Fate/Saver The fate~アルトリアが好きな少年が起こす人理修復の旅~   作:空色 輝羅李

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第7話

邪竜を迎撃、撃退をした俺たちは、次の町を目指して移動をする。

 

町にサーヴァントがいるという確信はないので、正しくは魔力反応のある場所への移動である。

 

一つ、除外しなくてはならない問題がある。

 

ジークフリートの傷だ。

 

「...そうだな、これはおそらく呪いの類だろう。」

「私の宝具でも、少ししか癒せないわ。」

 

解呪...洗礼詠唱などできればいいのだが。

こと呪いに関してはなんとも...

 

「みこーん、と参上、できる良妻、玉藻の前。ここにあり!ですわ。」

 

どうして?

いや確かにできるね。呪術の類を操ることは。

 

 

そうじゃねえ!

 

なんでいるの?

 

「そこはほら...愛の力、でしてよ。」

 

そんな胸を張られても。

 

...こいつ、式神を貼りやがったな。いつでも転移できるよう、あらかじめ移動用の式神を用意していたに違いない。

 

「流石旦那様、察しがいいですわ。」

「嬉しくない。それより早く解呪をだな...」

 

もーわかってますよ、と。尻尾を振りながら、術をかけた。

 

玉藻の前。彼女は本来の力を出せない状態にある。理由は九尾のうちの数本の妖力しか持っていないから。

...のはずだが、こいつの尻尾はしっかり九本ある。

本来彼女が英霊として呼ばれるのなら、「月の戦争」での召喚例のように、一本分の力、九分の一の力でなければならない。

 

さて、ここにいる彼女の尻尾は?

1,2,3,4,....9。

 

しっかりそろっている。

 

魔力的に見ても、多分神とか越えてるんじゃない?ってくらい。

 

「お前本当に大丈夫?すぐ裏切らない?」

「...何度も言っているではありませんか。私は、旦那様にすべてを捧げました。あの時のような考えはもう、ありませんゆえ。」

 

...信じていいのだろう。もとより信じる以外選択肢はないけど。

 

「さーて、じゃあそろそろ僕に説明してくれないかな玉藻の前さん!?」

「さてはてなんのことやら♪ところで、解呪が終わりましてよ。」

 

ロマニの質問をかわすお仕事ができる良妻。うん。いつ結婚したのかわかんないけどそれはあとで話し合うとして。

 

「これは...!あぁ、これなら、問題なく()()を使えるだろう。」

 

それはよかった。

しかし、次の問題がある。

多分だけど、嫌な予感がする。

 

「紅蓮君、そちらに二騎のサーヴァント反応だ、十分警戒してくれ。」

 

やっぱりか。できれば戦闘は現時点で避けておきたかったのだが、やむをえない。

 

「でしたら、私にお任せを。」

 

玉藻...お前...何ができるんだ...

 

何やら術式を刻んでいる。四か所に。これは所謂結界か...?

 

「はい、要塞にございます!」

「籠らなくていいんだけど。それと結界だよね...」

 

さて、ここで玉藻の前について復習をば。

 

妖狐である彼女の出生は...出典は封人演義の妲己。彼女自身はこれを否定し、記憶を失い人として転生したアマテラス、と説明をした。

しかしまぁ、日本に記録されている玉藻の前が、傾国のそれに近しいことを行った人物であるのに変わりはない。玉藻の前としての最後は殺生石。彼女を召喚しようと思って使う聖遺物はこれがいいだろう。

重要なのはここからだ。正直出生とかそこまで必要じゃない。要するに、なぜ結界が籠城に向いているか、だ。

出典として、アマテラスの話をした。そのアマテラスは...まあなんだ。日本最初の引きこもりと言って過言でない。

だからこそのこの結界である。本来の彼女の宝具でないにしても、さすがはキャスター。陣地作成をそつなくこなし、ただの()()を宝具にまで至らしめた。

 

