Fate/Saver The fate~アルトリアが好きな少年が起こす人理修復の旅~   作:空色 輝羅李

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第3話

俺は今、どこにいるのかわからない。

ただ暗い空間が目の前にあるというのは理解した。だが、やはりどこなのかわからない。

 

「...フ、哀れよな。己がどこに在るのかわからぬとは...あぁ、だが。待て、しかして希望せよ。」

 

その台詞は確か...巌窟王...?

 

そうだな、彼が英霊としてその言葉をいうのは大いにあり得る。

その言葉の意味を、深くは知らないが。

 

「...別に俺は瀕死じゃないけどな。」

「まあいいだろう?さて、本題だ。」

 

話題変えるの下手過ぎない?

 

...こちらから完全に姿を視認することはできない。モヤのようなもので隠れている。

これもまた宝具なのか...?

 

「案ずるな。レイシフトとやらはすでに完了している。貴様は今、ひと夏の夢の狭間にいるとでも思え。」

「ひと夏の夢、ね。」

 

これまでに起きた、人類史焼却も夢ならいいのに...

一応、親父が巻き込まれているので、悲しいという感情はある。もちろん親父だけじゃなく、ほかの友人にしてもだ。

 

...それはいったんおいておこう。この巌窟王様が何を言うのか、聞き逃してしまわないようにな。

 

「わが共犯者よ、そろそろこの夢から覚めるだろう。ならばその前に。一つ伝えておいてやる。」

 

いつの間に共犯者?

...まぁ、そろそろ目覚めるだろうという感覚はもちろんあるので、早めにそれを聞いておきたい。

 

Je pense.Donc je suis soyez là(我思う、故に我在り)

「それは....確か、哲学者の言葉だったな。」

 

つまり、考えることをやめるな、ということだろうか。

私は考える、だからこそ、私は存在する...か。覚えておいて悪いことはないだろう。

なにせ彼の巌窟王が言うんだ、金運が上がればいいな...と思わないか?そうか...

 

「ありがとう。そろそろ現実に戻らないとな。」

「クハハハハ!せいぜいオレの期待を裏切るなよ、人類最強のマスターよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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....俺が最強?ははは、何の冗談だよ。

 

魔力の流れを感じるので、おそらく巌窟王と契約がされたのだろう。

契約って一方的に結べるのか...いや、それも英霊という在り方の一つなのかもな。

 

...なんか、ほほえましい状況が目の前に広まっている。

小動物を愛でる美女、か。

 

最高です。

 

「こらこら、いくら私が美女でも、鼻血を出しちゃあ...君の顔がもったいなくなってしまうよ。」

 

彼女はそっとティッシュを差し出してくれた。

手まで綺麗かよ。

 

 

彼女はレオナルド・ダ・ヴィンチと名乗った。

...ここまで俺を驚かせるかカルデアは。英霊召喚とはいうものの、とんだ傑物をも召喚し得るのだな。

 

「私への評価は確かに妥当だが、それでも分野は限られるよ。でもそうだね...私は万物に通じる天才だから、もっと褒めてもいいよ?」

 

英霊ってのは全員傲慢なのか?いや、アルトリアはそんな性格でもないし、全員がそうと断定するのは間違いだな...

 

状況は整理する方がいいだろうし、いったん今までのことを思い出そう。

 

まず、人理焼却。うん。整理しても意味がわからんな。

 

次に英霊召喚。過去の三度にわたって実験がなされてきた。マシュとレオナルド、もう一人については情報がないから、あとで誰かに聞くことにしよう。

 

そして最後に、カルデアの定めた冠位指定(グランドオーダー)完遂という目標。七つの場所に形成されたという特異点を全て解決し、人理を元通りにするというなんとも馬鹿げたことだ。

 

...そもそも、俺なんかがそんな大役をもらってよかったのか?俺だけじゃない。立香もだ。あいつにはいささか荷が重すぎる気もする。責任感の強いあいつにこんな重大なこと...とても任せたくない。

 

ならせめて。俺が頑張らなくては。全責任は俺にある、くらいでいなければきっと...

