Fate/Saver The fate~アルトリアが好きな少年が起こす人理修復の旅~   作:空色 輝羅李

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第5話

私には記憶がない。

 

というのは真っ赤な嘘である。むしろ記憶がありすぎて困ってしまう。

 

だって...私と出会う前の()に出会うだなんて誰が想像できますか!?

 

そもそも、私という存在自体がイレギュラーであるというのに、縁を結んでいない彼が私を召喚すること自体が間違っている。

...もしかすると、この()()()()という場所は、思っていたより奇怪なのかもしれない。

これから出会うと想定される英霊は軒並み召喚できると考えても違和感がない。

 

できるだけ、彼に悪影響を与えずに、()に出会わせなければならない。

 

難易度高すぎじゃないかしら!?

 

...はぁ。白い私は、いかにも頼れないし。というか、この特異点に私ってだいぶおかしくないかしら。

なんでわかっていながら来てしまったのか...

 

私は思ったより単純のようで、理由はわかりやすい。

かといって、まだ知られたくはない。全力で隠し通す。

 

それにこんなやつにばれたら、落ち度が半端じゃないわ。絶対ばれないようにしないと...!

 

 

しばらく、フランス兵らのいた町で時を過ごす。

白い「私」は、記憶が本当に中途半端らしく、サーヴァントとしても新人のようなものらしい。

後輩属性のサーヴァントは、私も似た境遇だと、励ましている。

 

それなら、この中で一番活躍するのは私か騎士様ってわけね。

せいぜい死なせないよう...頑張りましょう。

 

 

―――――――――

 

 

ジャンヌらと話をしていて、一晩がたったので、そろそろ次の町へ行かなければならないと思い、町を立つ。

俺としてはここでもう少し作戦やら準備やら、いろいろしたかったのだが白いジャンヌは

 

「これは戦争です、気を抜いてはいけません。我々が時間を得るということは、相手にもそれなりの準備をさせる期間を与えるということになります。」

 

だそうです。

なるほど、流石ジャンヌ。それなりどころではなく戦場をかけた、まさに戦場の聖女だ。

 

オルレアンに直接乗り込むのは困難だということで、まずは周辺にある、ラ・シャリテを目指す。

 

「現状のこの戦力で、本当にオルレアンを攻略できるとも思えません。やはり的確な戦略や人材確保は必要でしょう。」

「えらく冷静なんだな。でも、そこまで焦らなくてもいいと思うぞ?」

 

俺はとりあえず、霊脈さえ探せばサーヴァントを呼べるんだ、人材の問題は解決する。

 

ふと、九人の魔女の誰かが口を開く。

 

「お兄さん、あの町の様子、何か変だよ!」

「...本当だ。それにわずかだが、サーヴァントがいた形跡が...」

 

町が燃えている。急いで生存者をと町へ向かった。

 

 

「ドクター、生存者は...」

「...残念だが、その街にはもう誰も...」

 

そんな、と今にも膝から崩れ落ちそうな白いジャンヌ。

まるでこの惨劇を知っていたかのように落ち着いた様子の、しかし額の汗が残るジャンヌオルタ。

何食わぬ顔で動く生ける屍(リビングデッド)

 

「っておい!立香、戦闘準備だ!」

「え、そんないきなり!?」

 

立香は驚きながらもマシュに指示を出す。二人のジャンヌも動き出す。しかし場所が悪い。崩れた建物の瓦礫が足元にある。だからこそ動きづらさがある。

 

モルガンは相変わらずつまらなそうにどこかを見ているし、それ以外の姉妹らはリビングデッドを前にしても

 

「わー、なにこれ!死んでるのに動いてる!」

「ねー!すごくきもーい!」

 

なんだこれ...シンプルにシリアスが壊れている...

 

あー...俺も戦いたい...

 

 

「マスター、終わりました。」

 

アルトリアに呼ばれて、やっと気づいた。

そこまで考えごとをしていた気はしないが...

 

「まて、まだいるぞ!」

「ロマニ、言われなくても目視できた。」

「ワイバーン...!先輩、あれは死体を食べているようです。」

 

なぜ、こんなことに...もっと早くこの町へ来れていれば...

いやまて。相手のサーヴァントの中に、索敵が得意な者がいるのでは?そうでなくとも、英霊同士、居場所の感知はできるのでは?

