”を考えるだけ無駄ですね」
「お、お前な……」
私の悩みをバッサリと切りやがった。けど……なんだろうな……不思議とココロの虚無感が薄れる感じがする。
「あなたが考えなきゃいけないのは今日の試合じゃないですか?」
「それは……そうだけどさ」
「なら、そうしましょう。あなたが抱えている悩みなんてそんなもんですよ」
「そんなもんって、お前」
「そんなもんです。あなたの悩みはまた失敗するかもしれない恐怖から来ているものだと思います。けどその失敗に気を取られて失敗を重ねる方が最悪じゃないですか」
「うっ!」
「隣の芝生は青く見えるという言葉があるように人は大なり小なり嫉妬するのはよくあることです。ココロが弱っていたからこそ、その嫉妬がより醜く感じたのでしょう」
「……」
「あなたの話しか聞いてないので断言できないですが、聞く限りあなたと仲間との間の絆は本物だと思いますよ。一緒になってバカやれるなんて素敵じゃないですか」
私の悩みが次々と一刀両断されていく。ズバズバと言われて感じていた不快感も聞いていく内になくなっていた。深く悩んでいたのが馬鹿らしくなってきた。
「あなたの……いえあなた達のこれまでの努力は決して無駄じゃありません。実際、
「……」
「それに……今日の対局であなたが掌で踊らされた相手と再戦するんですよね? リベンジする良い機会じゃないですか。今度こそ本当の一矢を報ってみたくないですか?」
あのメンツの中で愛宕の胸のない方は私が一番与しやすいと思ったのだろう。そりゃあ強豪校の主将だ。きっと麻雀の年季も私とは違うのだろう。
「……」
爽やチカセン、成香やユキに助けられてここまで来られたかもしれない。
「────私だって」
なら全国の強豪が集っているあの場で私があそこまで良いようにやられるのは必然だった? …………違う!
「有珠山の……麻雀部員なんだ! 私の腕前は全国に達してないかもしれない……けどそうだったとしても!」
悔しい……! 悔しいっ!!
「私だってこれまで頑張ってきたんだ! なら一矢……いや十矢返してやる!! 姫松がなんだ! 千里山がなんだ! 新道寺がなんだ! こっちは試される大地、北海道出身だぞ! 絶対に有珠山を5位にしてやる!!!」
わき上がる想いのまま周りを気にせずに叫ぶ。無茶な目標かもしれない、けどここまで来たんだ行けるとこまで突き進んでやる。
そう気炎を吐く私を男は心底眩しそうに見つめていた。
「…………付き合ってくれてありがとうな。おかげですっきりしたよ」
「気にしないでください。生真面目で仲間想いのあなたなら自分で立ち直っていたと思いますよ」
「そ~かもしれないけど、おま……いやあんた……あ~ちゃんと礼を言いたいからさ、名前教えてくれない?」
「……須賀京太郎です。ですが、そこまで気にしなくても……」
「いや須賀のおかげで早く立ち直れたんだ。気にすんな。ああ、私も名乗ってなかったな。んんっ、私の名前は岩館揺杏、よろしくな。……じゃあ改めて、話を聞いてくれてありがとう。須賀のおかげで今日の試合集中できそうだ」
「どういたしまして岩館さん、ではもう遅いですし……」
男はそう言って話は終わったとばかりに立ち上がる。後は別れの言葉を言えばこの場はお開きになる、男はそう思ったのだろう。
けどなぁ、そうは問屋が卸さないんだよな。
「じゃあ、今度は須賀の番だな」
「え?」
「おいおい、最初に言っていたじゃないか『実は俺も悩んでいることがあって歩いていたんです』ってさぁ~」
「いやいや、俺の悩みはちっぽけなモノだから大丈夫ですよ」
「こんな時間に出歩いているんだからちっぽけなモノじゃないだろ~。私の泣き顔を見たんだからそっちも少しくらい弱みを見せてくれないと釣り合わないよなぁ~。……それに気付いていないかもしれないけど、顔がヤバいぞ」
「あ~そんなにヤバいですか?」
「ヤバいヤバい」
私がそう指摘すると本人も自覚があったようで苦虫を噛み潰した顔になっていた。そして大きく溜め息をすると観念したように肩を落とした。
「そう……ですね。少しばかり言い過ぎてしまいましたし、泣かせてしまったのも事実なので……それじゃあ俺の悩みも相談していいですか?」
本人も心のどこかでは話したかったのだろう、少しずつ口を開いていった。
ゆあたんイェイ~
本日(2024/7/2)は岩館揺杏さんの誕生日なので投稿します。
約束を果たせずお待たせしてしまい申し訳ございません。
コンディションを少しずつ整えながら作成しています。