ある世界で一人の男が死んだ。それは不慮の災難、偶然が重なり起こった出来事。彼はただ自分が死んだことさえ気づかず命を落とした。
しかし世界は変わらず進んでいく、彼が亡くなったことなどは歴史の波に簡単に攫われ次第に忘れられていった。
次元の狭間に魂がポツンと一つ。新生か輪廻の輪から外れたのか、神の権外で魂はアタフタしている。その魂の癖して人間らしい動きをする『それ』は見る人全てが滑稽と感じるであろう。
突然のこと、『それ』は苦しみ始める。その苦しみを例えるなら、麻酔なしで臓器を抉り取るようで、全身から出される絶叫が次元に木霊した。空間が軋み、一つの球体に罅を作り出す。
絶叫と共にゆっくりと段々と魂の形が変化していく。絶叫が叫喚へと変わる。
そして永遠とも言える時間が流れ、球体には小さな割れ目が出来、魂は隙間へと吸い込まれていき、狭間には静寂のみが残ったのだった。
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吾輩はカラスである。名前はまだ無い。
どこで生まれたかとんと見当がつかぬ。わけではない。俺はちゃんとした世間で言う一般家庭に生まれたカラスだ。まぁある程度育てられて捨てられたが。
え?何故かってそりゃ俺が異端だからだよ、バカじゃあねぇから理由くらいすぐ出てくる。俺には所謂前世の記憶がある。人間っての頃の記憶のな。カラスは知っての通り鳥類の中でも最も知能が発達してる鳥だ。だが所詮鳥である、人間と比べれば大した知能は持ち合わせていない。精々小学校低学年、6〜8歳程度だ。そう小学校低学年レベルなのである、全てのカラスが。
つまり「いけない」なんて注意する人間、いやカラスがいないもんだから、善悪についての理解・判断なんてもってのほか。そりゃ周りと比べて精神も身体も違ったらいじめてくれと言っているもんだ。
うん?身体も違うってどうゆうことだって?
聞いて驚くなよ。俺の身体はな……
足が三本あるんだよ‼︎
もうちょっと溜めてから言えって?カッコいいからいいじゃないかって?違うんだよな〜。
前者は俺が悪かったとして、問題は後者の方だよ、後者。確かに足が三本ある烏って八咫烏みたいでカッコいいかもしれない。でもな、よく考えてみろ、足三本だぞ、これで歩けると思ってんのか。歩ける訳ないだろ、こちとら人間様の身体で42年間二本足で歩いて来たんだぞ。
無理があるだろ、いくらなんでも。
いやまぁもう歩けるけど…………
ま、待てよ、悪かったってさっきまで散々歩けないって言ってた割にこの態度はなかった。
申し訳ない。だけどよ、歩けなかったら死ぬんだぜ。考えてもみろよ自分より一回り大きな奴が俺を凄い形相で追いかけてくるんだぜ?
そりゃ死ぬ気で歩けるようにしたし、飛べるように訓練した。
そりゃカラス両親を恨むかと言われれば勿論恨む。でもな、一応こんな俺でも子供として育ててくれたんだ多少の感謝の心はある。巣立ちが同年代のクソガキどもよりも少し早くなっただけだし。今ではちゃんとカラスっぽい鳴き声も出せるようになったし、他のカラスなんぞに負ける玉じゃあ無くなった。
ちなみに最近の俺のマイブームは襲ってきたカラスの一匹を生捕にして見せしめにしてやることだ。近頃は何かとケチつけて襲ってくる奴が多い。倫理観なんてもうとっくに吹き飛んだから、こんなことしても大したことはない。昔は色々大変だったがな。
さて、今日も飯でも食いに行くか。あの男の反応が楽しみだぜ、ケケケ。
主人公の種はハシボソガラスという留鳥です。
日本にいるカラスは大きく分けて主人公のハシボソガラスとハシブトガラスの二種。
以下それぞれの特徴
♦︎ハシボソガラス
・畑、河川敷、公園などの広くて平面的な場所にいることが多い
・地上を歩いて活動することが多い
・田舎に近い環境を好む
・「ガァー」とガラガラ声で鳴く
・足を交互に出して二足で歩く
・学習能力が高い
例)クルミ、貝などの固いものを空中から落として割って食べる。
・農村部で農業害鳥として扱われる
♦︎ハシブトガラス
・山や森、ビル街などの立体的な環境にいることが多い
・高い場所から周囲を眺めて餌を探す
・ほとんどの時間、木や電柱の上にいる
・都会に近い環境を好む
・ごみを散らかす
尚大きさは
ハシブトガラス>ハシボソガラス
カラス対策はどちらも一般的な同じ方法で問題ないです
追記
本来輪廻こと輪廻転生は煩悩を断ち切り六道輪廻からはずれ生涯極楽で生きることらしいです。ここでは生まれ変わりの輪から外れたと解釈して頂くと幸いです。