京太郎の誕生日なのでまたまた思い入れのあるカプを投稿します。
今回の話も年末年始に某麻雀ゲームで咲-Saki-がコラボした際の衣装に感銘を受けて製作しましたが……前と違い一要素程度になっています。
評価及びお気に入り登録ありがとうございます。
この場を借りて改めて皆様にお礼申し上げます。
「癒やされたい」
長野県某所のそれなりに大きい一軒家、部屋に備え付けられたエアコンで快適な温度が保たれている一室で少年がそう呟いた。それを聞いた同じ部屋で本を読んでいた少女は本から目を離さずに「ふ~ん」と生返事で返す。そんなぞんざいな扱いを気にすることなく少年は話を続けた。
「俺ってインハイでも雑用頑張っていただろ?」
「そうだね」
「俺の頑張りがあったからこそインハイを優勝することが出来ただろ?」
「そうだね」
「だから俺にもなにか役得があってもいいと思わないか?」
「そうだね」
「だから今は癒やしが欲しいんだよ、わかるだろ咲?」
「そうだね、京ちゃん」
咲と呼ばれた少女は本から目を離すことなく京ちゃんと読んだ少年とやりとりしていたがそろそろ面倒になったのか本から目を離して少年の方を向く。少年は先ほどまでの少女のぞんざいな扱いに気を悪くしたことはまったくない様子で少年が飼っているカピバラの手入れを熱心にしていた。それを見た少女は呆れるような雰囲気を纏いつつ少年に疑問をぶつける。
「カピーちゃんだと癒やされないの?」
「そりゃあ、カピーは世界一かわいい家族だけどな。こう……なんて言うか新鮮な癒やしが欲しいんだよ」
「だったら美味しいものでも食べれば良いんじゃない? 京ちゃんがおねだりすればインハイ頑張ったご褒美で連れて行ってくれるでしょ」
「はぁ~、そうじゃないんだよ」
少年は淀みなく手入れをしながらそうのたまって首を振る。そんな少年の様子に軽くイラッとした少女だったがいつものことだと気を落ち着かせて少年のワガママに渋々付き合う。
ここで少年と少女の関係を軽くおさらいしよう。少年の名前は須賀京太郎、少女の名前が宮永咲という。彼らは長野県にある清澄高校の麻雀部に所属している。そこはインハイの女子団体戦で無名校ながら優勝したことで注目を浴びているが今それはあまり重要でないので掘り下げないでおこう。
そんな彼らだがその関係性は彼ら曰く同じ中学からの付き合いで甘酸っぱい関係ではないという。だから咲は咲で容赦なく京太郎にツッコむし、京太郎もそんな咲の態度を一切気にしていない。
「そもそも新鮮な癒やしってなんなの?」
「それがわからないから咲に聞いているんだよ」
「はぁ~~」
大きくため息を吐いて咲はこの不毛なやりとりに抗議をした……が、京太郎はそれすらも意に介さずさらにくだを巻いた。色々と語る京太郎の言葉を意図的に聞き流しながら咲は心の中で驚いていた。
(ここまでダメになっているのって見たことないかも)
京太郎という少年は人たらしだ。毒気のない顔立ちに人の決して踏み入ってはならない一線を見極めるのがとてもうまい。だからこそ宮永咲という激重背景持ちで人付き合いが苦手なハリネズミとここまで付き合っていて、そんな咲を大分マイルドにした実績を持っていた。
そんな彼がこうやってぐだぐだしているのが咲からしてみれば晴天の霹靂だった。
(本当に癒やしを求めているんだ)
咲は息を吐きつつ目を閉じた。そして開いていた本を閉じて改めて目を開いて京太郎と向き合う。そんな咲の様子に京太郎は首を傾げる。そんな彼を見て咲は自分の考えが間違ってないことを確信した。さらによくよく見ればカピバラの手入れも普段と比べれば少しもたついていた。
「──────新鮮な癒やしって要は体験したことがない癒やしでしょ?」
「あ、ああ、まあ、そうなる……か?」
「もう、和ちゃんの胸でも触らして貰えば」
「ぶっ!!」
……実際の所、咲も疲れていた。インハイを優勝したこと、しかも団体戦大将で個人戦でも優秀な成績を収め、インハイチャンプの妹というネームバリューを持っていることで雑誌の取材などが他の部員よりも多めなのが原因だった。
