お待ちしていた皆様、申し訳ありません。3年かけてようやく完結できましたが……ここまで遅れたのは私の見通しの甘さ故です。本当に申し訳ございません。
この場を借りてお礼を申し上げます。
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改めてお礼申し上げます。
(俺は何をしているんだろうな……)
自分のことが嫌になる。勝手に心配して、勝手に嫉妬して……醜いな。
さっきの言葉通りで彼女は俺が話を聞かなくても立ち直っただろう。彼女には分かち合える仲間がいるんだから。俺には…………。大きくため息を吐く。
「そう……ですね。少しばかり言い過ぎてしまいましたし、泣かせてしまったのも事実なので……それじゃあ俺の悩みも相談していいですか?」
彼女の悩みを聞いたからこそ俺の抱えている悩み……いや醜い部分を話すのは気が引けてしまう。しかし、“私の悩みを話したんだからそっちも話すのが礼儀だよな”“乙女の泣き顔を見たんだからどうすれば良いかわかってるよな”と目で訴えてきている彼女からは逃げられそうにない。それに清澄の対戦相手であった彼女には俺の悩みを聞く権利があるのだろう。……聞いた彼女がどれだけ俺を罵倒しても甘んじて受け入れよう。
「俺は……俺の存在意義について悩んでいるんです」
「存在意義ぃ?」
彼女は俺の言葉を聞いて胡乱げな眼差しを向ける。そんな視線を気にせずに話を続ける。
「俺は高校に入学してから麻雀を初めました」
そう、あの時は何もかもが新鮮で楽しかった。初めて牌を触った感触、振り込んだときの悔しさ、そして和了った感動。今でも鮮明に思い出せる。そして、それを教えてくれた部長や染谷先輩、優希や和への感謝の気持ち。だからこそ恩返しがしたかった。
「俺の高校の麻雀部は女子部員が四人しかいなくて団体戦にエントリーができなかったんです。だから俺は数合わせ兼カモとして部活に入っていなかった同じ中学で仲が良かった友人を連れて行ったんです」
「カモってお前……」
あの時はほんの軽い気持ちだった。
「そうしたら、その友人が麻雀経験者でしかもすごい上手かったんです」
俺は気付かなかったが、部長達の反応でなんとなく理解はできた。
「それから色々あってその友人も含めて全国を目指すことになりました」
今思えばあの時から俺の中にズレが生まれたのだろう。
「部員が必要最低限しかいないので俺は進んで雑用を引き受けました」
「ん~? 個人戦にエントリーしなかったのか?」
「もちろんエントリーはしましたよ……」
「じゃあ、練習はどうしたんだ?」
「もちろん練習もしましたが皆の補助のための雑用に力を入れていました。初心者である俺では結果が残せないでしょうし、事実県予選の午前の部で敗退しました」
「あ~なんというか……ごめん」
「大丈夫です……話を戻しますと激闘の末に県予選を突破しました」
「まあ須賀がここにいるから当然だな」
あの時は本当に嬉しかった。
「そうして、県代表になったウチの高校は1回戦、2回戦……準決勝を勝ち進み、今日決勝に挑みます」
「ん? ……あれ? 決勝に進出した? 決勝で共学なのは……まさかあんたの高校は……」
そう決勝に来てしまったんだ。
「俺は……俺はここまで来て欲しくなかった……!」
「……はぁ!? 何言ってんだ! 私たちの高校を破って言うことがそれか!」
彼女は俺の胸ぐらを掴み睨んでくる。当然の反応だ。俺も同じ立場ならそうしていただろう。それに……なんだろうか俺の周囲の気温が下がったように感じるほどの怒気を感じる。だが……止まらない止められない背筋を這い上がる悪寒に気にせず口を開く。
「せめて……2回戦で敗退していたら俺もこんなに苦しまなくて済んだな……」
「だから何を!」
「俺だって何言っているかわかんねえよ! 俺は……俺は……」