「はい、出来上がり、と。」

「...で?これでどうやって対抗するのさ。」

「文字通り、籠城する(引き籠る)のです。」

 

怖い...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

間も無くして、二騎のサーヴァントはやってくる。

 

「これ、は...」

 

片方の英霊は、見た目がわかりやすくバーサーカーしている。うん、間違いなくバーサーカーだな。

もう片方は...なるほど、マリーを見る目で分かった。

 

シャルル=アンリ・サンソン。処刑人一族であり、マリーの処刑を行った人物。

彼自身は、処刑をよく思っておらず、廃止を望んでいた。にも拘わらず、一度は恋仲にあったデュ・バリー夫人をも処刑するという、悲しい人生を送った...悲しいというのは、俺の考え方だから、本当にそう思っていたのかは、わからない。むしろ、悲しいという言葉では表せないかもしれない。

 

「...貴方は。」

「...貴女は。」

 

二人は、昔の恋人にでも出会ったかのように見つめあう。

...踏んだもんな、足。わざとじゃなかったらしいけど。

 

「...特別な運命を感じる。だってそうだろう?処刑人として一人の人間を、二回も殺す運命なんて、この星では僕たちだけだと思うんだ。」

 

そこは激しく同意する。処刑人が英霊になるっていうのも正直おもしろい。

しかし君たちの出会いは必然だったか偶然だったか確認する暇はないのでな...

 

バーサーカーらしきサーヴァントが、こちらへ突撃する。しかし

 

「...arrrrrrrrrrr!!!!」

 

攻撃は虚しく空を切る。ように見えた。

 

しかしあれは、何かを対象に明らかに攻撃をしている。

 

「幻覚を見せているのか...」

 

玉藻はにこりと微笑む。うん、かわいい。

じゃなくて。

 

籠城戦と言った意味がわかる。

天岩戸の前で行われたのは舞。中にいるアマテラスを誘い出すために、ずっと舞を踊っていたのだ。

それを、魔力切れを起こすまでさせる気なのか...?

流石に相手もそこまで馬鹿では...あ。

 

「今のうちにたたくぞ!」

「え、どうして?この中からでるのかしら。」

 

マリーは不思議そうに問うが、モーツァルトが説明したのだろう。攻撃の準備をする。

 

籠城戦は何も、全員に対してではなかったということか。

バーサーカーはどう考えても危険だし、もとより相手のサーヴァントは狂化が施されている。二体同時に相手するのはたしかに骨が折れる。

でも、一体だけならまだ、可能性は高い。

 

...いける。この結界の効果もあってか、魔術はいつもより調子がいい。

 

投影、開始(トレース・オン)

「やるというんだな、この僕と!」

「マスター、貴方はなぜそこまで戦闘を...いえ、聞かないのはわかっています。なので私も行きましょう。」

 

余剰戦力だな...ごめんよサンソン。今はあっけなく散れ。

 

 

「...Arrrrrrrrrrrthurrrrrrrr!!!!」

「まさか、私の幻視の術を!?」

 

どういうことだ...九尾としての本領を持つ玉藻の呪術を跳ね除けたとでもいうのか!

 

「キャスターが二人もいるのに、結界が崩れた!これはまずい...!」

「何を悠長に語っているクズ人間!このままでは僕たちに圧倒させてしまうぞ!」

 

サンソンの言うとおりだ...バーサーカー一人だけの力で、結界を破られた。それも、キャスターが二人いたのにだ。

...非常にまずい。

 

ジークフリートは竜殺し(ドラゴンスレイヤー)。竜種に対してのカウンターだ、今は荷物でなくとも頼りにはできない。

マリーはそもそも戦闘向きでない。サンソンに対しても戦いきれるかどうか...!

モーツァルトは音楽家、もしろ一番荷物かもしれない。

玉藻は近接戦闘に持ち込まれたら何もできない。せめて距離を稼がなければ...

アルトリアは、あのバーサーカーに見覚えがあるようだ。

 

...そうか、ランスロット...ランスロット!?