 

「さて、グレン君。いろいろ思案する気持ちはわからなくもないが、一つ質問だ。」

「なんだ?天才の質問に答えれる自信はないが、俺に答えれることならなんでも答えさせてもらうさ。」

 

そんな大した質問ではないと笑いながら、沈み込むような瞳でこちらを見据える。

 

「君は何者か。それだけ答えてくれたらいいのさ。」

 

...は?

哲学か何かか?俺は別にそこまで考察することや考えること自体に重きを置いたことがないから、そんな、自分とは一体何か、なんてわからない。

 

そんなことを考えていると、そうじゃないと首を振る美女が一人。

 

「そもそも、なぜ私がこんな質問を君にしているのかっていうとね。おかしい点がいくつかあるんだけど...飛び切り不思議なのが、君のサーヴァント...アルトリアがね。カルデアの魔力供給を受けていないのさ。」

 

それは何かの間違いだ。そもそも英霊の使役というのは、人ひとりの魔力では到底足りるわけがない。英霊というのは存在自体が魔力だけで構成されているといっても過言ではないし、現界させるのにも当事者の魔力と使役者の魔力と世界の魔力がいるんだ。

そしてさらにいえば、このカルデアという場所において、魔力供給がされるのは当然である。その証明はレオナルドの存在だ。

彼女のマスターはいない。しかし、特異点の冬木で出会ったクーフーリンのマスターはどうだと言われれば、あれは世界の無意識の防衛機制で召喚されたものなのだから、世界がマスターだろう。

つまりだ、魔力の供給がなくては現界することができない英霊が、そこにいるというのならば、要因を考える必要がある。

たとえばそう...魔力の供給源がある、とな。

クーフーリンは世界に呼ばれ、世界が魔力の供給源であった。なら、レオナルドは?

カルデアでカルデアに呼ばれカルデアが魔力供給を行う。そう考えるのが妥当だろう。

 

「まいったな...君の考察力は、探偵を彷彿させるね。あぁ、君は間違っていない。確かに私は、カルデアからの魔力供給を受けている。でも、それは関係ないんだ。」

「待てってば。俺だけが魔力供給を行ってるとでも言いたいのか?そんなんあり得るわけがない。俺自身が魔力の少なさを知っているっていうのに...」

「でも、彼女は確かに君の魔力だけを頼りに現界している。」

 

...はぁ!?

 

埒が明かないといわんばかりに、レオナルドは誰かを呼ぶ。ドアの前にもともといたのだろう、アルトリアが部屋に入ってきた。

 

そして俺に、告げる。

 

「マスター。あなたの魔力の核が、そうさせている。あなたの父が伝えなかったことの一つだろう。」

「ま...待てよアルトリア。確かに魔力を発生させる核はある。当然だ。だが...」

 

魔力の核が優秀なら、俺の魔術回路は、どうあれすべての活性化ができるはずだ。なのに今まで一度も開かれたことがない。それは一体...

 

...そういうことか。

 

「あなたの本能が無意識のうちに、押さえつけているのでしょう。」

 

...まったくもって、訳が分からない。しかし、結果が見えているなら、原因はこう推察するしかないのだろう。

 

「そしてあなたも、もうわかっていることでしょう。魔力のつながりがどういうものか。」

 

そんな真面目にいいながら顔赤くしないでください騎士王様...多分思ってるものと違うから...

 

「さて、では最初にもどろう。」

「そういわれても知らないものは知らない。俺はただの太公望紅蓮、それだけだ。」

 

彼女は顔をしかめる。何かを思い出すかのようにうーんという唸り声も上げながら。

 

まぁいつか思い出すだろうと、彼女はけろっとした様子で笑う。

 

通常業務に戻るよ、そう言い残し、部屋を後にした。

 

...難題を残すんじゃねえ天才め。

 

「...アルトリア。俺は一体どうすればいいんだろうな。」

「そうですね...ひとまず魔法使いでも目指してみたらいいのでは?」

 

なんでさ。

 

――――――――――――

 

 

 

 

 

少し時が過ぎ、マシュと席を同じくして、食堂にいる。

 

マシュはココアを飲んでいる。季節的には突っ込みったくなるが、ここの外は極寒であり、季節感というものはどうも、一つの季節しか感じられない。

 

「マシュ、聞きたいことがある。」

「なんでしょうか、先輩。」

 

戦闘服では眼鏡をはずしていたのに、普通の服ではなぜ眼鏡を付けているんだ?