話ながら憔悴して行く俺を見て彼女は胸ぐらを掴んでいた手を離して仕切り直すかのように大きく溜め息を吐いた。周りを漂っていた怒気もある程度和らいでいた。
「……なんでそう思ったんだ」
「俺の存在意義だよ……」
「はあ?」
「まるで漫画みたいな快進撃だよな」
突然何の繋がりのないことを言われた彼女は困惑していた。
「漫画?」
「無名高校が並み居る強豪を破り全国優勝するなんてありきたりなスポ根かよ」
「あ?」
「そうして優勝すれば抱えていた問題は全て解決して大団円ってな」
「お、おい」
「部長は夢にまで見た全国優勝、染谷先輩も部長の夢が叶って嬉しいし実家の雀荘も繁盛するだろうな、咲も姉と和解して、和もそんな咲を見て喜ぶだろうな。優希は……まあいいか」
「だ、大丈夫か?」
「ああ、大丈夫、大丈夫だ。俺は……俺は……」
「しっかりしろ!」
世界が揺れる。気付くと彼女は俺の肩に手を置いていた。どうやら彼女が俺を現実に引き戻してくれたようだ。
「……突然変なことを言ってすいません」
「こっちこそいきなり揺さぶって……」
「こちらが悪いので気にしないでください」
まるでハンドボールの試合後のように激しく脈打つ心臓を沈めるために息を整える。
「…………俺の友人をどう思いましたか?」
「え? えーっと、たしかカモにしようとした麻雀経験者の友人か……麻雀はメジャーな競技だから昔経験者だったってのは良くある話だろ。私や爽だってそうだったしお前の友人もそのクチだろ」
「なら、雀荘を営んでいる親を持つ先輩がいるのはどうですか?」
「ウチにも牧場経営している親や教会をやっている親がいるからな~。今の時代雀荘は星の数ほどあるんだしそんなヤツもいるんじゃないか?」
「そうですね今の麻雀ブームの時代、雀荘を営む親を持つ人も多いかもしれません。では麻雀プロと伝のある先輩がいるのは?」
「麻雀プロもピンからキリまで多くいるんだから、プロが主催している麻雀教室とかで知り合ったかもしれないだろ」
「麻雀せんべいカードに収録されているほどのプロだったとしてもですか?」
「それは……その先輩の運が良かったん……だろ」
「無名の高校にインターミドルチャンプがいるのはどう思いますか?」
「ああ~。……ほら、もしかしたら無名の高校に入学して頂点を目指そうとしたのかもしれないだろ。インターミドルで1位を取る位なんだからそれぐらいのストイックさを持っていたんじゃないか?」
彼女も大分苦しい言い分だと思っているのだろう、少し眉をひそめた顔をしながら答えてくる。
「なら、その昔経験者だった俺の友人の姉がインハイチャンプなのはどうですか?」
「────それ、は」
「出来過ぎているんですよ。偶然もここまで集まれば必然になります」
俺の言葉に彼女は何も言い返せないようだった。そりゃあそうだ、部長まではありえるかもしれないが、和と咲の事情は唯一無二だし、そんなやつらが同じ場所に集まるのはまずありえないと断言できる。
「そんなおあつらえ向きの部員が揃った俺の部活は全国でも注目されていた長野の代表を退けて県の代表になりました。俺はそれを祝福しました……ここで終わっていればよかったかもしれなかった」
「?」
「俺は全国大会では留守番するものだと思ってました。いくら雑用係だとしても女子の大会に男子が付いていくのは……それなりに問題があるでしょう? それに男子一人でもその費用はバカにならないですからね」
「それは……まぁ、な」
「しかし、部長は俺を東京に連れて行くと言ってくれました。いくら生徒会長*1だとしても各方面の説得とか大変だったでしょうに……それを実現しました」
「ふ~ん、あのぶっちょーさんって生徒会長も兼ねていたんだ」
「俺も凄く嬉しかった。部長は俺のことも部員として大切にしていたんだって……」
「よかったじゃん」
