須賀京太郎断片集   作:星の風

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さきたんイェイ~
咲の誕生日なので京咲?を投稿します。



……はい、本当はタイトルにあるように京咲泉を投稿してます。
これが前編で本来は泉さんの誕生日に後編を投稿しようとしてましたが、今回の話は起承転結で言えば走です。
以前にも申し上げたように身の周りの環境は改善せず小説にほぼほぼ手が付けられず全く間に合いませんでした。
ここまで付いてきてくれている読者さんには本当に申し訳ないです。
ですが以前宣言したようにエタることは絶対にしないので気長にお待ちください。

評価及びお気に入り登録ありがとうございます。
評価バーの色が再度赤になりました。それと初めての10評価ありがとうございます。
この場を借りて改めて皆様にお礼申し上げます。


もしかしたらの話
宮永咲と二条泉は射止めたい 上


 私の名前は宮永咲。長野県の清澄高校麻雀部に所属している1年生だ……少し前ならそれで自己紹介は終わっていたけど今はそこにインターハイを優勝したという言葉が修飾されるようになった。そんな私は今、自分の部屋の机でとある本を読んでいる。

 

「ふぅ」

 

 見ていた本から目を離し、四つ葉のクローバーの栞を挟んで閉じる。

目頭を揉みながら先程まで読んでいた本の内容を思い返す。本の内容は麻雀の初心者から中級者になりたての人が見ることを想定した内容だ。

……優勝した部活に所属している私がそれを読むのはおかしいと思うかもしれないが、読む理由はあるのだ。それは人に教えるためだ。私の麻雀のスタイルは理論派と感覚派で分類すれば超が付くくらいには感覚派だ。インハイ前の合宿や四校合同合宿である程度改善されたが、それでも私たちの中で一番の理論派の和ちゃんには遠く及ばない。インハイが終わった今だからじっくりと本で学ぶことができるのだ。

普段読んでいる海外ミステリーなどはいくら読んでも大丈夫だが、こっち(教本)は理解しそれを言語化出来るまで読み込むので休憩を入れながら読んでいる。そうして休憩していると本から飛び出している栞が目に入る。そして私は笑みを浮かべた。

 

「~♪」

 

 それを送ってくれた彼・・・須賀京太郎こと京ちゃんはわたしの大切な人だ。彼がいなければ私はきっと前へ進めなかっただろう。そんな彼が中学2年の誕生日に送ってくれた栞は私の大切な宝物だ。本当は外で本を読む時にも使いたいが私のドジを考えると・・・。

 

「っ!」

 

嫌な方向に思考が向かいかけたので頭を振り、気分を変えるために水を飲もうとして立ち上がり台所に向かう。

そうして帰ってきて扉を開けた私の視界に本棚が映る。本棚には様々なジャンルの本が詰まっている。そして最近買ってきた教本に目を向ける。

 

(それにしても……)

 

 私にとって麻雀は楽しい物だが同時にあまり好きじゃないものだ。最大の目標だったお姉ちゃんとの和解が済んだ今、私はほぼ燃え尽きていた。そんな私が教本を買ってまで勉強をしているのはひとえに京ちゃんの為だ。インハイの結果は団体戦優勝と煌びやかな物だったが、それは京ちゃんの献身の賜物だ。もちろん他にも色々と要因はあったが、私は京ちゃんの献身が一番支えになったと考えている。

 

(だから私も恩返しのために準備したんだけど……)

 

 インハイ後に部長が用意した休みの間に本屋を巡って教本を買い込み、今度は私が支えるんだ!と意気込んで挑んだ休み明けの部活で私は・・・驚きの光景を目にした。

 

(明らかに県予選の時・・・いやインハイの時よりも上手くなっていた)

 

 インハイの時も息抜きの名目で卓を囲っていた。その時は県予選の時よりは上手くなっていたが、まだまだ初心者の域を脱していなかった。

 けどあの時の京ちゃんは初心者から中級者に半分踏み込んでいた。お姉ちゃんほど正確に読み取れないけど、もう少し経験を積めば全国に出場できるレベルに到達すると思った。

 だから私が買い込んだ教本の中で完全に初心者向けの本はお役御免となってしまい本棚の肥やしになってしまった。……後先考えずとにかく買ってしまった私の浅慮が原因だから何も言えないが、もし昔に戻れるならもう少し考えてって自分に忠告したくなった。

 そしてもう一つ私は不思議に思ったことがある。

 

(京ちゃんが明るくなっていた)

 

 これも普段の京ちゃんを知っている人なら疑問を持つかもしれない。他の人には京ちゃんは明るく誰とでも分け隔てなく接してくれて、でも時折女性の一部分に目が行ってしまう欠点を持っている三枚目のように見えるだろう。

 でもホントの京ちゃんは繊細なところがあることを私は知っている。その証拠にインハイ前までの京ちゃんは皆がいないときどこか近寄りがたい雰囲気になっているときがあった。そして私は京ちゃんがそんな風になる理由を知っていた。しかし、私は京ちゃんの深い部分に踏み込むことができないでいた。なるべくいつも通りに接することが限界だった。

