Fate/Saver The fate~アルトリアが好きな少年が起こす人理修復の旅~ 作:空色 輝羅李
英霊召喚。
このカルデアという施設では、「システムフェイト」という仕組みで、聖杯戦争の英霊召喚を参考に再現している...らしい。
それは不可能だと思われる。なぜなら、英霊というのを召喚するのに、人が呼ぶのにはいささか無理がある。それこそ聖杯の力がなければ。
しかし実際、こうして英霊が召喚できているのだ。疑問でしかないが、目にしてしまっては信じるしかないのである。
「―――――――サーヴァント、セイバー。召喚に従い参上した。問おう、あなたが私のマスターか。」
「...アルトリア...!?」
「...えぇ、ほら、その。よろしくといったではないですか。」
俺は今、猜疑心に包まれている。狐につままれたのか?
どちらでもいい。俺の前に起きた出来事を処理しよう。
「マシュ。君のマスターは誰だ?アルトリアは俺の英霊として。」
「え...と、私のマスターは、お二人共です。アルトリアさんのマスターは、確かに先輩のようです。」
一人の英霊に対し、二人のマスター?
モニター越しでロマニが焦っているのがわかる。
擬似英霊(デミサーヴァントと呼ぶべきか)ゆえか?それとも、この盾が関係するのか?
...そういえばマシュは、元になっている英霊が誰か、未だわからないといっていたな。
ギャラハッド。彼は円卓の騎士であり、偉大なる騎士とも呼ばれる人物。
そんな彼が、マシュといたときにも真名を告げることはなかった。
ならば、俺はそんな騎士の意思を引き継がせてもらうしかない。
「マシュ、次はどこへ行くんだ?」
「はい。この地にある聖杯を回収しに行きます。」
聖杯だって...?
いや、確かにそれならわかる。そうでなければ辻褄が合わない。
特異点というものを形成するのに、人であれ動物であれなんであれ、それほどのことをするには魔力が足りない。歴史と違う歴史。そんなものを維持するには、聖杯がある方が楽である。
...神でなければ。
「...グレン。私はここに覚えがあります。」
「そりゃ冬木だからな。」
「...なるほど。でしたら回収すべき聖杯の場所は、あそこしかありませんね。」
俺はうなずき、ロマニに魔力反応の強い場所はどこか一応確認をとる。
「ところでグレン、質問があります。」
なんだ、と尋ね返す。
「あなたが手に持っているその剣、もしかして...と思いまして。」
「...無意識に投影したらこれが出てきた。」
なるほど、とアルトリアはいう。
...少し嬉しそうなのが、何とも言えないが。
聖杯のあるポイントまで歩く道中、多くの骸骨がさまよう。その連中は容赦なく俺たちを襲ってくるが、マシュやアルトリアのおかげで難を逃れてる。
が。
「流石に数が多い!態勢を立て直そう、撤退だ!」
「言われなくてもわかっています!一般人が口出ししないで!」
一般人、ねぇ。
オルガマリー、アニムスフィア。
時計塔では名門のアニムスフィア家の娘である。彼女はたしかに魔力も魔術回路も十分に備わっているが、問題がある。
レイシフトと呼ばれるものに適正が必要であるなら、彼女にそれが備わっているのか。
彼女は最初から、コフィンに搭乗していなかった。それは適正がないからだろう。ではなぜ、彼女がここにいる?