「それから俺はより一層皆のために頑張りました……頑張って、頑張って……全国大会1回戦を終えた時、ふと“俺はもういらないんじゃないか”って思ったんです」
「あぁ?」
俺の言葉を聞いた彼女は理解できないようと言わんばかりに目を細めて俺を見つめる。
「俺がやっている雑用なんて誰でもできるものだし、俺が皆のために準備していることも市販品でも代用できる……俺である必要が全くないんだよ」
運動部じゃないんだから持ち運ぶ荷物なんてでかいバッグ一つで事足りるんだから分割すれば十分皆で持てるし、優希のために準備しているタコスも素人が作ったものよりもちゃんと調理師免許を持っているプロが作ったやつの方が良いだろうさ。
「俺の役目はアイツを麻雀部に勧誘した時点で終わっていたのさ。……いや、それすらもきっと張り紙一つで解決するから…………ははっ俺ってなんだろうな」
乾いた笑いと共に積もり積もった感情を吐露する度にココロが張り裂けそうになる。
皆を見捨てて楽になりたい気持ちとそんな身勝手な気持ちを抱える自分に対する怒りで気が狂いそうになる。
そんな俺を咎めるように見つめていた彼女は俺に問いかける。
「わけがわかんねーよ。言っていることがむちゃくちゃだ。ウチは皆で雑用を分担していてそれが負担になったこともあったけど、そっちは須賀が雑用していたからこそ麻雀に集中できてここまで来られたんじゃないのか?」
「……」
「それに対してそっちの部員は感謝していたんじゃないか?」
「…………」
「さっき、須賀が言ってたよな“得られた結果を卑下することは頑張ってこなかったと言っているのと同じこと”ってな。それは須賀にも当てはまるんじゃないか?」
「………………」
「
「……………………」
「そうやって、漫画みたいだなんて言い訳して壁を作っているのは須賀の方だろ。確かにそっちの部員は劇的な背景を持った奴らが集まっているかもしれない……けどそれがどうなんだ? そいつらを一生懸命支えている須賀も同じ仲間だと私は思うけどな」
ああ、わかっている。わかっているさ。そんなことくらい。完全に俺の独り相撲だってな。
「……俺はここに居ていいのかな?」
「それを決めるのは須賀自身だろ。まあ……少なくとも私は居て良いと思うけどな」
「そう……か」
その言葉を聞いて俺は安堵感とともに目から抱えていた想いが溢れ出しそうになる。それを堪えるように空を見上げようとして俺の両頬に何か温かいモノが触れる感触がした。気づけば俺の正面に立っていた岩館さんが俺の両頬をつかんでいた。……え?
「泣きそうなんだろ、泣けよ」
「あの~」
「私の泣き顔を見て、ふざけたことを言ったんだ。泣き顔の一つや二つ私に見せろよ」
「これでも男としてのプライドが……」
「関係ないね、それにプライド云々なら私も乙女のプライドがあったけど……さっき粉々になったな」
問答している内に堪えきれなくなり目の端から大粒の滴が溢れていき、それは次第に目全体から溢れるようになっていった。
そうして泣いている俺を岩館さんは先ほどのおちゃらけていた雰囲気からかけ離れた真剣な眼差しで見つめていた。いつの間にか手は離れていたがそれでも俺はその眼差しから目を背けることなく想いを溢れ出していった。
どれくらい経っただろうか、俺の涙が大分収まってきたときに岩館さんは俺の隣に再び座った。俺の隠してきた想いも口に出していく。
「俺の友人は初めて行く場所では必ず迷うようなドジで俺がいないと何もできないやつだと思ってました」
「ひで~言い草だな」
岩館さんはケラケラ笑いながら次を促してくる。先ほどまで漂っていた陰鬱な雰囲気がこれだけで消えていく気がする。
「そんなアイツが麻雀でめきめきと頭角を現して、麻雀部や他校の人の友人を増やしていって、インハイチャンプの姉がいる……遠い存在に感じてしまいました」
