Fate/Saver The fate~アルトリアが好きな少年が起こす人理修復の旅~   作:空色 輝羅李

1 / 11
めっちゃ長いです...申し訳ない。
一話でどうしてもそこまで行きたかった。
あと、この話の終盤は原作読了済み前提で書かれています。すまない...


第1話

同調開始(トレース・オン)

基本骨子...解明。

構成材質...解明。

基本骨子...変更。

構成材質...補強。

全工程、完了(トレース・オフ)

 

刀を握り、俺はこの詠唱を行った。もちろん結果は成功である。12年前まではこんなことも失敗ばかりだったが、それは練習を始めたばかりだったから仕方ないと言っておこう。

が、日常生活において、魔術なんて必要ないので、こんなことを練習しても意味がない。ならどうしてこんなことをしているのか。それは...目の前の骸骨らを、隣の可憐な騎士王と共に蹴散らしながら思いだそう────

 

 

2015年の7月。夏休みが始まり出す下旬。蝉のけたたましい鳴き声が響き渡り、夏だ夏だと騒ぎ出す。

俺は高校生活において二回目の夏休みを友達と遊びまくって満喫する...なんてことはない。

家業があるので、それをなんとかしなければならない。俺の青春よ...グッバイ...

 

「紅蓮、話がある」

 

...親父が話がある、というときは、話す内容が決まっている。

 

「...刻印の様子はどうだ。」

 

魔術刻印の事である。この家は魔術を扱う家系なのだ。どんな魔術かはおいおい説明することにしよう。

取り敢えず、痛い魔眼ではない。腕の魔術回路に埋め込むタイプの刻印である。

その刻印は、しっかり馴染んでいた。俺が小学生の内には。

 

「大丈夫だって何回言ったらわかるんだよ...」

「すまない。私の場合は痛く感じるときが長くてな。」

 

...この家の魔術刻印は、その人の持つ属性に寄っては拒否反応や拒絶反応が起こる。それが親父にはあったようだ。

 

「さて、本題に入ろうか。」

「本題?」

 

一枚のビラを渡される。紛うことなきビラである。

...?

なんだこれは?魔術的処理が施されている。このくらいならほとんどの魔術師が読み解くことができる。

目に少し魔力を流し、ビラの正体を看破する。

 

驚いた。これを送ってきた人物の名前こそ突飛なものだが、不思議な人物に48人目に認められたそうだ。

...なんの?

 

「それはわからん。しかしだ。紅蓮が魔術の世界の誰かに認められたのには違いない。私は誇らしいよ。」

 

それはいい。それはいいのだが、詳細が場所と日時しかない。

俺は一体、何の48人目なんだ!

 

「...親父。」

「なんだ?」

「今日中に、いや、明日までに、俺を鍛え直してくれないか。」

 

親父は驚きながらも、含んだ笑みを浮かべた。

そして、魔術工房へ案内された。

 

「ここで、必要なことは全てできる。紅蓮。お前にはまだ教えていない魔術を、教える。」

 

そしてまた、含み笑いをした。

...俺は今、足がすくみ出した。

 

 

 

 

 

一日目。まずは魔術回路の効率を上げる修練だ。

魔術回路。マジックサーキットと呼ぶ者もいる。体に流れる、魔力を流すための場所。これがなければ魔術は扱えない。本数は人によるそうだが...

そして、俺は当然ながら親父よりはある。あるのはいいが、増え方が異常だった。

親父が持つ魔術回路が300本程度に対し、俺は800本程度ある。正直いって有り得ないし有りすぎなのだ。

そりゃあ多いに越したことはない。しかし、全てに魔力を通すのが大変になる...と思う。実際、体内にある魔力だけで魔術回路全ての同時活性化をさせたことはまだない。

 

「今日教えるのは...いや。今回教えるのは、投影だ。」

 

なんだそれ?するわけないだろ?

とても効率の悪い魔術だ。10本作っても2、3本分の意味しかなさないような剣を作るんだから。

 

「...紅蓮が五歳くらいのころ、聖杯戦争なるものがあった。」

 

それは知っている。2004年の冬木市という場所で行われた、壊れた戦争だ。

その地にいたわけでは無かったが、千里眼...のようなもので見ていた。

だが、その聖杯戦争の全てを見たわけではない。その時に見ていたのはあくまで聖杯の様子と、あるサーヴァントだ。だからあまり戦争の内容については知らない。

 

「その戦争の中で、投影を実際に行った人物がいる。」

 

!?

どういうことだ...!

 

「驚くのも無理はない。私も相当驚いたからね。そして、その時の人物は、一度死んでいる。詳細は省くが、生きてもいる。」

 

だめだ。脳が処理することを放棄してしまった。

 

「更に、その人物は私の知り合いの養子だったんだ。その知り合いは、人付き合いを断ってしまったからある時期から連絡は途絶えていた。だが、その養子の子とは今も昔も思い出話をしていたんだ。だから、コンタクトが取れている。」

 

コンタクトが取れている?ちゃんとつけろよな...ってまてまてまて。親父はコンタクトなんて使わないんだから、そのコンタクトでは無いな。うん。

 

「おいで、士郎君。」

 

...士郎と呼ばれた人物が、部屋に入る。

見た目や顔立ちの幼さが高校生の様に見えるが、雰囲気は物凄く落ち着いていた。いるのはいるだろうが、ここまで落ち着いた高校生というのは全くいないだろう。

 

「あー...本当に詳細の説明はいいんですよね、壮馬さん。」

「あぁ。多分説明とか考えると辻褄が合わなくなるしな。」

 

それは作者の問だ...作者って誰だ?