...してやられた。相手に俺たちの行動は筒抜けということか。

 

「戦闘再開します、マスター、指示を!」

「マシュ、私をそんな頼らないで...」

 

こんな調子でこの先、やっていけるのか...?

 

「アルトリア、ワイバーン食べる?」

「それなりの調理を所望します。生ではとても...食べたい見た目ではありません。」

 

食べたことあるのね...

 

 

ワイバーンは、今回は消滅していないので、とりあえず保存はしておこう。

魔法陣の中に入れて...うん。これでいい。

 

「...これをやったのは、()なのでしょうね。わかります。確信をもって言えます。でも、一つだけわからないことがあります。」

 

どれほど人を憎めば、これほどのことができるのか。

 

ジャンヌからすれば、これは相当な憎悪からくるものらしい。俺はこの程度ではまだまだだと思うんだけど...ジャンヌは優しいんだな。

 

一人、顔を少し暗くする者がいた。

少なくともこの世界の黒い魔女とは違うにしても、同じ()()()()

罪悪感を感じる必要はないと思うのだが...

 

「ジャンヌ?」

「...なんですか?私に聞いても何も...えぇ、何もわかりません。」

 

そうだよな。まだ答えたくはないよな。

...ジャンヌオルタが嘘をついているというのは、なんとなくわかる。

でもどういう嘘かわからない。推測はいくつかしたものの、やはりどれも違うように感じる。

今は詮索するのは避けておこう。

 

「みんな、逃げろ!先ほどまでそこから先を進んでいた複数の魔力が、こちらへ戻ってきている!」

「...いいえ、逃げません。せめて、真意だけでも...!」

「だめだ!戦力的にも無駄だとわかっていることに、君たちを巻き込むことはできない!」

「ロマニ、いざとなれば転移できる、ここはひとつ様子見と行こう。」

 

...向こうから、確かに迫ってきている。これは...まずいな、確かに。

 

 

うん。対話できるくらい近い。むしろもういるもん。

 

...武器を見るに。服装を見るに。ふるまいを見るに。

 

「...聖女に騎士。吸血鬼は二人。名前は...マルタ、シュヴァリエ・デオン、ヴラド・ツェペシュ、もう一人の吸血鬼は...すまない、候補が二つあってわからない。名前を聞いても?」

 

彼女は黙る。ひどいな、答え合わせすらさせてくれないなんて。

 

そして最後にもう一人。嘲るように高笑いをし、白いジャンヌをネズミか何かと思ったと言う彼女。今回の黒幕かとも思える、黒い魔女。

 

黒いジャンヌ。

 

「どうして...この町を襲ったのですか!」

「どうして...?そんなの、私がサーヴァントだからですよ。」

 

サーヴァントだから?

それは理由にしては足りない。

しかし、つぶすという目的においては、最も簡単で、もっともはやい方法だ。合理的である。

 

黒いジャンヌは、質問を返す。

なぜこんな国を、こんな愚者を救おうとしたのか。

 

その言葉で、俺の中でのつじつまはあった。

加えて、カルデアで召喚し、今回連れてきた英霊、ジャンヌオルタ。彼女のクラスが俺にヒントをくれた。

 

「クラス、アヴェンジャー...にしては霊基の規格が違うようだが、それでも。君の目的は復讐だ、違うか?」

 

彼女は驚いた。しかしすぐに笑いだす。

察しの言い馬鹿もいるのね、と。

 

「だってそうでしょう?主の声が聞こえない、ということは、主はこの国に愛想を尽かした。だから滅ぼします。すべての悪しき種を、私が刈り取ります。」

 

このフランスを、沈黙する死者の国にする。

 

彼女の目的は、本当にそこだろうか。それだけで本当に復讐がなされるだろうか。

...だめだ。やはり本人に聞かなければわからない。

でも簡単には、教えないよなぁ...

