指揮官の母港@バカハーレム   作:そうすけ

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みなさんお久しぶりです。

それでは平和です。


登場人物@みんなバカ

「ここが僕の担当する母港か〜」

 

港の方から見える立派な建物に目をキラキラさせながらテクテクと歩いている。母港って歩いても着くんだなぁ。どこが入り口か分からないけど、守衛室っぽい所があるのでそこかな。

 

「長旅の移動、大変お疲れ様でした。ご主人様」

 

タイミングを見計らったように出てきて深々とお辞儀をしたのは、綺麗で長い銀髪のメイドさんだった。やけに胸元の布が足りないのは何故だろう。間違えてコスプレ喫茶に入店しちゃったかな?

 

「私はロイヤル陣営所属、ベルファストと申します。ベルなり、メイド長なり、『妻』なり、『家内』なり───何なりとお呼び下さいませ」

 

「他人を妻と呼ぶのってかなり珍しいと思うよ!?」

 

思わずツッコミを入れてしまったけど、彼女なりのウェットなジョークだろう……と思いたい。目に光が灯っていなく、瞳孔が開きっぱなしなのに目を瞑れば。

 

なので僕も気の利いたジョークをかます。

 

 

 

 

 

「僕の事は『ダーリン』って呼んで───モガァッ!?」

 

 

 

 

 

「ご主人様の性癖は何ですか? フェチは何ですか? 子供は何人欲しいですか? ご主人様の望みとあらば多種多様なプレイにも従事致します」

 

僕の両腕をガッチリ掴んで壁に背中を押し付けられると、ベルファストさんはとんでもなく涎を垂らし、息を荒げながら呪文のように唱える。掛かってしまっているかもしれません!

 

この状況を抜け出すには『あの』セリフしか無いだろう。まさにこの時しか言う事がないような───。

 

 

 

 

 

 

「ぼ、僕は食べても美味しくないよ!?」

 

 

 

 

 

 

 

「味見はメイドの嗜みでございます♫」

 

逆効果でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

実際に手を出された訳ではなく(結構危なかった。かなりの質問攻めに遭っただけで済んだ。食事の好みや味付け、風呂、トイレの長さ───刑務所でもしなさそうなんだけど……)

 

「そういえばご主人様。ここの港で随分と迷われたのではないでしょうか?」

 

ようやく敷地内の案内が始まると共にベルファストさんが問いかけた。迷う?

 

「ご主人様の乗船した船が見当たらなかったもので」

 

あぁ、そういう事か。だけど僕は船で来ていない。

 

「僕は歩いて来たからね」

 

「歩いてですか!?」

 

純粋に驚かれた。僕にとっては先程のベルファストさんの変貌の方が驚きなんだけども。

 

「あそこの河川敷から登って歩いて来たんだ。歩いて10分だよ!」

 

「ご主人様は随分とワイルドな事をしますのね。ますます惚れてしまいます」

 

え? どこに!?

 

まあベルファストさんの言う通り、僕もクルーザーのような船で来る予定だった。でも配属先が決まった時に上司から『お前、家近いから船乗らなくて良いよな? あそこの河川敷から登って行け』と渡されたのは、一本のロープ。この上司はバカなんじゃないか? って思ったね。

 

ベルファストさんの後ろを歩いていると、左右から鋭い視線を感じた。一人は赤い髪で白い軍服のような衣装を纏って腕を組んで見下ろしている。もう片方はベルファストさんのような長い銀髪に黒いドイツ風の軍服を着……崩している(どうして胸を出す必要があるんですか)

 

どちらも組織の重鎮なのだろう。これから自分達を指揮する人間を品定めするのは当然だ。目が合ったのでとりあえず会釈をしておく。

 

「ご主人様、如何されました……あぁ、二人から温かい目で見守られていらっしゃいますね。ふふ」

 

「あれ温かいの!?」

 

「ご安心ください。あの二人は、『大型犬』と『にくすべ』でございます」

 

ございますと言われても何一つピンと来ないんだけど!? 暗号か何かかな??

 

「折角ですし、御二方に顔合わせの挨拶に行きましょう。どちらから先に行きますか?」

 

大型犬とにくすべの二択かあ……どちらもブラックボックスに間違いは無いんだけど、大型犬の方がまだ想像ができる。意外と甘えん坊なのかな?

