扉を開け、相談室の中に入る。
豚と恐らく10分は2人きりではなさなければならないだろうと思うと溜息が出てくる。
だが、居たのは豚だけではなかった。
社長(親の七光り)、
加えて会長(尊敬に値する畜生)、
そして織口(したっぱ)。
「織口、ここで何をしている?ファイリングは終わったのか?」
会長、社長に挨拶を済ませた後、織口に疑問を問いかける。貴様の居場所はここにはないと。俺様から言われた仕事は終わったのかと。
はっきりそう言いたいが、会長、社長がいる手前、表現をぼかすしかない。
「・・・まだ、というか。もうあれは昨日既に山中部長にOKの許可を頂いたと
話しましたよね。まさか忘れたんですか。」
緊張で体の震えが止まらないのだろうか。声は掠れて小さく、顔色は普段の倍以上に赤い。だが、目にはありったけの憎悪を宿しながら、織口は私を睨み付けていた。
弱気な織口が私に反抗してくるのは、初めてだ。
今までこんなことはなかった。
稀に、
いやたまに、
いやいやそれなりに、
いやいやいや結構頻繁に、
いや、まあ毎日だったかな?
織口に理不尽を押し付けることが俺様の日課、楽しみだった。最近利口になったらしく、まず豚に話をして、許可、アドバイスを貰ってから、俺様に要件を通しに来るようになった。粗を何とか見つけ、文句をつけると、
「でも部長はこうした方がいいと仰っていて・・・」
とオドオドした表情で抜かしやがる。
許せん。
実際、豚にアドバイスをもらわなくても、織口がした仕事はまあ、通してもいいものだ
だが認めるわけにはいかない。叩きつぶすのだ優秀なやつは。今まで通りに
織口が最初でもないし、最後でもない。この会社は俺様でもっている。
その事実だけあればそれで良い。
その織口がだ。
俺様に反旗を翻していやがる。織口は揉め事を極端に嫌っているというのに。
自分のはもちろん、自分と全く関係のないことでも、嫌な空気が流れると、変に道化を気取って、その場の空気をうやむやにしてしまうのだ。
そんなところも気に食わなかった。
嫌な予感がひしひしと。俺様の美しい額から冷や汗が流れる。
会長が口を開く。
辞めてくれ。この会社で唯一尊敬できるあなたからその言葉を聞きたくない。
「田中くん、用件を率直に言おう。今日限りでこの会社を辞めてもらたい」
ああ、この言葉を聞いたのは何度目だろうか。聞き慣れた解雇予告。
俺様の表情はどうなっている。教えてくれ、申し訳なさそうな表情をする暇があるのなら。会長殿は相変わらず演技が上手い。
そんなところを本当に尊敬しています。
会長
いつも謙虚で丁寧な物腰、汚れ仕事も自らしている。
優しいお方である。
それ故、社員からすごく慕われている。
さらに一代で会社を築いた超有能だ。
あと、愉悦部。
人の苦しんだ顔がみたい、それだけのために、会社を築き、発展させた有能畜生。
申し訳なさそうな顔をしながら、
残業、休日出勤必須の無茶な仕事を押し付けてくる。
加えて、誰かを首にするときは自ら買ってでる。
汚れ仕事?いいえ、ごほうびです。
全ては人の苦しんだ顔が見たい、それだけのために人の上に立った男。
同じ糞ゆえ主人公だけには見抜かれていた。