...それはまた今度考えよう。
「いくら名門といえど、人を馬鹿にする態度は変わらないようだね、お姉さん。」
「あなた、その態度...!あの時の子供だというの!?」
さて、橋の辺りまで戻ってきてしまったし、少し休憩できるだろうから、柄にもなく昔話をしよう...いつもしてるか。
昔、魔眼オークションを開催するための列車、
まぁ当時は五歳だったので、あまり見せてもらえたりはしなかった。
そんなとき、煙草を吸っている人物と、フードを被った人物から、面白い話が聞こえた。
そして、これは面白い人物を送り込めば、もっと面白くなるだろうと思ってしまった。
...我ながらおかしなことを思っていた。
そして面白い人物を探すために列車内を歩き回り、見つけてしまった。
「お姉さん、ちょっといいかな?」
「あら、お子様が私に何か用かしら。」
「ロードがいるよ、その人たちについていけば、きっといいことがある。」
彼女は怪訝そうに顔をしかめる。
疑うのも仕方ない。初対面で子供にいきなりいいことがあるよなんて言われたら、俺だって疑う。
「そう。それはいいことを聞いたわ。私はオルガマリー。オルガマリー・アースミレイト・アニムスフィア。」
「うん、知ってるよ。僕は紅蓮。太公望紅蓮だ。」
日本人、ね。なんて含みのあることを言われる。
その時点で俺は、言語が違っていても意思疎通を行える魔術を習得していたので、会話に苦はなかった。
「いいわ、あなたのことは覚えといてあげる。」
それくらいの会話だったが、確かに俺はオルガマリーと出会っていた。人生というのは奇怪なものだ。
たった一つの、二度とないと思っていた出会いは、途端に訪れる。
「まったく。あなたのせいで飛んだ目にあいました。が、たしかにちょっと楽しかったので、許します。」
「だから、その上から目線はもうよせ。」
キッっとにらみつける。その態度に俺は少しビビるが、表情に出してはいけない。
「魔術師としての質は、俺の方が上だ。」
「...なんですって?」
「聞こえなかったか?」
彼女の周りが怒り一色となる。
「いいえはっきりと聞きました。今ここで、その差を教えてもらいましょう。」
「どうやら高名な魔術師は、血気盛んのようだな。」
「マスター、待ってください。」
マシュが止める。なんだよいいところだったのに...と、顔を動かすと、何かいる。
「...ねえ紅蓮、何あれ...?」
どういうことだ。まさかこの地では、特異点でありながらも聖杯戦争を行ったというのか!?
「マスター、指示を!」
「え!?私、そんなの...」
「立香、マシュのサポートは任せた。」
立香は、少しうろたえるが、覚悟を決めたのか、マシュに指示を出す。
とはいえ相手はサーヴァント。てこずるのもわかる。俺もまた、行かなければ。
「...グレン、あなたはマスターという人間の役割を理解していますか?」
アルトリアが止める。
役割?そんなもの俺には関係ない。これは戦争ではなく、戦闘だ。
ならば、戦えるなら前に出ても問題はない。
「...あなたもまた、無茶をする人のようだ。」
「あいにくと、似てるってのは聞き飽きたんだがね...」
骸骨を連れたアサシンのサーヴァントを前に俺は、剣を握りなおし、詠唱をする。
「
基本骨子...解明。
構成材質...解明。
基本骨子...変更。
構成材質...補強。
「強化魔術!?そんな効率の悪い魔術を使うなんて...」
今強化したのは自分の腕だ。でなければ、きっとできないだろうから。
「束ねるは星の息吹、輝ける命の奔流。受けるが良い。
「...どういう...こと...?」
目の前の大地は少し削れている。
オルガマリーはわなわなしている。
ロマニはそんな馬鹿なと連呼している。
立香は何が起きたのか理解できていない。
マシュは状況を整理しようと頑張っている。
アルトリアはあきれている。
「...どういうことですか紅蓮。すぐに説明しなさい。」
『そ、そうだ!普通の人間にこんな芸当、できるわけがない!』
全く、と言いたいところだが、説明は必要かもしれない。
「俺は投影ができる。実際の投影ではなく、物質を完全に生み出すくらいの。」
「...紅蓮、あなた...!」
「マスター、それでは宝具を行使できる理由になりません。」
どう説明するものか...
「グレンの持つ魔術回路と刻印がそうさせたというだけです。」
「あなた、一般人じゃなかったの!?」
そこからかよ...あの列車にいたということはそういうことだろうが...