 

「大型犬……の女性で」

 

人を犬呼ばわりする事に何の違和感無いのは自分でもどうかと思った。

 

 

 

 

 

「ご機嫌麗しゅうございます、モナーク様。今日から私達の指揮を執るご主人様でございます」

 

遠目で見ていたからそこまで分からなかったけど、大型犬言われるだけあって背が高くてスタイルが良く、デカいところがデカい。見ただけで速度が下がりそうな威厳を放っている。

 

「貴様が指揮官か。お初にかかる、私はモナーク。ロイヤルは、私に頼らなければならない程に落ちぶれたというのか……」

 

ダウナー気味なのか、モナークさんは気怠げに話す。ロイヤルが落ちぶれてる? ベルファストさんのようにしっかりした人がいるのに? ひょっとしてここの母港はヤバい?

 

「あれはモナーク様の『構ってちゃん』モードでございます。構ってあげては如何でしょうか?」

 

若干の不安を考えていると、ベルファストさんがフォローを入れてくれた。そんなチュートリアルみたいな……何が良いだろうか。姉妹の話題でも振ってみよう。

 

「モナークさんにはどんな姉妹がいるの?」

 

「は?」

 

「ヒェッ」

 

どうやら地雷ワードだったらしく、ドスの効いた低音ボイスで切りつけられる。

 

「……ウェールズやヨーク。もしかしたらアイツらを妹と呼べたかもしれんな」

 

気怠げながらも話す言葉には、妹を想う気持ちを感じ取れた。

 

「モナークさんは優しいんだね」

 

「……私はそんな柄ではない」

 

ぷいっとそっぽを向かれてしまった。

 

「流石ご主人様です。あともう一押しですね! このまま彼女をオトしましょう!」

 

「僕は恋愛ゲームしてるんじゃないんだけど!?」

 

おかしいなぁ! 僕は指揮官として来た筈なんだけどなあ!?

 

「これから宜しくね。モナーク『お姉ちゃん』!」

 

茶目っ気混じりに握手を求めてみたら、モナークさんにエグい力で引っ張られて、抱きしめられた。モナークさんの柔らかさと強い抱き締めで痛いクッションに寝転がされている感覚に陥る。

 

「もしかして、私はお前と出会うためだけにこの世界に具現化されたのかもしれない。だとすれば…それだけで幸せだ」

 

プロポーズRTA記録更新です! だから最初にモナークさんを選択する必要があったんですね。

 

「もしかして大型犬って……」

 

グッ、と小さく親指を立てるベルファストさん。こんなんでええんか?

 

「モナーク様、お楽しみの所大変申し訳ありません。ご主人様には母港の皆様と顔合わせをするお仕事がございますので「どけ! 私はお姉ちゃんだぞ!!」」

 

気迫ある声に反して喋る内容がバカっぽいのに、瞳孔が開きまくっているのがギャップとして面白すぎる。

 

「僕にはまだ仕事が残っててね。行かなくちゃいけないんだ」

 

「仕事と私、どちらがお姉ちゃんなんだ!?」

 

「モナークさんがお姉ちゃんだから、仕事がお姉ちゃんなんだよ」

 

「そうか……」

 

モナークさんはなぜか納得し、解放してくれた。自分でも何言ってるのかよく分からないけど、やったぜ。

 

淀んだ瞳で見てくるモナークさんを尻目に、僕らはもう一方のルートへ歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういえば『にくすべ』って何なの? コードネームか何か?」

 

「私から告げても構わないのですが、やはりご本人様から理解して頂くのが尤もだと思われます」

 

にくすべとは何なのだろうか。nikusube? 肉術? 頭の中でぐるぐると考えてみてもそれっぽいアイデアは出てこない。

 

「ご機嫌麗しゅうございます、グラーフ・ツェッペリン様。こちら様が、今日からここの母港の主となるご主人様でございます」

 

「ああ、先程から遠目で見ていた。鉄血陣営所属、航空母艦、我が名はグラーフ・ツェッペリン。さぁ条件が全て揃った。では開幕するとしよう……終焉のシンフォニーを」

 

なかなかパンチの効いた自己紹介を受ける。グラーフさんは変わった表現をするなあ。

 

「ところで卿よ、一つ聞きたい事があるのだが───」

 

グラーフさんは毅然とした態度のまま、僕に近づいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうして我では無く、モナークを選んだ? うぐっ……卿は我の隣に立ちたくなかったのか? えぐっ……我は、われはぁ……」

 