 

「まぁ、貴女には理解できないでしょうね。いつまでも聖人気取り。憎しみも喜びも見ないふりをして、人間的成長を全くしなくなったお綺麗な聖処女様には!」

「なっ...」

 

それはブーメラン...というわけでもないのか。

英霊とは全盛期で召喚されるんだ。この白いジャンヌと黒いジャンヌの、召喚される全盛期は多少ずれているのかもしれない。白いジャンヌに向けた言葉はどうも、過去に暴行を受けていないというのを前提に感じられる。

...難しいのでこれ以上はやめておこう。

 

「いや、サーヴァントに人間的成長ってどうなんだ?それを言うなら、英霊的霊格アップとか...」

「うるさい蠅ね。あまり耳障りだと殺すわよ?」

 

と、モニター越しのロマニをにらんでいると、コンソールが燃えたらしい。

正直ちょっとざまぁ見ろって思いました。

...にらむだけで呪いを発動できるのか?俺も練習してみようかな。

 

 

「.....あなたは、本当に()なのですか?」

 

白いジャンヌが問う。

その疑問は当然と言えばそうだ。やっぱり、ジャンヌ自体がこういうことをする人間だとは思えない。だから、違和感がある。

 

「呆れた。ここまでわかりやすく演じてあげたのに、まだそんな疑問を持つなんて。」

 

どういうことだ...?

 

彼女は、白いジャンヌの持つ正義感に憤慨していた。そして、残り滓だとも言った。

 

 

「貴方には何の価値もない。ただ過ちを犯すために歴史を再現しようとする、亡霊に他ならない。」

 

そして見切りをつけたのか、周りにいる英霊...バーサーク・ランサー、バーサーク・アサシン。そう呼ぶ二人にこの場を任せるようだ。

 

...だめだ。やはり二人とも、吸血の伝説を持つ。血に飢えているらしい。

 

「みんな待つんだ!紅蓮君が言ったことがもし正しいなら、片方はヴラド三世!ルーマニア最大の英雄で、通称()()()()。とても危険だ!」

 

「――――んなこたわかってるよ。もう片方はカーミラだ。現在各地に残る吸血鬼のほとんどの原型ともいわれている。つまりやばい。」

「先輩、語彙力の低下が著しく見られます。少し落ち着いてください。」

 

それはよくあることだから、あまり気にしないでほしい。

 

しかしまぁ、相手も本気のようで、避けられないようだ...

 

「アルトリア、戦闘開始だ。」

「了解しました、マスター。」

 

ひとまずヴラドに突っ込むようアルトリアに指示を出す。

 

戦闘に関しては本人にあらかた任せる形で行う。多分変に指示してもミスが多くなるからだ。

 

「さーてカーミラ。君はどういう風に戦うのかな...?」

 

これまでの一連のあいだも、向こうは余裕でもあるのか。ずっとにらみ合って喧嘩ばかり。

それにはとうとう呆れたのか黒いジャンヌも、

 

「貴方たちがその怒りを向けるのは向こうの小娘に対してです。間違えないでください」

 

といった。こっちくるのは来るので困るけど...

 

しかしまぁ...マシュ相手になると、いかんせん手を抜いているように見える。

...いや、加減の仕方がわかっていないのか?

 

「...おかしい。年端も行かない小娘のはずなのに、戦闘だけは熟練。こんなの、矛盾しているわ。」

「...デミ・サーヴァントでしょう。人間とサーヴァントが入り混じった異質な存在です。」

 

俺たち一同は驚きを隠せない。なぜ彼女が、デミサーヴァントについて知っている?

 

「そして私の失策でした。あなたたちはほかのものより残忍ですが、お遊びが過ぎる。」

 

そして、ヴラドとカーミラに、撤退の指示を出す。

二人はまだ本気でないと抗議をするが、それでは意味がないと、後ろに回るよう指示を受けていた。

 

後ろの三人に声をかけている。

状況はかなりまずいな。

 

「あわわ、後ろの三騎をけしかけてくる気か!?ど、どうしようどうしよう何かないか何かないか。」

 

お前は猫型ロボットか。

 

「ドクター、落ち着いてください、こちらまでパニックになりそうです。」

 

マシュ...冷静すぎて説得力が...

 

「だ、だけど絶体絶命じゃないか!あわわ、メールメール。こういう時こそネットの力だ!」

 

そういうと、ネットアイドル「マギ☆マリ」の知恵袋にアクセスし、質問メールを送ったようだ。

 

...人理焼却の状況でネットっておかしくないか?