さて、俺の魔術回路といっていたが、そこは俺にはわからない。
そもそも宝具の行使ができた理由が俺にはわからないんだがな。
「まとまった魔力の放出に長けている、といえばわかりやすいでしょうか。」
『なるほど、それなら...多少の説明がつく。』
モニター越しのロマニは納得したようだ。
目の前の淑女はまだお気に召さない様子。
「ありえない、私が投影をしたとしても、そんな高ランクの物質を作り出すことができないのに。」
「...まぁ。そういうこともあるわな。」
とまぁそんな会話をしていて、気づいたことは二つ。
一つ、俺が倒したサーヴァントは二体。片方のクラスはわからなかったがまぁいい。
もう一つは、もう一人サーヴァントがいる。
「お?ばれちまったか。」
「隠す気がないようだな。その杖は初めてみるが、風貌からしてケルトの...」
言いかけて、止められる。
自分で名乗らせてくれ、というような目をしているので、手でどうぞと言う。
「本当ならランサーとして召喚されたかったんだがな、俺はクー・フーリンだ。よろしくな。」
「...そうか、わかったぞ。」
「何がわかったの?」
この荒れようからして、聖杯戦争があったと思える。それならサーヴァントが複数体いても、何の違和感もない。
この地で行われた聖杯戦争は、途中で聖杯の泥に侵されている。
さっきのサーヴァントの様子がおかしかったのはそのせいだ。
「よくわかってるじゃねえか坊主。そうだ、ここで行われた聖杯戦争は、途中で全く別のものになった。そして今残っているサーヴァントは、キャスターの俺と、セイバーだ。」
...おかしい。他のクラスのやつらは、セイバー一人にやられたというのか..?
...そうか、泥か。
聖杯の泥に侵されたセイバーのサーヴァントが、その泥の力を使って他のサーヴァントを倒したんだ。
「...光の御子よ、その場へ連れて行っていただけますか?」
「...あぁいいぜ。あの時の決着はお預けのようだがな。」
まったく駄犬がよぉ...
そういえば、マシュの宝具をまだ見ていないな。
「マシュ、デミサーヴァントでも宝具は使えるのか?」
「はい、そのはずです。ですが私には、使用できません。」
それはおかしいと口をはさむ英霊が一人。
「英霊と宝具は同じもんなんだから。」
魔力が詰まっているとも言った。
なるほど、まだ出力がうまくできないということか。
少しヒントを上げるとしよう。
「マシュ。その盾は何のためにある?」
「それは...守るため、ですか?」
「俺に聞くな。マシュがその盾をどう使うかが重要なんだよ。
マシュはしばらく黙り込む。立香は少し俺をにらむが、俺の考えをくみ取ったのか、頷いていた。
「私は...私は、皆さんを守るためにこの盾を使いたいです。」
「うん、いい答えだ。では早速、立香を守れ。」
どういうことですかと聞かれるころにはもう、俺のサーヴァントは準備をしていた。
わかってるじゃないか...!
「...グレン、指示を。」
「あぁ。アルトリア、撃て。」
「待ってください!こんなの...!おかしいです!」
「束ねるは星の息吹」
「マシュ、盾をとれ。」
「できません!今すぐやめてください!」
「輝ける命の奔流。」
「紅蓮!今すぐやめさせて!いくらなんでもこれは...荒療治すぎる!」
「受けるが良い――――」
「(私が守らないと―――私はマスターに守れと指示をされたのに―――今守れなくてどうするという意図できっと―――私が...私が使わないと―――!」
「エクス――――!」
「ああ、ああぁあああ――――――!!」
「―――カリバー!」
「あ...私...宝具を、展開できた...んですか?」
「あぁ、そうみたいだな。」
「...紅蓮?」
立香がものすごく怒っている。まぁそりゃそうだよな...もしかしたら死んでいたかもしれないんだから。
「...まったく、紅蓮はいつも勝手に信用して、勝手に心配する。」
「面目ない...」
「手に持ってるの。私には何かわからないけど、盾?」
盾ではない。今俺が手に持っているのはアヴァロンである。
エクスカリバーを絶対的な攻め手というなら、アヴァロンは絶対的な守り手。
ただし矛盾は起きない。エクスカリバーの攻撃よりも、アヴァロンの防御の方が強いのは確定だ。
万が一マシュが宝具を展開できなければ、俺が守っていたが、その心配は無用だったようだ。
「私は驚いてなんて...」
『オルガマリー、それは無茶があるよ。魔力計が振り切れているんだ、現実だよ。』
まぁそれは置いておこう。早く聖杯を探しに行かなくては。
俺たちはとりあえず、セイバーのいるという洞窟?で骸骨を相手にしながら進んでいた。
「おいクー、ここのセイバーはやはり、彼女なのか。」
「...あぁそうだ。お前らの時代で最も有名な剣を持った、かの騎士王。それがセイバーのサーヴァントだ。」
困った。この洞窟のような場所で、セイバーの宝具を受ければ、天井が崩れかねない。
...その前に倒すか、和解するか。
「言ってる傍から信奉者の登場だ。」
「....ふん、信奉者になった覚えはないがね。」
来客を追い返す程度の仕事はする、そういった。
この声、聴いた覚えがある。だが、そんなはずはない。似ているだけ、だよな。
英霊になるにはそれ相応の伝承なんかがいる。それこそこの時代において英霊が増えるなんてのは、ありえないに等しい。だというのに、一般人が英霊になったというのか...?