どうやら先にモナークさんの所へ行ったことに不満があるらしい。まさかこんな厳格な雰囲気からガチ泣きをするとは、思いもよらなかった。案外、親しみやすい人なのだろうか。

 

「グラーフ様、ご主人様の体は一つしかありません。ですが、こうやってグラーフ様の元へ来て下さったではないですか」

 

「うぐっ……どうして、体は一つしかないのだ。『憎んでいる。全てを』」

 

「ご主人様、来ましたよ! 『にくすべ』の正体が!」

 

エキサイトしたベルファストさんはイキイキと腕を振り下ろす。

 

「え? どこに?」

 

何か召喚した? 辺りをキョロキョロと見渡すがそれらしき人物は見当たらず、泣いているグラーフさんしかいないけど……。

 

「先程のグラーフ様の言葉を思い出して下さい。自ずと答えは見えて来ます!」

 

先程の? ええと、終焉のシンフォニー? 違う。 卿? これも違う。『憎んでいる。全てを』。にくんでいる、すべてを……にく、すべ───。

 

「……あっ!!!! そういうこと!?」

 

「左様でございます。やりましたね!」

 

合点がいった勢いでベルファストさんとハイタッチをしてしまった。そんな光景をグラーフさんは面白くないようで、

 

「全てを破壊すべきか、憎むべきか……卿を攫うか」

 

仲良く見えている僕らを見て、暗黒のオーラを解き放っている。

 

「こ、こほん。グラーフさんは鉄血のリーダーなの?」

 

話題を変えようと無理矢理話を振った。

 

「───! いや、我ではない。鉄血のリーダーはビスマルクという者だ」

 

話を振られた事に喜びの表情を一瞬だけ見せ、すぐにフォーマルな表情に戻る。ビスマルクさんか。後で顔合わせをしよう。このグラーフさんを従えるって相当な器量だよ。

 

「ところで卿はいつ我とケッコンするのだ?」

 

「……へ?」

 

ところでの話題じゃないんだけどなあ! ノータイムのボディブローはキツいですよ!?

 

「神社のおみくじを引いたら、『運命の人:向こうから求婚してくる』とあったからな。そうではないのか?」

 

当たり前だろ?、みたいに首傾げるのかわいい。やっぱにくすべだわ。

 

「グラーフ様。恐縮ですが、おみくじは何回引かれましたか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「30回だ」

 

「リセマラしてんじゃないよ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

中々個性的な二人と顔合わせを終えたので、これから建物内の執務室に向かっていくところだ。

 

「こちらがご主人様の執務室になります」

 

「わぁ……すごい広い……」

 

案内された執務室は言葉通りに広い。例えるならホテルのエントランスロビーくらいかな。

 

「長旅……でお疲れの所申し訳ありませんが、これからご主人様は講堂に向かい、母港の皆様へご挨拶をしていただきますが宜しいでしょうか?」

 

「分かった。僕はもう準備整ったよ」

 

長旅(徒歩10分)だったので、近所のスーパーに出かけたくらいの疲労しかないや。いよいよ母港の皆んなとおでましだ。

 

「かしこまりました。ではご主人様、一つご忠告を───」

 

「うん?」

 

「私達、母港の皆さまはモナーク様やグラーフ様に負けず劣らずの個性的な方々しかおりませんので」

 

「……なんとなくは想像してた」

 

目の前のベルファストさんがもう個性的だもん。あまり動揺はしなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おお……確かに個性的、というか。髪の色がみんなカラフルだね」

 

「色とりどり、といった所でございましょうね」

 

講堂の舞台裏からこっそり、皆んなの様子を見てみた。髪の色はもちろん、頭に動物の耳がある子がちらほら見えた。本当にここ、コスプレ喫茶じゃないよね? 僕、勤務場所間違えていないよね??

 

「では私はアナウンスをして参ります。準備は宜しいですか?」

 

ベルファストさんがインカムを装着し、舞台の真ん中まで歩く。

 

『大変お待たせ致しました。皆さま、ご主人様が来られても、くれぐれも眠らせたり、攫ったり、媚薬を盛ったりはしないように』

 

ベルファストさんのジョーク? なのか会場は盛り上がっているようだ。明らかに不穏なワードしかないのに何で盛り上がるんだ……。

 

 

 

 

『ですが不快を与えなければお触りはOKです』

 

「「「「やりましたわ!!!!!」」」」」

 

「何処が!?」

 

大人のお店みたいなアナウンスにギャラリーは一層盛り上がる。これ大丈夫!? 風営法機能する!?

