カラス何故泣くの   作:一般人A

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何処かの本で見た内容ですが、カラスの漢字は『烏』と書き、『鳥』の字とは横棒一本異なる。これをやや飛躍して考えると、カラスは鳥の中で低く捉えられている存在とのこと。
実際のところ『烏』の成り立ちってどうなんでしょうかね。


三本足と傷

 ここにカラスが二羽いるだろ?そしておせっせするだろ?そしてなんだかんだあって三本足カラスの俺が生まれたってわけ。

 いろんな過程吹っ飛ばしすぎっていうんじゃないよ。これが一番簡潔だからさ。

 

 

 

 てなわけで生まれてから約三週間が経過した。今ではもう目ぱっちり。

 自分がカラスだということに気づいたのは今から約一週間前よ、あの頃はまだ目がぱっちりじゃなくて周りがボケて見えてた。でもわかるのよ目が開いてきて色々と、まず目に入ったのは黒色の羽毛。

もうこの時点で気づいたよねカラスって。だってカラスだよあんな黒い鳥カラス以外俺知らないし、何より鳴き声が「ガァー、ガァー」で、もうカラスなんだもん。それしかないじゃん。

 俺はもうそれはビックリしたね、食べてた昆虫が口の中からポロッと落ちるぐらいにはね。

両親がカラスだったらそりゃ俺もカラスだよ。 

まぁ俺はアイツらのこと親だなんて思ってないけど。

 

 

 周りの兄弟が歩く中で、俺だけ一羽歩けないからって俺のこと無視するか普通?俺の人間の頃の常識が混じってるからおかしいんだろうけど俺だけ残して巣に戻るのは流石に育児放棄でアウトだろって、俺だけ対応が明らかに違うだろって、あの時は思ってたんだよな。

 まぁでも今ならわかる、俺気持ち悪いもんな。周りと違って三本足でさ。俺と違ってアイツらは元人間でもなんでもない純粋なカラス。

人間みたいに善悪なんて関係ないし、倫理観なんてのは存在しない。ただ生きるためならなんだってやるからなぁ。

 

 

 

 

 

 【悲報】ワイ見捨てられる

テンポ早くね?いやいやわかるよ?みんなが俺に対して排他的だし、俺のこと突っついてきてたしさ、わかるけども。何、もう巣立ちしろってことかよ。絶対に捕食されるちまうよ、鳴き声も上手くあげられないから襲われた時助けも呼べないし、死ぬわ‼︎

 助かった点はこのカラスの身体が予想以上にハイスペックだったってことだな。同年代の奴らと違って既に飛行可能だし、少し不慣れだけど餌取りも出来る。少なくとも飢え死にはないと考えて良いだろう。まぁ、それがいじめられた原因の一つでもあるんだけどね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 見捨てられて一日目。

 見捨てられた俺はまず水分確保に動いた。人間と同じくこの身体も水分を必要とする。それに人間よりも早いペースで喉が渇くから、水分確保は長く生きるための必須条件だった。

 しかしここからが大変だった。俺が見捨てられる前にいた縄張りは、川が近くにあって直ぐに水分補給することができる場所だったから、

俺は縄張りに入らない程度の場所に居を構えようとした。俺は今や群れから追放された身だから、縄張りに近づいたら攻撃されると思ったからな。

 でもアイツら俺を見かけると躊躇なく攻撃してきやがった。縄張り入ってないじゃんとか、これまで一緒に暮らした仲だったじゃんとか色々文句はあったが、このまま多勢に無勢を強いられれば溜まったもんじゃないので俺は逃走した。絶対いつか復讐してやる。

 

 

 見捨てられて三日目

 俺は襲ってくる元同郷の野郎どもから命からがら逃げて、遂に理想郷を見つけた。運良く此処にはカラスの縄張りはなかったから、俺は此処を拠点とした。難点は蜘蛛の巣が多くて視界が悪くなることだ。