「...士郎、なのか?」
「...私はその名前を知らない、それでいい。」
...そうかよ。
「剣を持て、士郎。お前は俺が越える。」
「まったく、その名前はとても不快だ、二度と呼べないようにしてくれる!」
干将莫邪。
その剣を投影した時点で、確定なんだがな...!
二振りの剣筋は、すでに覚えがある。さらに同一人物であれば、動きが同じになってもおかしくはない。
とはいえだ。相手は英霊、俺は人間。普通ならば勝ち目がない。
存在の前提条件が違う。だから人が英霊に勝てるなんてこと、無いに等しい。
でも。
等しいけど、それは
勝とうと思えば、勝てる。
「遅い!」
「くっ...やはり人間の時のお前より強いな!」
たわけ、と英霊は言う。
「紅蓮、無茶なことはよしなさい!所長命令です!」
「聞けないな、その命令。」
『グレン君、所長の言うとおりだ!生身の人間が挑んでいい相手じゃない!』
「ロマニ...いや、ドクターロマン。俺はロマンを追い求めるぞ。」
「そんなに私相手に手加減してていいのか?」
刹那。
眼前に迫るは二本の剣。
だめだ、よけられな――――
「――――グレン!」
――――い、そう思ったが、アルトリアが弾く。
アルトリアの目には怒りが浮かぶ。
「...グレン、無茶をしないでほしい。」
「...ごめん。」
「ふん、しょせんその程度か。」
言わせておけばいい。
「あぁすまない、すぐに終わらせよう。」
「させない。」
宝具を使わせてはいけない。きっとそれは、俺だけが連れていかれる。そうなれば俺は...
何も守れないまま終わる。それは嫌だ。
魔術刻印に魔力を回す。
先日行った投影、そのうちの一つを、もう一度...
「
「...それは!」
「あ、あぁ...」
『ちょ。オルガマリー!?』
神剣草那芸之太刀。これを俺は左手に持つ。
エクスカリバーはいまだ右手にある。
両方刀身が長いが、振れないこともない。やっててよかった強化魔術。
「...お遊びはこれまでだ、行くぞ―――!」
「かかってこい、
その時世界は、歪み出す。
俺も知っている世界に、上書きされていく。
「くそ、やられた!」
「遅かったようだな。」
この場にいるのはこの英霊と、俺。
「やるしかないようだな...!」
「やっとその気になったか?」
最初からずっとその気だ...!
「
「...ほう?」
「
複数の魔術を同時に行使するように登録しておいてよかった...!
「...ふ、やはり君は、私より強かったんだな。」
「...みたいだな。」
「私があの時、やめにしたのは。」
――――怖かったんだ。
「―――――グレン!大丈夫ですか!」
アルトリアが駆け寄る。
俺は普通に立っているし、外傷もないと思う。だからその質問は間違っている気もするが...
「あぁ、大丈夫だよアルトリア、心配させてすまない。」
と言ったら、アルトリアは泣きながら抱きしめる。
...?
抱きしめられているのか、俺は?