 

『ではご主人様にご挨拶をしていただきましょう』

 

ベルファストさんのアイコンタクトが飛んでくる。この状態で表に出るのは、紐のないバンジージャンプのようなものではないだろうか。挨拶ひとつでこんなに尻込みするとは思わなかった……。

 

 

 

 

 

 

「みなさん、初めまして。今日から皆の指揮官を務めます」

 

一礼をする。

 

 

 

「指揮官チョーカワイくね!?」 「高雄ちゃん、指揮官をお持ち帰りって可能かしら?」 「まずは常識を持ち帰れ!」 「指揮官さまぁ〜♡ ようやく会えたね♡」 「大鳳はいつでもお仕えしておりますう〜うふふ♡」 「あれが指揮官か……」「どうしたのウェールズ? ヨダレがヤバいわよ?」

 

指揮官を見る目が完全に獣と化しているKAN-SENのみんな。このまま帰ろうかと思った時に一人の女性のヤジが飛ぶ。

 

「オイ、大丈夫かぁ? こんな弱そうな奴でよお───ヴグッ!?」

 

「ちょっと、ワシントン!」

 

やや乱暴な口調の銀髪の女性に注目が集まる。銀髪多くない? 挨拶した2/3も銀髪だったし。

 

ワシントンと呼ばれた女性は金髪の女性に肘打ちを喰らっていた。

 

まあそういう声も挙がるよなあ。でもそろそろ止めに行こう。着物の人達の殺意が今にも爆発しそうだ。

 

「まあそういう所もあ「いい豪胆ぷりだよ、ワシントン!」え?」

 

割り込みで入ってきた声の方を見てみると、緑髪の女性が高らかに笑う。もしかしてフォローをしてくれるのかな?

 

 

 

 

 

「そういう人ほど指揮官のつよつよビンビンオチ○ポにメス堕ちするってものさ! ははは!」

 

 

 

 

 

フォローどころか爆弾が落ちました。指揮官に男優として期待しすぎちゃいます?

 

「は、はぁ!?」

 

「それとも催眠堕ちしてアヘる誘い受けかな? 私はそれでもオカズになるが!」

 

あれかな、圧倒的に男子生徒が少なくて女子生徒が大半の学校かな? 開始5分くらいで、講堂に下ネタが平然と飛び交う母港になりました☆

 

「自分の性癖晒してんじゃねえよ、リットリオ! おい、指揮官!」

 

突如ワシントンさんから指名を受けると、彼女は顔を真っ赤にしながら、

 

 

 

 

 

 

 

「アタシはアンタのイチモツに屈しないからな!」

 

 

 

 

 

 

それ絶対負けるヤツじゃないですか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ご主人様の賛美たるご挨拶、誠にありがとうございました。最後にご主人様には秘書艦を決めていただきます』

 

締めとなる最後の行事が言い渡される。秘書艦かあ。最初だから誰でも構わないんだけど、皆んなにとってはそうじゃないんだろうなぁ……。手鏡で化粧のノリを確認する子や『私が良いですよ!』と言わんばかりに目が血走ってる……ここはミスコンの優勝じゃないからね!?

 

「皆さん気合い入れすぎじゃない? ミスコンの間違いじゃないよね?」

 

僕はこっそり司会のベルファストさんに疑問を投げる。

 

「それくらいにご主人様に期待している、という事でもありますよ。お望みとあれば、ミスコン開催致しましょうか?」

 

皆様喜んで参加しますよ、と茶目っ気混じりのウィンクを受け取った。秘書艦を決めるのにこんなに悩むのに、ミスコンなんて想像を絶するほど難易度が高そうだ。

 

秘書艦を決めなきゃいけないんだったね。もうベルファストさんにしようかと思ったけど、彼女はメイド業務もあるし、メイド長としての仕事もある。その上こういった催し物の司会も担当。そこに秘書艦業務を追加するならば、流石に過労死するレベルになるので出来るだけ避けたい。となるとモナークさん? 彼女の依存度だと用がある子さえも威嚇しそうだ……にくすべ───グラーフさんが良いのかもしれない。雰囲気は秘書艦向いてそうだし。

 

「じゃあ秘書艦は、グ「「「「「グ!?!?!?」」」」」」

 