「ま~そう感じるのもわかるな~」
改めて考えれば俺の方がアイツに依存していたのかもしれないな。
「元々俺は麻雀部には色々と下心もあって入部しました」
「ほ~……まっ、あの胸は反則だよな」
「……ノーコメントです」
「けどなぁウチの後輩も負けてないよなぁ? そう思わないか? なあ?」
「…………ノーコメントです」
ニヤニヤ笑う岩館さんの質問をかわしつつ、話を続ける。
……岩館さんの所の後輩さんはある意味和とは別ベクトルで危険だ。この話に乗ってしまえばここまでの話が台無しになってしまう気がする。軌道修正、軌道修正。
「それで全国に行くことが決まったとき俺はなんの役にも立てないから留守番だと思いました。……けど部長や皆のおかげでここに来られました」
「改めて聞いてもいい話だな」
そう大切にされている。俺も清澄の一員だと皆が思ってくれている。けど……
「そんな恩がある人達が気持ちよく麻雀できるように全力で雑用に当たりました。皆は俺を仲間だと思っている、俺もそれに報いるために更に雑用等をこなしていきました。そうして皆が勝利する度に……俺は自分の価値がわからなくなりました。皆は俺のおかげで勝てたと言ってきました、しかし俺はその勝利を分かち合えなかった。俺からしたら誰でもできる仕事をこなしただけだったから」
「良くやっていると思うけどな~」
「俺が皆に一番貢献した仕事は何だ? そう考えて思い至ったのが俺の友人を麻雀部に引き込んだことでした」
「そういう観点で見ればそうなるな」
咲を引き込んだ時点で俺はお役御免……そう考えた途端に俺の抱えていた不安は全て置き換わってしまった。
全国で皆が活躍できるか? 数少ない共学の代表としてどう振る舞うべきか? 不真面目な動機で始めた自分がこんな舞台に一緒に行って良いのか? etc.これら全てが“役目を終えた俺はいつか捨てられるんじゃないか”という恐怖になってしまった。
「そこからはとても辛かったです。表向きは皆に見捨てられないように必死に頑張って。心の内では皆が負けて楽になりたい自分がいる。そんなズレがとても辛かったです」
「それがさっきの血迷った発言の大本なんだな」
「そうして、決勝戦の前に耐えきれなくなって、外を歩いていて岩館さんに出会いました。もちろん最初は準決勝で戦った相手だとは知りませんでした」
「私じゃなかったら通報されてたな~」
「話を聞いて嫉妬しました。俺からすればある意味贅沢な悩みでしたから」
「だから、悩みを一刀両断していったんだな」
「そこから先はまあ……大泣きして醜態をさらしました」
「泣きたいときに泣かないとダメだからな。サッパリしただろ」
「……ありがとうございます」
「なあに、年上なんだからもっと頼ってもいいぞ」
「はは、考えておきます」
会話は終わり沈黙が訪れる。しかしこの沈黙はどこか心地よく感じられた。
夜風に当たりながら二人で夜空を見ていると、不意に岩館さんが立ち上がった。
「じゃ、そろそろ私は帰るよ。須賀に言われたようにリベンジするために少しでも長く寝て英気を養うよ」
「俺はもう少し夜風に当たってから戻ります。岩館さんも今日の対局頑張ってくださいね」
「言われなくてもやってやるよ。……あぁ、そうだ。個人戦の前日空いてるか?」
「え? ええと夜以外は空いてますね」
「どうせ大会が終わったら北海道と長野で距離が空いていて会えなくなるんだ、その前にティッシュのお返しにラーメンぐらい奢らせろよ」
「……ゴチになります」
「じゃ、連絡先を交換するか………………これでよし! 今日全部終わったら連絡するから確認忘れるなよ~」
そうして連絡先を交換した岩館さんは今度こそ思い残すことはないとばかりに足取り軽く俺が座っているベンチから離れていく。
「頑張れよ
「
最後に互いに激励していきながら。
どんなラーメン食べに行くんだろうか?