 

「えっと...士郎さん、でいいんですよね?」

「士郎でいいぞ。こんな見た目のやつに敬語とかも、なんか嫌だろ?」

 

笑いながら、お調子者のような、自嘲するような、そんな笑い方で言う。

 

「わかった。士朗、投影ができるのは、本当なのか...?」

「あぁ。残念ながらな。」

 

残念?言葉の意図はわからないが、本人は嫌なことなのかも知れないな。

しかし投影か...本当にできるのだろうか。

 

「心配することはない、俺の魔術回路は紅蓮より少ないからな。」

「それは...神経が魔術回路になっているからだろ?」

 

士郎は目を丸くした。そして片手を頭に置き、参ったな。と言う。

 

「それなりの魔術師ってのは、皆できるのか?」

「紅蓮には視えてるんだろう。私にはわからない。」

 

別に特殊なことは何もしていない。ただ、生まれつき目が少し普通ではなかった。それだけである。

少し説明すると、左目の視神経の一部が魔術回路と置き換わった状態でできた。なので、魔力を流せば魔眼に似た性能が扱える。例えば今みたいに人の魔術回路を見たりとか。物凄く集中すれば、少しだけ過去と未来が見れる。ほんの少しだけ。現代だったらちょっと集中すれば見たいところを見れる。

 

「...なあ士郎。」

「なんだ?」

「神経と魔術回路、同じにした方がやりやすいだろうか。」

 

士郎は少しだけ笑う。だがすぐに、それはやめた方がいいと言った。

 

「たぶん、痛いだろうからな。」

「それは問題ない。未来が少し先しか見えなかったし、見えた未来には、俺が人理を担っていた。」

 

親父まで目を丸めなくていい。

二人とも、俺を疑いはしなかった。一般的に言えば奇天烈であり得ないことを言ったが、俺の今までの行いのお陰か信じて貰えてるようだ。

 

「そんな大役を貰うんだから多少の痛み...少しかゆいだけだ。」

「お前...そうか。壮馬さんが、紅蓮が俺に似てるって言ってたの。何となくわかったよ。」

「性格だけでは無いのがまた怖いがね。」

 

二人が何を言っているのか分からなかったが、今は作業に入るとしよう。

幸いここは、親父の魔術工房だ。恩恵が完全に受けられる訳では無いが、何も無いよりはマシである。

魔術回路の増減はとてつもなく痛いらしい。だがそれより、神経に直接繋げることの方がいたそうと言うのは...言わない方がいいかもな。

そういうわけで。まずは右手の親指に通っている神経と、その近くにある魔術回路の接続をしよう。

 

意識を深く。深海の如く暗き場所で、音も聞こえない。静かで、どんどん沈んでいく。そんな感覚が始まり出せば、俺が集中できている証拠だ。体を真っ直ぐにし、背骨に1本、2本と、刀を刺すイメージをする。800を過ぎる頃には、体にある魔術回路総ての感覚を同期や接続、切断ができる。

その中で、一本を抜き取り、自分の神経も抜き取る。他の線の感覚を一旦閉ざす。

手に取った2本は、言わばS極同士かN極同士。なのでくっつけるのは、力ずくだ。

 

「ぐ...あ...あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」

「紅蓮...!」

 

近づこうとしている親父を士郎が制した。

感謝を伝えられないのがもどかしいが、そんな場合ではない。

物凄く痛い。この作業を右手全ての指同時にやらなくて良かったと思う。まじで。失神して数時間を割くよりも1本ずつやって数分かかるくらいが丁度いい。

 

「はあ、はあ...はあ...」

「お疲れ様。少し水でも飲むか?」

「士郎。気遣いとかもろもろ感謝したいが、それは全部終わってからだ。早く次をしないと...」

 

やれやれと言いたげな仕草だな...まあいい、次の指だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

二十分ほどたっただろうか。2本目からは意識をすぐにしずめたりできたので、痛み以外の時間の消耗がなかった。親父は物凄く汗をかきながらも、

 

「お前の成長には毎日驚かされるよ。」

 

と誉めてくれた。士郎いわく、このような魔術師の家庭は珍しいらしい。厳しいのが普通と言うのも笑い者だが。

 

「さて、士郎。教えて貰ってもいいだろうか。投影のやり方を。」

「勿論だ。だが、ひとつ教えておかなければならないことがある。それは...」

「それは?」

 

 

 

 

 

 

 

 

驚いた。まさか固有結界を利用して投影...いや、それはもはや取り出していると言える。

溜め込んだ武器を貯蔵し、それを必要なときに取り出す。そんな説明をされた方が納得がいく。

 

「さて、それを踏まえてだ。」

「待った。俺はそんな高等な...協会の人間でも一握りしか扱えない魔術なんて、できないぞ...」

「話は最後まで聞け...それを踏まえてだ。お前に渡したいものがある。」

 

渡したいもの...?

その言葉を発したのち、彼は投影(固有結界なのかもしれないもの)を行った。目の当たりにして分かるが、投影とは違うのもわかる。

物質にはランクと言えば分かりやすいものがある。ダイヤモンドは普通に言えば物凄くランクが高いのに対し、石は物凄く低い。ランクの高いものほど作るのは難しいだろう。だが士郎。彼は高ランクの物を今、作り出している...?

 

「いや、作ってない。入れておいたものを取り出しているんだ。」

「取り出すって...あの...それ、アヴァロンだよな?」

 

よく知ってるな、と軽く言われても困る。

アヴァロン。アーサー王物語において、妖精が住んでたりする理想郷とされる場所だ。そこには未だに生きているグランドく...高名な魔法使いがいるらしい。

そして。エクスカリバーという聖剣を収める鞘にもまた、その名前が使われている。

どうしてそれを、士郎が?その鞘は行方不明なんじゃ...