 

...あっぶね。意味がわからない事を聞くとこだった...

 

「マシュは、魔力供給は誰から受け取っているんだ?」

「そうですね...今のところ感じ取れるのは、先輩の魔力、でしょうか。」

 

言ってて気づいたのか、彼女は不思議そうに首をかしげる。

 

そして、俺と同じ疑問を抱いたのだろう。

なぜ俺の魔力しか供給されていないのかを考えている。

 

「...はあ。立香に聞いても多分、わからないだろうな。」

「そうだと思います。立香先輩は、魔術の世界とは無縁だったと伺っていますので。」

 

もう誰に聞いても同じ結果な気がするし、そろそろあきらめることにしよう。

 

そして、もう一つ気になることがある。

 

「なあマシュ。召喚室はどこにある?」

 

そう尋ねると、マシュが案内してくれた。

 

 

閑話休題(というには最初に俺の目的を述べていなかったので、続いての話題。の方がいいかもしれない)。

少なくとも俺は、ほかに魔力の供給源がなくとも問題がない状態にあるようなので、無理やりにでも英霊を召喚してみようと思う。契約は断られたらその時考えればいいし、うん。物は試しだ。

 

召喚の式は...必要ないのか。便利だな。触媒とかは...近くにマシュの盾を(気持ちとして)おいておこう。あとは...サークル?に魔力を流せばいいんだな。

 

「...よし。あとは...念じるだけ!」

「それでいいんですか先輩!?」

 

召喚サークルとやらは、無駄にまぶしく光輝き、その光を失ったとき、一つの影が現れる。

 

「...フ、こうも簡単に私を呼ぶか、マスター。」

 

どうやら、成功のようだ。

多少なりとも縁はあった。なら呼べてもおかしくはない。そう。

 

「よろしく頼むよ、オルタ。」

「あぁ。いいだろう、貴様の魔力も、悪くはない。」

 

...さて、この調子で何人か呼んでみよう。俺と少しでもかかわりが、もしくはマシュの...円卓の盾に呼ばれる英霊が、来ないとも言い切れない。

もはや賭けだけど。

俺なんかに力を貸してくれる過去の英雄なんて、そういるわけないからな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらく、召喚に時間を費やしていた。召喚が終わり現れる英霊に話をして、契約をしてもらえるかどうか確認をしてから契約を終わらせる。

誰一人として俺との契約を断る人物がいなかった。それは嬉しいのだが、驚きが勝ってしまうのもまた俺という人間の性分だろう。

 

しかし驚くべきはそこではない。同じ英霊でも種類が違うのを同時に召喚し、現界させることができるということだ。

アルトリアとアルトリアオルタ。この二人はまだわかる。別側面ということで、次元の違う存在と定義付けることができるから。

それ以外の英霊が問題である。クーフーリン。お前オルタでもないのに槍と杖両方で召喚できるってなんだよ。

 

そこはそれ、置いておいて問題はない問題なので、放置しておこう。

そろそろ立香が何をして時間をつぶしているのかが気になるし、少し様子でも見に行こうと思う。

 

部屋のドアをノックし、返事がくるのを待つ。慌てた様子でドアまで駆け寄ってくるのがわかるくらいには足音がしている。

 

「はーい...って紅蓮?どうしたの?」

「いや、お前こそ慌ててどうしたんだよ。」

 

聞けば、ここの職員を待たせるのはよくないと思ったからちょっと焦ったそうだ。

心がけはいいけど、もう少しゆっくりでも...

 

「さて、お前には基礎知識として、ある程度のことを教えていかないといけない。」

「勉強しろってこと?やだなぁ...私全教科平均くらいだよ?」

 

などとほざくが、こいつはいつもテストの点数が高い。暗記科目では俺も負けることがあるくらいには成績がいい。つまりただの謙遜である。

実力のある人間の謙遜はあまり好まれないからやめた方がいいけど、まぁそれも日本人というものか。

 

「勉強じゃないけどさ、少しだけ魔術に関することを、予備知識として知っておく必要があると思うんだ。」

 

でなければこれから先、必ず知識が無くて困ることが増える。そのたびに一から説明をとなると、時間を無駄にとられるので、せめて二でも三でも知っておけば、多少の楽が期待できる。

 

そういうわけで必要なことを話していこうと思うんだが...さてどうしたものか。

目の前にいるグランド女好きくそ野郎(花の魔術師)が、代わりをしてくれそうだ。

 

...まて。いや...待て待て待て待て。

 

「なんでいるんだグランドくそ野郎!?」

「はっはっは、すがすがしいくらいのひどい挨拶だね。そうとも、この僕こそが花の魔術師、マーリンさ。」

 

そんなのわかってるわくそボケ。おいというかお前はまだ生きてるんだろうが。ならずっと果てで見てろよ...