 

「はい、彼は間違いなくランスロット卿です。第四次の聖杯戦争にて、彼と戦闘になったことがあります。彼がああなったのには...私に責任があります。」

 

否定したいところだが、それは彼女の騎士としての心を貶すことになってしまうから、黙っておこう。

さて、相手が誰かわかれば対策なんてどうということは無い。ようは触れさせなければいい相手と、触れればいい相手だ。

 

「だったらこうしよう、アルトリアと俺でバーサーカーを止める。ジークフリートとマリーは、サンソンを相手になんとかやってくれ。玉藻はできるだけ後方支援できるよう位置取りを、モーツァルトは...うん。」

「扱いが僕だけひどくないかな。」

 

マリーだってサンソンだって仕方ないって言ってるしいいだろ。

 

そんなわけで各々が走る。どれほど戦闘の苦手なマリーでも、少なからずサーヴァントとしての戦闘能力はあるんだというのがはっきりわかる。何せなんの魔術も使っていなければ、目視できない。

この目があって本当によかったと思う。魔力を流すだけで魔術を使えるというのが便利すぎて...

 

「Arrrrrrrrrrrrr!!!!」

「っと、あぶねえな!もう少しで半身スライスだったわ!」

「マスター、考え事は後にしてもらいたい。相手は狂乱状態だとしてもランスロット卿です、しっかりと彼の動きを見ることだ。」

 

肝に銘じよう。いくら剣道をしていたとしても、実戦経験はあまりないのだから、できうる限りの警戒は必要だ。

 

音速を超える英霊との戦闘は、肉体に対しての負荷が大きい。最大限の魔術の行使をもってしても、肉体疲労を誤魔化していても、とても疲れる。まして相手は狂戦士(バーサーカー)。後のことを考えず振り回すその剣は、一つ一つが鈍撃だ。

狙いが甘くとも当たるのはまずい。だからよけることに徹しているが、それではジリ貧だ、いつかのタイミングで有効打をいれなければ勝つことはできない。

 

...しかし、アルトリアの宝具が、向いていない。

 

簡単に言えば全体に対しての攻撃だが、この様に一対一の状況であれば、エクスカリバーではだめだ、もっと...簡単に詠唱ができて、かつ即攻撃できるものが...

 

「Arrrrrrrthurrrrrrrrrrr!!!」

「しま...!」

 

もうだめだ。目の前にランスロットの剣が迫り、よけきれない...!

 

「マスター!」

 

グサリ、と。艶やかな血しぶきと共に音がする。

目の前には、血だらけで、膝から崩れ落ちたアルトリアがいた。

 

「...ふ、ぅ。グレン、無事、ですね...それ、は、よかった。」

 

どうして?俺なら別に魔術で、そう簡単に切れないほど強化している。切れたとしてもかすり傷で済んだ。だというのに。

 

「それでも...貴方を、傷つけたくは...無かったのです。」

 

そうか。ありがとう。

 

でもね...それは俺もだったんだぜ?

 

「...ランスロット、覚悟するんだな...!」

 

 

――――――――

 

 

...いけません。迂闊に放置をしすぎてしまいました。

騎士王が傷を負うだけで、旦那様がここまで発狂するとは...正直、私の想定外でしたわ。

 

しかし、相手はかくもバーサーカー。それを相手に押し勝つなぞ...信念()とは怖いものですね。

ですが、私はこの光景を知っています。何度も見たのだから。それをなぜ、繰り返してしまったのか。己の不甲斐なさで今すぐ退去してしまいたいくらいです。

 

そうでした。今すぐにでも騎士王を治療しなくては...