「よかった、本当に良かった。あなたに何かあれば私は...」
「...アルトリア、大丈夫だから、早く進もう。」
ぬくもりが冷める。周りからの視線のせいでないことを信じよう。
「あー...そろそろ大聖杯だ。準備はいいか?」
「俺はいいが、そうだな...」
立香は初めての経験が立て続けに起きているから、疲れているはずだ。
...初めてなのは俺も変わらないが、魔術師において精神は強くなくては意味がない。未熟と言え、俺はまだ余裕がある。
...そうだな。
「オルガマリーの持っているドラゴンフルーツでも食べようか。」
「なんっでわかったのかしら?」
「おいおい、驚きすぎじゃないのか?声が裏返ってるじゃないか。」
やばいこれ以上挑発したら泣き出しそう...この特異点に来てからずっと煽ってたからまぁ少しはいいようにしてやるか。
「あーほら、俺なんかより経験のあるあんたがちょっとうらやましかったんだ、言い過ぎた。悪かったよ。」
「...ふん、今度からは気を付けることね。」
...可愛いな。まさか俺が年上にこんなことを考えるとは思わなかったが、うん。可愛い。
アルトリアがつねってきているが、気にしてはいけないだろう。何せ逆側から立香もつねってきているのだ、痛い。
一休みが終わり、大聖杯の前へ着く。
オルガマリーは
アインツベルン家により作られた聖杯、か。
親父の手記には書かれているのを見たことがあるが、実際の関わりは俺自身にはないので、実感はわかない。
「悪いな、おしゃべりはそこまでだ。奴さんに気づかれたぜ。」
――――美しい。
思わず声が洩れる。
「マスター、下がってください!」
「マシュ、気をつけろ。」
反転したアーサー王...別側面...オルタと呼ぶことにしよう。
オルタは、マシュの盾を見て、面白いといった。おそらく気づいているはずだ。
本来の持ち主の影に。
「構えるがいい、名も知れぬ娘。その守りが真実か、この剣で確かめてやろう!」
...アルトリアと戦うなんて、誰が想像しただろうか。俺は想像していた。
アルトリアは剣を握る。オルタもまた、剣を握る。
「皆さん、ここは私に任せていただけますか。」
「...もちろん。誰も止めやしない。何かあれば俺も出る。」
「えぇ、頼りにしています、グレン。」
マシュは盾を強く構える。
オルタは笑う。
「―――――ほう、白き私か。面白い。」
「何が可笑しいのです!」
剣の激しくぶつかり合う音、飛び散る火花。
仮面(鎧?)を付けたオルタの表情は、詳しくは見えないがそれでも...
どこか悲しそうである。
鉄の打ち合いはしばらく続く。宝具の使用は、お互い何処か躊躇っているように見えた。
「...そろそろ、終わりにしましょう。」
「あぁ、そうだな。」
「────令呪を持って命ずる。待て。」
「っつ!グレン!何を考えて...!」
俺はアルトリアに近づく。正確にはオルタに、だ。
彼女は強者の余裕ゆえか、剣を構えず、ただ俺の歩みを待つ。
「なぁ、オルタ。」
「...なんだ、私の臣下にでも下るのか?」
なれるものならなりたいがね。
そんなことはとりあえずおいておこう。
「俺に力を貸してくれないか?」
「...ほう?」
オルタは少し、興味ありげに言う。
...この先、きっといくつか特異点という場所に行くことになるだろう。その先で、いくら英霊を召還できると言っても、限度があるはずだ。
ならば。
「俺と一緒に、世界を守ってくれないか?」
「...ふっ、面白い。この私に、そのような話を持ちかけるなど。」
そこまで笑わなくても良くない?傷付いちゃうぞ?
「いいだろう。私もそろそろ腕比べに飽きてきたところだ。あぁ、そうだな。お前のいる
え、まじ?いいの?それで...
あ、退去の光が...
「ちょっ、こんなとこで強制帰還かよ!?」
駄犬は黙ってなさい?
「...盾の娘よ。その盾を、せいぜい間違った使い方はするなよ?」
「えっ、あっ。はい、もちろんです!」
そして、二人のサーヴァントは退去する。
一人の英霊は、
これが何をするのかは、このいかにも苛立たせる魔力の正体が教えてくれるだろう。
「まさか君たちがここまでするとはね。48人目と49人目はまったく、見込みのない子供だからと善意で見逃してあげた私の失態だよ。まさか片方が、
まさか俺の親父の知り合いか...?
マシュやロマニ、オルガマリーといった面々はレフを見て驚く。
レフ・ライノール。
近未来観測レンズ「シバ」の開発者であり、天才的な技術力を持っている。つまり、こいつがいなければ未来の保証はできなかった。
「ロマニ...そうか。まったく、すぐに管制室に来てほしいといったのに、命令を聞かなかったんだな。あぁ。どいつもこいつも統制のとれないクズばかりで、吐き気がとまらないな。」
なるほど。レフという人物はどうしようもない人物のようだ。
「人間というのはどうして、定められた運命からずれたがるんだい?」
「ずれたいんじゃない。元から定められていないんだから。」
ではシバの存在はどうなる?と言われる。正直シバについて詳しいわけでもないし、歴史の修正、というのも専門外だ。
だが一つ、確かなことがある。定められた運命というのは、過去の産物だ。これから起こる事象は、俺たちが決めることであって、シバは未来の存在を保証するだけの観測装置だ。
だから彼は、間違っている。
が。
「よかった、あなたがいなくなったら私、この先どうやってカルデアを守ればいいのかわからなかった!」
オルガマリー...君は...