しかも京太郎の家に今日いる理由が親の話し合いなのも咲の精神をささくれさせていた。咲の激重背景の一部に親の別居と姉の照との不仲があった。照とはインハイで和解したが親の別居は解決されてない。だから娘同士の和解を期に改めて話し合いの場を作られたがそこに咲や照がいると子どものためにという名目でしこりを残して和解してしまうかもしれなかった。だから徹底的に話し合うために照は残したまま咲の母だけがこっちに来て、咲も外に出ていたのだ。……本来は親友の原村和の家にいる予定だったが折り悪く和の母も同じタイミングでこっちに来て家族三人で出かけることになり、同じ親友の片岡優希も予定が入ってしまい、結果的に咲は京太郎の家に滞在していた。
そんなこんなで大分投げやりに親友を京太郎に売った咲だったがそれも勝算があってのことだった。先ほど本人が述べたようにインハイの裏方で一生懸命頑張っていたことは部活の皆が理解しているからスキンシップの一環でいける……はずというのが咲のガバガバな根拠だった。親友を自負している自分がフォローすればさらにイケる確率は高くなるとも考えてもいるのがさらにダメだった。
だから和に好意を持っていて、なおかつ彼が執着している胸に初めて触れるなら一も二もなく引っかかると確信していた咲は京太郎の次の反応で虚を突かれることになる。
「あ~……遠慮しとくかな?」
「え!? 和ちゃんの胸だよ!! せっかくのチャンスだからいけばいいじゃん!?」
「こう……悟ったんだよ」
「え?」
「おもちってそこにあるのが尊いのであって直接触るのは違うってな」
「は?」
そこから展開されるのは咲にとっては聞き苦しい話の数々。曰く、“インハイに行って目が肥えてしまった”、“和クラスのおもちは実は珍しくないこと”、“規格外を見まくって欲とか煩悩が燃え尽きたこと”さらに色々と身振り手振りで言っていたが咲は早々にシャットアウトしていた。
いっそのこと本屋で時間つぶししようかと考えはじめた咲はふと手元の本に目を向けた。その本は普段は読んでいない青春小説で男女の甘酸っぱいなれ初めがメインだった。先ほどまで読んでいた内容を改めて思い返した咲はおもむろに立ち上がり部屋のベッドに腰掛けた。
「で……」
「京ちゃん」
「ん?」
「ここで寝て」
「え?」
「早く」
「お、おう」
咲は京太郎を威圧するように自分の膝を軽く叩きながら指示をした。そう、咲がやろうとしているのは膝枕だった。先ほど見ていた小説の内容とこれ以上妄言は聞きたくないからとりあえず寝かしつければ解決するだろうという考えからのものである。
普段なら軽口叩いて終わらしていた京太郎も、事ここに至って今日の自分の失点を悟ったのかそれとも普段以上の怒りに気圧されたのか素直に従った。カピーは京太郎が妄言を言い始めてからすぐに脱出していて今はお気に入りの場所で寝ていた。
「ん……」
「さ、咲大丈夫か?」
「気にしないで少し京ちゃんの髪の感触に驚いただけだから」
「でも」
「気にしないで」
京太郎の心配を咲は気にすることなく膝枕を続けた。それから咲は京太郎の頭をなで始めた。それに京太郎は最初だけビクッと反応したが先ほどまでの咲の反応を鑑みたのかそう反応しただけで後は為されるがままだった。そうして咲は少し前までの怒りを微塵も感じられない穏やかな声で語りかける。
「京ちゃん」
「……ああ」
「京ちゃんがインハイ頑張っていたのは皆、認めてるよ」
「…………」
「部長や染谷先輩、優希ちゃんも和ちゃんも、もちろん私もね」
「…………」
「周りの人がどう思っていたとしても私たちは京ちゃんを認めてるよ。だから今はゆっくり休もう?」
「……咲」
そう呟いて京太郎はなにも喋ることなく次第に微睡みに落ちていった。それを見守る咲も微笑んでいる。片手間に読もうとしていた本も側に置かれたままだった。
そうして撫でていく内に咲のささくれ立っていた心も次第にほぐれていったのか微笑みも微かに存在していた堅さが抜けより自然な笑みになっていった。
(京ちゃんのおかげでここまで来られたから少しでも返せたかな?)