 

「...私のことはいい、玉藻の前。早くグレンを...あのままではよくない...」

「そんなこと、百も承知ですわ。でも、今の状態でしたら、貴方でなければ止めることはできません。」

「...まるで知っているような言い方ですね。もしかして貴方も...」

 

騎士王の言葉はどこか引っ掛かりますが、そこはそれ。今は旦那様のための行動を優先しましょう。

 

「...さぁ、行ってください。」

「...感謝します。」

 

...まったく。世話の焼ける旦那様ですね。

 

――――――――

 

玉藻の前に傷の治療を施してもらった。それはいい。何なら感謝をする。

しかしだ。グレンという人は...私の記憶に全く相違ない人物なのがとても嬉しい反面、悔しい。

それでも、何を言ったところで変わらないのは承知でも、言わなければならない。

 

「マスター、無茶をするな!」

「...心配するな、今落ち着いたよ。」

 

彼は返事をし、笑顔で振り返った。

完全に無防備な背中を見過ごすほど発狂しているわけもないランスロット卿が、グレン目掛け剣をふるった。

 

「Arrrrrrrrr!!」

「サー・ランスロットよ。貴様の宝具は「触れたものを自分の宝具にする」といったものだったな。しかしだ...そんな魔術、とっくにこの右腕に刻まれてるんだ。」

 

ランスロットの振り下ろした剣を、右手で受け止める。

 

右手からは鮮血が流れるが、しかし指はちぎれず、顔はいまだ笑顔で、剣を奪った...いや、()()()()()

 

それの意味を察したのか、急いで飛び退き、兵士の死体から剣を取る。

...バーサーカーとして現界したランスロット卿は、手にしたものを全て己の宝具にする。その能力を遺憾なく発揮し、その剣をも宝具にした。

 

そして、ありったけの魔力放出と共に突進で距離を詰める。

 

「ふっふっふ、私のことをお忘れですか?」

 

既の所で、玉藻の前が術を行使した。

今のランスロット卿が有する対魔力では、到底無効化できない。つまり、身動きがとれていないのだ。

 

「...最果てまで輝け。湖上の精霊の加護よ。無毀なる湖光(アロンダイト)

「Arrrrr...thurrrr....」

 

...真名を開放しなくとも、本来の輝きを用いることができるのはなんともいえないが、やはり彼は素晴らしい。

...せめてやすらかに眠るがいい、サー・ランスロット。

 

と、彼を遠くから見ているだけではよくない。きちんと言うべきことを言わなくては...

 

「グレン。お疲れ様でした。」

「...ありがとう、アルトリア。やっぱりこれはダメだね...サーヴァントの持ち物を使っても馴染まなかった...最初から投影した()()()ですればよかったよ。」

 

全く、こちらの心配を余所に、あろうことか()()()の方が使いやすいと言う。

グレンらしいといえばそうだが。

 

「しかし、安心してはいけない、サンソンの方が...」

「あら、グレン?もうこちらは終わりましたよ!」

 

フランスの王妃は、とても可憐な笑顔で申された。

 

――――――――

 

正直、ランスロットの宝具を使うことになるとは思わなかったが、案外いけるものだな。魔術刻印をしっかり確認しておいてよかった。

 

...なんでこんな魔術があったのかはわからなかったが。

 

近くに兵士の死体があった。これらはおそらく、サンソンとランスロットの仕業ではない。

つまり、もう一人倒さねばならないサーヴァントがいる。

 

「よく気づいたわね、坊や。」

「嫌でも血の匂いには敏感でな。」

 

本当は彼女とは思わなかったけど。

 

...さて、できれば今のうちに仕留めておきたい。残しておいて得するわけがないから。

 

「あらあら、ふふふ。私と勝負しようというのかしら、坊や。」

「勝負はしない。それでも戦いに勝つ。」

 

玉藻を見る。

良妻なら俺の意図を汲み取れるだろうな...って本当に伝わっても怖いわけだが。

 

一応彼女は頷いた。おそらく俺のすることはわかったろうし、合わせることもできるはずだ。

 