 

「あー...いろいろあったんだ。そのいろいろの中で、まあ...俺が生き延びるためにこいつが必要だって判断した爺さんがいて、それで...な?」

 

な?じゃない。そんな説明じゃ、どうしてそこに存在するのかの説明ができていない。

しかし、長くなりそうなので、詳しくはまた聞くことにしよう。

はあ...なるほど。第5次聖杯戦争のセイバーのマスターが誰かわかった。はあ...

 

(うらやましい!!)

 

だってあのセイバーだぞ!最有力候補であるセイバークラスのサーヴァントなんだぞ!?しかも第4、第5のセイバーは連続であのアーサー王だったらしいじゃないか!!あぁ羨ましい!

でもまあ、それは置いておこう。俺は聖杯に興味が無いので、英霊なるものに出会えることも、無いのだから。

 

「でだ。このアヴァロンがあれば、恐らくお前の役に立つ。」

 

役に立つ。具体的に?

 

「...さあ?やってみなきゃわかんないだろ?」

 

なんでさ!!!!!

 

「ほら、お前ならこれくらい、体内に取り込めるだろ?」

「簡単にそんな奇跡を渡すな!できるけど!」

 

...重い。質量的なのはもちろんだが、この鞘に込められた、沢山の思いが、俺に重みを感じさせる。

これを、こんなものを俺が持ってていいのだろうか...

 

「...紅蓮。お前の未来視では、お前が人理を担っていたんだろう?」

「俺の他にも複数いたが、まあ。」

「なら、お前にも英雄の加護があってもいいんじゃないか?」

 

...そう言うものだろうか。そもそも、これの作成者や、持ち主がどう思うのだろうか。

 

「俺の知ってる持ち主は、お前みたいなやつの手にある方が喜ぶと思うぞ?」

「...流石元マスター、妬けるな。」

「なんでさ。」

 

...よし。

同調開始(トレース・オン)────

 

────そこには、王を待ちわびた人の声が溢れていた。

剣を引き抜けば王になれる、そんなことが謳われていた。

 

────基本骨子...解明

 

────一人の少女が現れる。

後ろにはローブの人物が隠れている。

 

────構成材質...解明

 

────剣を手にした彼女は王になったようだ。民衆の声がそう言っている。

湖では新しい剣も貰ったようだ。

 

────基本骨子...変更

 

────ここはカムランだろうか。沢山の死体が山になっているのか、山に死体があるのか。

彼女は剣を地に刺し、両膝をついた。

 

────構成材質...入力

 

────剣を湖に返すよう、騎士に伝えた。何度かそのやりとりは繰り返されている。

やっと返還されたのか、彼女は今にも息を引き取りそうだ。

そんな彼女が、不思議なことを言う。

 

「見ていたのは知っています。もう少しこちらへ来ていただけますか?」

 

どういうことだ?俺はこの鞘の記憶を見せられているのでは?

...言われた通り俺は、彼女へ近づく。

 

「あぁ、やっと顔を見せてくれましたね。名も知らぬ貴方よ。」

「...どうして俺を認識している?」

「わかりません。しかし、こうして話せているのも何かの縁。少しだけ伝えたいことがあるので、聞いてもらえますか?」

 

俺は頷く。

 

「そう固くならないでください。貴方の持っている鞘について話をさせて頂きたいのです。」

「...やっぱり、俺が持ってたら、嫌だよな...」

「そうではありません。貴方の様な人が持っていてくれるのでしたら、私は安心です。」

「そうなのか...それならよかった。大切にするよ。」

 

そうしてください、彼女は笑顔でそういう。

そういえば、見ていたのは知ってる、そう言われたな。

 

「あの、どうして俺が見ていたのを...?」

「貴方は聖杯戦争の時に私を見ていましたよね?」

 

...対魔力?それで感知されたか...

 

「その時の貴方はまだ幼かったのでしょう。それでも、見守っているのが伝わりました。恐らく聖杯のことも。」

 

ばれてら...

 

「あ、それを責めているのではありません。感謝をしたかったので。」

「...そうか。」

「はい。それともうひとつ、本題です。」

 

本題...少し真面目な顔になったので、俺も姿勢を正す。

 

「アヴァロンは、私の魔力が無くては十全には機能しません。それでも、私がいなくてもある程度は守ってくれるでしょう。」

「なるほど。俺の魔力でもある程度使えるなら、嬉しいな。」

「いえ、貴方はある程度、では無いようですね。鞘が言っていますから。」

 

鞘と喋るのかいアーサー...いや、アルトリア?

 

「何となくそんな気がするというだけです。」

 

真面目な顔が崩れ、ほほえむ彼女が可愛くて仕方ない。

 

...なるほど。あぁ、なるほどの一言冥利に尽きる。

 

「アルトリア。ありがとう。君の生き様は俺に、感動を与えた。」

「それはよかった。誰かの目標になれたのなら、ええ。私が生きた意味もあったのでしょう。」

「あった。俺が保証する。」

「ありがとうございます。さて、そろそろお別れのようですね。あとひとつ伝えることがあったのですが...それはそれ。後でよろしくお願いしますね、グレン。」

 

そこで、俺の意識は途絶える。

 

────同調・完了(トレース・オフ)

 

あとでよろしくってなんだ!?