 

「今サーヴァント三騎に襲われています、どうすればいいでしょか、と...うん☆いっぺん死んで生まれ変わればいいとおもうよ?うわぁ...ひどいなネットアイドルは!人の気持ちをまるでわかってない!」

 

だってそれの中身...いや、やめとこう。かわいそうだし。うんうん。

 

 

「―――マスター、一か八か一点突破に賭けます。」

 

その必要は...いや、そうだな。撤退の意味もある。それで行こう...

しかし、なんとも言えない。ワイバーンの数が多すぎて、これの中を通りぬけて行くのはとてもじゃないが...あ。

 

「モルガン!戦闘!」

「先頭の間違いではなくて?」

 

どっちでもいい。だからさっさと前行ってくれ...

 

まさかここにきて、精霊の召喚の意味があるとは。

九人で周りを囲んで、ワイバーンから守ってもらえている。戦闘する必要がないので、走り抜けることは容易だ。このまま進もう。

 

 

 

 

 

......前方に、サーヴァント?

 

「あら、もしかして私の助けはいらなかったかしら?」

「...薔薇?」

 

ガラス細工というものか、そんな薔薇が飛び去って行く。

 

「それでも、わたしが正義の味方としての名乗りを上げる必要はありますね!」

 

そう言って、黒いジャンヌへ向かい、名乗りを上げる。俺たちはいったん立ち止まる方がいいのだろうか...?

 

「貴女が誰かは知っています。貴女の強さ、恐ろしさも知っています。正直に告白してしまうと、今までで一番怖いと震えています。」

 

そうだろうな。完全に少女の見た目してるもん。怖いだろうな。慣れていなきゃそれこそ恐怖一色に違いない。

 

「それでも、貴女がこの国を侵すのなら、わたしはドレスを破ってでも、貴女に戦いを挑みます。なぜならそれは。」

 

すると、デオンと思わしき英霊が、少したじろぐ。

 

これが意味するのは。そして、ドレス。フランスという国への守護心。

なるほど。やはり英霊というのは、面白い。

 

黒いジャンヌは、その動揺を見逃さない。

 

「彼女が何者なのか知っているのですね。答えなさい。」

「...この殺戮の熱に浮かされる精神(ココロ)でもわかる。彼女の美しさは、私の目に焼き付いていますからね。」

 

...だったら彼女という英霊は、確定した。

 

「ヴェルサイユの華と謳われた少女。彼女は―――マリー・アントワネット。」

「マリー・アントワネット王妃!?」

 

マシュが驚愕する。

少女は喜ぶ。

 

「はい!ありがとう、わたしの名前を呼んでくれて!そしてその名前がある限り、どんなに愚かだろうとわたしはわたしの役割を演じます。」

 

堂々とした名乗り。流石はマリーだ。王妃としての器。気品高さ。そこからくるのはうその自信ではなく。真に誇れる自信である。

彼女は、黒いジャンヌへ、質問をする。

 

「わが愛しの国を荒らす竜の魔女さん。無駄でしょうけど質問をしてあげる。貴女はこのわたしの前で、まだ狼藉を働くほど邪悪なのですか?」

 

革命を止められなかった彼女だからこそいえる、あがきのようなものなのだろうか。それとも、自分以上に愚かであると認めることはできないと踏んでの大口か。

 

「...黙りなさい。貴女如きがこの戦いにかかわる権利はありません。」

「あら、どうして?」

 

ジャンヌは答える。

 

宮殿で花のように愛でられ。何もわからず首を断たれた。そんな箱入り娘にはわからないでしょうという。我々の憎しみが、理解できるはずがないとも。

 

しかし、相手が悪かった。

相手は純粋な箱入り娘だ。好奇心旺盛な少女だ。何を言おうが、興味を持って質問をするだろう。

 

「だから余計に貴女を知りたいの、竜の魔女。」

 

...竜...竜...

 

確かジャンヌは、ジルと接触した記録は確かでないにしても、ジルの一方的な妄執があったよな...