 

「だって、君は面白そうじゃないか。こんなに面白そうなことを間近で見ずにどうしろというんだい?」

 

それはいいとしてやろう。しかしだ。英霊召喚において絶対的な条件は一つある。その時代にその英雄がおらず、死んでいることだ。

だというのに目の前の魔術師は、こともあろうかアヴァロンという場所で生きているじゃないか。なのに....なのに英霊として実体化?ありえない。

 

「正確には単独顕現、というスキルなのだけどね。それにほら、今は人理がないだろう?」

 

...無茶苦茶すぎるし、能天気すぎる気もするが、考えるのも疲れた。

 

「立香に変なことしたり教えたりするなよ。本体の命...容赦しないから。」

 

おー怖い怖いと、まったく怖くなさそうにするあたりが、マーリンそのものだ。

全く、なんでこうも変なことが起きるかねカルデアよ。

 

なら今のうちに、もう一つの用事でも終わらすことにしよう。

 

 

医務室に行くと、少し慌てた様子で書類やらデータやらを整理している、そそっかしい人物がいた。

 

「おや、紅蓮君?すまない、少ししたらお茶を淹れるから、椅子に掛けて待っててくれないかな。」

「あぁ。そんなに慌てなくていいよ。ゆっくりでいいからさ。」

 

ありがとうと俺に一瞥をくれると、すぐに書類整理にとりかかった。

 

医務室というわりにこの部屋は、ごちゃついている場所が多い。医務室というより、レンタル倉庫の中にいるといわれるほうがしっくりくる。

 

「はぁ...これはこのファイルに纏めるのでいいのか?」

「え、手伝わなくていいよ?これは僕の仕事だ。」

「二人でする方が早く終わるだろ?」

 

不服そうな表情を浮かべるが、一理あるという感じに、手伝うことを許可してくれた。

さっさと終わら差ないと。聞きたいことをこの書類たちのなかに埋もれさせてしまわないようにな。

 

 

 

 

二人でした甲斐あってか、数分後にはベッドがしっかり見えるほど片付いた。

...ベッドに物置いちゃあだめでしょ....

 

「手伝ってくれてありがとう!これ、紅茶だけどよかったら。」

「この香りはアッサムだな。ミルクをもらっても?」

 

ありきたりな飲み方だが、俺はやはりこの方が飲みやすい。

 

本題に戻ろう。まだ話してすらいないのだが。

一番聞きたいことは最後にした方がいいのだろうが、時間をかけすぎるのもよくない。手身近に終わらすために最初に聞くことにしよう。

 

「このカルデアの最初の召喚例は、お前でよかったか?」

「え、どうしてだい?僕は見ての通り人間だよ?」

 

笑顔でごまかそうとするか...

だが俺に()()は通じない。

 

人間だと言い張る割に、人間の力だけで得ることができる知識じゃないものが書類にまざっていた。

この男にもう少し警戒心というものがあれば、その走り書きのようなメモを見られずにすんだかもしれない。

そして、もう一つ。

 

「この指輪、なーんだ。」

「...ははは。どうやら僕の負けみたいだね。」

 

少し残念そうに、そして嬉しそうに語る。

 

「君の言う通り、僕が最初の実験成功例のサーヴァントだ。でも、今は確かに人間だよ。」

 

あたりまえだ。こんなに一般人としか思えない気をまとっておいて、まだ英霊の存在だといわれた方が、違和感というものだ。

 

大方想像はつく。ここの前任の所長...マリスビリー・アニムスフィアが、()()()()()において召喚し、聖杯を手に入れ、このカルデアを作る。一方でロマニは、人間になりたいと願った。

 

ロマニ・アーキマン。英霊であった頃の、英雄としての名は...