「レフから離れろ!今度こそ完全に消失してしまうぞ!」
二人はやりとりを続ける。
オルガマリーは、ずいぶんとレフに、ご執心のようだ。
「―――その中でもっとも予想外なのは、爆弾を真下に置いておいたにも関わらず、生きていることだよ、オルガ。」
「―――――、え?レ、レフ?」
...残留思念を、トリスメギストスが、転移させた?
...確かに、つじつまは、あう。
なぜなら、オルガマリーにマスター適正も、レイシフト適正も、無いことを確認した。ロマニに念話で聞いておいた。
つまり。肉体を失ったことによって、望んでいたレイシフト適正を手に入れたんだ。
世界は、最もつらい真実を、彼女に教えてしまったんだ。
「レフ。俺は貴様を許さない。」
「君には何もできないよ。」
―――!!!
なんだ、これ...!
すごい
対魔力を持ってしてもだめなのか....!
レフは今、カルデアの様子を見せているようだ。
カルデアスが、赤い。それを、最後まで自分のせいだとわからせる...いや、思わせるために、誘導している。
...残留思念が、カルデアスに、吸収されている、のか....!?
「やめろレフ!せめて、せめて肉体に戻してからでも...!」
「フ、私にはそれが、わからないな。死というものに変わりはない。ならば、彼女にとって大事なこの、カルデアスに燃やされた方が―――幸せだろう?」
歪んでいる...
今の顔も、性格も、すべて歪んでいる。こんなの、人がすることじゃない...!
「やだ、やめて、いやいやいやいやいやいやいや....!だってまだ、何もしていない!生まれてからずっと、ただの一度も、誰にも認めてもらえなかったのに―――!」
もう、間に合わない。
こいつに近づけば、俺も同じ目にあわされる。
「所長...!」
「マスター、待ってください!」
マシュが止める。流石、デミサーヴァントだな...
「改めて自己紹介をしようか。私はレフ・ライノール・フラウロス。」
貴様たち人類を処理するために遣わされた、2015年担当者だ。
その言葉を聞き、戦慄が走る。
フラウロス、だと?
魔神...72人いる、魔神。過去、現在、未来すべての質問に答えてくれる...嘘つきの悪魔。
あぁ、その権能を生かして、シバを完成させたのか。
ロマニに対し、この時点で人類は滅んでいるといった。
それに対し、2016年が見えないことが関係あるのかを訪ねている。
「関係ではない。もう終わってしまったという事実だ。」
...
つまりだ。
「カルデアスが深紅に染まった時点でな。」
今カルデアは、カルデアスの磁場で守られているらしい。
すでに、カルデアの周辺以外の意味消失が始まっていたんだ。
「外部と連絡がとれないのは通信の故障ではなく、そもそも受け取る相手が消え去っていたのですね。」
空間が、隔離されている状態だったのか。カルデアという組織は。
「これは、人類史による人類史の否定だ。お前たちは進化の行き止まりで衰退するのでも、異種族との交戦の末に滅びるのではない。」
――――跡形もなく燃え尽きるのさ!
特異点の崩壊は、止められない。
レイシフトが間に合わない、そう聞こえた。
「「黙ってくれdoctor(黙ってくださいドクター)。怒りで冷静さを欠きそうだ。」」
マシュと被るのは意外だが、それは今どうでもいい。
せめて、立香とマシュだけでも。アルトリアを失うのは悲しいが、英霊である以上また立香とかマシュとかが呼べる。マシュも立香も、生きた人間だ。ならば帰らせなければ...!
...フォウ?君は...なるほど。じゃあ少し力を借りることにしよう...!
「ロマニ!全力でサルベージするんだ。意味消失は、避ける!」
『――――わかった!全力でなんとかする!』
「
「これは...結界...!」
普通の結界だけどな...それでも、周りの時間から完全に遮断できる。あとは、カルデアに託した――――――――