...吸血鬼に対して真っ向勝負を挑んでも意味がない。直接攻撃しようにも、サーヴァントとして伝承がより強固なものとして、肉体に傷をつけることはまず不可能だろう。

だとすれば、浄化すればいい。

サーヴァントならば強制退去なるものがある。

 

ほら、冬木の特異点でもクーフーリンがそれを受けていただろう?それと同じことをすればいい。そして対象は吸血鬼、だから浄化だ。

 

「玉藻!」

「お任せあれ!」

 

うん、思った通り、カーミラの身動きを封じてくれた。

彼女は微動だにしない自身の体に戸惑いを隠せていない。

 

今までの戦闘で分かったことは総じて一つ。サーヴァントに宝具を使わせる前に倒す。

これができれば俺でも勝てる。身体が宝具に関する場合は...うん!

 

「素に銀と鉄。礎に石と契約の大公。

 降り立つ風には壁を。

 八方の門は開き、王冠より出で、王国に至る三叉路は逆流せよ。

 

 開け(枯らせ)開け(枯らせ)開け(枯らせ)開け(枯らせ)開け(枯らせ)

 繰り返す都度に五度。

 ただ、欠けたる刻を拾得する。

 ――――告げる。

 汝の身は無きものに、汝の行く末は座の元へ。

 聖杯なぞ取るに足らぬ。この意、この理はわが意思の物。

 

 誓いを何処へ。

 我は常世総ての善と成る者。

 我は常世総ての悪を敷く者。

 

 汝三大の言霊を纏う七天、

 抑止の輪へと帰れ、天秤の外の者。」

 

駄目だ疲れた...本当はメディアの宝具でも使いたかったけど...契約しなおさなきゃいけないからやめておいた。

しかしこの詠唱も、高速でしても二秒かかった。

 

「...いえ、二秒でもすごいと思うのです、この良妻は。」

「そうだろうか。」

「当たり前だろう!?自分の契約下にないサーヴァントを、強制退去させるほどの魔術だぞ...普通ならそもそも詠唱しても発動できないし、できたとしても大量の触媒が必要だし、術式の補助有りにしても時間がかかるんだからね!?」

 

まぁ否定はしない。むしろ自分が一番驚いている。

なぜ成功したのかわからないし、この詠唱は今まで知らなかった。なのに、こうすればいいのではと思いついた瞬間に、詠唱が頭に浮かんだ。

...今はまだ考えるべき時期ではなさそうだ。

 

「ひとまず、進もう。ジルはガン無視の方向で。」

「それでいいのかしら...」

「かまわない。あの町には後で、支援の要求のためによろうと思うからね。」

 

さて...この先にいるサーヴァントが、どんな伝承を持っているのかとても楽しみだ...

 

「僕が少し考えたところでは、もし聖杯の持ち主が竜の魔女だったとしたら、そのカウンターとして聖女が召喚されているはずだ。」

「なるほど。聖女の候補はたくさんあるが、敵側にマルタがいたし、彼女は除外できるな。」

「...彼女は敵だったのか。」

「一応な。でも...うん、立香たちが倒したみたいだ。」

「そうか...彼女には助けてもらった恩があったので、感謝をしたかったのだが。」

「...っと、話の途中だがワンダリングモンスターだ!...失敬、だが、敵の反応がする。気を付けてくれ。」

 

ロマニの、少しユニークな一面だな。

少しで済んでないけど。

 

...まったく、いくらワイバーンを狩れば終わるんだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらくの間は、進んではワイバーン、進んではワイバーンの繰り返しだったが、そのワイバーンも見えなくなり、まともな雑談をしながら歩くことができた。

 