 

「ソロモン。魔術王ソロモンだな。そして見てしまった。すべての終わり(世界の終焉)を。」

「そこまでわかるもんかな普通!?」

 

肯定するうえで、それでもわかってないと思ってたのか。まぁ気持ちはわかる。俺も本気で推理すればあたることもあるんだなって...

 

答えを知ってしまった以上。伝えることは一つだ。ソロモンとしての力を残している彼にこれだけは伝えなければならない。

 

「ロマニ。お前に()()()()は使わないでほしい。」

「...そのときの、状況によるさ。」

 

だろうな。だったらそれまでに、できる限り力をつけるとも。

 

たとえそれが、人間にできなくとも。

俺は魔術師だ、手段は限りなく不可能でも、できないわけじゃない。

 

「もう一つ聞きたいことがあるんだ。」

「なんだい?僕はレオナルドみたいな天才じゃないから、答えれることは少ないけど...君の質問には全力で応えたい。」

「ありがとう。なら...ここの資料、全部読んでもいいか?」

 

 

 

―――――――――――――――――――

 

 

私は今、花粉をものすごくまとった白いお兄さんに、いろんなことを教えてもらっている。そしてそのどれもが興味深く、覚えるのが大変だった。

 

「...じゃあ、私も魔術を使える?」

「出来るとおもうよ。だって、君の魔術回路は無意識のうちに開かれている。あとは魔力の流し方や、術式を覚えたら...ほぉら!こんなこともできるよ。」

 

...花を渡されても。それに全部、知らない植物だし...

 

魔術の世界というのは、とても奥が深い。そして、紅蓮の家のように、代々引き継いで繁栄させる、というのも必要なのが分かった気がする。

そう、あくまで気がする、止まりだ。

 

なぜなら私は、当事者じゃない。

本当の気持ちは当事者でなければ、わかったといってはならない。なんとなくこうだろうな、という推察は許されるだろうけど、やはりわかったという言葉では、わかりきれていないと思う。

 

「君はとても賢いね。確かにその通りだ。でも、知ろうとすることは、いけないのかな?」

 

それはどうだろうか。私は紅蓮が好きだ。だからこそ、もっと知りたいと願う。それと同時に、もっと知ってほしいとも。

でもそれが、紅蓮にとって嫌だったら?

 

そのときはもちろんやめてしまえるだろう。好きな人の嫌がることはしたくない。

...わからない。

 

「そうだね。人間にしてみればそうさ。僕は君たちの考えることなんて興味ない。でも、僕の生きがいなんだ。だからこそアドバイスしよう。魔術もそういうものだと。」

 

...?

わからない。そういうものと言われても困ってしまう。

 

「魔術師は、自分の知らないことを知りたいから、魔術師なんだ。」

「なるほど!じゃあ、好奇心旺盛の子供みたい、ってこと?」

 

彼は肯定を、満面の笑みで表現した...常に笑顔じゃん。

 

私はこの数日で、前より彼のことを知った。そして同時に、どうして教えてくれなかったのか、疑問が生じた。

 

魔術は隠匿するべきものだという理解を得たにもかかわらずだ。

これは私の身勝手なエゴ。なんでも語ってくれると思っていた彼に裏切られていたと錯覚する、私の自分勝手な思い込み。

それでも...少しくらい相談してくれてもよかったのに、なんて考えてしまう。

 

そして同時に、もう一つ脳裏に浮かぶことがある。

 

サーヴァントって美形多すぎない???

 

このままでは紅蓮の気持ちがさらに揺らいでしまう。

ここに来る前に聞いた...まだ好きかどうかわからない。その気持ちに早く答えを見つけろ、なんていうのは、その根源とやらに到達するより難しいだろう。

 

だって...私も悩んだもん。

 

「ハッハッハ。やはり人間というのは面白いねぇ。」

「ふぉう君こいつ蹴っていいよ。」

「マーリンシスベシフォォウ!!」

 

―――――――――――――――――――

 

 

用事はあらかた済んだ。次の特異点とやらへのレイシフトの調整が終わるまでの休息といっても、まだかかるのか...そりゃそうだな。

時間旅行をそんな軽々しく連発されちゃ困るわ。

 

「並行世界の移動なら、簡単だったけどね!」

 

そんな綺麗な笑顔で言われても困る。

そもそも平衡世界の観測すら難しいものだというのに...