一部の子達は頭文字に目がカッ開く。きっと『グ』から始まる子なのだろう。逆に付いてない子達の容態がヤバい。魂が抜けて21グラム減っていそう。ええと、何て言おうとしたんだっけ。グラーフさんか。

 

 

 

 

 

 

「お水をお持ちしました、誇らしきご主人様!」

 

「へぇ!?」

 

「「「「「「「「は?」」」」」」」

 

まさかの予想外すぎる事態に変な声が出た。何で水素水サーバーごと担いでるの!? その銀髪ショートのメイドさんはベルファストさんよりも肌の露出が多い。しかも本人は真面目でやり切ったような顔で担いでるのが僕の脳内処理を更に拒む。

 

「……シリアス、今は給水の時間ではありませんよ?」

 

ベルファストさんは笑顔ではあるものの、こめかみから血が出そうなくらい青筋が浮かんでいる。

 

「あ、あれ? 今ご主人様は喉が乾いているものかと……」

 

水素水のメイドはオロオロと戸惑っている。もしかして『グラーフさん』の『グ』を喉が詰まったと解釈したのだろうか。そこで水素水サーバーを担いでくる発想よ。

 

「じゃあ、お水を貰おうかな……」

 

「ご主人様!? 気をお確かに!」

 

「ロイヤルのふざけた格好め!!!! やり口が汚いぞ!!!」 「やはりロイヤルとは敵対関係なのかしらね。準備よ! フォイヤ!」「指揮官の秘書艦はこのエンタープライズと決まっている! 終わりだ!」 「……!! 指揮官、危ない!」

 

 

銀髪の方達を筆頭に戦火の口火が切られる。火のついた艦載機や武器が飛ぶ。

 

 

「はい! 誇らしきご主人様!」

 

とびっきりのニコニコ笑顔で水素水サーバーの蓋を開けるメイド。大量の水素が充満した中、飛んでくる火の艦載機たち、何も起きない訳がなく……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

着任一日目で火事が起きるなんて思わないじゃん? それが起きるのがウチの母港なのです。あんな至近距離の火災で死を覚悟したので、走馬灯が見えるかと思った。

 

「ふぅ……火傷は無いか。安心したよ」

 

見えたのは安堵した中性的な顔立ちの女性でした。僕はその女性にお姫様抱っこされている。

 

「あ、ありがとう……あっ」

 

ようやく状況が掴めたので助けてもらったお礼を言う事ができた。そして彼女の羽織っている長いマントが若干焦げているのが分かった。

 

「いえいえ、指揮官【くん】が無事なのが何よりだよ! ……ん? おや、マントが焦げちゃったか。素早く逃げたつもりだったんだけどなあ」

 

彼女の言う通り、マントが焦げているのを見つけて申し訳ない気持ちの声が出た。

 

「そんな顔しないで! ぼくは指揮官くんを助けたかったからやっただけ。むしろもっと頼って良いんだよ!」

 

「……ねえ、指揮官くん。これは一つ借りを作った事にならないかい?」

 

彼女は続け様に言う。

 

「そうだね」

 

「それならさ──────

 

 

 

 

 

 

 

 

ぼくを秘書艦にしてもらえないかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最初は驚いたけど、彼女はしっかりとしていそうな雰囲気があり、助けて貰った恩もあるし断る理由もなかった。

 

「うん、宜しくお願いします」

 

「こちらこそよろしくね! あ、自己紹介がまだだったね。

 

 

 

 

 

 

 

 

ぼくはシュフラン級のフォッシュという者だ。しばらくはぼくが面倒を見てあげよう!」

 

「フォッシュさん、早速で申し訳ないんだけどさ……」

 

「うん? なんだい?」

 

「全焼した講堂の始末書の書き方を教えてくれる?」

 

「もちろんさ! でも、ぼくが書いても構わないんだけど?」

 

「筆跡でバレちゃうよ!?」

 

「ははは、冗談だって。まずは疲れているだろうから、『ぼく』とお風呂に入ろう!」

 

「そうだね……うん?」

 

確かに疲れたのでお風呂に──────フォッシュさんと入るの!?

 

「ちょ、それはマズイって!! ──────あぁ! フォッシュさんも普通に服を脱ごうと、脱がせようとしないで!? 「まあまあ遠慮しないで!」アッ───!!!」

 

 

 

 

どうやらここの母港は頭のネジが吹っ飛んでる子しかいないらしい。by 指揮官


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