俺様、田中幸一朗。
42歳、独身貴族。
始まった物語は何よりも尊く、偉大でかけがえのない、素晴らしい物語である。
俺様は会社員である。(超スーパーエリート)
使えない部下の織口が出してきたファイリングした資料集の束に普段通りに文句をつける。
これが朝のモーニングルーティンとなったのは一体何時からだろうか。
ただでさえ気分がさえない雨の日。俺様の気分はより一層落ち込んでしまった、この罪は重いぞ。織口。
今の自分は非常にいかめしい表情になっているだろう。その表情を精神集中し、抑え鎮める。
目の前に上司「豚」(山中)が現れた!
たたかう (なぐりたい)
にげる (臭い匂いだ)
ぼうぎょ (自分の精神を守りたい)
じゅもん (私のそばからいなくなれ)
▶笑顔で挨拶 (社会人のマナー)
笑顔で挨拶を選択しました。ん?俺様が笑顔で挨拶したのに、豚は無表情。
おかしいな。笑顔には笑顔で返せよ、豚。社会のルールだぞ。
いや、俺様は豚に何を期待していたのだろうか。こんなもんだっただろう、豚は。
「田中、二階の相談室に来い」
キェェェェェェアァァァァァァシャァベッタァァァァァァァ!!無駄にいいハスキーボイスで。
「うっす、分かりました」
適当に返事を返す。豚にはこれぐらいでちょうどいい。しかし、呼び出しとは・・・
まるで心当たりがない。
先日の会議で、織口を槍玉に挙げて晒し者にしたことだろうか。パワハラだのなんだの最近はめんどくせー。何より豚よ、俺様を動かした罪はあまりにも重い。
貴様は地獄行き確定だ。
トイレに行ってから行くと言って俺様はその場を離れる。豚と会話した。
そのため、ストレスがたまる。俺様人間だもの。豚と会話出来る種族ではない。
つまるところ、どうしようもなく腹が痛くなる。
可哀そうな俺様のお腹をいやすため、悪臭漂う豚から一刻も早く離れるため、早足で俺様はトイレへ向かう。
誰にも邪魔されず、ゆっくり用を足すのは人間として当然の権利だ。
この職場のトイレはまあ及第点だ。
用を足しているといつもそう思う。前の職場は最悪だった。
事務所と同じ部屋の中にトイレがあるのだ。狭い職場だった。トイレのために一部屋すら用意できていないのだ。
気持ちはいつもブルーだった。おならすら満足に出せないのだ。
トイレを終えた俺は二階の相談室へ向かう。この相談室、人事評価の面談、ハラスメントがあった際の相談等に利用される。
要するに普段あまり使われていない。日があまり当たらないのも相まって、寂れた印象を受ける部屋である。
こんなところに俺様を呼び出すとは。
俺様の気分はさらにより一層落ち込んでしまった、この罪は重いぞ。
豚。
何よりも
尊く(ない)、
偉大で(はないし)
かけがえのない(ものであるはずがない)、
素晴らしい(わけもない)
物語(つまり糞)。