 本来カラスは家族か群れで行動する生物、いつ此処に他のカラスが来るかわからない。俺は今一匹狼だから、この理想郷もいつか崩壊する危険性を孕んでいるから長居はできない。

 特に同郷の連中がもうしばらくしたら一斉に巣立つ。此処はアイツらの縄張りから離れてはいるけど来る可能性の方が高いだろうな……

 

 

 

 

 

 

 

 薄暗い雲が太陽光を遮り、森には生暖かい風が吹いている。風によって擦れた葉がガサガサと音を鳴らす。空気はどんよりとしていた。

 俺はもう死ぬかもしれん。真面目にヤバい。

死の恐怖っていうのはこうゆう事を言うと身をもって教えられた。

 

 突然だがおまいらはカラスの天敵って知ってるか?正解は猛禽類。猛禽類は獲物を確実に仕留める為にその体を進化させた鳥のことだ。鋭い爪と嘴が特徴的で、強くて丈夫な足をもってる。なんでこの話を今してるかって?わかるだろ、ソイツに今追われてんだよ。

 俺を追ってんのは猛禽類のオオタカってやつだ。オオタカのヤバさを知らないお前たちの為に俺が教えてやるよ、今なら余裕あるしな。

 

 

 

 オオタカは所謂頂点捕食者、食物連鎖の頂点に君臨する王。大きさは同じタカ科のトビよりも一回りは小さくて、カラスと同程度の大きさだ。でもなんといってもその恐ろしさはその飛行速度、飛行時で時速80km、急降下時には時速130kmに達する。俺達カラスは出せて60kmが限界。今はなんとかこのハイスペックボディで逃げ切れているが、オオタカっていう種は一度狙いをつけた獲物は執拗に追い続ける。ついでに言うなら、アイツらの狩は一日に一度。

 速さ的に逃げ切ることはできない。見たところ俺より年上、狩り等の経験の差もある。だから俺は戦うしかない。

 

 

 

 

 俺は今まで心の中で『俺には関係ない』って思っていた。俺の精神は人間で、でも身体はカラス。あまり現実味が無くて、まるでそのカラスの目を通してリアルな映像を見ている気分だった。家族から見捨てられてもあまり辛くなかったのは俺が観客席に座っていたからで、自分を自分と思っていなかったから。だけど死の恐怖を間に受けてやっとわかった。

 俺はまた死にたくない。このカラスの身体になって仕事から解放されて、まだまだ俺は生きたりない。アイツらへの復讐のためにも俺の自由のためにも、俺は抗ってやる。俺はカラス、三本足のカラス。

 

 俺はそう自分に聞かせ、俺を狙うオオタカに目を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

ーー

ーーー

ーーーーー

 私は生まれながらにして王の中の王である。

父母や仲間は私を敬った、何故なら私が強いからだ。周りのものよりも素早く獲物を仕留め、

弱き仲間達に与える。仲間は「何故、捕らえた獲物を他の仲間にやるのか」と問うてきたが、

それは私にとって愚問であった。

 『弱き者共に情けをかけずして何が王か』

それを聞いた仲間は驚いていた。私の考えは今までにない考えだったらしい。

 

 私が先代の王を倒したのは、その力による支配が気に入らなかったわけではない、支配による群れの統一よりも情けによる統一の方が後々に現れるであろう王の素質を持つ者への対抗手段と成り得る。民を味方につけない王は王である素質がないと判断しただけだ。ただ強き者が王になったところでその群れはいずれ瓦解する。私は民に情けをかけたのみだ。

 

 

 

 

 

 その日私は不思議な獲物を見つけた。カラスはカラスでも三本足だったのだ。私はカラスが好きだが、仲間は狙おうとはしない。何故なら奴らはその小さな嘴で抵抗し、殺すのに時間がかかるため、効率が悪いのだ。そして味は少しばかり癖があるためあまり皆狙おうとしないのだ。私的にはその癖がたまらなく良いのだが、これには皆共感しない。