「そういえば、モーツァルトはマリーに、告白したんだよな?」

「その話を今するかなぁ!?」

「まぁ紅蓮。貴方も知っていたのね!」

「かなり有名な話だよね。でも、日本でもその話を聞いていたのかい?」

「いや、興味が湧いた人物に関しては、それこそ資料すべてに穴が開くほど調べなければ、気が済まなかったんだ。」

「知的探求心にあふれていたんだね、君は。」

「えぇ、そうよ。彼が六歳で、私が七歳のころ、転んだ彼に手を差し伸べたら、キラキラした目で私を見つめて、『ありがとう、素敵な人。僕はアマデウスと言います。もし、貴女のように美しい人に結婚の約束がないのなら、僕が最初でよろしいですか?』そう言ってくれたの!あんなにときめいたのは、生まれて初めてだったわ!」

「まさか後世にまで伝わっているとは...悪夢だ...」

「うふふ、それはそうでしょうとも。わたし、嬉しくって嬉しくって方々に広めたんだもの!」

「君のせいか!君のせいだったのか!断ったクセに、なんて魔性の女なんだ!」

「それは仕方ないわ。だってわたし、婚約相手は自分では決められなかったのだし。」

「それに... 」

「それに? 」

「その後のわたしの人生を知っているでしょう?わたしはあれで良かったの。断って良かったの。 だから貴方は音楽家として多くの人に愛される事になった。だからわたしは愚かな王妃として命を終えた。しょうがないの。しょうがないじゃない。だってわたし、いつだって恋に夢中なんだもの。わたしはきっとフランスという国に恋をしていたのね。人々を愛さず、国そのものしか愛さなかった。そんな風に思い上がった女だから、最期はあんなふうに、国民たちの手で終わったのよ。」

「...マリー。それは違う。違うよ。」

「あら、何が違うのかしら、紅蓮?」

「...君がフランスを愛したんじゃない。フランスが君を愛したんだ。」

 

彼女は、嬉しそうに微笑んだ。

それでも、疑問に思うことはあるらしい。

なら自分は、愛された()に殺されたのか。

 

「人間とはそういうものだ。愛情とは簡単に憎しみに切り替わる。君は愛されたからこそ、人々に憎まれたんだよ。」

 

モーツァルトの語ることに、俺は同意した。

...愛も、憎しみも。相手への関心だ。関心がなければ生まれない感情だ。

だからこそ民衆は愛し、憎んだ。

 

一つ気になることができた。これは、英霊である彼に出会わなければできない疑問であり質問だ。

 

「お前はまだ、マリーのことが好きなのか?」

「まさか。彼女に向ける情熱はもうない。彼女は僕の運命にとって、特別な分岐だっただけさ。...そうだな。もし僕にまっとうな人生があったのなら、その分岐はあのプロポーズだ。君たちの言う人類史の礎石と同じだよ。ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトという男は、どんな選択をしようとこうなるだろう。たとえ何があろうとも。どんな恋人に出会い、どんな友人を得て、どんな幸福を掴もうとも。 僕はこんなふうに音楽に身を捧げて、人間としての徳をすべて切り捨てるクズになった。でも、ただひとつ。そんな僕の運命をもし変える人間がいたのなら、それは彼女だったのでは、とも思うんだ。」

 

「それはもはや、愛の告白だな。」

 

その言葉を気に、場の雰囲気は一転した。アルトリアは過去のことを思い出しながらくらい顔に。ジークフリートはなんと表現していいのかわからない顔に。玉藻の前は体をくねらせて「もちろん私は旦那様を愛しておりますとも...」と言っている。マリーは少し嬉しそうに頬を赤く染め、体をくねらせる。

 

照れる表現は体をくねらせる以外にないのか?

 

...ま、こいつらがこれからどうなろうと、俺としちゃあ...当人らが幸せで、周りもそれを祝福できる状況ならいいのではと思う。

 

「...すまない...君たちがいま素晴らしい話をしているのは理解できる。できるのだが...敵がやってきたようだ。すまない...空気を読めない男で、本当にすまない...」

 

フォウが励ますようにすり寄っている。いいやつだなお前。

 

「―――はっ!僕の役割をジークフリートに奪われてしまった!でもボクが放心しちゃった気持ちもわかってほしい。ほら。同じタイプだと思っていたダメ人間がですよ、実は深い人生観を持ってる偉人だったらそりゃ驚くよね?」