 

「って何自然に横にいるんですか宮本武蔵さん!?」

「ん~いい反応!そうこなくっちゃ。こっちの私も、それなりに有名みたいね。男らしいけど。」

 

そりゃ可能性として女の武蔵とかいてもおかしくないけど、こんなきれいなのに剣士とかもう...

英雄信じれねぇわ。

 

それでいて向こうにいる小次郎はなんかうずうずしているし。

 

まぁ、幸いなことにここには、現代魔術に通じる人物が数人現れるようだしな。

 

「...なぁマスター。こういうことをいうのは無粋なのかもしれないが、君は本当に人間なのか?」

「まぁいいじゃないか兄上。神霊なるものをここまで見れることはまずないぞ?」

 

なぁんでロードがいるのかなぁ?

憑依してどうの、擬似召喚だからどうの、人理がどうの、いろんな条件が重なったからこそできうる召喚だったのか。

 

「ま、ロードを使役するなんて大それたことできるわけが...」

「ならその不敵な笑みは隠した方がいいぞ。」

 

これは面白くなりそうだ、その言葉ののちライネスは近づき、

 

「それはおいておいて、確かに君の魔術回路は面白いな。どうだ、私の弟子にならないか?」

 

悪魔だな。

師匠は別に欲しくないが...しかし魔術を教えてもらえるなら、それほどありがたいことはない。

 

「でもやっぱり、誰かの元に下るってのは好かない。対等に扱ってくれるというならまぁ、考えないこともないさ。」

「ほぉ...?ふふ、ますます気に入ったよ、我がマスター?」

 

悪魔だな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次に行く特異点は、どうやらフランスのようだ。フランスに関係する英霊は何人かいたし...連れて行くのは決定だな。

 

「さて、そこで質問だが...君は一体?」

「そんなの私が聞きたいわよ。」

 

どうしたものか。オルタの存在というのは、どうも難しい。どのサーヴァントにおいてもあり得る、別の可能性がオルタ、なのだろうか。

ジャンヌ本人に聞いても当然わからない。

ジャンヌオルタ本人に聞いても

 

「私の記憶は不鮮明よ。そもそも、どうしてこんなところに...」

 

なるほど。理解した。

これから俺が関わる人物、もしくはその可能性が少しでもあれば、縁を結んだことになる。だから俺が知らなくても、向こうが知らなくても、呼べるのか。

...カルデアの召喚式を解析する必要があるか...?

 

とりあえず。

 

「レオナルド。俺は準備ができた。」

「私もです!」

 

俺たちは指令室に集まって、話を聞く必要があるからだ。

どれほど資料を読み理解しても、やはりその作戦を開始するのは、所長代理だ。

 

「...その前に一つ、聞かなくちゃいけないことがある。」

 

重い口をやっとの思いで開けたかのように、ロマニが言う。

 

「君たちはこれから、たった二人で、七つの人類史に挑まなければならない。その覚悟はあるか?人類の未来を背負う力はあるのか?」

「何言ってる。二人だけじゃない。」

 

俺と立香はもちろんだが、ほかにも多くの英霊、マシュ、レオナルドにカルデアの職員たち。それから...

 

「あんたもいるだろ?」

「―――ありがとう。その言葉で僕たちの未来は決定した。」

 

これよりカルデアは、予定通り人理継続の尊命を全うする。

目的は人類史の保護、および奪還。探索対象は各年代、原因と思われる聖遺物・聖杯。

 

これから俺たちが相手にするのは歴史...人類史そのもの。目の前に立ちはだかるのは多くの英霊、伝説。

 

これは、挑戦であり過去への挑戦という冒涜。人類を守るために人類史に挑む。

だが、選択肢はこれしかない。はいかイエスだ。未来を得るには、これしかない。

 

結末がどうであれ、後悔することは許されない。今ここで立ち止まってもいけない。

許されるのは、取り戻すための前進のみ。

 

「――――以上の決意をもって、ファーストオーダーから改める。」

 

人理守護指令、G・O(グランドオーダー)

それを告げられ、俺たちは決意した。

 

 

 

 

 

 

人類史を必ず取り戻す。

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