...アヴァロンが俺の体内に入った。感覚としては意識できないが、うん。

魔力を流せば反応がしっかり返ってくるし、さっき指の神経に変えた魔術回路の他に魔術回路が増えてるし(ざっと4000程。恐らくアヴァロンの期待通りの増え方では無いだろう)。ふむ。そういうことかアルトリア。

 

俺はアヴァロンに認められた...

 

ふむ。ならば確かに、士郎の言う投影ができなくも無いだろう。

 

「士郎。いつも投影する時のやり方を教えてくれ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

「こりゃ驚いた。まだ一日も経っていないのに...」

「同感だ。まさか私の息子が、こうも才能を見せるとは。私は魔術師としての繁栄は望んでいなかったのだがな...」

 

俺は今、固有結界を作り出すことは未だに不可能である。だが、士郎より多くの武器種を、高ランクで投影(士郎の投影と同じもので言うなら)することができるようになった。

...奇しくも士郎と同じ、剣の類いになるとさらにランクは高くなる。

 

「ここまでってなると、俺が教えれることは無いんだがな...」

「なら、結界を見せてくれないか?」

「...いいぜ。それがお前の眼にどう映ったか、見せてくれよ?」

 

期待に応えれる気がしないな。

 

「じゃ、見てろよ。

───I am the bone of my sword.

Steel is my body, and fire is my blood.

I have created over a thousand blades.

Unaware of loss.

Nor aware of gain.

Withstood pain to create weapons.

waiting for one's arrival

I have no regrets.

This is the only path.

My whole life was“unlimited blade works”」

 

...これが、心象風景の具現化、固有結界か。

多分見た目とかは士郎特有なのだが、この世界を作り出す方法は大部分の魔術師は同じだろう。ふむ。

 

「すげえ...色んな伝説や歴史、物語の武器が、たくさんある...」

「俺的には、ここにいるのは少しむず痒いけどな。」

 

士郎は、2本の剣を投影し、構えた。

 

「紅蓮。お前も何か投影しろ。」

「...良いだろう。負ける気はしないがな。」

 

...一工程(first action)登録(set)

投影開始────一つの刀をイメージする

創造理念、解読─────物には必ず、作成者の想いがある。

二工程(second action)登録(set)

基本骨子、想定────恐らくこうであろう形を作る

三工程(third action)登録(set)

構成完了(all light)是、即無也(clear・infinity)

────できた。

 

山を断ち、海を別つ(break mount and sever sea)理を開く神器(神剣草那芸之太刀)

「...へぇ。いきなり宝具級と来たか。本当にすごいな...」

 

やはり刀。剣の種類の中でも最も握りやすく振りやすい。

神剣草那芸之太刀。三種の神器の一つと言う。

八岐大蛇の中から出てきた神剣、それが草那芸剣であった。

その剣を実際に見たわけでないが、伝承が強く残る日本であるがゆえ。

 

「簡単だよな。」

「なんでさ...よし、紅蓮、行くぞ。」

 

士郎が走る。地面を一蹴りするたびに速度が増す。

...これで身体強化をしていないってんだから、怖いよな...

さて、落ち着いて思考をするにはいささか余裕が無い。なので、一度剣を腰に構え、居合いの体制を取る。

 

まだ。

 

 

 

 

まだ。

 

 

 

 

 

 

 

まだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────今!

 

金属のぶつかる音が響く。とても甲高く、耳に少し残る。

士郎は2本の剣を使う。そしてぶつかっているのは1本...

右か!

剣を強く凪ぎ払い、後ろへ退く。

 

「いい判断だ。だが少し、戦闘に慣れていないな。」

「当たり前だ。本格的な対人戦闘はこれが初めてなんだ。」

 

士郎は構わず剣を振るってくる。それを着実に弾き返す。

 

剣戟が加速する。魔術の使用された気配はない。まだついていける。

 

「少し息があがってきたんじゃないか?」

「お前こそ。切っ先がバラバラだぞ、そんな二刀流では武蔵も弱く思われてしまう。」

 

刀身が違うだろと怒られてしまった。

 

速度はまだ衰えない。どころか加速し続けている。

そろそろ次にどこに来るかを予想しなければ対応できないくらいだ。

...これが、マスターというやつの実力なのか。

 

ならば。

魔術師としての実力を見せよう。

 

魔術刻印(magic card)複数展開(over open)。」

「魔術刻印...!完璧な移植は終わっていないはずだが、果たしてどれほどの効果があるのか...!」

 

魔力を流せば、登録されている魔術を式を知らなくても使用できる。それが魔術刻印。それを、擬似的に複数に分けることで、同じ魔術や違う魔術を同時に扱える。

ひとまず、一個は強化。それ以外は先ほど登録した、投影。

 

「英雄王や俺と同じことを、見てもないのに出来るなんて。全く、どこまでも似てるんだな。」

 

そして士郎は、終わりにしようと言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

固有結界がほどける。

 

「二人とも遅かったね。お茶でもどうだい?」

 

まったくこの親父というのは。

 

「お茶より紅茶がいい。」

「そういうと思って、紅蓮の分はアッサムのミルクティーにしておいたよ。」

 

わかってるじゃないか!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現在、7/29。時刻は10:00。

ビラに書かれていた時間までは時間があるので、まだ少しゆっくりしておこう。

 

「紅蓮、話がある。」

「魔術刻印は痛くないって昨日も」

「そうじゃない。最後の刻印をしようと思ってな。」

 

...なるほど。固有結界の中で士郎が言っていた未完成という言葉の辻褄があった。

 

俺の中では勝手に、全ての移植が終わったものだと思っていたのにな。

ま、まだまだ未熟者だったって訳だ。

 

「親父なりの考えがあったんだろ?ならそれでいい。ありがとう。」

「まあ一応な。では、魔術刻印の移植を始めようと思う。士郎くん。」

 

...?