不仲になっていた姉ともう一度向き合う決意をくれたのが原村和ならそのきっかけを作ってくれたのは須賀京太郎だと咲は考えていた。どん底だった中学からここまで導いてくれた京太郎に改めてお礼をしたいと考えていた咲に今回の
(京ちゃんに麻雀を教えてお返ししようとしていたけど……)
そう考えて咲はほんの少しだけ遠い目をした。
(あれだけ嫌がっていた麻雀が今だとお礼の一つになってる。高校に入学した頃だと考えられないよね)
複雑な思いを今でも麻雀に抱えているがそれもいずれ無くなるだろうと咲は考えてふと今も撫で続けている京太郎に目を向けた。そして慈しむような表情をしながら京太郎に聞こえないような大きさで呟いた。
「好きだよ京ちゃん」
それは自然と口から出た無意識からの言葉だった。その言葉の意味が友達としての好意から出たものなのか、それとも無自覚に抱いていた恋心から出たものなのか咲自身もわからなかった。
そしてその後は起こさない程度の音量で鼻歌を歌いながら京太郎を撫で続けた。
~♪
咲の端末に着信がかかってきたことでこの穏やかな時間は終わりを告げた。先ほどまでのしっとりとした気配を微塵も感じさせない声色で京太郎を起こした。そしてそのまま一言二言京太郎に別れの挨拶をし、ついでにカピーに挨拶をしてから家を出て行った。
咲の親の話し合いがどうなったかはここでは記さないが、それからの咲の様子が普段と変わらなかったのが答えだろう。
そんなことがあってからしばらくして再び咲は京太郎の家に遊びに来ていた。
「咲のヤツどうしたんだ?」
それなりに大きいバッグを持ってきていた咲は家に来てすぐに「少しだけ外してくれない?」と言って京太郎を部屋から追い出していた。以前なら茶化しながら理由を聞いていたが膝枕をされてから京太郎は咲のお願いを何も聞かずに引き受けることが多くなっていた。
そんな自分に疑問を抱きつつ京太郎はカピーの相手をしながら再び呼ばれるまでただ待っていた。そうして時間にして20分くらい経過してようやく咲から呼びかけがあった。その呼びかけに京太郎は答えながら自分の部屋を開けた。
「──────はぁ?」
「お待たせしましたご主人様」
京太郎の目に映ったのはメイド服を着た咲だった。咲のメイド服自体は京太郎も部活の先輩である染谷まこの家族が経営している雀荘の手伝いで何度か見たことはあった。その時着ていたのは水色と白を基調としたミニスカートのメイド服で所々に付けられた赤色のリボンがアクセントになっていた。咲が持っていた小動物的な愛らしさが強調されていて馬子にも衣装だなと最初だけからかったのを京太郎は思い出していたが……
「な~んてね、どう? この服? まだ雑誌に載ってないから関係者以外で見たのが京ちゃんが初めてになるね」
今、咲が着ていたメイド服はそれとは全く違うものだった。ミニスカートなのは変わらないが黒と白を基調にしたものだった。それだけを抜き出せば片岡優希が手伝っていたときに着ていたクラシカルなロングスカートのメイド服を変えただけに思えたかもしれない。しかし、
「お、おま」
「それにしてもどうして私だけ猫耳なのかな? 衣ちゃんのヘアバンドをそのまま着けていてウサギみたいになっていたからついでだったのかな?」
そう咲が今ぼやいたように頭には猫耳を模したカチューシャが着けられていた。そして服もワンピースを元にしたメイド服になっていたが雀荘で着ていたものに比べると色気が段違いだった。というよりもどちらかと言えばいかがわしい店のコスプレと言っても通るくらいには刺激的なものとも言えた。
まず首回りがほぼ全開だった。首飾りは着けられていたが……これがもし原村和が着ていれば胸の上部分どころかほぼ真ん中までが見えていただろう。しかし咲が着ても健康的な色気という矛盾した言い回しだがそんな感想が挙げられるくらいには魅力的に京太郎には映った。
「ふふ、少しキツいけど私でもこれぐらいあるんだよ京ちゃん」
「お、おお」
そう言って咲は自分の胸を軽く強調した。雀荘のメイド服ではほぼなだらかだったそこはお椀くらいの大きさで存在していた。そこに軽く顔を赤くして恥じらっている表情を足してしまえば、咲のことをそういう目で見たことはなかった京太郎でも動揺するくらいには破壊力があった。
軽くフリーズしていた京太郎だったがすぐに再起動して煩悩を振り払うように頭を軽く振ってから咲に着替えた理由を問いかけた。
「え? 膝枕をするためだけど?」
「……え゛?」
咲曰く、この前雑誌の撮影で着た服を謝礼とは別でもらえると聞いて「せっかくだし……」ともらってきたはいいがどうしようか悩んで──────「あ、京ちゃんに見せよう」と決めてから「ついでにまた膝枕しよっと」と思いついて来たということだった。
「この前の京ちゃんが可愛かったし、ついでにお披露目も出来るから一石二鳥だよね」
「ああ……そう、だな」
避けられない運命と悟った京太郎は諦めたように返事をした。
実際の所、京太郎が拒めば「じゃあ、脱ぐね」と言って咲のお披露目だけで終わっていた。しかし、せっかく着替えてまで用意した咲に悪いよなという配慮と咲の膝枕を再び堪能出来る誘惑がその選択肢を除外させていた。
咲がこの前と同じようにベッドに腰掛け、膝をポンポンと叩いた。それを見た京太郎はまるで何かに吸い寄せられるように……。
そうして咲は京太郎を癒やすという新しい趣味を得て、京太郎もまた新しい癒やしを得るという結末を迎えた。
それを廊下で見ていたカピーは呆れたように一鳴きをして京太郎の部屋から遠ざかっていった。
余談
????「膝枕は万病に効く特効薬や」
?????「そうやな」(スルー)
余談2
インハイ前半
タプン
「おお!!凄っ!!全国にはこんなにすばらなおもちが!!」
インハイ中盤
ドタプン
「おお~凄いな、まだまだ俺も想像力が足りなかったかここまでの大きさがあるなんて」
インハイ終盤
ドン!!
「お、おお……こ、これ、は。すごいな。うんすごい。……拝んどくか」