清々しい気分で星空を眺めながらふとそう思った。
足取り軽く私たちが泊まっている宿泊施設の玄関までたどり着く。
携帯の時計を改めて確認すれば施設を出てからそれなりに経っていたのを再認識する。
(あ~少ししか眠れないかもな。けど、まぁスッキリしたし今の私なら普段の2倍動けそうな気がするな)
その証拠に泉のようにユキの衣装のアイデアが湧き上がってくる。時間が足りないから本格的なことはできないけど細部は更に洗練できそうだ。……忘れない内に軽くメモするか、時間を確認するために持っていた携帯のメモ帳を、
「“絶対に有珠山を5位にしてやる!!! ”……ねぇ」
「びゃ!!」
背後から掛けられた聞き慣れた声に硬直する。奇跡的に携帯を落とさなかったがそんなことが気にならないくらい衝撃を受けていた。
油が切れかかっているブリキ人形のようにぎこちなく振り返れば見慣れた、しかし今は絶対にいてはならない存在である……
「あ、あ、あ」
「揺杏がいきなり起き上がって外に出てったからさ~。昨日の対局を引きずっているのかなぁ~って思ってさ~」
からかうように間延びした口調の爽。未だ私は衝撃から立ち直れず意味のある言葉を発せられない。
「ほらこんな夜中にうら若き乙女が一人歩きなんて危ないじゃん、だから私もこっそりついっていったんだよね。そしたら、まさか男と逢い引きなんて……」
「あ、あい!?」
「いやぁ~揺杏に先を越されるとは思ってなかったよ。ビバ青春ってか? ちゃんとひ……あっ! これ有珠山高校的にまずい発言になっちゃうかな? まぁ清い付き合いを心掛けろよ」
「いやいやいや、待て待て待て。別に須賀とはそんな関係じゃない……というよりも見てたんならわかってるだろ!!!」
慌てて否定する。絶対にわかってやっているのはわかっているが、とりあえず否定しないともう少しこのネタでからかわれそうだ。
「ごめんごめん。最初に声を掛けたときの反応が面白くてつい……」
「ったく。で、最初から見てたのか?」
「ああ、あいつが来るのがもう少し遅かったら私が声を掛けてたな」
幼稚園以来の付き合いの爽にあんな姿を見られていたのは恥ずかしいな。……もし須賀が来なければ爽に悩みを話してたかもしれないのか。もしそうなってたらどうなった?
……まいっか、もしもなんて考えるだけ無駄だしな。
「はぁ~~~~~。……心配掛けたな」
「気にすんな。元々私の思いつきで参加したインハイだ。巻き込んだ皆に気を配るのは当然だろ」
「そうだとしても…………ああ~! すっげ~恥っず!! ホント爽にアレを聞かれたのがなぁ~」
「いいじゃん、有言実行って言葉があるんだし行けるとこまで行こうぜ。……そろそろ戻るか私たちがいないことに気づいて皆を起こしちゃ悪いからな」
そう言って爽は施設の玄関に向かって歩き出した。
………………
「爽」
「ん~?」
「私たちは勝てると思うか?」
「……しょ~じきキツいな。私たち以外は名門校なんだから圧倒的に踏んだ場数が違うし、私も万全じゃないからな」
「そう……か」
「けど」
「?」
「諦めたら試合終了だって言うだろ。戦う前から諦めたら勝てるモノも勝てなくなるからな。揺杏があんな風に宣言したんだ、私だって燃えてんだ」
「爽……」
「そ・れ・に、私たちも揺杏が須賀にラーメン奢るのに付いていきたいからな。勝って良い報告しようぜ」
「なっ!」
「じゃ、先に戻るな~」
固まる私を尻目に手をひらひらさせながら軽い足取りで進んでいく爽。
「……ふっ、ふふ」
ホントに色々と恵まれているな私は。
「須賀に胸張って皆を紹介するために頑張るかぁ~」
決意を改めて固めるように言葉を吐く。そうすれば先ほどまでたぎっていた気合いが更に強まった気がした。それこそ目に炎が宿ったと錯覚するくらいには。
「さ、今度こそ寝るとするか」
思わぬ遭遇をしてしまったが更に気合いを入れることになったんだから結果オーライだな。私はしっかりとした足取りで部屋に戻る。そのココロに決意を抱いて。