なぜここで士郎が呼ばれる?

 

「...一応、太公望家の刻印の一部を、預かっていたのさ。」

 

分家でもないのに?大分とヤバイことしてるなあんたら...

 

「はあ...とにかく頼むよ。俺は魔術を研究しなきゃならないからな。」

「あぁ、わかってるさ。」

 

俺は右手を差し出す。士郎は頷きながら、右手を返し、握手を交わす。

 

魔力を互いに流し、流れを調和させる。

士郎の魔力は中々薄いな...だが、芯の強さだけは伝わってくる。どんなことがあっても、挫けてはいけないという使命感のようなものだろうか。

 

「行くぞ、紅蓮。」

「来い、士郎。」

 

俺の魔術刻印に、別の刻印が書き足されていくのがわかる。正直いって少し痛い。

でも、魔力の流れを少しでも乱してしまえばこの儀式は二度とできなくなる。落ち着け俺。

...魔力の中にある、記憶の残滓というべきか。士郎の想いが伝わる。

なるほど、再三(と言うほどでは無いが)親父や士郎が、士郎と俺が似ていると言う意味がわかった。

自己犠牲を前提で行動する。自分の命は勘定に入っていない。

他にも幾つかはあるだろうが、読み取るのも難しいくらい魔力が薄くて、これくらいしかわからなかった。

 

「...終わったか。」

「あぁ、終わりだ。お疲れ、紅蓮。」

 

汗だくなのにそんなこと言うのかお前...

 

魔術刻印を確認する。

変化はパッと見ではわからないが、よく見ると真ん中の模様が少し丸くなった。

 

「実はね、私の代でこの刻印は成長の限界だったのだが、私が無理矢理書き足せるようにした。」

 

...えっと。

 

「できるわけないだろんなこと!?」

「それができたから言っているんだろ!!」

 

全く親父と言う人間は。

 

...尊敬しちまうな。

 

「ちなみに式は刻印の中にあるから、読みたかったら読みなさい。」

 

わーいもーなにもかんがえないぞー

 

現在時刻は14:20。余裕は随分とある。ビラに書かれていた時刻は21:00であり、場所は家の前。

...スマホに7件程の通知があった。全部一人から。

 

一応幼なじみの立香である。

 

『元気か!』

から始まり

『今日献血行ってくる!』

で終わっている。

何時に行くのかはまあ書かれてないわけだが、まだ行っていないという可能性にかけて、電話をかけてみる。

 

「...あ、出た。」

『出た、じゃない!なんで既読もつけないの!』

「あー悪い悪い。ちょっと用事があってな。」

『まー別に良いけどね。あ、そうそう!今度海いかない?』

「良いよ、行こう。お前の水着、どうせまた買いに行くんだろ?」

『ふっふっふ。選ばせてやろう!』

「はいはい。で?献血は何時から?」

『20:00!』

 

なんだその時間。そんな時間に献血なんてありえないだろうが。

まあいいか...

 

「今から暇か?」

『え?なんで?』

「...なんとなく。」

 

電話越しでもわかる。めちゃくちゃにやついてるぞこいつ。

別に立香が好きと言うわけではない...と思う。

しかしまあ、少しでも長く一緒にいたいとは思っている。少なくとも、立香にとって大切で、立香を大切にしてくれる人ができるまでは。

 

「暇じゃないならいい。」

『暇!ちょー暇!』

「ならこい。お前に似た見た目のやつがいるから。」

 

電話を切り、士郎に目をやると、どうした?と首を傾げる。

 

「きっと話があうやつが来るから気にするな。」

「なんでさ...」

 

あいつが家に来るまで、10分とない。

部屋片付けるか...

 

「手伝ってやろうか?」

「期待してるような本はないぞ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほんとに似てる!もしかして親戚...?」

「俺の知ってるなかで藤丸ってのは聞いたことないな...」

 

残念、と言いながら肩をすぼめる。そこまで残念そうにしなくても...

耳打ちで士郎が、こちら側の人間か?と聞く。

 

「あー...士郎。紹介しよう。こいつは藤丸立香。その辺の高校生だ。」

「その辺とはなんだ!」

 

士郎は何かがわかったように

 

「二人は付き合ってるんだな。」

「なにも分かってねえじゃねえか!」

「えへへ実は...」

「体をくねらせながら嘘をつくな!」

 

ったく。

さて、立香を呼んだのには理由がある。

 

「俺しばらく日本にいないから、これ持っとけ。」

「なんで?水着は!?」

「理由は...留学だよ。前も言ったろ。水着なんて遠くからでも一緒に選べるさ。」

 

ものすごく悲しそうな顔をされる。どうもその顔には弱ってしまう。

悲しませることが目的ではないのだが...

 

「...わかった。私はそれを止められないから、応援するね。」

 

...ある意味では留学だけど。

魔術師として、嘘をつくのには慣れてるつもりだったけど。

俺としては、まだだめみたいだ。

 

「あー...よし。じゃあ今から探しに行けばいいんじゃないか?」

「士郎...!」

 

おい、甘やかすな。立香はすぐ調子に乗るぞ。

 

「行こうよ、紅蓮!」

「...わかったよ...」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

複合商業施設。いわゆるショッピングモール。

その中で水着を扱う店は、今は多い。

冬場に中華まんがよく売れるだろ?そういうことだ。

 

「わー!これも可愛い...!こっちも!」

「俺はどれ着てても立香がかわいいと思うけどな...」

「えっあそのえっと...」

 

なぜそこで反応に困る。傷つくぞ。

長年こいつといて思うのは、はしゃぐときとかめっちゃ可愛い。

普通に笑顔で、普通に楽しそうに。それが可愛い。

 

「そこまで可愛いって連呼しないで!」

「自然に心読むな!」

「あ、これとこれどっちが可愛い?」

「強いていうなら...お前。」

「ああああああ!」

 

なんでさ...