 

(カラスなど暫く口にしていなかったな……

 狙うか。)

 

 

 私は今日の獲物であるカラスに目を定めた。

三本足というのが美味しいのかは知らないが、食べないことには始まらないからな。

 

 

 

 

(奴、中々逃げ足が早いな……)

 

 まだ幼い身体付きをしていたため直ぐに捕らえられるとたかを括っていたが、反省しなければないな。彼奴を見失ってしまったが、今日の獲物は奴と決めたのだ、確実に仕留める。

 おそらく木々の隙間に隠れているのだろう。

彼は思考を止めずに上空へと飛び、見下ろす。

 

(隙間から飛び出した瞬間急降下して仕留めてくれようぞ)

 

 

 それから暫くたち奴が出てきた。私は思考を止め、三本足へと急降下する。

 

 時速130kmの速さで降下する彼は戦闘機さながらである。

 

 途中奴が私を誘っている可能性も考えたが、それはないだろう。幼い身体から見ても戦闘経験はないはず、逃げることが出来でも闘いにおいては攻撃できなければ意味がない。

 

 奴が逃げた。私に気づいたか、それとも誘っているのかわからんが、私の選択は一つのみ。

追うという選択肢のみよ。

 

 

 やはり奴は逃げるのが上手い。慢心していると逃げ切られてしまうな。奴を良く見ておかなければ。

 

 まだカラスらしくない灰色がかった羽根が宙を舞う。

 

 この時私はミスをしていた、それは奴に集中しすぎて周りが見えていなかったこと、普段はしないミスを私は犯した。

 それは三本足が木々の隙間を通り抜け、私の動きに迷いを生じさせようとしていた時のこと。突如私の視界に不具合が生じ、飛行スピードが落ちた。

 

(このなんとも言えないベトベト感は、蜘蛛の巣か…‼︎)

 

 この日は生憎太陽が照らしておらず、普段は蜘蛛の巣に反射するはずの光がなかったためこのような事態が起こった。彼は体制を立て直すため横回転(ドリル回転)を行う。しかし……

体制を立て直すとそこには横太の大木があった。

 

(まずい、ぶつかるッッ)

 

 彼はなんとか避けようとするが抵抗虚しく彼は大木にぶつかった。

 

 

 

ーーーーー

ーーー

ーー

 作戦は大成功だった。相手が誘いに乗ってくれるかが問題ではあったが、成功してしまえばもう関係ない。あとは撹乱させて蜘蛛の巣に突っ込んでいただくだけだったから楽勝。初めての戦闘は俺の勝利に終わった。

 

 

俺は今でも後悔しているあの時調子に乗らなければと、意味のないくだらないプライドなんて捨てて逃げ帰ってしまえばよかったと。

 

 

 

 俺は思った。これ久しぶりに肉くれるんじゃねえかと。今までのカラス生では虫ばっかで、

唯一の楽しみは木の実だった。なのに今俺の目の前には肉が転がっている。それも弱々しくて

幼鳥の俺でも殺せそうだった。だから俺は近づいた、あとは嘴で脳天を潰せば終わりだったから。

 

 

 

 近づいた直後走る鋭い痛み、思わずたじろぐ。目が合うとアイツが睨んでて、「舐めるな」って言ってるようで、そんなこと言ってたってわかるはずもないのに。俺は底知れぬ恐怖を感じた。

 

 

 

 

 

 

──これがアイツと俺の長きにわたる因縁の

            始まりだった───

 




 タカさんが人間の考えた「カラス」って名前を知ってるはずないのですが、そこはご都合主義ということで宜しくお願いします。

 今後もしかしたらでてくるかもしれないので一応この言葉をここに記載しておきます。

♦︎モビング(擬行動)
タカ類やフクロウ類、カラス類などが現れた際に、小鳥が群れを作ってつきまとい、それを追い払う行動のこと。
実際は攻撃では無く単なる嫌がらせ。







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