加えて、第四次の冬木での聖杯戦争。そのときのキャスターはジル。マスターの名前は...雨生龍之介。いや、ここはさすがに関係ないだろう。

 

にしても、ここまでジャンヌ自身の憎悪を掻き立てるのは、別の存在が必要になるはずだ。そのことも考慮してこれからは行動しよう。

 

マリーは、わからないことをわかるようにするのが流儀だと言っている。

なるほど確かに、道理的だ。

完全にわかりきるまで、その事柄について調べたり、探求したり。そういったことを繰り返すことで、やっと謎は一つ消せる。

そういった積み重ねが人生には必要だろう。

 

「だから今の貴女を見逃せない。ああ、ジャンヌ・ダルク。憧れの聖女!」

 

ジャンヌは戸惑っている。両方...いや三人とも。

 

「今のわたしにわかるのは、貴女はただ八つ当たりしているだけということ。理由は不明。真意も透明。何もかも消息不明だなんて、日曜日にでかける少女のようでしてよ?そんな貴女に向ける礼はありません。わたしはそこの、何もかもわかりやすいジャンヌ・ダルクと共に、意味不明な貴女の心を、その体ごと手に入れるわ!」

「...マリー。それではまるで告白だ。それもとても情熱的な。確認だが、真意はそこでないよな?」

 

ジャンヌは赤面している。白いジャンヌだけだが。

...初心過ぎない?かわいいんだけど。

 

「あ、ご、誤解なさらないで?今のは単に、『王妃として私の足元に跪かせてやる』という意味ですから。」

 

安心した...でいいよな?なんか、王妃にしては強気な、しかし当然と言われたらそうだと言えるような...

 

「茶番はそこまで。いいでしょう、ならば貴女は私の敵です。」

 

そして彼女は、サーヴァントと、ワイバーンをけしかける。

 

前線には盾を持ったマシュと、横に並び応戦するジャンヌ。

 

サーヴァントを相手にしているのはジャンヌオルタとアルトリア。

 

けして善戦しているとは言えないものの、ゆっくりと相手の戦力を減らすことができている。このままいけばこちらは持ちこたえることはできるだろう。

 

「はぁあっ!」

「甘い!」

 

マシュとジャンヌはなかなか...ワイバーンに対して苦戦することは無い様子。

問題は。

 

「これは面白い。まさかそちらに()()()()()ジャンヌがいるとは。」

「...黙りなさい、貴方には関係のないことです。」

 

ジャンヌオルタとヴラド。

そりゃ確かにおかしいよなぁ...魔女と同じ思想のはずの()()()()という存在が、敵対しているんだから。

 

「...!まさかここまで苦戦を強いられるだなんて!」

 

向こうのジャンヌは少し悔しそうに、いう。

 

ふと、マリーが動き出したので、目をやる。そして彼女は口を開いた。まるで国民に安堵を与えるように。

 

「そうですね、語らいはここまでにしましょう。ここは戦場ですもの。ジャンヌ?竜の魔女?貴女は世界の敵でしょう?では、なにはともあれ。貴女が殺した人々への鎮魂が必要不可欠。お待たせしましたアマデウス。あなたらしくウィーンとやっちゃって!」

 

するとアマデウスと呼ばれた人物が、さもずっといましたという感じで出てきて。

魔力を急激に高めだす。

 

...この反応は、宝具!?

 

「―――任せたまえ。宝具「死神のための葬送曲(レクイエム・フォー・デス)

 

これは...敵に対しての重圧(pressure)

 

どうやら相手のサーヴァントらは身動きがとりずらそうだ。それもそうだろう。

 

ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト。

十八世紀の人物で、世界有数の天才作曲家にして演奏家だ。

そして先ほどの宝具。あれはおそらく、生前に死神に依頼され作ったという曲だろう。実際はそんなこと全くなかったというのが調査で分かったらしいが。

 

...多分この曲が宝具として行使されれば、呪いの効果はまず間違いなく存在する。つまり時間稼ぎするにはもってこいってわけだ。

 

いまのうちに撤退しよう。

今は戦力を温存して、次の先頭に備える。その方がきっといいに決まっている。

 

「マシュ!立香をもって走れ!」

「はい!」

「え?ちょ、走れるって!」

 

それでもサーヴァントに追いかけられる可能性があるんだ、人間の足の速さでは問題がある。

 

アルトリアが頻りにこちらを見る。言おうとすることはなんとなくわかるので無視を

 

「マスター、あなたも私につかまってください。」

「嫌です。」

「どうしてですか、今は一刻を争う。判断は早くしてほしい。」

「君どうせお姫様抱っこするでしょ!!!」

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