 

「もう...なんでこういうやり取りはできるのに...」

「できるのに?」

「...なんでもない。よし、どっちにしよっかなー。」

「なら、右手に持ってるやつにしたら?」

 

なんだこいつめっちゃにやつくじゃねえか。

少し命の危機を感じた気がするので、店の外で待つことにした。

 

たしか献血の場所はここだったよな...ならその時間までここで暇つぶしでもしようか。

 

「お待たせ―。」

「あぁ、三年ほど待たされた。」

「なんでぇ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

19:30。今は建物の屋上にいる。星が見たいとか急に言い出すものだから、仕方なく。

 

「...ねえ紅蓮。」

「なんだ?ロマンチックだからって場酔いすんなよ。」

 

そんなんじゃない、と頬を膨らませて言う。

 

「私さ、思うんだ。今まで紅蓮と一緒にいて、とっても楽しかったなって。」

「そりゃ俺もだぞ。」

「でさ。これからもずっと一緒に入れるって勝手に思ってたけど、でも。紅蓮は遠くに行っちゃう。」

 

そんなの一時的なものだろう。留学が本来の目的でないにしても、いつか帰ってくる。

 

「それがいつになるかわからないじゃん。」

「それはそうだけど...」

「...あのね紅蓮。私、紅蓮のこと好きだよ。」

 

困った。俺はいまだに、立香に対して好意を抱いているのかすらわからないというのに。

悪い気はもちろんしない。だが、この曖昧な気持ちのままというのは...よくない。

 

「立香、返事は待ってもらえるだろうか。」

「...うん、いいよ。」

 

しばらく時間が過ぎる。沈黙のさなか、立香は若干顔を俺の方に傾けたりする。

身長は立香よりちょっと高いくらいだから、顔が近い。

星を眺める。天体に関する魔術は、この時代では難しい。天体に関する神秘が減ってしまったから。

それでも、少しくらい無理をすれば。

 

「...あ、流れ星が...!」

「あぁ。流星群みたいだな。」

「綺麗!!」

「...うん。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃ、行ってくるね!」

 

そう言って、献血の車に向かって走り出す。途中で振り返り、両手を口元へもっていく。

 

「ぐれーーん!!!大好きだよーーーーー!」

「やめろばか!!!!!!!」

 

まったくもって恥ずかしがる素振りも見せずに、また向かっていく。

 

でも俺は、それを見送り終わっても動けない。嬉しさからではなく、怪しさからだ。

あの車から、魔術的な雰囲気を感じ取れる。悪意でないのがわかるが、立香にどう影響するのか...!

 

 

 

立香が降りてこずに、しばらく時がたつ。そして車にかかっている魔術が発動された。

 

「気配遮断...隠蔽とかが得意なのか...?」

 

さらに、車が動き出す。それも、ありえない速度で。

 

油断した。もう少しはやめに動けばよかったものを...!

とりあえず魔術回路を開き、刻印にある身体強化を全開で使用する。そしてさらに

 

時空遮断(time out)

 

完全な遮断は無理だけど、それでも周りの時間を遅らせることができる。

だというのにだ。

車に追いつけない。

 

「複数人で魔術を行使しているのか...!」

 

そろそろ足がもつれそうなんだがな...

 

ならばこれしかあるまい。人にすら打ったことのない、最高火力で....!

 

「結界ごと剥がれ落ちろ外道(魔術師)ども...!拘束(ガンド)!!!!」

 

車が止まる。煙で周りが見えないので、どうなったかわからない。

 

...気配が多すぎる。あの車の中にこれだけの人数が収容できるとは思えない。

認識に干渉する魔術か。それとも空間か。あるいは両方か。

 

「...俺とやろうってのか...?」

「そのつもりはない。貴重な人材を君に減らされてはこちらとしてはとても困る。」

 

...えっ何こいつ。魔力薄すぎ...

 

「私の名前は――――――――だ。」

「...ビラのやつか。どうして立香を?」

「我々が必要としている適性があったからだ。」

 

適正...魔術関連でなく?

 

「魔術は正直使えなくてもいい。ただ、君と彼女はその適性が100%あったんだ。今まで見つからなかったのが不思議なくらい。」

「...はぁ。とりあえず立香と話をさせろ。」

「ある程度の説明はした。君が必要と思うことを話しなさい。」

 

なんだそれ。魔術は隠匿すべきものじゃないのか....?

 

「あれ、紅蓮。なんでいるの?」

「立香。話がある。」

「紅蓮が魔術師だってこと?」

 

おい何しれっと教えてるんだ。

 

「ほとんど話さなくていいみたいだな。」

「そうだね...ねぇ紅蓮。私は大丈夫だよ。」

 

事体がわかっていないのか...?

今こいつは一般人で、周りには魔術師ばかりで、信用に値するかもわからない連中に囲まれているというのに、大丈夫?