「んー、そこは安心していいよドクター。僕も貴方にはシンパシー感じてるから。基本、人間的...というか、ひとりの成人としてろくでなしでしょ、僕たちって。」

「うん、ありがとうアマデウス!こんなに嬉しくない慰めは初めてだ!」

 

そんなことより一人でワイバーン蹴散らしてせめての罪滅ぼしをと奮闘してるジークフリートの手助けしてあげて?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦闘が終了し、ロマニにサーヴァントのいる街を探させることにした。最初からこうすればよかったのかもしれない。

 

...ティエールという町にどうやら、二騎の魔力があるらしい。それが味方であることを祈ろう。

 

その方向へ進行を進めていると、何やら吹き荒れる火と、最悪な音楽が聞こえる。

 

 

「このっ!この、この、このっ!ナマイキ!なのよ!極東の!ド田舎リスが!」

「うふふふふ。生意気なのはさて、どちらでしょう。出来損ないが真の竜であるこのわたくしに、勝てるとお思いで。エリザベートさん?」

 

...エリザベートと、一緒にいる少女。

つまるところ、二人の少女が喧嘩をしていた。

 

エリザベートももう片方の少女も、一応カルデアにいるので、問題なく認知できる。

 

もう一人の少女は清姫。たった一つの、されど大きな(憎悪)で、竜へと変化した。

 

「聖人ではないな...」

 

とにかくこれ以上喧嘩がヒートアップしないよう止めに入る。

 

二人を引きはがすので体力を使うなんて...できれば一切喧嘩しないでいただきたい。

 

「二人とも、喧嘩をやめろ。」

「何か言ったかしら子犬。」

「無謀と勇気は違いますわよ、猪武者ですか?」

「...へぇ。」

 

()()()の苦手なものはなんだったかな...?

 

「はぁ...まったく。そろそろやめてはどうですか?清姫さん。」

「貴女は...!」

 

なんだ?同じ日本の英霊だから知り合いなのか...?

これで喧嘩が終わるならもうなんでもいい。

今のうちにエリザベートを嗜めておこう。

 

「突然押し掛ける形になってすまない。俺は太公望」

「えぇ知ってるわ、カルデアのマスター、紅蓮。貴方が言いたいこともわかっているの。もちろん協力してあげる。でも、一つ条件があるの。」

 

なんでさ。

 

条件とは言われても...答えれる内容であることを祈ろう。

 

「カーミラを倒しなさい。」

「もうすでに終わったんだよなぁ...」

「なんですって!?」

 

彼女はまさに、目をひん剥いて驚いていた。

して、この様子なら清姫の方も...

 

「えぇ、もちろんお供いたします、安珍様。」

「俺は安珍ではない。二度と間違えるな。」

 

清姫ははっと目を見開き、勘違いに気づく。

 

そんなわけで...どういうわけかはわかりたくないが。見方を得たことだし、そろそろ次のサーヴァントを探しに行こう。

 

「あら、それなら心当たりがあるわ。」

「そうですね、確か...ゲオルギウス、でしたか。」

 

...聖ジョージ?まじか。

一応竜の退治に関する伝説もあるし、聖人だし...なるほど。

 

「どこにいるかわかるか?」

「残念、私たちとは逆の、西側にいます。」

「よし、走ろう。」

 

全員が嫌がったが、ライダーであるマリーだけは、快く引き受けてくれた。

 

マリーの出す馬の上に乗る。乗馬自体が初めてだし、女性の後ろに座るのは...

 

「早く捕まらないと落ちるわよ?」

「ん、あぁ...」

 

落ちたくないのでちゃんとつかまります...

 

「マリー、できるだけ急いでくれ。嫌な予感がする。二つも。」

「えぇ、最初からそのつもりよ!」

 

この場にいると危険が山ほどあるがそれだけじゃない。

向こうも...危ういかもしれない。

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