 そのように二の足を踏んでいた状況が改善されたことは私にとって喜ばしいことだった。しかし、どこか心の中でモヤモヤしたモノが生まれていた。

 心当たりはインハイ中に京ちゃんが打ち合わせに遅れていて電話で連絡したときに零した『抱えていた問題が解決したからかな』という言葉。京ちゃんにそれとなく聞いてもはぐらかされてしまい、さらに疑心が深まっていた。

 

(けど京ちゃんが話してくれないなら、私はこれ以上踏み込めないな)

 

 こういう時、親友や先輩のことが羨ましくなる。

 

(優希ちゃんのように思いっきり踏み込めないし、和ちゃんのように論理立てて質問できないし、染谷先輩のように相手を気遣いつつ引き出せないし、部長のように駆け引きしつつ聞き出すこともできない……)

 

 溜め息をしつつ再び机に向かう。時計を確認すると時間はもう少し余裕がある。椅子に座り再び本を開く。

 疑問を頭の片隅に抱えながら夜は更けていく。

 

 

**********

 

 私の名前は二条泉。大阪府の麻雀の名門千里山女子麻雀部に所属している1年生や。今、私は自分の部屋でパソコンに向き合っている。

 

『じゃあ、また明日』

 

 彼の言葉に返事を返すと彼はアプリから退室していった。彼・・・京太郎との遠隔指導の回数は今日で2桁を越えた。さっきまで立ち上がっていた通話アプリと麻雀アプリが閉じた画面を見ながら思わず笑みがこぼれる。

 

(今日も上手なっとったな)

 

 先程の対局を思い出してさらに笑みを深める。

 大阪におる私と長野におる彼。そんな私たちが出会ったのはインハイだった。……恥ずかしい話なんやけどその時の私はやらかしてもうてメンタルがボロボロやった。そんな私に声を掛けてくれたのが彼やった。彼のおかげでなんとか持ち直してその後の5位決定戦で汚名返上・・・とまでは言われへんがそれなりに貢献できたと思う。そんな彼に恩返しのために連絡先を渡した。そないして彼は私に麻雀を教えて欲しいと頼んできた。

 

「自分で勉強したり、皆からアドバイスをもらって麻雀を学んでいたけど、少し煮詰まっていたから問題ない範囲で名門校の練習方法を教えてくれないか?」

 

 そんな彼の頼みに私はすぐさまOKを出して時間の許す限り教えていった。来年になったら私も後輩ができて教える場面もあること考えたらええ予行演習になったし、純粋に彼がめきめきと上達していく様を見ているのは気持ちよかった。

 

(まあ…………それだけちゃうねんけどね)

 

 9割の善意に1割の打算、いやもしかしたらもっと打算の割合が高いかもわかれへん。

 けど……

 

(私かて恋くらいね)

 

 かつて私が勝手にライバル視をしとった原村和を調べてる最中に存在を知った彼。その時はカッコええな思たくらいで終わっとったけど、インハイで偶然出会うて話して……恋をした。我ながらチョロい思うけど惚れた方が負けなんや。だから受け入れるしかあれへん。

 

…………

……

 

 ただ一つだけ気になることがある。

 

「――宮永咲」

 

 彼の指導をしながらそれとなくプライベートをちょいちょい聞き出してきた。

 部活の仲間との関係。好物と苦手なもの。カピバラを飼えるくらいには裕福なこと……色んなこと聞いていってようやく最近になって“付き合うてる人がおれへん”こと聞き出した。

 それ聞き出したその日はまったく眠られへんかった。彼女がおってもおかしない思うとったさかいに私にもチャンスがあるってわかって嬉しかった。……が。

 

(中学からの付き合いにしては……)

 

 生まれてこのかた異性の友人を持ったことのあれへんうちにはわかれへんが、彼と宮永咲の関係は少し……いや大分異質に感じた。

 例を挙げるなら“肉じゃが”だ。百歩譲って作りすぎたのをお裾分けするのはまあ理解できのうはあれへん。……が、中学からの付き合いでどうしたら“肉じゃがっつーと咲の作ったやつなんだよな”って台詞がでてくるんや!?たった数年で母親の肉じゃがの印象を塗り替えるってどういうことや!?なんぼ肉じゃが作りにハマっとったかて作りすぎやろ!?

 他にも色々とエピソードを挙げられるけど止めとく。本題は彼との関係や。彼と宮永咲は親友言うには近すぎるし、恋人言うには離れてる。何ちゅうか組み込まれてるんや。彼を構成する要素に、宮永咲を構成する要素に。二人はそれ当たり前やと受け入れてる。

 

(……う~ん)

 

 京太郎と付き合おうとしたときに避けては通られへん存在やとなんとなしに予感する。なんか些細なきっかけでどうにも転がりかねへん存在。京太郎からの話だけではこれぐらいしかわかれへん。

 そんな宮永咲のことは恋のライバル。高一最強の壁。色んな表現が思い浮かぶけど……

 

「まあ……機会があれば一度きちんと話したいかな」

 

 なんとなしにそんな言葉が口から飛び出た。

 







この話を作ろうとしたきっかけが京咲泉は私が知る限り見たことないので最初の一人になって皆様の印象に残りたい欲求から生まれました。

私の拙い作品を呼び水に京太郎の絵や小説が増えることを切に願っています。


支援やリクエストもお待ちしています。
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