 

「...そうだな。俺がついてる。おい―――――――、早く車を出せ。」

「言われなくとも、もう目的地に着いた。」

「なんでさ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「士郎君、今日はありがとう。」

「いやいや、こちらこそ感謝してますよ。面白い経験でした。」

 

青年は謙遜でなく、本心から述べる。

実際、自分の周りで魔術を扱うものは、媒体を通した魔術師が多く、自信の体だけで魔術を行使する人間を見るのが、どれほど面白く感じるか。

さらには魔術にも似たものを、少し教えただけで自分と同程度まで成長する人物を前に、心躍らないわけがない。

 

「あーそうだ、これ。凛ちゃんに。こっちは桜ちゃんに。これは君に。」

「どれも価値しか無いんですが。」

「私からすればそこまでの価値がないものだよ。宝石魔術なんて紅蓮に教えてもらったくらいだし。料理は妻や紅蓮にしてもらっていたし。レーヴァテインなんてたまたま拾ったけど、聖杯戦争に参加する予定も意思もないから必要ないし。」

「なんでさ....」

 

まぁとにかくもらってくれと、壮年らしき人物は言う。

青年は肩をすくめながら

 

「ありがとう、壮馬さん。きっと喜ぶし、嬉しいよ。」

「あぁ。そう言われると嬉しいね。さて、今日は風がなんだか嫌な感じだ、気を付けて帰ってくれ。」

「はい。ではまた。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

極寒の嵐が吹く。周りは一面が氷だか雪だかでおおわれており、建物が一つしかない。

 

「我々は先にこの中に入ろう。君たちは少ししてから入りなさい。そして我々のことは誰にも言うな。」

「全部言わないは無理だけどな。」

 

さて。この怪しさマックスな建物に入らざるを得ない状況だが、

 

「なんだかワクワクするね!」

 

立香がこんな調子なので、調子がくるってしまう。

 

とりあえず入ろう。

 

――――――塩基配列  ヒトゲノムと確認

――――――霊器属性  善性・中立と確認

 

なんだこれは。自動アナウンスのようだが。

 

――――――ようこそ、人類の未来を語る資料館へ。

      ここは人理継続保障機関  カルデア。

 

カルデア...初めて聞くが、星見の人だろうか。

 

――――――指紋認証 声帯認証 遺伝子認証 クリア。

      魔術回路の測定...エラー。一名測定不能。 完了しませんでした。

 

そんなこと言われても困るけど...

 

――――――しかし、登録名と一致します。

      貴方を霊長類の一員であることを認めます。

 

いやあんたに認められても。

 

――――――はじめまして。

      あなた方は本日最後の来館者です。

      どうぞ、善き時間をお過ごしください。

 

まじか。なんで最後ってわかるんだろう...

 

 

――――――...申し訳ございません。

      入館手続き完了まであと180秒必要です。

      その間、模擬戦闘をお楽しみください。

 

まて、模擬戦闘だと?

 

ほとんどどころか、まったく戦闘経験が無いんだけど?

 

あーだめだ。意識が途切れる...―――――――――

 

 

 

強制イベントか!!!

 

「強制イベントか!!!」

「同じこと言わなくていいって...」

 

てか敵ってゴーレムか...

 

「ね、ねえ紅蓮。何か人が二人いる!」

「この魔力...嘘だ、ありえない。」

 

サーヴァントを観測したことがあるからこそわかる。この魔力...そして、立香の手の甲には赤い紋章。

 

「間違いない、英霊だ。」

「な、なにそれ?」

 

使い魔のようなものであると説明をする。

そして、命令をすれば攻撃をすることも。

 

「とりあえず...えっと、攻撃して!」

 

すると英霊が、無言でゴーレムを刺したり、撃っている。

 

「ランサーとアーチャーか!」

「てことは、槍兵と弓兵?」

 

なるほど。模擬戦闘というものが何かわかった。そして俺にできない理由はなぜか。

俺は自身で戦闘できるからか...

 

「あ、倒した...?」

「そのようだな。立香、もう少し具体的に指示できるようになろうな....」

 

意識は、またも途絶えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

胸の上に、柔らかい物体が載っているのがわかる。

 

それから、何かを呼ぶ声も聞こえる。

 

「................あの。朝でも夜でもありませんから、起きてください、先輩。」

 

俺はこんな眼鏡美少女の後輩を持った覚えはないが。

 

「かわいい!!!!」

「開口一番にそれかよ!」

「え、あの....」

 

あーあ....戸惑ってるじゃねえか...

 

「すまない。困らせる気はなかった。俺は紅蓮。太公望紅蓮だ。君は?」

「いきなり難しい質問なので、返答に困ります。名乗るほどのものではない....とか?」

 

不思議ちゃんなのかなこのこ。真顔でそんなこと言われても...

 

「いえ、名前はあります。あるのですがその....印象的な自己紹介ができないというか...」

「そこまで考えなくていい。自己紹介といっても、相手に自分の名前が伝えれたら。それと趣味とかを教えてくれるとどんな人間かがわかるかもね。」

「なるほど。それはともかく。」

 

ともかくって。教えてくれないのかよ...

 

コホン。と咳ばらいを少女はする。

 

「質問よろしいでしょうか、先輩。お休みのようでしたが、通路で眠る理由がちょっと。」

「それは説明させてくれ。初めての霊子ダイブだったんだ。意識が混濁しても仕方ないだろう?」

 

少女は目を丸くする。そこまで驚くことだろうか....

 

後から現れた緑の男性が、俺たちが一般枠での募集であることを教えてくれた。

彼女の名前...マシュというのも。

また、五分後に説明会があることも。

 

「ではその説明会の場所へ急ぎましょう。」

 

...この緑の人間の発する魔力は、いや。魔力だけでなく雰囲気も。怪しさがすぎる。まぁ、魔術師なんてのは胡散臭いやつらの集まりだよな...

 

マシュからすると、俺と立香は敵対する理由がないらしい。それくらい弱そうってことだろうかとも思ったが、人らしい人だといわれると、納得せざるを得ない。

 

管制室とやらに案内される。席は最前列が空いてるようなので座らせてもらった。

...所長という人物は少し怒りを表情にしていたが、あぁ。時間に集まらなかったのが悪い。

じゃない、時間を間違えて運んだあいつらが悪い。

 

「...時間通りと行きませんでしたが―――――

 

 

 

―――――説明会が終わる。立香は途中で一度睡眠をとりかけていたがまあ仕方ない。俺も眠かった。

そのおかげでファーストオーダーからは外れたらしいけど。

 

自分の部屋へ行くよう促されたので、ややフラついた足取りの立香を支えながら移動する。

マシュは

 

「先輩からの頼まれごとでしたら、昼食を奢るくらいならしますとも。」

 

と言われたが、奢られる気はない。でも頼れる後輩がいるのもいいものだな。

 

 

自分の部屋なのにノックをするのはおかしいかもしれないが、中に人の気配がするので一応。

 

「はーい、入ってまー――――って、うぇええええええ!?誰だ君は!?」

「お前こそ誰だ、ここは一応俺の部屋になるらしいが。」

 

あー新しいマスターか...僕の休憩所が....なんて小声でブツブツ言っている。こいつは誰だ。見たところものすごく一般人だが。

 

 

 

 

 

 

 

「なるほど、ドクターロマン。いい響きだな。」

「でしょ!僕も気に入ってるんだ。」

 

少し話をしていたら、アナウンスでレフの声がした。

どうやらお呼ばれしているようだなこのさぼり魔め。

 

「今医務室だろ?そこからなら二分で到達できる筈だ。」

「...ここからじゃどうあっても五分かかるぞ...」

 

そしてアトラスの話やカルデアスや、ここの施設についての話と、時間があれば医務室によってケーキでもどうだと無駄話をして、足を出そうとしたその時。

 

「なんだ?明かりが消えるなんて、何が―――――」

 

アナウンスか。中央発電所、中央管制室で火災...

 

「...紅蓮!」

「あぁ!」

「あっ君たち!そっちは第二ゲートじゃ....ええい道を戻る時間も惜しい!閉鎖する前に必ず戻るんだぞ!」

 

ロマンの声は聞くが無視する。

マシュが心配だ。急がなければ。

...立夏に対して魔術関連を隠す必要がなくなってしまった。それは悲しいことだが、今はアドバンテージだ。

 

「身体強化...!」

「えっちょっはやい!」

「お前はあとから追いついてこい!」

 

管制室にたどり着く。ひどい状況だ。炎は吹き荒れ、瓦礫があふれている。

 

「マシュ!大丈夫か...!」

「先...ぱ....なんで....」

「しゃべるな!」

 

アナウンスが何か言ってたりするが、興味ない。立夏が追いついた。マシュに治癒魔術を施す。

 

「もう...手遅れです....」

「あきらめるな。せめて最後まで一緒にいさせてくれよ後輩....!」

「そうだよ!大丈夫、紅蓮は魔術師だから!」

 

アナウンスはまだしゃべっている。レイシフトがどうのマスターがどうの。

 

「...先輩...手を、握ってもらって、いいですか?」

 

うなずき、手を取る。

 

 

 

 

 

3

 

 

 

 

 

 

 

2

 

 

 

 

 

 

1

 

 

 

 

 

 

意識がゆがむのを、一日で何度経験すればいいんだ!!!!!

 

「なんでこんなに頭ぐにゃぐにゃしなきゃ....!」

「マスター、起きてください....起きてましたね、殺さなくて済みました。」

 

なんでさ.....

 

「マスター。周囲に敵性エネミーを発見しました、応戦します!」

 

...俺の手に、令呪...?

 

「マスター、指示を!」

「....いや、必要ない。投影(トレース・オン)

 

なんで何も考えずに投影したら...これが....

 

「マスター...いえ、ともに出ます!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

周囲の骸骨をひとしきり倒し終わり、所長を回収...合流した。そして、霊脈なるところへ行くよう動き出す。

...ここはかつての冬木らしい。実際の歴史と違う、特異点のだが。

 

「...ポイントに到着しました。」

「わかった。ならマシュ、その盾を刺してくれ。」

「あなたどうして、その方法を!」

 

ロマンは通信越し?にマリーを止める。

そしてマシュが盾を刺した。

 

「召喚の詠唱で、いいんだよな。」

「...えぇそうよ。」

 

まさか俺が、英霊に出会える日がくるとは。ずっと無いと思っていたが、何が起こるかわからないな、人生ってのは。

...覚えていてよかったかもな。

 

「素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。

 降り立つ風には壁を。

 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ。

 

 閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)

 繰り返すつどに五度。

 ただ、満たされる刻を破却する。

 

 ――――告げる。

 汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。

 聖杯の寄るべに従い、この意、この理ことわりに従うならば応えよ。

 

 誓いを此処ここに。

 我は常世総ての善と成る者、

 我は常世総ての悪を敷しく者。

 

 汝 三大の言霊を纏う七天、

 抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」

 

 

そこには、可憐な―――――見覚えのある――――――騎士がいた。

 

「―――――――サーヴァント、セイバー。召喚に従い参上した。問おう、あなたが私のマスターか。」

「...アルトリア...!?」

「...えぇ、ほら、その。よろしくといったではないですか。」




ありがとうございました!
つたない文章を長時間読むというのは、優れた文章を読むより疲れることだったと思います。お疲れ様です(最初から優れた文章書けっていう文句は効きません...自覚あるので...w)
また、設定的に原作と違うところがあれば、それが意図的なものでない場合習性しようと思うので教えていただけたら嬉しいです!
ではまた次回!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。